March 2013, No. 13-17 米国会計関連情報 最近の論点 EITF-2つの最終コンセンサスに合意 FASBの発生問題専門委員会(Emerging Issues Task Force, EITF)は、2013年3月14日の会議 で4つの論点を討議し、以下の2つの論点について最終コンセンサスに至った。 非営利組織:関係会社から提供される特定の人材サービス(EITF論点12-B) 連結対象である資金調達を行う担保付事業体の資産及び負債の公正価値の差異に関 する会計処理(EITF論点12-G) EITFは、以下の論点についてコンセンサス案に至った。 低所得者向け住宅税額控除(プログラム)への投資の会計処理(EITF論点13-B) FASBが最終コンセンサスとコンセンサス案を承認した場合、コンセンサスは強制力のある GAAPとなり、コンセンサス案はコメント募集のために公表される。FASBは、2013年3月29日の 会議において上記の最終コンセンサスとコンセンサス案を承認する予定である 1。 【最終コンセンサス】 連結対象である資金調達を行う担保付事業体の資産及び負債の公正価値の差異に関する 会計処理(EITF論点12-G) 資金調達を行う担保付事業体(collateralized financing entity, CFE)は、資産担保証券などの 金融資産を保有し、投資家向けに受益証券を発行する企業である。その受益証券は通常、 U.S. GAAPのもとで金融負債とみなされる負債性金融商品である。一般的に、CFEはほとんど、 またはまったく資本を有しないため、変動持分事業体(variable interest entity, VIE)となり、そ のため、U.S. GAAPのもとでは、議決権持分を通じて支配されない企業に適用される連結規 定の対象となる。したがって、企業がCFEの株式または受益持分を保有していないとしても、 その企業がCFEの資産運用会社であれば、その企業はCFEの主たる受益者となり、その結果、 CFEを連結することが必要になることがある。なぜならば、資産運用会社は、CFEの投資ポー トフォリオに関する意思決定を行うことにより、CFEの経営成績に最も重要な影響を与える活 動を指示することができる権限を有し、VIEであるCFEの主たる受益者となることがあるからで ある。また、資産管理会社は、劣後の管理手数料を通じてCFEに重要となりうる利益を受け取 る権利を有する場合もある。 CFEの連結を要求される多くの報告企業は、CFEの適格金融資産及び金融負債のすべてに ついて公正価値オプションを選択している。CFEの資産は、受益持分(すなわち負債)を返済 する唯一の原資であり、その受益持分は管理手数料及びその他の経費を支払った後のCFE の資産からの全キャッシュフローを受け取る権利を有するが、CFEの資産の公正価値とその 受益持分の公正価値に差額が生じることがある。公正価値の差額は、CFEの資産とその受益 持分との流動性リスクに基づく割引率の相違及び平均回収期間の不一致によりもたらされる 1 (訳者注) FASBは、2013年3月29日のボード会議において、上記の2つの最終コンセンサスと1つのコンセンサス案を承認した。 www.fasb.org を参照。 © 2013 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved. Defining Issues / March 2013 / No. 13-17 2 ことがある。そのため、CFEの資産の公正価値が、その受益持分の公正価値を超えることが ある。 連結したCFEの資産と負債の公正価値の差額に関する会計処理は多様である。一部の主た る受益者は、公正価値の当初の差額を損益として連結損益計算書に計上し、その他の主た る受益者は、連結損益計算書では損益を認識せず、代わりにそれを処分済み利益剰余金に 直接計上する場合もある。 2013年3月14日に開催された会議において、EITFは2012年のコンセンサス案(主たる受益者 は、当初認識時も当初認識後も、連結したCFEの金融負債をCFEの資産と同様の方法で測定 しなければならない)に同意し、最終コンセンサスに至った。EITFは、報告企業がCFEの受益 持分を保有していない場合、CFEの資産と負債の価値の純額がゼロであることが多いと述べ た。資産と負債は、資産または負債の公正価値のうち、より決定しやすい方を用いて総額 ベースで表示されなければならない。 EITFは、ガイダンスの適用範囲に、名目資本を保有するCFE及びリストラクチャリング(例:借 手の不履行)の結果として非金融資産を一時的に保有することになったCFEが含まれることを 明確にした。EITFは、最終コンセンサスの測定ガイダンスをサービスの対価を表す持分(例: 管理手数料)に適用しないことで合意した。さらに、EITFは、公正価値オプションを適用してい なかった企業に対して、ガイダンスの適用時に公正価値オプションを選択することを認めるこ とも合意した。 