PowerPoint プレゼンテーション

鹿児島県獣医師会 第46回定期総会特別講演
狂犬病流行の現状と国内侵入のリスク
鹿児島大学農学部越境性動物疾病(TAD)制御研究センター教授
獣医学科病態予防獣医学講座獣医公衆衛生学分野 岡本嘉六
狂犬病は一旦発症すると治療方法がなく、死を待つのみと
なる恐ろしい病気である。
ウィキペディア「狂犬病」からの引用
数週間から1年余を経て
発症するが、筋肉は衰えて
おらず思考は明瞭だが、
嚥下障害のために水が飲
み込めなくなり(恐水発作)、
脱水により興奮、不安狂躁、
錯乱、幻覚、攻撃性を示す
ことから、患者の管理が大
変である。
厚生労働省健康局結核感染症課(2011年4月更新)
2008年におけるOIEへの狂犬病発生報告
国名
動物種
頭数
症例数
死亡数
殺処分数
アルゼンチン
イヌ
1
1
1
0
ベルギー
イヌ
2
1
0
2
フランス
ネコ
イヌ
2
7
0
3
0
2
0
1
インドネシア
イヌ
3,801
19
19
281
イタリア
野生動物
10
5
5
ナイジェリア
ウシ
4
2
2
0
ウルグアイ
風土病化
鳥
ネコ
ウシ
イヌ
ウマ
羊
豚
14
5
10,064
6
640
3,607
1
0
0
204
0
5
0
1
0
0
198
0
5
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2009年におけるOIEへの狂犬病発生報告
国名
動物種
頭数
症例数
死亡数
殺処分数
アルゼンチン
イヌ
1
1
1
0
中国
イヌ
407,000
140
0
140
フィンランド
野生動物
1
0
1
フランス
ネコ
イヌ
2
4
0
1
0
1
0
0
インドネシア
風土病化
イヌ
5,031
74
21
281
イタリア
イヌ
ウマ
野生動物
1
1
3
1
75
3
0
52
0
1
23
ウルグアイ
風土病化
ウシ
ウマ
2,287
182
37
5
34
5
0
0
2010年におけるOIEへの狂犬病発生報告
国名
動物種
頭数
インドネシア
風土病化
イヌ
イヌ
6889
イタリア
風土病化
ネコ
イヌ
ウマ
野生動物
パレスチナ
イヌ
羊/山羊
野生動物
スウェーデン
風土病化
野生動物
ウルグアイ
風土病化
ウシ
ウマ
1
3
27
300
2287
182
症例数
死亡数
殺処分数
109
5
21
281
8
3
2
203
8
3
1
146
0
0
1
57
15
3
1
10
2
0
5
1
1
8
0
0
37
5
34
5
0
0
2008年フランスで発生した事例は違法な輸送による
1件目: 狂犬病の症状と一致する雌犬を2月19日に安楽死させた。
この犬はフランス生まれであるが、モロッコから不法に持ち込まれた
犬(2007年11月に安楽死)と接触したことのある別のフランス生まれ
の犬(2008年1月5日に安楽死)と接触があった。
2件目:ガンビアで2007年12月に生まれた雌犬が2008年3月15日
に初回のワクチン接種を受け4月5日の健康診断で良好と認定された
が、抗体価は測定されずにベルギーへ輸送された。4月13日にフラン
スへと輸送され空港で健康状態が悪化していたので開業医で診ても
らった。 3件目の開業医で神経症状から狂犬病が疑われた。この犬
は4月21日に死亡し、翌日、頭部が研究機関に送付されて判明した。
3件目:スペインで見つけた10月に違法にフランスへ持ち込んだ犬
が10月31日に発病し、11月10日に死亡し、14日に狂犬病と診断され
た。唾液中にウイルスを排出する期間、10月16日から11月10日まで
拘留されていた。分離株は遺伝型1 Africa 1 のLyssavirusであった。
これはモロッコの北部地域を循環している株と近縁である。
北欧諸国の事例
フィンランド(2009年): 研究員と助手に数回咬みついた一匹の攻撃的なコウ
モリが鑑別診断のため8月14日当局に持ち込まれた。17日までにそのコウモリは
狂犬病に罹っていることが確認され、ヨーロッパ・コウモリLyssavirus 2 (EBLV-2)
を標的とするRT-PCR法で陽性だった。そのコウモリはフィンランド南西部に由来す
るが、コウモリ狂犬病はフィンランドで初めての事例である。咬まれた両名はワクチ
ン接種と予防処置を受けた。
スウェーデン(2010年): ヨーロッパ・コウ
モリLyssavirus抗体陽性の8匹のコウモリは、
PCR検査で全て陰性であった。スウェーデン
の別の地域において、死亡コウモリの調査と
ともに、健康な生きているコウモリについての
発生動向調査計画が継続されるだろう。
OIEによる注記: 陸生動物衛生規約に
