補体制御因子と腎疾患 遠 目 藤 守 人 次 1. はじめに 2. 血漿・膜補体制御因子 3. 腎組織における補体制御因子 4. 補体制御因子異常と腎疾患 5. 補体制御因子の治療への応用 6. おわりに ) H 因子(Fac t orH)そして I因子(Fact orI が存在する。補体系における初期反応として古 1. は じ め に 多くの腎疾患において,その組織傷害に補体 系の関与していることが広く知られている。本 来,補体系は異物除去という自己を防衛するた めの生体反応であるが,過剰に生じることで自 典 的 経 路(Cl ,第 二 経 路 as s i c al pat hway) (Al t e r nat i ve pat hway)およびレクチン経路 (Le の 3つがあるが,C1I c t i npat hway) NH は 己組織をも損傷し得る可能性を有する。した C1複合体(C1qC1 rC1s)と可逆的に反応し て,古典的経路のスタートとなる C1レベルで がって,その自己に対する不利益を防ぐために の活性化を阻害している。 補体反応を厳密にコントロールするための機構 構に異常が生じ活性化反応のコントロールに破 上記の 3経路は C3活性化の段階で合流する ので,C3は補体系の中で中心的な役割を果たす こととなる。C3活性化を導く C3転換酵素,お 綻をきたした場合に腎疾患をはじめとする各種 よびそれに続く C5 解を導く C5転換酵素を 病態が惹起されることとなる。本稿では主な補 制御している特異的なセリンプロテアーゼが 体制御因子とその作用機序,および近年注目さ Fact orIである。Fac t orIは C4bpと Fac t or , H を補助因子(コファクター)として用い,C4 が存在する。しかしながら,このような制御機 れている腎疾患との関連や治療への応用につい て概説する。 C3の活性型である C4b,C3 bを せる作用を有する。 C4bpは 7本鎖構造をとっており,この 7本 の腕の部 に C4bを結合して,古典的経路,レ 2. 血漿・膜補体制御因子 補体制御因子は血漿中のものと細胞膜上のも のとに大別され,いくつかのステップで,多様 な機序によりその作用を発揮している 解して失活さ (表 ,図 1,図 2 )。 1 血漿中には可溶性制御因子として,C1インヒ ビター(C1I ,C4結合タンパク(C4bp) , NH) クチン経路の C3転換酵素 C4 b2 aの形成を阻 害,解離失活を促進する。C4 は b C4bpに結合 すると Fact orIの作用で切断され,C4 cと C4d に 解される。 Fac t orH は C3の活性型である C3bに結合 する 1本鎖の糖タンパクで,C3bに結合すると ―1 2 3― 八戸大学紀要 第3 4号 表 1. 補体制御因子 子量 (kd) 制御因子 血漿 ( 平均血中濃度 :μg) (20 0) (25 0) 105 150 Fact orI (48 0) (3 5) Spr ot e i n:vi t r one ct i n SP40,40:cl us t e r i n (50 0) (40 0) 80 C1I NH C4bp Fact orH 細胞膜 550 90 80 ( 存在する血液細胞) 赤血球,好中球,好酸球, 190 -25 0 単球,マクロファージ, ,一部の T c B cel l el l DAF:CD5 5 ほぼ全て 70 -70 MCP:CD46 赤血球以外,ほぼ全て 45 ほぼ全て CD59 20 CR1:CD3 5 図 2. 補体活性化反応の制御機序 用する。 S pr ot e i n(Vi t r one c t i n)および SP-4 0 ,4 0 (Cl us t er i n)は,液 相 中 の C5 b7に 結 合 し て C5 b-7複合体の細胞表面への結合を阻害する ことで,細胞溶解等の作用を発揮する機能 子 である C5b9複合体(membr aneat t ac kcompl e x;MAC)の形成を制御している。 これら血漿中に存在する可溶性制御因子につ いては古くから知られていたが,自己防御の面 から重大な意味を持つ膜補体制御因子の存在が 判明して来たのは 1 9 8 0年以降の研究によって である 図 1. 補体制御因子の作用部位 。 自己 と 非自己 を区別し,自己細 胞を補体の侵襲から保護するという役割を担う 因子が細胞膜には存在していることが知られて 第 二 経 路 の C3転 換 酵 素 C3bBbあ る い は 来た。 (P:プロパージン)の解離失活を促進 C3 bBbP するとともに,C3 bの C5への結合を競合的に CR1( Compl eme nt r ec e pt or t ype1,C3 b/ C4 br e c ept or ,CD3 5)は可溶性制御因子の C4 阻害することで C5転換酵素の制御の機能も持 bpと Fac t orH の機能を併せ持つ因子として とらえることができる。すなわち,C4 bあるい つ。また,Fac t orH は C3 bを不活性型の i C3b に切断する Fac t orIのコファクターとして作 は C3bに結合して Fact orIのコファクターと ―1 2 4― 遠藤守人 :補体制御因子と腎疾患 して働くことで活性型 子を不活化し,さらに C3転換酵素(C4 b2 a,C3bBb, C3 bBbP)に作用 してその活性の崩壊を促進する。血液中におい てその大部 は赤血球上に存在しており,その 他好中球,好酸球,単球,マクロファージ,Bリ ンパ球および一部の T リンパ球にも認められ るが,血小板や NK 細胞には存在しない。補体 制御因子としての作用以外に,赤血球上の CR1 は免疫複合体の除去(i ) ,食 mmunecl e ar ance 細胞上の CR1は食機能(phagocyt )に重要 os i s な役割を果たしている。 (de DAF c ayac c el er at i ngf ac t or ,CD5 5)は, タンパク部 は細胞膜外に存在し,フォスファ 図3 . 膜補体制御因子の構造 チジルイノシトールを含む糖脂質によって膜に 結合している GPIアンカー型タンパクである。 この構造は細胞膜上の移動に有利であり,また ている。これらの因子は,ヒトでは c hr omos ome1q3 2に ge nec l us t e rを形成しており,共 タンパクの再結合も可能にしている。その名の 通して s (SCR)と呼ば hor tc ons e ns usr e pe at 示すように DAFは同一細胞膜上に形成された れる約 6 0アミノ酸よりなるドメイン構造を基 本としている(図 3) 。 C3転換酵素の崩壊(解離失活)を促進するが, Fac t orIのコファクターとしての作用は持た ない。赤血球をはじめ,血小板を含めた血液細 胞に広く存在し,血管内皮細胞や各所の上皮細 胞にも 布しており,エコーウィルスやコク 一方,MAC形成に至る補体活性化後期反応 の段階での膜制御因子が CD59である。DAFと 同様に GPIアンカー型の糖タンパクで種々の 細胞に広く 布しており,C5 b8複合体の C8 サッキーウィルスのレセプター,大腸菌のレセ および C9に結合することで,C5 b8に C9が重 プターとしての機能も有する。 合して MACを形成するのを阻止する。 ) MCP(membr anecof ac t orpr ot ei n,CD46 は膜貫通型糖タンパクで,Fact orIのコファク ターとして同一細胞上の C3 b,C4bを限定 3 . 腎組織における補体制御因子 解 するが,C3転換酵素の崩壊促進には関与しな い。すなわち DAFとは機能面で相補的に作用 機能を有しており,尿細管を含めて極めて補体 している。赤血球以外の血液細胞の他,ほぼ全 活性化反応の生じ易い部位となる。 したがって, ての有核細胞に 腎局所では血漿中の制御因子が合理的に作用す 布し,可溶型 MCPも約 5 0 腎臓は糸球体において血液濾過という特殊な ng/mlの濃度で血漿中に存在する。補体制御作 用以外で MCPでは麻疹ウィルスのエントリー るとともに,各種の膜制御因子が存在して活性 化反応を抑制することで,自己組織の破壊を防 レセプターとして作用や,A 群連鎖球菌との結 御している。正常腎組織での検討から,腎固有 合が知られている。 細胞にはそれぞれ細胞膜表面に各膜制御因子の C3ステップでの補体制御因 子 は r e gul at or ofcompl ementac t i vat i on(RCA)pr ot e i nsと 発現が認められている して 関与しており,腎生検組織において補体活性化 称され,血漿因子では C4 bpと Fac t or H,細胞膜因子では CR1 ,DAF,MCPが含まれ (表 2 )。 各種腎疾患では補体活性化反応がその発症に 産物の沈着が観察される ―1 2 5― 。それに相応して 八戸大学紀要 表 2. 正常腎組織における膜補体制御因子の 第3 4号 布 CR1 DAF MCP CD5 9 糸球体上皮細胞 + −(±) + + メサンギウム細胞 − −(±) + + 糸球体内皮細胞 − −(±) + + 傍糸球体装置 − ++ ++ + 近位尿細管 − −(±) + ± 遠位尿細管 − −(±) + + 血管内皮細胞 − −(±) + + :わずかに発現しているとの報告あり。 