2. 流動層基礎(気泡粒子挙動観察と最小流動化速度測定) - Staff

2.
流動層基礎(気泡粒子挙動観察と最小流動化速度測定)
本実習では、最小流動化速度の測定や層膨張の測定、ガス流速と気泡の動きや
フリーボードへの粒子の飛び出し状況の観察を通じて、流動層の基本的な概念に
ついて学ぶ。
実習の流れ:
① 流動層の圧損失測定(常温):2 グループに分かれる
・A 粒子流動層: ガス流速と圧損失・層高の関係を測定する
・B 粒子流動層: ガス流速と圧損失・層高の関係を測定する
粒子充填量と断面積から圧損失を求める
ここで、昇温する。
② 二次元流動層における気泡・粒子挙動観察と考察
(1) 流動状態の観察(ビデオ併用)
・ガス速度と気泡径
・気泡の合体と分裂
流動化を急停止した時の粒子層の変化を観察し、層内空隙率を求める
(2)粒子飛び出し頻度の観察と層内現象との関係
(3) 層内空隙率の測定
(4)セグリゲーション観察
① 一定の温度に達したら再び圧損失測定
・A 粒子流動層: ガス流速と圧損失・層高の関係を測定する
・B 粒子流動層: ガス流速と圧損失・層高の関係を測定する
③ 流動層圧損失測定結果の整理と考察
測定した圧損失、層高データのコピーを基に、最小流動化速度を求め、粒子
によって温度の影響がどのようになるか考察する。
注 昨年まで行っていた光ファイバーによる層内挙動観察は時間がある場合に
実施する。
1
① 最小流動化速度の測定
ここでは、最小流動化速度は高温用の流動層を使うが常温でのみ求める。
1.目的
層内温度を均一に保持できることが流動層の大きな特長のひとつであること
から、工業装置として長時間の安定操業が確保される。流動層を選択する際のこ
のような特徴を、流動化する固体粒子の高温下における現象を観測し、さらに流
動化の基本的諸量(流動化開始速度、層膨張など)の物理的意味について考える。
2.原理
静止粉体層の底部よりガスを供給し、流量を増加するにしたがってそうないの
流体抵抗は増加し、層全体の圧損失Δ P は増大する。流量がある量に達すれば粒
子に作用する流体抵抗が粒子の重さおよび粒子間あるいは粒子-器壁間の摩擦
などの反対力に勝り、粒子は浮遊状態に至る。粒子をこのような状態にすること
を流動化という。
静止粉体層の層全体の圧損失は、粘性支配域から慣性支配域の広い範囲で Ergun
の次式 1)で推算できる。
2
P
(1   ) 2 u
1   gu
 150
 1.75 3
L
 3  2d p2
 d p
(1)
また、層全体が流動化状態にある場合は、
P
 (1   )(  s   g ) g
L
(2)
umf は両式の圧損失が等しい時の流速であるから、両式を等値して無次元数で整理す
ると、次式のレイノルズ数に関する2次方程式となり、
1.75a Re mf  150b Re mf  Ar  0
2
a
1
  mf
2
b
,
3
1   mf
 2 mf 3
d p  g (s   g )g
(3)
(4)
3
Ar 
(5)
2
Remf について解けば、umf の一般的推算式として次式を得る。
Re mf  C1  C2 Ar  C1
2
C1 
42.857b
a
,
C2 
(6)
0.571
a
(7)
2
従って、式(6)の右辺の値を式(4)、(5)、(7)を用いて計算した Remf 値から、umf の推
算値が次式で求められる。
umf 
 Re mf
d p g
(8)
粒子およびガス物性、さらにそれら物性値と粉体の充填条件や装置条件などによ
って規定される層平均の空隙率εmf が与えられると umf を計算することができる。し
かし、εmf に関しては直接に実測するか既往の実測値の統計的処理から近似的に評価
しなければならない。また、粒子形状係数φについても評価は簡単ではない。した
がって、推算の精度はこれら2つのパラメータの評価に強く依存している。具体的
には、式(6)の係数 C1 と C2 がεmf とφの関数で与えられるので、式(4)の a と b の評
価に帰着される。
Wen と Yu2)は、134 の文献値からεmf とφの関係を調べ、
a≒14 および b≒11(C1=33.7、
C2=0.0408)で近似した。その後多くの研究者によってεmf とφの関係が検討され、よ
り精度の高い改善された Wen - Yu 型の推算式が提出されている。表 13)には Wen-Yu
式の C1 値のみの修正 4)、2成分粒子系 5)、形状係数による分類 6)、高温 7,8)あるいは
高圧 9-12)系に適用可能な推算式の C1、C2 値およびそれらの基礎となる実測値の範囲な
どを示す。
温度の依存性は流動化ガスの密度ρと粘度μに表われる。また、粒子に関して
は、粒子表面の物理化学的性質や摩擦特性の変化等に温度の影響が現われると考
えられる。一般に、温度の上昇によってρは減少し、μは増加する。また、粒子
の表面特性は粒子間の付着・凝集現象に現われ、層構造変化の要因ともなる。一
般に粒子間付着力が増加すると、粉体層の空隙率εは増加し、粗な構造となる。
umf 以上のガス速度になると層内に気泡が発生し、気泡の上昇運動と気泡同士
の合体により粒子の運動が惹起される。層内温度の均一化は、このような気泡の