おいて、コウモリLyssavirusの分離によっ
て国の清浄資格が影響されることはない。
ノルウェー(2011年): Hopen測候所で2頭
の犬が感染したキツネに襲われた。感染したキ
ツネは別の2頭の犬によって殺された。
OIEによる注記: ノルウェー本土において狂犬病はこれまでに報告されていない。
この疾病は、スヴァールバル諸島の動物群において散発的に診断されてきた。
2008年イタリアで1発生
2008年10月21日 緊急通知
発生開始日: 10月10日
前回の発生: 1995年
出来事の適用範囲: 国内の
限定地域
罹患集団: キツネが森を散
歩中の人を襲って咬んだ。そ
のキツネはその場で殺され、
その人は必要な治療を受け
ている。
疫学的注釈: イタリアにおけ
る森林型狂犬病として過去
13年間で最初の事例であり、 東方の国からの侵入と考えられる。
適用した措置: 野生保有動物の制御、ワクチン接種をしない、罹患動
物を治療しない。
Rabies in Slovenia
症例数
スロベニアの都市型狂犬病(犬媒介)発生の推移
犬のワクチン接種義務化
最後の人感染
犬媒介狂犬
病の最後
1921
1946
第二次世界大戦の
ためデータが不完全
1950
1954
1956
1945年から1956年の犬媒介狂犬病の内訳は、犬が80.07%、
牛が5.99%、猫が2.52%、豚が2.21%、小反芻獣が0.95%、キツネ
が0.95%、馬が0.32%とされている。ワクチン接種の義務化ととも
に、放浪犬の捕獲が行われ、犬が原因となる狂犬病はなくった。
症例数
スロベニアの野生動物における狂犬病発生の推移
経口ワクチンの
使用開始
1980
1988
ワクチン入り餌
のヘリコプター
による散布開始
1995
2008年に南方のクロアチ
アの流行が波及し、ワク
チン投下地帯で48例が
発生した。11月5日には
ワクチン投下対象外のイ
タリア国境で抗体陽性
(キツネ 45/2004)が確
認され、野外ウイルス株
が分離された。
2008
森林型狂犬病は東北部で発生していたが、川を越えて広がることは
なかった。1979年に北方のオーストリアの流行がスロベニアに波及し、
全土に広がった。1988年から始まったキツネに対する経口ワクチン
投与計画は、ヘリコプターによる散布(投下した餌は20~24/km2で60
~70万個)によって効果を挙げた。1980~2008年の野生動物の罹
患割合:キツネ 94.94%、ノロジカ 2.82%、アナグマ 1.41%、その他。
陽性例から半径40kmの地域(合計3500km2)
にワクチン餌11万個(20個/km2以上)を投下す
る必要がある。これに要する資金は十分でなく、 オーストリア
キツネの予防接種には国際協力が必須である。
ハンガリー
イタリア
クロアチア
ワクチン餌投下だけで
はクロアチアからの侵
入を防げなかった。
60
2008年10月10日 初発例
2009年1月24日~ ワクチン餌35,000個
2009年5月23日~ ワクチン餌35,000個
50
2009年6月24日 イヌの初感染
「そのイヌは、町内の予防接種義務キャンペーン
を受けて、5月29日に予防注射していた。」
感染防御抗体価を持続させるためには、初回接
種時は30日以上あけ、2回接種する。輸入検疫で
は接種後180日(潜伏期)の待機期間を要する。
2009年9月6日~ ワクチン餌52,000個
これ以降、餌の散布地域を拡大するが・・・
野生動物
40
ロバ
ウマ
30
ネコ
イヌ
ノロジカ
20
2010年4月9日 経過報告43:
「風土病化宣言」
アナグマ
キツネ
10
0
10
11
2008
12
1
2
2009
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2010
イタリアにおける狂犬病発生の推移
2
3
4
発生の舞台となったFriuli-Venezia Giulia 地方は、アルプス地方
の森林帯で旅行者らに人気の観光地だそうだが・・・
弱毒生ワクチン(Sinrab)は経口投与が可能であり、餌に混ぜて森
に置くことで野生食肉目(ネコ亜目とイヌ亜目)の狂犬病を制御できる
とされてきた。イタリアにおいて狂犬病の蔓延を阻止できなかったの
は、ワクチン餌をヘリコプターで散布および人手で要所に置くことが、
キツネの採餌行動とマッチしなかった地理的要因やキツネの生息密
度が左右しているのかも知れない。
ドイツやフランスでワクチン餌が奏功したが
平坦な地形が有利に働いたとも考えられる
が・・・
同じく平坦な地形であっても制御できてい
ない国も多い。大量のワクチン餌を散布でき
る資金力がより大きな要素か?
