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経済学入門
(9)時間を通じた選択と利子率
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2011年7月14日
復習1








収入=価格×数量
収入を英語で Revenue
省略すると R=pQ
需要の価格弾力性=1 → 収入は変化しない
需要の価格弾力性>1
弾力的と呼ぶ
需要の価格弾力性<1
非弾力的と呼ぶ
価格上昇時に弾力的であれば収入は減少
価格上昇時に非弾力的であれば収入は増加
2011/7/14
経済学入門9
2
復習2








弾力性が無限大 → 需要曲線は水平
弾力性は0 → 需要曲線は垂直
必需品は需要が変化しない=弾力性が小
代替財の存在は弾力性の大小を決める
他財との相対価格は弾力性を決める
消費スタイルを変更する時間も弾力性を決める
短期的には行動を変えることは難しい
長期的には他の用途を用いて代替することが可
能
2011/7/14
経済学入門9
3
異なった時点での選択
お金を借りたり貸したり,DVDレンタル
 真央はアルバイトで5,000円を得た
 明日は何もしない

明日のために今得た所得の一部を取ってお
くだろう
 明日4,000円の買い物をする予定ならば今日
の買い物を諦めなければならない
5,000-4,000=1,000
 今日使えるのは1,000円だけ

2011/7/11
ミクロ経済学9
4
貯蓄
今得たお金を将来のために取っておく行為
を貯蓄という
 貯蓄をすれば現在の消費は減る
 しかし,将来の消費は増える


つまり,現在の消費と将来の消費はトレー
ドオフの関係にある
予算制約線や時間制約線と同様にトレード
オフを図解できる
 ブラックサンダーとうまい棒の選択を参考

2011/7/14
経済学入門9
5
明日の消費(円)
5000
-1は今日の1円を増や
すには明日の1円を犠牲
にしなければならない
4000円貯蓄して
C 今日1000円消費
B
4000
傾き=
5000-0
0-5000
=-1
A
1000
2011/7/14
所得を今日
すべて使う
今日の消費(円)
5000
経済学入門9
6
明日の消費(円)
5000
今日と明日の消費
(アリ)
C
B
貯蓄=4000=5000-1000
4000
今日と明日の所得
(キリギリス)
明日の
消費
A
1000
2011/7/14
今日の消費(円)
5000
経済学入門9
7
今年の消費(円)
100万円
80万円
真央は今年100万円の所得を得た.
しかし,来年は充電期間.この場合も同じ
C
B
100万-0
傾き=
0-100万
=-1
所得を今年
すべて使う
A
20万円
2011/7/14
今年の消費(円)
100万円
経済学入門9
8
元本と利子
ゆうちょ銀行や普通の銀行の口座
 預けたお金は元々のお金,元本という
 元本に対して銀行は利子を支払う


最初に預けたお金は保障されるので元本と
利子の合計(元利合計)は増える
1. 100万円預けて利子が100円→1,000,100
2. 100万円預けて利子が2万円→1,020,000
預ける人にとっては利子が多いほどよい
 有利さをどう測る?

2011/7/14
経済学入門9
9
利子率
貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利子
利子率=
×100
元本
1. 100/1,000,000 × 100=0.01 (%)
2. 20,000/1,000,000 × 100=2 (%)
 預金者は金利が高い方が有利
 金利は普通変動する
 現在(2011年)は低金利で0.02%
 1990年頃は7%

2011/7/14
経済学入門9
10
複利
利子の付き方には二通りある
 複利~前の期の元利合計に利子が付く
 例:複利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 2年目:元本 10,000
利子 10,300×0.03=309
元利合計 10,300+309=10,609

 複利は利子が利子を生みだすお得な預金法
2011/7/14
経済学入門9
11
複利/2
利子率を英語で interest rate.
 rと略す
 元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 元利合計を r で表現する
10,300=10,000+300=10,000+10,000×0.03
=10,000 × (1+r)
 元利合計=元本× (1+r)

2011/7/14
経済学入門9
12
今年の所得100万円で利子率r%
今年の所得100万円,来年の所得0円
 利子率 r で貯蓄 (r × 100 %)
 今年消費を全くしなければ来年は
100×(1+r)万円
の所得を得る
 予算線はどう変わるだろうか?

