企業家論 ④ マイケル・デル

(SBS 13/4/29)
サプライチェーン・マネジメント論
第7回追加資料
マイケル・デル
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マイケル・デルのリーダーシップの秘訣
1. 注文生産(直販)
2. 在庫の評価・管理
3. サプライヤーとの連携(連結経済におけるバーチャル・インテグ
レーション⇒サプライチェーン・マネジメント⇒ 6に)
4. 従業員との間にパートナーとしての関係構築
5. マーケットを革新(流通経路を変更)
6. 顧客の満足体験を総合的に捉える(製品、買い方、利用方法等)
7. 革新がなければ、消え去るのみ(改善?)
8. グローバルに試行し、グローバルに行動(?)
9. うまく行っていることに余計な手出しはしない
10.成長を管理する(急成長はひずみを生む)
※レベッカ・ソンダーズ著(2004年)『ダイレクト・モデルで躍進するデ
ル』三修社
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マイケル・デルの年表
1965年
2月23日テキサス州ヒューストン生まれ(ユダヤ人)
1977年頃
全国規模の切手オークションを主催し2000ドル稼ぐ。
1970年頃
パソコンをアップグレードし、友人や知人に販売開始(卸売業者から
部品をまとめ買い;利幅を上げつつ、サポートサービスと掲示板
システムを活用して大手に対抗できると思っていた)。
新聞の購読勧誘(郡書記事務所で新婚家庭と転居者の情報を収集
し、的を絞る)。
高校の時に所得申告作成が宿題として出され、年間18,000ドル稼い
でいたことが判明した。
1983年
テキサス大学医学部入学
1984年
学生寮の一室でPC’s Limited(資本金1000ドル)を起業し、大学中退。
1985年
Turbo PCを設計し、製造・販売(返品対応と翌日のオンサイト対応)
1987年
イギリスに初の海外支社設置
1988年
NASDAQに株式公開し、社名を「Dell Computer Cororation」に変更
1990年
アイルランドに工場設置(欧州、中東、アフリカ向け)
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マイケル・デルの年表(続き)
1992年 Fortune500に登場(最年少CEO)
1993年 直販戦略に特化(小売りへの損失補償から脱却へ)
日本とオーストラリアに支社を設置(アジアとオセアニア初)
1996年 Dell.COMをオープンし、販売および企業向けプレミアサー
ビスを開始。
1997年 テキサスの第二工場操業開始(在庫15日分)。
1998年 中国の厦門に製造・販売・サポートセンター設置
1999年 PCとサーバーの出荷台数世界1位獲得。
ブラジルに製造拠点設置(中南米向け)
2001年 コンピュータシステムプロバイダ(ソリューション)の売り上
げ世界1位を獲得。
2003年 社名を「Dell」に変更。
2004年 CEOを辞職(2007年にCEOに復帰)
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デルの製品の人気の理由(デル社による分析)
• スタンダード・テクノロジー
CPUをはじめすべてのパーツは、世界が認める高い安定性を
持った製品を採用。信頼度が高い。
• プライス・パフォーマンス
直接販売による低い流通コストと、継続した効率訴求によるコ
ストダウンで、常に顧客に最適な価格を提供。
• カスタマイズ・システム
パーツから、周辺機器、ソフトまで、豊富な選択肢をご用意。ム
ダのない最適な1台がオーダーメイド可能。
• デリバリー・レポート
ご注文のマシンの受注・組み立て・空輸・配送など納品状況を
WEB上で確認できるオーダーステータスページを提供。
• ダイレクト・サポート
ご購入後にお客様専用のサポートサイトを設置。電話やメール
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により常に的確なサポートを提供。
返品について(デルから直接製品を購入した場合 )
デルのブランド名が付いた新品の製品については、納品日から1
0日以内であれば、交換もしくは返品可能。
但し、以下には適用されない。
• デルがソフトウェア&周辺機器として販売した他社製品
• DELL/EMCストレージ製品プリンターインク・トナー
• プロジェクターランプ等の消耗品
• ソフトウェア
• サービス
※返金には配送料は含まれない。返品は、新品の状態またはデルから配送さ
れた状態でなければならない。また製品と同梱されているマニュアル、ディス
ク、CD、電源コード、その他の物品も製品と共に返品されなければならない
など...