Key
facts
主要な事実
WHO: Updated September 2010
●
●
Rabies occurs in more than 150 countries and territories.
狂犬病は150以上の国と地域で発生している。
●
Worldwide, more than 55 000 people die of rabies every
全世界で、毎年55,000人以上が狂犬病で死亡している。
●
year.
●
●
●
●
●
●
●
●
狂犬病が疑われる動物に咬まれる人々の40%は、15歳
40% of people who are bitten by suspect rabid animals
以下の子供達である。
are
children under 15 years of age.
狂犬病による人間の死亡原因の99%はイヌによる。
Dogs are the source of 99% of human rabies deaths.
狂犬病が疑われる動物と接触してから数時間以内に傷
Wound cleansing and immunization within a few hours
after
contact with a suspect rabid animal can prevent the
口の洗浄と免疫を行えば、狂犬病の発病と死亡を防ぐこ
onset
of rabies and death.
とができる。
Every year, more than 15 million people worldwide
毎年、世界で1500万人以上が病気を防ぐために暴露後
receive a post-exposure preventive regimen to avert the
の予防処置を受けており、これによって、年間327,000人
disease
– this is estimated to prevent 327 000 rabies
の狂犬病による死亡を防いでいると推定される。
deaths
annually.
2004年の世界における狂犬病による死亡報告数
国の数
報告した国の数
(%)
死者数
アジア
アフリカ
南米
欧州
北中米
38
13
34%
24,329
43
4
9%
213
13
10
77%
55
40
37
93%
25
17
11
65%
19
アジアの主要国における狂犬病による死亡報告数
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
インド
30000
30000
30000
30000
30000
n/a
17000
17000
中国
230
234
373
505
899
1532
2009
5302
バングラデシュ
2000
2000
2000
1400
1400
n/a
1550
1550
パキスタン
57
n/a
188
2490
n/a
n/a
n/a
n/a
ベトナム
181
130
94
65
1550
60
30
n/a
ミャンマー
56
55
3
114
156
153
1100
n/a
フィリピン
323
362
398
359
293
269
258
248
n/a: 報告なし
Recommended
post-exposure prophylaxis for rabies infection
狂犬病感染のために推奨される暴露後予防処置
Category
of exposure to suspect
狂犬病が疑われる動物への
rabid animal暴露の種別
Post-exposure
measures
暴露後の処置
Category I – touching or feeding
I:
触ったり餌を与えた。傷のな
animals, licks on intact skin (i.e. no
None
必要なし
い皮膚をなめられた(暴露なし)
exposure)
II:
剥き出しの皮膚、小さな傷、
Category
II – nibbling of uncovered
skin,
minor scratches or abrasions
擦り傷をかじられたが出血はな
without
い bleeding
Immediate vaccination
直ちにワクチンを接種
and local treatment of the
し、傷の手当てをする
wound
Category III – single or multiple
III:
深く咬まれたりかじられた。
transdermal
bites or scratches, licks
on傷口をなめられた。粘膜に唾液
broken skin; contamination of
mucous
membrane with saliva from
が付いた。コウモリと接触した。
licks, exposures to bats.
Immediate vaccination
直ちにワクチンおよび
and
administration of
rabies
immunoglobulin;
免疫グロブリンを接種
local
treatment of the
し、傷の手当てをする
wound
2002年にイギリスでコウモリからEuropean bat lyssavirus 2 によ
る死亡者が発生した。このコウモリは、ヨーロッパからネパール、中
国、日本と広く分布していることが知られている。
日本は?
リスク
:なし
:低度
:中等度
:高度
WHO:狂犬病のリスク・マップ
低リスク国は、コウモリを含めて狂犬病が疑われる動物が生息して
おり、コウモリと接触する可能性がある人は予防接種が望ましい。
中リスク国は、野生動物と接触する旅行者・住民には予防接種する
ことを推奨する。
高リスク国は、犬やその他の家畜と接触する旅行者・住民には予防
接種することを勧告する。
日本における狂犬病発生状況
年
1953
1954
1955
1956
1970
2006
死亡者数
3
1
0
1
1*
2#
犬の発生数
176
98
23
6
ー
ー
*:ネパールを旅行中、犬に咬まれ帰国後発病、死亡した輸入症例。
#:フィリピンを旅行中、犬に咬まれ帰国後発病、死亡した輸入症例。
日本に狂犬病が侵入するリスクは?
