「水産生物の環境履歴と水産資源変動」班検討会議

新学術領域研究「新海洋混合学」の
「水産生物の環境履歴と水産資源変動」班検討会議
マサバ生活史と18.6年周期変動に関連する可能性のある事象
水産総合研究センター
中央水産研究所 資源管理研究センター
上村泰洋
マサバ太平洋系群の季節的分布回遊
索餌場(0歳:8~10月)
親潮
索餌場
(1歳以上:7~10月
・0歳:9~11月)
゚N
40
産卵場(1~6月)
索餌場(沿岸滞留群)
30
SST15℃
(8~10月)
天皇海山列
SST10℃
(1~3月)
越冬場
(未成魚:1~3月)
黒潮
黒潮続流
シャツキーライズ
北上回遊(5~7月)
: 1歳以上
: 0歳(沖合加入群)
: 1歳以上,0歳(沖合加入群 ※少ない)
南下回遊(10~12月)
: 0歳(沖合加入群)
130
140
SST10℃
(8~10月)
150
160
: 1歳以上・0歳
170゚E
資源評価調査海域(水研センター)
N
50
秋季浮魚類資源調査(9-10月)
出現率、加入量指数
45
(サンマ資源量直接推定調査)
北上期中層トロール調査(5-7月)
40
北上期浮魚類
調査(4-5月) 移行域幼稚魚調査(5-6月)
稚仔魚期成長率
秋季索餌場
35
産卵量
北上期移行域
135
140
145
150
155
160
165
170
産卵場
各季節ステージの分布域をカバーするように実施
175E
180
生物学的特徴
50
1,000
40
800
600
20
400
10
最近5年平均尾叉長
200
最近5年平均体重
2014年漁期体重
0
0
1
2
3
4
年齢
5
6+
0
成熟割合
30
1
0.8
体重(g)
尾叉長(cm)
最近5年(2010~2014年)漁期漁獲物の平均
2005~2014年
(低位水準)
1970~1986年
(高~中位水準、
将来予測で使用)
2000~2004年
(極低位水準)
0.6
0.4
0.2
0
0
1
2
3
4
年齢
5
6+
寿命 : 7~8歳(最高11歳)
体長: 尾叉長45 cm程度
成熟 : 2歳(50%)~3歳(100%)
産卵 : 冬~春季(1~6月)、主に伊豆諸島海域(3~6月)、
以西の黒潮周辺域や東北海域も
食性 : 稚魚は動物プランクトン,未成魚以降は魚類やオキアミなど
捕食者: サメ類などの大型魚類,ヒゲクジラ類
漁獲量
0
0
4
,
1
0 0
0 0 0 0 0
0
0
0
0
2
4
6
8
0
,
1
漁獲量(千トン)
0
0
2
,
1
00
05
00
05
00
05
0
2211
3
0
0
6
,
1
漁期年 1960
ロシア
北部まき網(北区)
中・北区定置網など
火光利用さば漁業*(中区)
中区まき網
南区全漁業
2005
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2010
2005
近年は、2004年級群の加入で増加後、
漁獲圧の低下により減少していたが、
2013年級群の漁獲加入によって、
2014年漁期は27万トンと増加した
2010
年齢別漁獲尾数
漁獲尾数(百万尾)
5,000
4歳以上
3歳
2歳
1歳
0歳
4,000
3,000
1,200
800
400
2,000
0
1,000
0
漁期年 1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2000
2005
2005
2014年
漁期
2014年漁期は
1歳魚(2013年級群)主体
FL cm
2010
2010
資源量
資源水準:低位
動向:増加
資源水準は親魚量,資源量の推移から判断
5,000
100
4,000
80
高位
3,000
漁獲割合
60
中位
2,000
40
1,000
20
0
1970
1975
1980
1985
1990
漁期年
1995
2000
2005
2010
資源量は,2013年155万トン、2014年147万トン
0
漁獲割合(%)
資源量(千トン)
資源量
親魚量・加入量
親魚量(4歳以上)
加入量
親魚量(3歳以下) ―― Blimit
親魚量(千トン)
1,250
125
100
1,000
75
750
中位
500
50
低位
250
0
150
1970
1975
1980
1985
1990
漁期年
1995
2000
25
2005
卓越年級群(1990年以降)
1992年、1996年、2004年、2009年、2013年
1992、1996年は卓越年級群をとりつくした・・・
2010
0
加入量(億尾)
1,500
漁獲努力量
北部まき網有効努力量*
漁獲係数(0~3歳平均)
5,000
1.2
1
4,000
0.8
3,000
0.6
2,000
0.4
1,000
0.2
0
1988 1992 1996 2000 2004 2008 2012
漁期年
漁獲係数(0~3歳平均)
北部まき網有効努力量
6,000
0
*チューニングに用いた指数
JAFIC提供資料
親魚量・加入量
親魚量(4歳以上)
加入量
親魚量(3歳以下) ―― Blimit
親魚量(千トン)
1,250
125
100
1,000
75
750
中位
500
50
低位
250
0
150
1970
1975
1980
1985
1990
漁期年
1995
2000
25
2005
卓越年級群(1990年以降)
1992年、1996年、2004年、2009年、2013年