最終コンセンサスは、公開企業に対しては2013年12月16日以降開始する会計年度(その会 計年度の四半期を含む)から、非公開企業に対しては2014年12月16日以降開始する会計年 度(並びにそれ以降の期中及び年次報告期間)から、それぞれ適用される。早期適用も認め られる。 この基準書の当初適用による影響は、適用年度の期首に累積影響額の調整として認識され る。最終基準書の適用より前に公正価値オプションをすでに選択していた企業は、遡及的ア プローチを用いて新たな基準書を適用することもできる。 【コンセンサス案】 低所得者向け住宅税額控除(プログラム)への投資の会計処理(EITF論点13-B) 低所得者向け住宅税額控除(Low Income Housing Tax Credit, LIHTC)は、低所得者向け住 宅の建設及び改築に対する投資を促進するために作成されたプログラムである。このプログ ラムは、要件を満たす低所得者向け住宅プロジェクトを保有し運営するリミテッド・パートナー シップ等に投資する企業に税額控除を提供するものである。 低所得者向け住宅プロジェクトは、減価償却(投資コストの償却)の影響を考慮すると、一般 的に、会計上税引前損失が生じる。ただし、LIHTC及びLIHTC以外のタックス・ベネフィット (例:投資の償却から生じる課税控除)を考慮すると、利益が得られる可能性がある。 © 2013 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved. Defining Issues / March 2013 / No. 13-17 3 企業が一定の要件を満たす場合、その投資及び関連するタックス・ベネフィットの会計処理に、 実効利回法を適用することが可能である 2。この方法に基づくと、投資の償却と税額控除及び その他のタックス・ベネフィットは、一定の実効利回りを用いて税金費用に含めて認識される。 実効利回法を適用するために満たさなければならない要件には、信用力のある企業により、 投資元に配分可能な税額控除が利用可能であることが保証されていること、及び、保証さ れた信用のみに基づく利回りがプラスであることなどが含まれる。一般に、現行の投資は 実効利回法を適用するための要件を満たさないため、企業は、持分法または原価法を用 いてこれらの投資を会計処理することが多く、結果として、損失を税引前利益に計上する とともに、税額控除及びその他のタックス・ベネフィットを別個に法人所得税に計上すること になる 3。 一部の市場関係者から、この表示は、投資が実質的にタックス・ベネフィットの購入であるとい うこと、及び税引後の潜在的な投資成績は利益であるという事実を適切に反映していないと いう疑問が寄せられた。EITFは、実効利回法を適用するための要件を改訂するというコンセ ンサス案に至った。改訂後の要件では、原則として以下の事項が要求されることになる。 投資元に配分可能な税額控除が利用可能である可能性が高い(probable)。 投資元が投資の運用に関与せず、かつ予想されるベネフィットのすべてが実質的に税 額控除及びその他のタックス・ベネフィットから生じる。 投資元の予想収益がプラスであり、税制控除及びその他のタックス・ベネフィットからの キャッシュフローのみに基づくものである。 投資元が、LIHTCプロジェクトに、法律上及び税務上の両方の観点から、限定的な持分 しか保有しておらず(LLPまたはLLC)、かつ投資元の責任がその資本投資に限定され ている。 企業は、要件を満たしていないLIHTCについては、持分法または原価法のいずれかで会計処 理することになる。 このEITFコンセンサス案の適用は、LIHTCに限定される。ただし、EITFは、コンセンサス案に おいて、実効利回法の適用要件を満たす可能性のある税額控除がLIHTC以外にもあるか否 かについて、コメントを募集する予定である。 EITF論点13-Bは遡及的に適用される予定である。また、早期適用が認められる予定である。 【その他の討議された論点】 特定の状況における新しい会計の基礎(プッシュ・ダウン)の認識(EITF論点12-F) プッシュ・ダウン会計のもとでは、被取得企業の個別の資産・負債は、取得企業の取得価格を 基礎として修正再表示される。現行のU.S. GAAPは、プッシュ・ダウン会計を適用すべきか否 かについて、限定的なガイダンスしか提供していない。SECのスタッフは、SEC登録企業向けに プッシュ・ダウン会計に関するガイダンスを提供しており、それによれば、企業は、企業結合の 結果、被取得企業が実質的に完全に所有される場合は、取得企業の会計の基礎を反映する 2 EITF論点94-1「低所得者向け住宅プロジェクトに対する投資から生じるタックス・ベネフィットの会計処理」。EITF論点94-1は、FASB ASC Subtopic323-740に編纂された。 www.fasb.org より閲覧可能。 