利き手・刺入部位からの検証

利き手・刺入部位からの検証
∼小児の点滴トラブル実態調査(第2報)∼
5階東病棟
○溝上さゆり 山口瑞絵 楢崎美紀 吉富たか子
八田美津代 本多直子 津山聡子
はじめに
急性期疾患の多い小児科病棟では、入
院患児のほとんどに静脈内持続点滴治
療が行われている。入院生活において
患児の苦痛を最小限にするためには、
点滴の管理が重要となる。
今回、利き手に点滴を行った場合に点
滴トラブルが多く発生するのではないか
と仮定し、検証したので報告する。
Ⅰ.研究目的
前回行った小児の点滴トラブルの実態調査をもとに、
点滴トラブルと利き手との関係を明らかにする。
Ⅱ.研究方法
1.研究の種類:実態調査研究
2.研究期間:平成18年8月∼平成21年10月
3.対象者:平成18年12月1日∼平成19年5月31日
までの6ヶ月間において、上肢にシーネ固定する
点滴治療を行った患児130人
(点滴トラブル人数59人)
4.データの分析方法:利き手別、年齢別左右点滴
トラブル発生率の有意差をχ2検定を行い、
P<0.05を有意とした。
左
13%
(12)
右
20%
(19)
左
右
不明
不明
31%
(11)
左
17%
( 6)
右
52%
( 18)
不明
67%
(64)
3歳以下 n=95(人)
4歳以上 n=35(人)
図4.5 親の思う利き手
利き手ではない方に点滴
4
利き手に点滴
9
10
0%
20%
あり
なし
8
40%
60%
80%
100%
図1 利き手に点滴した場合とそうでない場の
点滴トラブルの発生率(3歳以下) n=31(件)
P>1.928
利き手ではない方に点滴
7
利き手に点滴
9
3
0%
20%
あり
なし
5
40%
60%
80%
100%
図2 利き手に点滴した場合とそうでない場合の
点滴トラブル発生率(4歳以上) n=24(件)
P>0.068
右
32%
(41)
左
右
左
68%
(89)
図3 初回刺入部位
n=130(人)
左
13%
(12)
右
20%
(19)
左
右
不明
不明
31%
(11)
左
17%
( 6)
右
52%
( 18)
不明
67%
(64)
3歳以下 n=95(人)
4歳以上 n=35(人)
図4.5 親の思う利き手
右
18
左
14
29
0%
20%
あり
なし
34
40%
60%
80%
100%
図6 左右別点滴トラブル発生率(3歳以下)
n=95(件)
P>0.911
右
18
左
5
8
0%
20%
あり
なし
4
40%
60%
80%
100%
図7 左右別点滴トラブル発生率(4歳以上)
n=35(件)
P>0.536
4歳以上
12
3歳以下
23
47
0%
20%
あり
なし
48
40%
60%
80%
100%
図8 年齢別点滴トラブル発生率
n=130(人)
考 察
利き手・左右別点滴トラブルの発生率に有
意差はなく、どちらの手に点滴をしても点滴
トラブル発生の減少にはつながらない。
しかし入院生活では行動が制限され、自由
が利かないことでストレスが溜まりやすい状
況である。そのため、遊びや発達段階で出
来ていたことを考慮し、よく使う手や利き手を
避けて点滴を行うことが望ましい。
まとめ
1.利き手に点滴を行った場合とそうでな
い場合の点滴トラブルの発生に有意差
はない。
2.初回刺入時にどちらの手に刺しても点
滴トラブルの発生に有意差はない。
3.4歳以上になると点滴トラブルが減少
する。
おわりに
今後は研究結果をふまえ、点滴
トラブルを未然に防ぐために、
より確実な点滴管理を行い、
点滴に伴う患児の苦痛を最小限
にしていかなければならない。