補体制御因子の沈着(図 4)や発現増強が認めら れ,生体内においては補体反応の自己調節のメ カニズムの機能していることが推察されてい る。血漿制御因子である C4bpについて,レク チン経路を介した補体活性化を生じる一部の I gA 腎症では,補体活性化産物とともに C4bp の著明な糸球体沈着がみられることが示されて いる 。また Fac t orH に関して,膜性腎症では 糸球体係蹄に った I gGと C3の沈着を特徴と するが,疾患の活動期には同様に Fac t orH の 沈着がみられそれを反映して尿中排泄が増加す ることから,われわれは経時的な尿中 Fac t or H の測定が,非侵襲的方法として病状を把握す る上で有用であることを報告している 。 膜制御因子においても腎疾患に伴う変化が検 討されており,補体による組織傷害に防御的に 作用して生体の恒常性の維持に大きく関与して いるものと考えられる。MCPは腎組織で最も 広く 布し主に局所での基礎的な補体制御作用 図 4. 各種糸球体腎炎(A.膜性増殖性糸球体腎 炎,B.膜性腎症,C.I gA 腎症)における Fac t orH の糸球体沈着 を担っており,さらに補体活性化が進行した際 には DAFや CD5 9が動員されることが示唆さ れる。これらの膜制御因子 DAF,MCP,CD5 9 について,細胞上での補体活性化によりその産 生が RNA レベルで刺激され,タンパクの細胞 表面への発現増加の生じることが培養細胞を用 いた実験により確認されている 。 4 . 補体制御因子異常と腎疾患 血漿制御因子である C1I NH の欠損が遺伝 性 血 管 性 浮 腫(Her edi t ar y angi oedema: HANE)という病態を引き起こすことが知られ ている 。これは外傷,感染症,ストレスなどが 誘因となり,発作性に全身に浮腫を来す疾患で ―1 2 6― 遠藤守人 :補体制御因子と腎疾患 あるが,通常,C1I NH 遺伝子の片方のアレル が病態の主体をなす。イニシエーションとなる が機能異常を示し,ヘテロの欠損として認めら れる。完全欠損の報告はなく,ホモ接合体は致 病原そのものの傷害性が O1 57ほど激しくない としても Fact 異常が基礎にある場合には orH 死的であると推定される。この病態が直接腎疾 同じような激しい内皮細胞傷害を惹起し HUS 患を惹起することはないものと考えられるが, さらに腎疾患が併発した場合には当然その組織 を発症する。現在では O1 57等の感染性以外の 非典型 HUSの背景として Fac t orH 異常が大 傷害を進展する極めて重大な増悪要因となるこ きな割合を占めることが判明している 。 とをわれわれは報告している 。 MPGN I Iは低補体血症を特徴とする腎疾患 であるが,その病因としては第二経路の C3転 C4bpの欠損は極めて稀であり,血管性浮腫 と非典型的なベーチェット病様の症状を呈した 症例の報告が世界で一つあるだけなので腎疾患 との関連は不明である。 Fac t orH については,他の制御因子がある 程度その機能を代償するため臨床的に重篤な病 換 酵 素 で あ る C3bBb,C3 bBbPに 対 す る I gG 画の自己抗体,C3ne (C3Nef ) phr i t i cf ac t or が知られている 。これは C3転換酵素に C3 Nefが結合することにより Fac t orH による解 離作用が妨害され C3の活性化が持続するもの 態は示さないと考えられて来た。 しかしながら, である。同様の因子として Fac t orH に結合し 近年 Fac t orH の機能異常と腎障害との関連が てその働きを阻止するモノクローナルな免疫グ 注目されている。慢性腎不全を発症して死に至 ロブリン L鎖の報告 るノルウェー原産ブタの検討で,これは先天性 が見つからない症例では Fac t orH そのものの に Fact orH を完全欠損しているため持続性の 異常が存在する可能性が示されている 。 低補体血症を認め,病理学上,膜性増殖性腎炎 Fac t orIの欠損も稀であるが世界で数家系 報告されている。補体活性化が持続することで I I型(MPGN I I;membr anopr ol i f er at i ve )の像を示すことが gl omer ul one phr i t i st ypeI I 観察されている 。また 子生物学的技術に もあるが,これらの因子 C3の過剰消費が生じ,著明な低 C3血症,すな わち基本的に C3欠損と同じような病態を呈す よって作製された Fac t orH 欠損マウスにおい ても MPGN I の病態を呈することが確認され I ることとなる。オプソニン作用欠如等により免 ている 。