運動によって形成される。従って、温度の影響は気泡の大きさや頻度等の特性に
も現われると予想される。これらが高温場の流動状態を規定する要因となる。
3.実験
3-1.装置および試料
図1に装置の概略を示す。流動塔は内径 47mm の石英ガラス製で、塔下部には
ガラス焼結体のガス分散板を取付けてある。流動化に使用するガスは窒素 N2 で、
これをロータメータあるいはマスフローメータで計測して流動塔へ供給する。流
動層内を所定の温度に制御する加熱炉には、700℃以上の温度で流動状態を明瞭
に観測できる透明電気炉を使用する。層内温度は塔外壁部に設置した熱電対の指
示値で代表する。層内圧損失はガラス製の圧力タップを分散板直上に設置し、こ
れに接続された U マノメータあるいは電子式圧力検出器により静圧を測定する。
流動化粒子としては FCC 粒子および硅砂粒子を使用する。両粒子の物性を表2
3
に示す。
3-2.層圧損失の測定
①静止層高で 5 ~ 7 cmに相当する量の試料を秤量し、これを流動塔に装填する。
②次に、N2 ボンベのバルブを開き、流量をマスフローメータまたはロータメータ
で調節して定量のガスを流動塔に供給する。
③はじめに層全体が流動化するガス流速以上(3 umf 程度)でガスを供給する。
次に、流速を徐々に減少させる。ただし、減少の幅は流動化状態の変化を見て判
断し、特に流動層から固定層に変移するところでは ΔP の変化が大きいので注意
する。
④③の流速変化の方法により、所定の流速毎の ΔPを測定する。ここで、ΔPは流
速の設定後に一定となったところの値である。
⑤④の測定を流速 → 0まで繰り返す。
⑥ u = 0における層高 Lsを読み取る。また、u = umfにおける層高 Lmfを目視観測する。
⑦以上の手順に従い、室温および 800℃の温度条件で層圧損失を測定する。
4.結果の整理と考察
①測定した ΔP を設定流量 Q と共に表3に記録する。
②層内温度 T における空筒速度 u を次式から計算する。
Q
T
u
Abed 273.2
③ ΔP vs u の関係を図2に点綴する。
④層高 Ls , Lmf から層の空隙率ε s , ε mf を次式から計算する。
W0
 1
 p LAbed
(9)
(10)
ここで、 W0 は粒子重量、 Abed は層の横断面積である。図3(a)にこれらε s , ε mf
を温度 T に対して点綴する。
⑤図2の実測値から求まる umf と、(5)~(8)式からの計算値を図3(b)に点綴する。
ここで、式中の窒素ガスのρ及びμの温度換算は次式によることとする。
  0
273.2
T
(11)
-3
3
0℃、1気圧における密度は、ρ 0=1.25×10 [g/cm ]である。
3
T 2
  13.85  10
(12)
T  102
以上の実験結果と計算結果を比較検討し、流動化に及ぼす物理的因子について考
察する。
6
4
文献
1)S.Ergun,Chem.Eng.Prog., 48(2), 89(1952)
2)C.Y.Wen and Y.H.Yu, Chem.Eng.Prog.Symp.Ser.,62(62), 100(1966)
3)千葉繁生,“流動層ハンドブック”,堀尾正靭,森滋勝監修,培風館,I 編基礎編,p.51-55 (1999)
4)J.R.Grace,”Handbook of Multiphase System”,ed.by G.Hetsroni,New York,Chap.8,
p.6(1982)
5)V.Thonglimp,N.Hiquily and C.Laguerie,Powder Technol., 39, 223(1984)
6)A.Lucas,J.Arnaldos,J.Casal and L.Puigjaner,Ind.Eng.Chem.Process Des.Dev.,25,
426(1986)
7)Z.X.Zheng,R.Yamazaki and G.Jimbo, Kagaku Kogaku Ronbunshu,11,115(1985)
8)S.Y.Wu and J.Baeyens,Powder Technol.,67,217(1991)
9)D.C.Chitester,R.M.Kornosky,L.S.Fan and J.P.Danko,Chem.Eng.Sci.,39,253(1984)
10)S.P.Babu,B.Shah and A.Talwalkar,AIChE Symp.Ser.,74(176),176(1978)
11)S.C.Saxena and G.J.Vogel,Trans.I.Chem.E.,55,184(1977)
12)M.Nakamura,Y.Hamada,S.Toyama,A.E.Fouda and C.E.Capes,Can.J.Chem.Eng.,63,8(1985)
表①-1 Ergun式に基づくUmf推算式の係数 C1,C2値と適用データの範囲
研究者名
発表年
C1
C2
塔径
Dt [mm]
流体
粒子
Wen and Yu
1966
33.7
0.0408
10.2-146
空気、水、H2
CO2,He等
砂、ガラス球
アルミナ、FCC等
Grace
1982
27.2
0.0408
Thonglimp et al.