1992、1996年は卓越年級群をとりつくした・・・
2010
0
加入量(億尾)
1,500
RPS(再生産成功率)の変動
再生産成功率(尾/kg)
100
10
1
0.1
1970
1975
1980
1985
1990
漁期年
1995
2000
2005
1988・89年、1998年、2006年にRPSの低下
Osafune & Yasuda 2010
1989年、2007年に潮汐最大、1998年に潮汐最小
2010
マサバの加入と環境との関わり
マサバ太平洋系群の分布と回遊
8~10月
親潮域に北上
成育場
索餌場
産卵場
主産卵場
北上回遊
南下回遊
親潮
4~8月
黒潮親潮移行域で成長
(川端ら、2013)
黒潮続流
黒潮
・主産卵場:伊豆諸島周辺海域
・産卵盛期:4~6月(渡邊、2010)
・仔稚魚期の成長、生残などに関する研究は少ない
(川崎,1968;飯塚,1987)
黒潮親潮移行域調査
・2002~2011年
5~6月
黒潮親潮移行域
(北緯35~40°東経140~160°)45ºN
・実習船
北鳳丸
40ºN
(664トン、北海道教育庁)
35ºN
・調査船
蒼鷹丸
(892トン、中央水産研究所)
30ºN
130ºE
140ºE
150ºE
160ºE
・JP-1型幼魚用オッタートロール網(エンド目合い10mm、ニチモウ製)
・採集されたマサバ当歳魚は船上で冷凍後、実験室で耳石解析
マサバ稚魚の孵化日組成
20
2002
N = 24
0
20
20
2003
0
20
20
2004
0
10
20
2005
0
2009
N = 49
0
N = 129
2008
N = 51
0
N = 64
2007
N = 73
0
N = 32
頻度(%)
20
N = 42
2010
N = 46
2011
0
20
2006
N = 22
0
12
20
0
22
3月
1
11
21
4月
1
11
12
22
1
11
5月
3月
孵化日
4月孵化群が中心
21
4月
1
11
5月
仔稚魚期の成長速度と加入の関係
4月孵化群の成長速度が加入量の指標
Recruitment (million inds.)
5000
加入量
4000
高成長=高加入
3000
仔稚魚期(35mmに達するまで)に加入
の多寡が決定している可能性
2000
1000
0
房総沖の水温を参考に経験水温を推定
RPS
1.00
30
Growth rate (mm day-1)
Recruitment per spawning
stock biomass (RPS)
40
20
10
0
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
Growth rate (mm day-1)
*35mm FLまでの日間成長速度
0.90
0.80
0.70
0.60
0.50
0.40
17.0
18.0
19.0
Mean SST (˚C)
水温が成長速度に影響
20.0
Kamimura et al. 2015
平成24年度までの成果(資源変動要因分析調査)
5003
親魚~卵~仔魚の成長,生残への水温の影響
1. 2歳親魚の産卵モニタリング(GnRHaを用いた産卵誘導)
① 材料: 2歳魚雌雄各3‐6尾の4ペアー
(平均尾叉長35cm, 平均体重650g)
② 環境: 自然日長・自然変動水温・飽食
③ 期間: 2010年4月28日~6月29日 受精卵を毎日採取
④ 解析: 卵径と油球径を計測後、それらの体積を算出
2.仔魚成長・生残実験
① 材料: 各産卵群から得られた受精卵
② 環境: 17℃、20℃、23℃の恒温水槽にて生残・成長をモニタリング
平成24年度までの成果
親魚~卵~仔魚の成長,生残への水温の影響
①
②
③
① 卵黄・油球体積は水温上昇によって小型化
② 大型卵由来・低水温ほど仔魚の体長が大きく、生残も良い
③ 高水温ほど成長・発育が良い
5003
マサバ太平洋系群の分布と回遊
8~10月
親潮域に北上
成育場
索餌場
産卵場
主産卵場
北上回遊
南下回遊
親潮
4~8月
黒潮親潮移行域で成長
黒潮続流
黒潮
・主産卵場:伊豆諸島周辺海域
・産卵盛期:4~6月(渡邊、2010)
秋季(9~10月)に道東・千島沖で採集された個体であ
れば、水温のコントラストがはっきりでると予想
親魚量・加入量
親魚量(4歳以上)
加入量
親魚量(3歳以下) ―― Blimit
親魚量(千トン)
1,250
125
100
1,000
75
750
中位
500
50
低位
250
0
150
1970
1975
1980
1985
1990
漁期年
1995
2013年級群:大きな卓越年級群
今後資源の増加が見込まれている
2000
25
2005
2010
0
加入量(億尾)
1,500
2013年級群の成長・成熟の遅れ
2014年1~6月(1月1日で加齢)
2歳魚(2012年級群)
30cmモード
2015年1~6月(1月1日で加齢)
直近の測定結果によると2013年級群
の成長が遅いことは明らか
(2歳魚で近年の1歳魚に近いサイズ)
1985
2013
2010-2014
加入量
54億尾
63億尾
25億尾
0歳
82g
123g
136g
1歳
199g
193g
325g
2歳
336g
470g
3歳
440g
591g
4歳
599g
677g
2歳魚(2013年級群)
26cmモード
密度効果?(Watanabe & Yatsu 2004)
回遊経路の影響?