ヒトにおいては数例の Fac t orH 欠 に重症感染症を発症することが多く,また,免 損家系の中で MPGN I Iや溶血性尿毒症症候群 (HUS;he mol yt i cur emi cs yndr ome)を呈す る症例が報告されていたが, さらに詳細な検討, 疫複合体型腎炎の発症例が知られている。最新 特に遺伝子レベルでの検討が行われることに ものの Fact orIの遺伝子異常が含まれること よって,ヘテロの欠損や遺伝子の点変異による が明らかにされた 。血中タンパクとしての 質的異常を有するものの存在が明らかになり, 一層腎疾患 で の 重 要 性 が 認 識 さ れ て 来 て い Fact orI量はほぼ正常であっても,低 C3血症 がみられ,妊娠や感冒等を誘因に HUSを発症 る した症例の解析結果から報告されたものであ 。ヘテロ欠損や一部の質的異常は生理的 疫力が低下し,髄膜炎や肺炎,敗血症等再発性 のトピックスとして,前述の Fact orH と同じ く,非感染性 HUS症例の中に頻度的には低い 状況においては問題ないものと考えられるが, る。 過剰な補体活性化を生じた場合には十 制御機能を発揮できないため組織傷害が拡大し CR1の 異 常 は i mmunec l e ar anc e不 全 の た め免疫複合体病,特に全身性エリテマトーデス 疾患として生体を害することとなる。HUSで (SLE;s )との関 ys t e mi cl upuse r yt he mat os us は代表的な病因として病原性大腸菌 O1 57があ 連が考えられ,ループス腎炎の発症素因として るが,これは O15 7による顕著な内皮細胞傷害 みることができる。その他,I gA 腎症や半月体 な補体 ―1 2 7― 八戸大学紀要 第3 4号 形成性腎炎,糖尿病性腎症の糸球体上皮では 植の成績が良いとされる。補体制御因子 Fac t or CR1発現の減少がみられるとの報告 がある が,組織荒廃に伴う二次的な変化による可能性 H,Fact orI ,MCPの遺伝子変異による異常は の直接的な病因となるのではなく,こう HUS が高く,ループス腎炎の一部での症例も含めて した背景がある場合に何らかのセカンドヒット CR1発現低下を直接的な疾患の病因としてと らえることは困難であると思われる。 が生じることによって HUS発症に至るものと 理解することができる。 DAFや CD5 9等の GPIアンカー型タンパク 欠損のみられる病態が発作性夜間血色素尿症 5 . 補体制御因子の治療への応用 (PNH ;par oxys malnoc t ur nalhemogl obi nur 。これは,骨髄の造血幹細胞レベ i a)である 過度の補体活性化反応が組織傷害を誘導し腎 ル で GPIア ン カー生 合 成 に 必 要 な PI G-A (phos )の遺伝 phat i dyli nos i t olgl yc an cl as sA 子に突然変異を生じたために,全ての GPIアン 炎をはじめとする疾患群の発症に関わることか カー型タンパクを欠損した血液細胞集団が出現 の解決すべき課題が残されており,未だ臨床で ら,補体系の適切な制御という治療戦略は数多 く試みられて来ている。しかしながら,幾つか し,補体系の易活性化状況で DAFおよび CD59 用される薬剤として確立していないのが現状 欠損赤血球の血管内溶血が生じて血色素尿(ヘ である。 モグロビン尿)を呈するものである。PNH では HANEに対して C1I NH が唯一濃縮製剤と して製品化されているが,HANE以外の古典 DAF,CD5 9の欠損は血液細胞にのみ限られ,腎 組織での DAF,CD5 9発現は影響されない。一 方,DAFの先天的な欠損,および CD59の先天 的な欠損がそれぞれ報告 されており,DAF 的経路による補体活性化反応が関与する病態で の 用は行われていない。また,Fact or H や の欠損では臨床的に明らかな異常はみられない Fact orIの異常を有する HUS症例で,各因子 を含んだ正常血漿の投与が有効であるとする報 が,CD59欠損では PNH 様の病状を呈したと 告 さ れ て い る。こ れ ら に お い て は 腎 組 織 で の 剤として開発や欠損症以外での適応についての DAF,CD5 9も欠損していることが予想される が,腎疾患との関連は認められていない。しか 議論等がなされるまでに至っていない。 その他, しながら,ラットではヒトの DAFと MCPの 非特異的プロテアーゼ阻害剤の 機能を併せ持つ膜貫通型制御因子である Cr r y 態で考慮されているが特筆すべき結果は得られ やヒトと同様の機能を持つ CD5 9に対する中和 ていない。 