1984
31.6
0.0425
50-434
空気
Thonglimp et al.
1984
19.9
0.032
50-434
空気
Lucas et al.
Lucas et al.
Lucas et al.
Saxena and Vogel
1986
1986
1986
1977
29.5
32.1
25.2
25.28
0.0357
0.0571
0.0672
0.0571
152
Babu et al.
1978
25.25
0.0651
30.5-292
Nakamura et al.
Zheng et al.
1985
1985
33.95
18.75
0.0465
0.0313
30.0-49.5
82
Chitester et al
1984
28.7
0.0494
19×101.6
101.6
Wu and Baeyenes
1991
30.85
0.0379
250×480 空気/天然ガス
400
空気/プロパン
空気
空気、H2
CO2,N2等
N2
空気
N2
粒子径
dp [mm]
0.04-20
・・・ (文献
・・・
圧力
P [Mpa]
常圧
284データ)
文献値
アルミナ、ガラス球
0.11-2.13
常圧
鋼球
アルミナ、ガラス球
0.11-2.13
常圧
鋼球
球状(round)
・・・(文献値: 107データ)
鋭角的(sharp) ・・・(文献値: 24データ)
その他(other) ・・・(文献値: 6データ)
ドロマイト
0.088-1.41
0.18-0.83
石炭、チャー
0.05-2.87
0.1-7.0
ドロマイト等
ガラスビーズ
0.2-4.0
0.1-4.9
ガラスビーズ、砂
0.42-1.68
常圧
石炭、チャー
バロティーニ(ガラス 0.088-0.374
0.1-6.49
球)
砂、石灰
0.134-1.97
常圧
空隙率
ε [-]
形状係数
φ [-]
Remf
[-]
0.385-0.935
0.136-1.0
0.001-4000
常温
0.355-0.531
0.8-1.0
0.6-180
常温
-
0.8-1.0
0.1-180
6-102
温度
T [K]
常温
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
291-700
0.467-0.529
0.8-1.0
0.5-0.8
0.1-0.5
0.73-0.98
常温
-
0.625-0.74
0.02-160
258-800
293-973
0.40-0.42
-
1
-
0.08-1360
1-100
常温
0.40-0.58
-
0.05-70
293-1173
-
-
-
5
圧力タップ
U マノメータ
圧力センサー
流動塔
電気炉
分散板
記録計
ロータメータ
窒素ボンベ
質量流量計
温度調節計
図①-1
粒 子
表①-2
使用粒子の物性
平均粒子径
密 度
dp [μm]
FCC粒子
硅砂粒子
実験装置
Geldart の分類
ρ p [g/cm3]
74
1.08
A粒子
328
2.63
B粒子
6
表①-3
試料名:
層圧損失の測定
充填量: W0 =
Q[l/min] u[cm/sec] Δ P[mmAq] Δ P[kPa]
試料名:
[g]
L[cm]
充填量: W0 =
Q[l/min] u[cm/sec] Δ P[mmAq] Δ P[kPa]
ε [-]
[g]
L[cm]
T =
ε [-]
[K]
備考
T =
[K]
備考
7
10
1
0.1
0.01
0.01
0.1
図①-2
1
U [cm/s]
10
100
層圧損失と流速の関係
8
mf, cm/s
0.6
0.5
0.4
200
400
600
800
1000
1200
T, K
(a)
10
9
umf, cm/s
8
7
6
5
4
3
2
200
400
600
800
1000
1200
T, K
(b)
図①-3
umf と温度の関係
9
② 気泡・粒子挙動の測定
1目的
高温流動層では条件による物性の変化が最小流動化速度にどのような影響を
及ぼすか学習する。ここでは、常温で2次元流動層内の気泡挙動の観察を行い、
ガス流速との関係を体感することを目的とする。この時、流動化現象の観察方法
としてビデオカメラを用い、流動層内現象の解析法を理解する。
II-2気泡径の測定
気泡挙動は流動層内の様々な現象と関わりがあり、その把握は流動層内現象を理
解する上で重要なものとなる。気泡が生じる空塔基準のガス流速 U0 を気泡会誌速
