公共経済学 20. 租税と経済効率:労働供給 20. 1 (普通の)労働供給曲線 20. 2 比例労働所得税と超過負担 <個人所得課税の計算例> 個人所得税=所得税(国税)+個人住民税(地方税) 給与収入=500(万円)、社会保険料支払額=50(万円)で、夫婦のうち 1 人のみに収入があり、 2 人の子供(うち 1 人は特定扶養親族)がいるケースについて計算する。 所得税=所得税の課税所得より計算 個人住民税(地方税)=地方住民税の課税所得より計算 所得税(個人住民税)の課税所得 =給与収入-給与所得控除-社会保険料控除-所得税(個人住民税)の人的控除 (1)給与所得控除(≒給与所得者にとっての必要経費) Y=給与収入(万円)とすると、 ①360≦Y<660 のとき、 給与所得控除=0.4×180+0.3×(360-180)+0.2×(Y-360) ②660≦Y<1000 のとき、 給与所得控除=0.4×180+0.3×(360-180)+0.2×(660-360)+0.1×(Y-660) Y=500 のとき①より 給与所得控除=0.4×180+0.3×(360-180)+0.2×(500-360)=72+54+28=154 (2)社会保険料控除=社会保険料支払額 (3)人的控除 夫婦のうち 1 人のみに給与収入があり、2 人の子供うち 1 人は特定扶養親族なので、人的控 除は次のようになる。 所得税 個人住民税 人的控除額の差 基礎控除 38 33 5 配偶者控除 38 33 5 (一般)扶養控除 38 33 5 特定扶養控除(16 歳から 22 歳まで) 63 45 18 合計 177 144 33 (単位=万円) (4)課税所得 給与収入 Y=500 かつ社会保険料控除=50 なので、所得税と個人住民税の課税所得は次の ように定まる。 所得税の課税所得=給与所得控除-社会保険料控除-所得税の人的控除 =500-154-50-177=119 個人住民税の課税所得=給与所得控除-社会保険料控除-住民税の人的控除 =500-154-50-144=152 (5)個人所得税 ○所得税 所得税=0.05×119=5.95 (←課税所得が 195 万円までは(限界)税率が 5%) ○住民税 住民税の調整控除=国から地方への税源移譲にともなう調整措置 人的控除額の差の合計≦個人住民税の課税所得≦200 のケースでは 調整控除=0.05×人的控除額の差の合計=0.05×33=1.65 個人住民税=0.1×152-調整控除=15.2-1.65=13.55 となる。 ○個人所得課税 個人所得税=所得税+個人住民税=5.95+13.55=19.5 年収に対する個人所得税の割合 =19.5/500=3.9% 20. 1 (普通の)労働供給曲線 L =労働時間 w =賃金率 c =消費量; 消費財の価格は1に標準化 c w L :予算制約式 (20-1) c I ( L ; u ) :無差別曲線群 (20-2) L , c * * =最適な労働時間と消費量の組合せ =労働供給量と消費需要量の組合せ c I ( L ; u ) :予算制約線と接する無差別曲線 * L , c =「予算制約線と c I ( L ; u * * * ) との接点」 I ( L ; u ) w 傾きが等しい。 (21-3) c I (L ;u ) 無差別曲線上にある。 (21-4) c wL 予算制約線上にある。 (21-5) * * * * * * * (問題 20-1) ① 予算制約式を L c 平面に描きなさい。 ② L , c と I ( L ; u * * * * ) を図示しなさい。 c I ( L; u ) * c c wL I ( L ; u ) * c * * w L * L (21-6) (普通の)労働供給関数 L LS (w) : (問題 20-2) c w L 、 c aL u 2 ⇒ 労働供給関数は? L w w 2a I ( L ; u ) aL u 2 or w 2 aL I ( L ; u ) 2 aL 2 aL w L w 2a 2a L (問題 20-3) 労働供給曲線が右下がりになる可能性を示そう。 