税制改正大綱と市民公益税制 NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク 税理士 脇坂誠也 理事長代理 1.市民公益税制の概要 今までの流れ • 2009年10月 鳩山前首相 施政方針演説で「新しい公 共」を最重要政策課題として打ち出す • 2009年12月 税制改正大綱で「市民公益税制PT」の 設置が決定 • 2010年4月 市民公益税制PTの中間報告 • 2010年12月1日 市民公益税制PT最終報告 • 2010年12月16日 税制改正大綱(来年4月以降の税制の 大枠が決まる) • 2011年1月から 具体的な法案作り 「新しい公共」とは • 人を支えるという役割を『官』と言われる人た ちだけが担うのではなく、地域で関わっておら れる方々一人ひとりにも参加していただき、そ れを社会全体として応援しようという新しい価 値観 (2009年10月 鳩山前首相施政方針演説より) 「市民公益税制」とは • 「新しい公共」によって支え合う社会の 実現に向けて、NPO法人をはじめとす る、市民が参画する様々な「新しい公 共」の担い手を支える環境を税制面から 支援する 具体的な内容 • 所得税の税額控除制度の導入 ⇒2011年1月以降の寄付から • 認定NPO法人制度の見直し ⇒2011年4月以降 • 新認定法に基づく新たな認定制度 ⇒2012年4月開始を目指す 2.所得税の税額控除制度の導入 所得税の計算方法 収 入 △ 必要経費 =所得金額 (給与所得控除額) △ 所得控除 (配偶者控除等) 従来の 寄付金控除 =課税所得金額 × 税率 寄付金の 税額控除 =算出税額 △ 税額控除 (住宅借入金等 控除) =所得税額 税額控除の計算方法 寄付金の額は、総所得金額の40%が限度 =所得金額 収 入 △ 必要経費 (給与所得控除額) △ 所得控除 (配偶者控除等) =課税所得金額 × 税率 (寄付金の額-2,000円)×40%* *住民税と合わせて最大50% 引けるのは、所得税額の25%が限度 =算出税額 △ 税額控除 (住宅借入金等 控除) =所得税額 税額控除の意味 • 税額控除割合100% ⇒実質的に国に税金を支払う代わりにNPOに寄付 をすることになる • 税額控除割合 50% ⇒寄付がチャリティの精神に基づくものであること に留意する 「新しい公共」の財源を、民間と行政が折半 する 3.認定NPO法人制度の見直し 認定NPO法人制度とは • NPO法人のうち一定の要件を満たしている法 人に税制上の優遇措置を与える制度 <一定の要件> ・幅広く市民の支持を受けているか ・活動や組織運営が適正に行われているか ・より多くの情報を公開しているか といった観点から判断し、行政の価値観が入 り込まないようにしている パブリックサポートテスト • 幅広く市民の支持を得ているかどうかのテスト ⇒認定NPO法人になるための最大の関門 <従来のパブリックサポートテスト> 寄付金等収入金額 ≧20% 経常収入金額 ・計算が難しい ・目標にならない ・事業型のNPO法人がクリアできない 認定要件の見直し(その1) パブリックサポートテストに、一定金額以上の寄付者の 絶対数で判定する新しい方式を導入し、現行制 度との選択制とする 「各事業年度中の寄付金の額が3,000円以 上である寄付者の数が年平均100人以上で あること」 <注> ・寄付者の数は、寄付者本人と生計を一にする者を含めて一人として判定 ・その法人の役員である寄付者を除く 認定要件の見直し(その2) • 都道府県、市区町村が、その域内に事務所を有 するNPO法人のうち条例において個人住民税 の寄付金税額控除の対象として個別に指定した ものは、パブリックサポートテストの要件を満たすものと する 例えば、絶対値基準の年平均100人以上の寄付者を、 地域の実情に合わせて50人以上にするなどが可能 新しいパブリックサポートテストの意味 パブリックサポートテストを分かりやすくすることで、 認定NPO法人制度を、NPO法人の人の身 近なものにする 幅広い市民からの支持こそNPO法人の 正当性を示すもの ⇒100人以上の人から支持を得る組織を目指そう! 4.新認定法に基づく新たな 認定制度 新たな認定制度(2012年4月以降) 認定事務を国税庁からNPO法人を認証した地方団体 へ移管 設立後5年以内のNPO法人がPST要件以外の認定要 件を満たす場合に「仮認定」を受けることができる制度 を導入 本認定を受けた法人について、名称の独占その他必 要な支援措置を整備 適正を欠く運営が認めらた場合に、事案に応じた段階 的な監督の枠組みを設ける 5.その他 (市民公益税制以外のもの) 寄付金の損金算入限度額 • 法人(株式会社等)が、NPO法人等他の法人 や団体に寄付をした場合の損金算入限度額(経 費にできる枠)が改正に 一般の寄付金の損金算入限度額が半減 特定公益増進法人等(認定NPO法人を含む)は、一 般の寄付金の損金算入限度額の縮減と同額を拡充 企業にとっても、認定をとっていないNPO法人と認 定NPO法人に寄付する場合の税務上のメリットがま すます拡大する 日本版プランドギビング <日本版プランドギビング=特定寄附信託> ①公益社団、財団法人、認定NPO法人への寄付を目的と した信託(特定寄付信託)である ②信託財産を、信託契約期間の間、均等に認定NPO法人 等に寄付する ③信託財産の運用益も認定NPO法人等に寄付する ④ただし、元本の30%を限度に本人に還元できる(こ れも契約期間で均等に還元) ⑤契約期間の途中で死亡した場合には、残りはすべて認 定NPO法人等に寄付する プランドギビングの意義 • 大口寄付により多大な社会貢献をしている満足 感と喜びが生前に得られ、老後が充実する(公 益信託にすると寄付先の意思決定に関与できな い) • 信託後も将来の定期的な収入が得られる • 信託財産から得られる利子所得が非課税になる 株式や不動産を信託した場合にキャピタルゲインが 非課税にならないなど、まだ改善の余地がある
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