抗体を用いた検討 がみられるが,現在のところ単離された製 制御作用を持つメシル酸ナファモスタット等の 用が一部の病 から補体依存性の腎障 こういった状況下で,動物実験レベルでは 害に強く関与することが示され,当然,ヒト腎 様々な取り組みがなされている。古くから実験 疾患の経過において DAFや CD59の機能異常 腎炎においてコブラ毒因子による補体成 があれば極めて重篤な結果を招くであろうこと 渇が腎障害を軽減することは知られている。当 が推測できる。 然コブラ毒因子を臨床でヒトに MCPについては,その遺伝子変異が血漿因 子の Fac t or H や Fac t or Iと同様に非感染性 HUS発症の背景要因としてクローズアップさ 重篤な副作用から考えて不適切であるため,そ れている 。頻度的には Fac t orH と Fac t or Iの中間であり,臨床的な検討からは Fact orH や Fact orIの異常に比較して予後および腎移 が行われて来たのが可溶型 CR1である。これは 膜制御因子である CR1を遺伝子組み替えによ の枯 用することは れに代わるものとして補体制御因子の有効性が 期待されるわけである。その中で中心的に研究 り可溶型にしたもので,1 99 0年に心筋虚血再灌 ―1 2 8― 遠藤守人 :補体制御因子と腎疾患 流モデルで有効性が示されてから 種々の虚 D. M. ,e tal . Cont r oloft hec ompl e ment s yat em. Adv I mmunol 61:201 283, 1 9 9 6 . ) Hol 2 e r s V. M. Compl e ment as a r e gul at or y and e f f e c t or pat hway i n human di s e as e s .I n The r ape ut i cI nt e r ve nt i ons ( i nt heCompl e mentSys t e m Lambr i sJ . D. , ) Hol e r s V. M. ,e ds . ,pp. 1 3 2 ,Humana 血再灌流モデルや糸球体腎炎モデル,移植モデ ルにおいても効果が確認された 。高リスク 虚血性心疾患患者を対象に,手術後の予後を検 討する Phas eI It r i alが一時行われたが有意な 改善は得られなかった。このため SCRの数を 変えて特異度を上げたり,血中半減期を伸ばし たりする工夫がなされており,今後,虚血再灌 Pr e s s ,Ne wJ e r s e y,U. S. A. ,2 0 0 0 . ) Wal 3 por tM. J . Compl e me nt .Fi r s toft wo par t s . N EnglJ Med 3 4 4:1 0 5 8 1 0 6 6 , 流傷害,急性呼吸窮迫症候群(ARDS;ac ut e ,血液透析等の r e s pi r at or ydi s t r e s ss yndr ome) 野で臨床への 用が模索される予定である。 20 0 1 . ) Par 4 ke rC. J . Re gul at i on ofc ompl e ment by membr ane pr ot e i ns . Cur r Topi c s Mi c r obi olI mmunol1 7 8:1 6 ,1 9 9 2 . 5) Mor gan B. P. Compl e me nt r e gul at or y その他にも可溶型 MCP,可溶型 DAF,MCP と DAFのキメラタンパク等が開発され,特に 移植医療の領域で,異種移植での補体活性化が 主体をなす超急性期拒絶反応対策としてその効 mol e c ul e s:appl i c at i on t ot he r apy and 果に期待が持たれている。また,局所において 補体制御因子を過剰発現させる技術 子治療に対する研究 t r ans pl ant at i on. I mmunolToday 1 6: や遺伝 25 7 2 5 9 ,1 9 9 5 . が動物モデルでは確実 ) Cos 6 i oF. G. ,Se dmakD. D. ,MahanJ . D. ,e t に進められており,将来的には臨床応用も可能 al . Loc al i z at i on ofde c ay ac c e l e r at i ng と考えられるに至って,補体制御因子を用いた f ac t ori n nor maland di s e as e d ki dne ys . 治療について臨床の場でも倫理的問題を含めた Ki dneyI nt3 6:1 0 0 1 0 7 ,1 9 8 9 . ) Endo M. 7 ,Yamas hi na M. ,OhiH. ,e tal . 