2013年個体の解析からスタート?
9-10月
(加入個体)
耳石標本
9-10月
(加入個体)
耳石研磨標本
5-6月
(移行域稚魚)
耳石研磨標本
9-10月
(加入個体)
鱗標本
○
1995
1996
5-6月
(移行域稚魚)
耳石標本
○
○
○
1997
○
○
1998
○
○
1999
○
○
2000
○
○
○
2001
2002
○
○
○
2003
○
2004
○
2005
○(少)
2006
○
○
○
2007
○
○
○
2008
○
○
○
○
○
2009
○
○
○
○
○
2010
○
○
○
○
○
2011
○
○
○
○
○
2012
○
○
○
○
○
2013
○
○
○
○
○
2014
○
○
○
○
○
○
○
2015
○
○
努力量
マサバ太平洋系群資源回復計画
(2003~2008年)
・休漁措置による努力量管理:
臨時休漁と定時休漁
(※その後も努力量管理は継続)
⇒親魚量増加~加入量増加
⇒資源量回復へ
漁獲係数
北部まき網漁業における資源管理への取り組みと効果
分布・回遊と漁業の特徴
伊豆~遠州灘漁場
(周年)
分布 :本邦太平洋沿岸各地に分布.近年の低水準の資源状態では,おもに伊豆
諸島周辺~三陸海域.幼魚は本邦南岸~千島列島東方沖合まで広く分布.
漁業 :まき網(おもに三陸~犬吠海域),定置網(各地.おもに三陸海域),
たもすくい(伊豆諸島海域),釣り(おもに関東近海)
道東沖ミンククジラ胃内容物組成(JARPNII結果)
第二期北西太平洋鯨類捕獲調査
道東沖ミンククジラ胃内容のマサバ
( JARPNII 2012年9-10月)
(JARPNII調査資料:国際水産資源研究所提供)
スケトウダラ
マイワシ
カタクチイワシ
サンマ
サバ類
スルメイカ
不明・空胃
オキアミ類
(JARPNII 2012年調査レポートより引用)
各シナリオの将来予測
加入量=過去RPS中央値(7.09尾/kg)×予測SSB*
*SSB>過去最高値 ⇒ SSB=過去最高値140万トン
※加入量>過去最高値 ⇒ 加入量=過去最高値143億尾
1,200
600
500
400
300
200
親魚量(千トン)
5,000
資源量(千トン)
漁獲量(千トン)
700
4,000
3,000
2,000
2016 2018
漁期年
2020
900
Blimit
600
300
1,000
2014
Fcurrent
Frec
Fmed
0.8Fcurrent
0.8Frec
0.8Fmed
2014
2016 2018
漁期年
2020
2014
2016 2018
漁期年
Fcurrentで回復見込める
将来予測において2013年級群の年齢別平均体重は、1985年級群の値を用いる。
Fmedは、2010~2014年の平均体重を用いて計算した値を適用。
2020
加入量の不確実性を考慮した将来予測
過去RPSの中央値から
の過去観測値の残差の
リサンプリングによる
1,000回の試行
・SSB<Blimitでは
1986~2014年の観測値
・SSB≧Blimitでは
1970~1985年の観測値
Fmed以外のシナリオで
高い確率でBlimit以上