賃金率 w i の下での労働供給量を L i とおいて( i 1, 2 )、 w 1 w 2 かつ L 1 L 2 となるケースを描きなさい。 w w1 L c I ( L; u ) 1 c c w1 L c1 w1 L1 L w w2 w1 ・ L1 L c I ( L; u ) 2 c w2 L c I ( L; u ) 1 c c w1 L c2 c1 w 2 w1 L 2 L1 L w 労働者(=消費者)余剰の増分 w2 w1 ・ ・ L LS (w) L 2 L1 L 20. 2 比例労働所得税と超過負担 比例労働所得税が導入されたときの効果は? 労働需要曲線は水平 労働所得税の税率がゼロからtへ上昇させるプロジェクトを考える。 ただし、税収を支出したときの便益については考慮しない。 超過負担=-純便益=-(等価変分-純歳出) <無差別曲線と超過負担(Excess Burden)> 労働需要曲線が水平 ⇒ 『比例労働所得税 → 課税前賃金率に変化なし』 w 1 =労働所得税が課されていないときの賃金率 t =比例労働所得税率 w 2 =労働所得税が課された後の課税後賃金率 ⇒ 労働所得税が課されたときの課税前賃金率= w 1 w 2 (1 t ) w 1 w 2 (1 t ) w1 w 1 であることに注意!! ⇒ c w 1 L :労働所得税が課されていないときの予算制約式 c w 2 L :労働所得税が課されたときの予算制約式 c wi L & c I ( L; u ) ⇒ (労働供給量, 消費需要量)= ( L i , c i ) i I =「 ( L i , c i ) を通る無差別曲線」 i i u = I に対応する効用水準 比例労働所得税がもたらす超過負担? 一括固定税(Lump-sum Tax)の場合と比較 T L =一括固定税の課される税額 c w 1 L T L :一括固定税が課されたときの予算制約式 (問題 20-4) ① 労働所得税率 t の下での L 2 、c 2 、T P を L c 平面に図示しなさい。 2 ② 労働所得税率 t の下で実現される u 、T L 、 EB を図示しなさい。 c w1 L c I ( L; u ) 2 c c w1 L T L TL c w2 L TP c2 EB w2 L2 L <補償労働供給曲線と労働所得控除後補償所得> E c wL : (課税後)労働所得控除後支出額 補償労働供給量= I と w が与えられたもとで E を最小にする労働時間 L L S ( w ; I ) :補償労働供給関数 C (20-7) Li L S ( w i ; I ) j C j 補償消費需要量= I と w が与えられた下で E を最小にする消費量 c c D ( w ; I ) :補償消費需要関数 C (20-8) C C E ( w ; I ) = c D ( w; I ) - w L S ( w ; I ) :労働所得控除後補償所得 E ( w; I ) =(課税後)賃金率が w のときに 無差別曲線 I に対応する効用水準を達成するため 補償されなければならない労働所得以外の所得 w 1 から w 2 に変化したときの等価変分 EV ? EV E ( w1 , I 1 E ( w1 , I ) =0 2 ) E ( w1 , I ) 1 EV E ( w1 , I ) 2 (問題 20-5) 課税後賃金率が w 1 から w 2 に低下したとする。 ① w 2 のもとでの予算制約式に接する無差別 曲線 I 2 、 L12 、 L 22 を図示しなさい。 ② EV を下図のなかに図示しなさい。 (問題 20-5)課税後の賃金率が w 1 から w 2 に低下したとする。予算制約式 c w 2 L に接する 2 無差別曲線 I 、補償労働供給量 L12 、 L 22 を図示しなさい。また、等価変分 EV を 下図のなかに図示しなさい。 c w1 L c c I ( L; u ) 2 c1 c D ( w1 ; I ) C 2 c w2 L 2 c1 w2 2 w 1 L1 w1 L2 = 2 2 L1 L 2 L2 EV EVはマイナスである。 