2011/7/14
経済学入門9
13
来年の消費(万円)
100(1+r)
100
C
今年と来年の所得と貯蓄
今年の所得を
すべて貯蓄
B
100(1+r)-0
傾き=
0-100
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
A
今年の消費(万円)
100
2011/7/14
経済学入門9
14
利子がある場合の異時点間の消費

予算線の傾き: –(1+r)
今年の所得をすべて消費は変わらない(A)
 所得すべて貯蓄の時に来年の消費(C)は

100(1+r)
利子率rが上がれば消費可能な領域は増える
 今年の消費と来年の消費のトレードオフは

1+r

1円の現在消費を増やすには 1+r 円の来年消費
を減らさなければならない
2011/7/14
経済学入門9
15
利子がある場合の異時点間の消費
利子率の上昇は今年の消費に比べ来年の消費は
有利になる
 もっと貯蓄しよう.利子率上昇→貯蓄増加


ここまでの理解では今は低金利なので現在の消
費の方が有利
利子率は現在と将来の消費
のトレードオフを示す

貯蓄曲線は右上がりになる
2011/7/14
経済学入門9
16
資本市場の供給
利子率 r
S
貯蓄曲線 S
=供給
r
資金量
S
2011/6/23
経済学入門 7
17
借入
レンタルDVDを借りると最初にレンタル料金
を支払う.見終わったら返却.
 レンタル料金が借金の利子(利息)
 来年所得を得るが今年は無一文.しかし,5万
円でお金が借りられる
 今年100万円借りたら返済額は? 105万円
 100 + 5=105 (万円)
 返済額=借入金+利子
 今年の100万円は来年105万円の価値に等しい

2011/7/14
経済学入門9
18
今年の所得0で来年100万円の所得
利子
借入利子率=
× 100
借入金額
借入金額100万円で利息5万円の借入利子率?
5/100 × 100 = 5 (%)
 今年全く無所得,来年100万円の所得を得る借
り入れ利子率は預け入れ利子率と同じr%

今年消費をするには借り入れをして,借入金額
と利息合計を来年支払う必要
 来年全く消費しなければ今年いくら消費できる

2011/7/14
経済学入門9
19
今年の所得0で来年100万円の所得/2
100
万円
1+r
 今年は 100/(1+r) 万円借り入れた
 来年の返済額は
100
×(1+r) =100 万円
1+r
となり来年の所得に等しい
 利子=借入金額×借入利子率
 借金によって予算制約線はどう変わるか?
2011/7/14
経済学入門9
20
来年の消費(万円)
今年の負債と来年の所得
Dの消費を
した時の借
金返済額
100
B点:来年の所得をすべて消費
E点:最大限の今年の消費
B
借入の予
算制約線
D
100-0
傾き=
0-100/(1+r)
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
今年の消費(万円)
E
100
1+r
2011/7/14
経済学入門9
100
21
借金をした場合のトレードオフ
借金をした場合の予算制約線の傾きは –(1+r)
 借金をして今年1円消費を増加させるには借金
を返すために来年の消費を 1+r 円減らさす必要
 借り入れ利子率が高くなるほど借金は不利
 貯金も借金も利子率が重要
 預け入れ利子率と借り入れ利子率は異なる

貯蓄でも借金でも現在と将来の消費で利子率
は大切
 借入をする投資は利子率が上昇すると減る

2011/7/14
経済学入門9
22
資本市場
利子率 r
I
r
投資曲線 I
=需要
資金量
I
2011/6/23
経済学入門 7
23
借金で苦しむ人とデブ
借金で苦しんでいる人と肥満な人共通点
 どちらも現在たくさん消費している
 借金苦は現在の所得以上に消費

肥満人は体型維持の消費カロリー以上に食物
を摂取している
 どちらも我慢強さに問題
 低所得者層ほど肥満率が高い
 高所得者層ほど自分の健康に留意している

デブほど借金に苦しむらしいがどうすべきか―池田新介 プレジデント 2009年1.12号
米国の肥満率悪化 貧困層急増が影響か NPO調査
デブの帝国
2011/7/14
経済学入門9
24
インフレーション
先生が小学校の時の遠足のおやつは100円で
した.皆さんの予算は幾ら?
 異時点間の消費では利子率が重要
 物価も重要
 貯金はいつかお金を使うためにある
 同じ1万円でも値段が異なると消費も変化
 100円のかき氷は100杯
 200円のかき氷は50杯
 物価水準の違いで消費量は異なる

2011/7/14
経済学入門9
25
インフレーション
世の中の財・サービスの物価の動向
 複数の財の全般的な上昇をインフレーション
Inflation
 反対に諸価格の全般的な下落デフレーション
deflation
 略してインフレあるいはデフレと呼んでいる
 デフレ:○物価の下落

×物価の下落+不景気


経済学的には物価の下落だけを意味する
不景気の時にはデフレが良く観察される
2011/7/14
経済学入門9
26
インフレーションの測定

全ての財の価格が5%上昇すれば無問題

うまい棒価格が5%,カラムーチョが10%上昇
した場合にインフレ率はいくら?
複数の財の価格の平均を取る
財の重要度によってウエートを変える
重要な住宅価格は大きなウエート
重要ではない鉛筆価格の小さいウエート




2011/7/14
経済学入門9
27
消費者物価指数


日本では様々な財が取引されている
消費者は新幹線や下水道管は買わない
消費者物価指数~家計にとって重要な物価の
動向を見るための指数
 平均的な家計が購入する財の組合せ
5月の消費者物価指数、2か月連続上昇