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デル製品を購入する手順
1. 欲しい製品を探す
製品情報を参照しながら欲しい製品を絞り込む。
2. 製品のカスタマイズ
パーツ、サービス、周辺機器、ソフトウェアをニーズに応じてカスタマイズ。
3. ショッピングカートに入れる
構成内容を保存すれば、後日注文可能(見積書 を発行することも可能)。
4. チェックアウト
STEP 1: 顧客の情報
・請求先、配送先、連絡先を入力(登録済みなら不要)。
・質問事項や販売契約条件などに回答し、支払方法を選択。
STEP 2: 支払い方法
・選択されたお支払い方法によっては、更に詳細情報を入力。
STEP 3: 注文のご確認
注文内容を確認し、発注。
※正式発注は、最終的に代金の振込、もしくはフィナンシャル契約の承認
が確認されてからとなる。
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デル製品を購入する手順(続き)
5. ご注文確認メールの配信
(登録したE-メールアドレスに注文内容の確認するメール送付)。
6. オーダーステータス(お届け予定日)のチェック
注文製品の支払い手続き完了後、24時間以降WEBオーダーステータスに
て製品のお届け状況の確認が可能となる。(オーダーステータスページに
てチェックアウト時に発行されるオーダー番号およびパスワードを入力、ま
たは、電話での音声による24時間納期情報案内サービスが利用可能)。
7. 製品の宅配
デルと契約した配送会社(佐川急便など)から製品を宅配(配
送は国内のみに限定)。製品は正式受注後、通常10日~21日
ほど(購入製品により異なる)で宅配。
※一部のソフトウェア&周辺機器の商品は、システムとは別発
送となる場合がある。
※製品到着後の誤品、欠品などの問い合わせはカスタマーケ
アに連絡。連絡先は、請求書・注文請書に記載されている。
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デルが掲げる企業責任
地域社会
環境
デルの企業責任は、企業市民と
して責任ある行動をとることです。
デルは、環境責任、企業の説明
責任、および社会的責任の理想
に目を向け、これらの問題に対
処することが、財務目標達成を
促進し、長期的な成功のために
重要となりうる、という考えをさら
に推進しています。
パッケージング、エネルギー効
率、および電子機器リサイクリ
ングの分野におけるイノベー
ションを通して、デルはお客様
に高い生産性を提供しながら、
同時に環境フットプリントの削
減(負荷軽減)も実現します。
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デルが掲げる企業責任(続き)
人
デルは世界中の人々にサービスを
提供します。デルチームもまた、世
界中の人々から構成されています。
多様な職場環境を有することによ
り、デルのお客様により良いサービ
スと、最適なテクノロジーを提供で
きます。
サプライチェーン
グローバルなデルのサプライ
ヤは、テクノロジーソリュー
ションを提供するために不可
欠の要素です。サプライヤも
また、デルと同様に、人権と環
境に対する責任を担います。
レポート
ガバナンス
デルは、倫理的かつ誠実にビジネ
スを遂行するよう、全力で取り組ん
でいます。 また、より良い企業市民
となるためのデルの活動について
透明性を維持し、ステークホルダー
に報告します。
デルの本質は、変化と革新に
あります。しかし、その指針と
なるものは誠実さです。 デル
は合法的かつ倫理的にビジ
ネスを行い、法律と自社の行
動規範を守ります。
10
デルのPC市場でのシェアの推移
アメリカ市場での強さが目立っていた。
全体として、シェアは低下傾向にある。
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デルの製品別シェアの推移
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2012年度の
デルのシェア 地域別
の状況
全世界
米国
欧州・中東・アフリカ
アジア太平洋
日本
製品別
デスクトップ
ノートPC
サーバー
顧客別
一般消費者
500人以下企業
公共分野
500人以上企業
順位(シェア)
3
2
5
4
5
3
5
2
5
3
3
3
13
2012年度
のデルの
収益構造
項目
売上高
500人以上企業
公共分野
500人以下企業
消費者
売上原価