議論が必要となって来るものと思われる。 I mmunohi s t oc he mi c alde mons t r at i on of ( me mbr ane c of ac t or pr ot e i n MCP) of c ompl e menti nnor malanddi s e as e dki d- 6. お わ り に ne yt i s s ue s . Cl i nExpI mmunol9 4:1 8 2 補体活性化・制御機構についての研究が精力 1 8 8 ,19 9 3 . ) 大井洋之,遠藤守人,八杉忠男ほか :ヒト糸 8 球体腎炎組織における補体制御因子の検討 的 に 行 わ れ て 来 た 結 果,非 感 染 性 HUSや MPGN I Iといった腎疾患も含めてこれまで詳 細が不明であった疾患の病因の一部に補体制御 平成四年度厚生省特定疾患進行性腎障害調 因子が深く関連していることが明らかにされ 査 研 究 班 研 究 業 績 集(班 長 黒 川 清) た。同時に,補体制御因子を用いて新たな治療 pp. 2 1 82 2 3 ,1 9 9 3 . 9) I chi da S. ,Yuz awa Y. ,Okada H. ,e tal . 法の開発に向けた足がかりが出来つつある。補 体制御因子についての研究は,病因解明および Loc al i z at i on of t he c ompl e me nt r e gu- 治療への応用という両面から極めて魅力的な l at or y pr ot e i ns i nt he nor mal human ki dne y. Ki dne yI nt4 6:89 9 6 ,1 9 9 4 . テーマであり,今後一層進展していくことが期 待される。 1 0) Cous e r W. G. Compl ement I nhi bi t or s AndGl ome r ul one phr i t i s:Ar eWeThe r e Yet? J Am Soc Ne phr ol1 4:81 5 8 1 8 , 文 献 ) Li 1 s z e ws ki M. K. ,Far r i es T. C. , Lubl i n 2 0 0 3 . ) 1 1 Qui ggR. J . Compl e me ntandt heki dne y. JI mmunol1 7 1:3 3 1 9 3 3 2 4 ,2 0 0 3 . ―1 2 9― 八戸大学紀要 第3 4号 1 2) 遠藤守人 :臨床からみた補体活性 補体学 への招待(大井洋之編) pp.8188,補体研 究会,東京,2002 . ) Endo M. 13 ,OhiH. ,Sat omur a A. ,etal . 1 6 1:2 0 2 7 2 0 3 4 ,2 0 0 2 . ) 2 2 Pi c ke r i ngM. C. ,CookH. T. ,War r e nJ. ,e t al . Unc ont r ol l e d C3 ac t i vat i on c aus e s membr anopr ol i f e r at i ve gl ome r ul one phr i - Re gul at i onofi ns i t ucompl e mentact i vat i on vi at he l e ct i n pat hway i n pat i e nt s wi t hI gA nephr opat hy. Cl i nNe phr ol5 5: 1 85 19 1 ,200 1. t i si nmi c ede f i c i e nti nc ompl e mentf ac t or H. NatGe ne t3 1:4 2 4 4 2 8 ,2 0 0 2 . ) War 2 3 wi c ke rP. ,Goods hi p T. H. J . ,Donne R. L. ,e tal . Ge ne t i cs t udi e si nt oi nhe r i t e d ) Endo M. 14 ,Fuke Y. ,Tamano M. ,e tal . Gl ome r ul arde pos i t i onandur i nar yexc r et i onofcompl eme ntf act orH i ni di opat hi c ands por adi che mol yt i cur e mi cs yndr ome . Ki dne yI nt5 3:8 3 6 8 4 4 ,1 9 9 8 . ) Dr 2 4 agonDur e y M. 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