度 UmB と呼び、これは最小流動化速度 Umf 以上のガス流速である。今回は Umf と UmB
が一致するガラスビーズを使った場合について説明していく。両者が異なる微粉
系流動層における気泡挙動については成書などを参照されたい[②-1]。
一旦、生成した気泡は層内を上昇するに従って会合、分裂を繰り返しながら成長
していく。そのため、多くの気泡径推算式が提出された。表1に大型流動層研究
グループが1辺1mの正方形流動層を用いて得た気泡成長の検討に用いた推算
式を示す[②-2]。また、その推算結果を図1に示す。小型装置で求められた推算
式ではあるが、いずれの推算式も大型装置での気泡径を良く推算しているといえ
る。
気泡径の推算式はガス流速の影響の評価によって大きく2種類に分けられる。一
つは最小流動化速度との比 U0/Umf で、もう一方は過剰ガス流速(U0-Umf)で整理して
いる。過剰ガス流速で整理する場合、指数として 0.4 から 0.6 の値が使われてい
る。
気泡径と気泡上昇速度との関係についても議論が行われ、(1)式か(2)式で整理さ
れることが多い。
UB=KB(gDB)1/2
UB=KB(gDB)1/2+(U0-Umf)1/2
(1)
(2)
ここで、気泡上昇速度係数 KB は 3 次元流動層の単一気泡に対しては 0.71、フリ
ーバブリング状態については流動状態によって 0.9 から 1.1 を取ることが多い。
気泡上昇速度係数の変化については気泡干渉による気泡の延びによって説明さ
れている 3)。
注 (1)式は気泡干渉が無い場合、(2)式は気泡群の場合と言われることがある。
しかし、(2)式は粗粒子になると KB が 0 や負になることがある。そのため、両式
を比べてデータと合う式を使えば良い。
10
図②-1
表②-1 既往の推算式[②-2]
[1] Kobayashi et al.(1965) DB=1.4 (dpρp)(U0/Umf)h
[2] Whitehead et al.(1967) DB=9.76(U0/Umf)0.051h0.54
[3] Kato et al. (1969)
DB= DB0 + 1.4 (dpρp)(U0/Umf)h
DB0 =(6G/π) 0.4/g0.2
[4] Geldart (1971)
DB= DB0 + 0.027(U0 - Umf)h
[5] Chiba et al. (1973)
DB= (1.245(h-hB0)/ DB0 + 1)2/7 DB0
for h≦hk
[6] Mori et al. (1975)
(DBM-DB)/(DBM-DB0)=exp(-0.3h/DT)
DB0=0.347G0.4, DBM=0.652((U0-Umf)AT)0.4
[7] Hirama et al. (1975)
DB= 1.1(U0 - Umf) 0.6 h0.6 DT0.1/ KB0.6 g0.3
[8] Rowe (1976)
DB= (U0 - Umf) 0.5 (h+Hj)0.75 / g0.25
[9] Darton (1977)
DB= 0.54(U0 - Umf) 0.4 (h+4(A0) 0.5)0.8 / g0.2
図②-1に対する仮定値
DT=1 m, AT=1 m2, KB= 1.1
fw=0.333, Hj=0.1 m,A0=0.56 cm2
[②1] 流動層概論、千葉、吉田編, p41(1996)朝倉書店
[②2] GOLFERS:化学工学論文集, 8, 464 (1982)
11
実習
2次元流動層は壁の影響が大きいが気泡や粒子挙動を可視化できるため層内
現象の理解に有用である。今回は、A 粒子と B 粒子の 2 種類の流動層を用意し、
同時に観察することが出来るようにしている。ガス流速を変えたときの気泡挙動
を目視観察すると共に、撮影したビデオ映像を用いて、スロー再生時の気泡挙動
観察を行う。さらに、静止画像として別に撮影した数枚の映像を使い気泡径、気
泡上昇速度の求め方を学習する。
A 粒子と B 粒子の流動層が並んでいるので両者を比較する
撮影したビデオを再生しながら気泡の合体分裂を観察する
層内の様子とフリーボードの様子について観察を行う
流動化を急停止した時の粒子層の変化を観察し、層内空隙率を求める
(1) 流動状態の観察(ビデオ併用)
・ガス速度と気泡径
・気泡の合体と分裂
・フリーボードへの飛び出しと気泡内現象との関連
12
(2) 層内空隙率の測定
ガス流速
層高
停止後層高
静止層高
(3)粒子飛び出し頻度の観察と層内現象との関係
(4)セグリゲーション観察
13