3 FASB ASC Subtopic 970-323「不動産-一般-投資-持分法及びジョイント・ベンチャー」 www.fasb.org より閲覧可能。 © 2013 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved. Defining Issues / March 2013 / No. 13-17 4 ように被取得企業の個別財務諸表を調整しなければならない。 2013年3月の会議では、被取得企業の個別財務諸表においてプッシュ・ダウン会計が要求さ れるか否か、また、要求されるのであれば、どのような場合に要求されるかについて、以下の 3つの代替案が討議された。 View A:取得企業が実質的に被取得企業のすべての支配財務持分を取得すること により、被取得企業の所有権の支配を獲得した場合に新しい会計の基礎を設定する。 View B:取得企業が被取得企業の支配を獲得した場合に新しい会計の基礎を設定 する。 View C:被取得企業の個別財務諸表において新しい会計の基礎を設定すべきでは ない。 2013 年3 月の会議でEITF は、 View B及び関連する論 点(例 :変動持分事 業体( variable interest entity, VIE)による支配の変更、複数の投資元による新しい会計の基礎の測定)を検 討するための詳細な調査を行うようスタッフに要求した。EITFはまた、所有権の変更のレベル の違いでプッシュ・ダウン会計が要求されるか任意適用されるかについて検討する予定である。 EITFは、今後の会議でこの論点について討議する予定である。 【EITFのアジェンダ】 EITFが2013年3月の会議で討議した前述の論点に加えて、今後の会議で討議する予定の論 点としてアジェンダに掲載されている論点は、以下のとおりである。 コンセンサス案を公表済みの論点: - ヘッジ会計目的で使用されるベンチマーク金利へのフェデラル・ファンド・レート(また は翌日物金利スワップ・レートの適用(EITF論点13-A) - 繰越欠損金または繰越税額控除が存在する場合の未認識のタックス・ベネフィット に関する表示(EITF論点13-C) その他論点: - 公的部門から民間部門へのサービス委譲契約の会計処理(EITF論点12-H) 【その他】 以下についてはタイトルの翻訳のみを示し、本文については日本語訳の作成を省略していま す。必要とされる方は、英語版の記事を参照してください。 非営利組織:関係会社から提供されるサービス(EITF論点12-B) © 2013 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved. Defining Issues / March 2013 / No. 13- 17 編集・発行 有限責任 あずさ監査法人 US GAAPアドバイザリー室 e-Mail: [email protected] ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり、特定の個人や組織が置かれている 状況に対応するものではありません。私たちは、的確な情報をタイムリーに提供するよう努めて おりますが、情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りではありま せん。何らかの行動を取られる場合は、ここにある情報のみを根拠とせず、プロフェッショナル が特定の状況を綿密に調査した上で提案する適切なアドバイスをもとにご判断ください。 © 2013 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative(“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved. The KPMG name, logo and “cutting through complexity” are registered trademarks or trademarks of KPMG International. この文書はKPMG LLPが発行しているDefining Issues® Mar. 2013, No. 13-17をベースに作成したものです。 上記の記述及び要約を、EITFコンセンサス、FASB Accounting Standards Codification、SEC規則、公式議事録及びその他の潜 在的または現行の規定の代用として取り扱わないようにご注意 願います。U.S. GAAPやIFRSを適用する企業またはSECへの ファイリングを行う企業は、関連する法規制及び会計規定の原 文を参照するとともに、自社の特定の状況を検討し、会計及び 法律顧問に相談されることをお勧めいたします。 本ニューズレターの内容に関しご質問等がございましたら、エン ゲージメント・チームの担当者までご連絡ください。 5
© Copyright 2024 ExpyDoc