売上総利益(粗利)
営業費用
販売・管理費
研究開発費
営業利益
500人以上企業
公共分野
500人以下企業
消費者
その他
総額
56,940
内訳
17,781
14,828
13,413
10,918
44,754
12,186
9,174
8,102
1,072
3,012
1,553
1,238
1,505
-11
-1,273
単位:百万ドル
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デルのビジネス
PCのネット通販(受注生産 )
(存在しているものを
上手に組み合わせる)
直販に特化(サプライチェーン戦略)、マスカスタマイゼーション
※モニターやスピーカーなどは顧客へ直送(別送)
※1992年に204社あったサプライヤーを47社に絞り込み
修理とアップグレード(≠革新的新製品)⇒メンテナンス(対応力)
PCとサーバーで世界1
Dell.com開始(ネット通販)
副業
直販特化(小売りと卸売りを経由しない販売)
PC’s Limited設立、デル・コンピュータを経てデルに変更
1970年 1984年 1993年 1996年
1999年
整然とした最適化主義者:優れたアイデアで会社を興し、そのアイデアにそって
会社を運営し、絶え間なく改善を積み重ね、戦略上の核心は見失わない。 15
バーチャル・インテグレーションの4か条
①顧客・製造業者・サプライヤーの溝を埋めるダイレクトな関係
構築
②自社の付加価値を把握する(得意分野の絞り込み、労働・資
本集約型サービスは提携でまかなう)。
③最高レベルのサプライヤーと協力関係を構築。
④インターネットを戦略の必須要素と位置付ける
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通常の量販店経由の消費者向けビジネス・モデル
部品⇒製品
組立開始
流通過程(複数卸売り)
「保管⇒輸送⇒保管」
の繰り返し
小売店⇒販売
(代金回収)
⇒売れ残り
約2ヶ月後
• パソコンの売上原価の約80%は部品代。
• メーカーは代金を回収するまでに長期間待たなければならな
い(金利負担や売れ残りリスクなどを抱える)。
• 消費者は、値下がり前の古い部品から構成され、不必要な機
能の分まで含まれている価格で製品を購入しなければならな
い。
• 価格には、複数回の卸売りあるいは物流センターを経由する
ので、時間と費用が上乗せされている。
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インターネットを利用した直接販売
製品や在
庫情報
出庫指示
ウェブ
サイト
(ICT)
情報提供
検索・注文
配送/商品受領(宅配市場の成長)
直接販売のメリット
• 効率的な販売(卸売りなどの仲介業者の排除)
• 効率的な物流(注文データから送り状自動作成)
• ウェブサイトで大量のデータを双方向で提供
• 24時間全国あるいは全世界から受注可能
• データベースも即座に作成
• 入金後、製造販売(受注生産)すればキャッシュフロー改善 18
デル製品の発注から受領まで(オンライン) 特急便は除く
日
顧客(国内)
デル(中国)
1
注文・決済 →受注・決済確認
協力企業(中国)
2
生産準備中(生産・輸送計画)
3~5
組立(インストールと検査)← 部品生産(15分前納品)
6~
受領←← 宅配
注文
デルの
ウェブ
サイト
(佐川急便)
部品発注・需要予測
デル中国工場
部品
納入
近接す
る協力
企業群
受領←輸送←組立
デルの強さ:中間段階削除(マージンと製品在庫の削減)
消費者ニーズの把握と代金回収の速さ
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安価な部品(直近の価格;PC部品の値下りが早い)
デルモデル(PCの直販)は時代の必然か偶然か?
PC市場動向
競争優位
の源泉:
競争相手:
利用者層:
業務用コン
ピュータ
技術力 → 市場影響力 → 価格競争力
(製品イノベーション→工程イノベーション→コスト削減)
ごく少数 → 少数 → 参入者増加
非常に狭い → 狭い → 急拡大
高価格かつ
低性能PC
1985年
PC時代幕開け
性
能
向
上
費
用
削
減
性能向上
用途拡大
費用
削減
1990年
PC時代本格化
技術優位の大手企業に新興企業が勝つには?
絶好の参入のタイミングを図る。大手には真似のできない手
法を採用したり、有利に展開できるニッチ市場を探索する。
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