(2011年7月1日11時58分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110701-OYT1T00486.htm
5月の全国消費者物価指数…総合で99・
9となり、前年同月比で0・6%上昇した
。
2011/7/14
経済学入門9
28
消費者物価指数変化率
%
2.0
日 本
1.4
1.5
1.0
0.5
0.3
0.0
0.0
-0.5
年
2006
2007
2008
2009
2010
-1.0
-1.4
-1.5
-0.7
-2.0
2011/7/14
経済学入門9
29
インフレ率
上がっているか下がっているか動きが大切
 今年の物価がP,来年の物価がP’とする
 インフレ率とは物価の上昇率を表す:
P’ -P
× 100
P
 変化率のパーセント表示
 マイナスだとデフレ
◆問い 去年の物価指数100で今年は98ではイ
ンフレ率はいくらか

2011/7/14
経済学入門9
30
デフレの利益
◆解答
98 - 100
× 100= -2 (%)
100
 今年100万円の所得を得るが来年は0.
貯蓄しても利子は付かない
 今年の価格は物価指数は100 →
100万/100 =10,000
 来年の物価指数は90 →
100万/90 =11,111
 物価が下がれば消費者は得をする
2011/7/14
経済学入門9
31
実質利子率

貯金は将来使うためにある
将来の消費を考えるには将来の物価と利子
率の両方を考えねばならない.
 利子率の上昇と物価の下落がお得
 両方を考慮に入れた概念が実質利子率

今まで学んできた利子率は正確に言うと名
目利子率と言う
 それは今年一万 円を貯蓄したら来年何円も
らえるかを意味

2011/7/14
経済学入門9
32
実質利子率/2

価格が変化する世界では修正が必要
実質利子率は今年の消費を控えて貯蓄した
ら来年どれだけ消費が増えるかを表す
 実質利子率 real interest rateの定義

実質利子率=名目利子率-インフレ率

例:名目利子率が 0.03 (%)であり,インフレ
率が -1.4(%)の時の実質利子率は
0.03-(-1.4)=1.43 (%)
2011/7/14
経済学入門9
33
実質利子率/3
例:名目利子率が 1 (%). インフレ率が 1(%)の
時の実質利子率:1-1=0 (%)
 今年の物価指数は 100 ,今一万円所有
 今年の消費量 10,000/100=100 (個)
 貯金すると来年の元利合計
10,000(1+0.01)=10,100
 インフレで来年の物価指数 100*1.01=101
 来年の消費量 10,100/101=100 (個)
 今年の消費量と変化無し=実質利子率 0%

2011/7/14
経済学入門9
34
実質利子率/4
日本は現在利子率が低いがデフレなので実
質利子率は他の先進国と比べ高い.
 国名
政策金利 - 物価上昇率 = 実質金利
日本
0.10 - (-1.30)
= + 1.40
アメリカ 0.12 2.60
= - 2.48
イギリス 0.50 3.50
= - 3.00
欧州
0.34 0.90
= - 0.56
 主要国の実質利子率はマイナス

白川日銀総裁の国会答弁より,衆議院財務金融委員会 議事録 ,開催日:
平成22年3月1日 http://www.yamamotokozo.com/report20100627.htm
2011/7/14
経済学入門9
35
資本市場の均衡
実質利子率 r
貯蓄曲線 S と投資曲線 I
I
の交点で実質利子率決定
S
貯蓄曲線 S
=供給
名目に比べて実質利子率は高い
r*
投資曲線 I
=需要
I*=S*
2011/6/23
経済学入門 7
資金量
36
復習1
 今得たお金を将来のために取っておく
行為を貯蓄という
 複利は前の期の元利合計に利子が付く
 利子率の上昇は来年の消費は今年の消
費に比べ有利になる
 利子率が上昇すると借り入れによる消
費は難しくなる.
2011/7/14
経済学入門9
37
復習2
インフレーションとは複数の財の全般的な上昇.
 インフレ率とは物価の上昇率を表す


将来の消費を考えるには将来の物価と利子率の
両方を考えねばならない

実質利子率は今年の消費を控えて貯蓄したら来
年どれだけ消費が増えるかを表す

日本は現在利子率が低いがデフレなので実質利
子率は他の先進国と比べ高い
2011/7/14
経済学入門9
38
宿題,予習,アンケート




テキストp.254~p.257を読む
テキストp.223~p.236を読む
ポータルのアンケートに答える
アンケート期間 7/14~7/19 14:00
 アンケートに答えた人は定期試験の点数を2点アップ
 前回のアンケート問題の答え有り
◆問い 名目利子率が2(%), インフレ率が-1(%)の時に実
質利子率はいくらになるか
2011/7/7
経済学入門 8
39