Li L S ( w i ; I ) 2 C 2 あるいは I 2 <補償労働供給曲線と超過負担> (問題 20-6) ① 問題 20-4 で求められた無差別曲線 I 2 が与えられたもとでの補償 労働供給曲線 L L S ( w ; I ) を L w 平面に図示しなさい。 C 2 ② 19 章の議論を参考にして、課税後賃金率が w 1 から w 2 に低下した ときの等価変分 EV を Lw 平面にのなかに図示しなさい。 c w1 L c c I ( L; u ) 2 c w2 L 2 c1 w2 2 w 1 L1 w1 = L2 2 L2 EV 2 L1 L あるいは I 2 w 8章の議論より L L S ( w; I ) C EV ・ w1 ・ L2 = w2 2 2 L2 2 L1 L (問題 20-7) ① 税率 t の比例労働所得税を導入したときの EV 、 T p 、EB (=- EV - T p )の大きさを、問題 21-6 の L c 平面と Lw 平面に図示しなさい。 EB=-(便益-費用) =-(EV-純歳出) =-(EV+Tp) =-EV-Tp ② 問題 20-3 のケースのように(普通の)労働供給 曲線が右下がりの部分を持つときは、労働者余 剰を用いて求めた超過負担 EB はマイナスにな ることを確認しなさい。 EB EV T p w L L S ( w; I ) C EV 2 補償労働供給曲線 ・ w1 EB w2 EBはプラスである。 ・ L2 = Tp 2 L2 2 L1 L (問題 20-7) ① 税率 t の比例労働所得税を導入したときの EV 、 T p 、EB (=- EV - T p )の大きさを、問題 21-6 の L c 平面と Lw 平面に図示しなさい。 EB=-(便益-費用) =-(EV-純歳出) =-(EV+Tp) =-EV-Tp ② 問題 20-3 のケースのように(普通の)労働供給 曲線が右下がりの部分を持つときは、労働者余 剰を用いて求めた超過負担 EB はマイナスにな ることを確認しなさい。 EB 労働者余剰の減少分 w EB Tp 労働所得税の超過負担が マイナスになっている。 労働者余剰の減少分 Tp w1 w2 ・ ・ 労働市場における効率性の分析を する際には(普通の)労働供給関数 から導かれる労働者余剰の概念を 用いることには注意が必要である。 L LS (w) (普通の)労働供給曲線 L1 L 2 L <補償労働供給の弾力性と超過負担> (問題 20-8) 税率 t の比例労働所得税を課すことで(課税後)賃金率が w 1 から w 2 ( (1 t ) w 1 )に下落したときの補償労働供給量の増分を L とする( L = L 2 L1 ) 。 2 2 ① このとき、賃金率が w 1 から w 2 に変化したときの労働供給 の賃金率弾力性ηを t 、w1 、L 1 、 L を用いて表しなさい。 ② 補償労働供給曲線が直線で近似できるとして、超過負担 EB をη、 t 、 w1 、 L 1 を用いて近似的に表しなさい。 (問題 20-8) 税率 t の比例労働所得税を課すことで(課税後)賃金率が w 1 から w 2 ( (1 t ) w 1 )に下落したときの補償労働供給量の増分を L とする( L = L 2 L1 ) 。 2 2 ① このとき、賃金率が w 1 から w 2 に変化したときの労働供給 の賃金率弾力性ηを t 、w1 、L 1 、 L を用いて表しなさい。 L L1 w 2 w1 w1 L L1 (1 t ) w1 w1 w1 L L1 tw 1 w1 L L1 t L tL1 ② 補償労働供給曲線が直線で近似できるとして、超過負担 EB をη、 t 、 w1 、 L 1 を用いて近似的に表しなさい。 ① ⇒ L tL1 EB 1 2 ( w1 w 2 )( L ) EB 1 2 tw1 ( tL1 ) 1 2 1 2 tw 1 ( L ) t w1 L1 超過負担EBは税率tの2乗に比例する。 2 20. 1 (普通の)労働供給曲線 20. 2 比例労働所得税と超過負担
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