飼い犬の
ワクチン
接種率は?
日本に狂犬病を保有し得る
野生動物はいないのか?
輸出国の狂犬病の発生状況別犬猫の年別輸入頭数
動物種
地域
平成18年
平成19年
平成20年
犬
清浄地域
汚染地域
計
1,411
3,032
4,443
1,180
3,062
4,242
929
3,168
4,097
猫
清浄地域
汚染地域
計
284
1,146
1,430
247
1,198
1,445
293
1,197
1,490
狂犬病の清浄地域(農林水産大臣指定地域)
アイスランド、アイルランド、スウェーデン、ノルウェー、英国(グレート
ブリテンおよび北アイルランドに限る)、オーストラリア、ニュージーラ
ンド、ハワイ、グアム、台湾、フィジー諸島
狂犬病予防法に基づく犬等の輸出入検疫規則により、動物
検疫所が輸入検疫を実施している。ただし、狂犬病汚染地
域からの輸入頭数が多いことに注意。 水際における狂犬病対策
農林水産省動物検疫所: 狂犬病の現状及び水際における侵入防止対策
航空機による・・・・
法務省 外国人の退去強制手続業務の状況
表18 退去強制事由別の入管法違反事件の推移
平成16 平成17 平成18 平成19 平成20
6,136
不法入国 11,217 11,586 10,441 7,454
992
690
506
342
253
不法上陸
法務省 出入国管理をめぐる近年の状況
た収 す
数益 る 不
でを 国 法
あ得 内 入
りて 外 国
、い の の
認る 密
知実 航 背
さ態 ブ 景
れが ロ に
は
てあ ー ,
いる カ 密
なと ー 航
い考 が 者
密 ,を
航え
らこ我
者れ の が
はる 種 国
皆 のに
無。
こ事送
との 案 り
は数 に 込
言値 関 む
えは 与 こ
な摘 し と
い発 て を
だ・ 巨 ビ
ろ検 額 ジ
う挙 の ネ
。さ 不 ス
れ法と
犬の登録頭数と予防注射頭数
登録頭数
予防注射頭数
注射率
徘徊犬の
抑留頭数
返還頭数
17年度
18年度
19年度
20年度
21年度
6,479,977
4,796,585
74.0
6,635,807
4,910,047
74.0
6,739,716
5,097,615
75.6
6,804,649
5,091,515
74.8
6,880,844
5,112,401
74.3
88,846
14,542
86,621
14,948
73,303
14,621
64,575
15,266
57,276
14,627
ペットフード工業会推定飼育頭数
推定ワクチン接種率
世帯数
厚生労働省
12,522,000 13,101,000 12,322,000
40.7
38.9
41.5
飼い犬のワクチン接種率は40%程度
飼育世帯数
飼育世帯率
推定飼育頭数
一世帯当り
平均飼育頭数
ペットフード工業会: 犬猫飼育率全国調査
WHO勧告接種率
70%を大きく下回る
日本に狂犬病を保有し得る
野生動物はいないのか?
イタリアの事例のように、野生動物に狂犬病が
入ると制御が難しい場合も生じる。
日本には野生動物の種類も数も少ないので、
野生動物に狂犬病が入り込んでも継続的な流行
を引き起こすことはない?
北海道
春に4~6頭の子供
を生み、1年で親とな
るためネズミ算式に
増えていく。
350
300
関東、近畿でも北海道と同時期からアライグマが
増えている。九州ではやや遅れて長崎県で発見さ
れた。そして、佐賀県には5年後に侵入し、生息域
を広げている。
250
200
150
100
:長崎県
:佐賀県
50
0
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
2006年度に初めて発見
2007年度:別の場所でも
2008年度:また2ヵ所
2009年度:さらに・・・
2010年度:かなり広がった
最初の例は長崎から広がったものではなく、
福岡の金持ちが捨てたのだろう。
福岡県
大分県でも農作物被
害が出ているが、熊本県
と宮崎県にはまだ侵入し
ていないようだ。
鹿児島市喜入地域で
マングースの生息が確
認されたが、アライグマ
はまだ到着していない。
1977年にWest Virginiaでアライグマに狂犬病が侵入し
て以降、中部大西洋沿岸地域に次々と拡大した。
Virginia:1978
Maryland:1981
Columbia:1982
Pennsylvania:1982
Delaware:1987
New Jersey:1989
New York:1990
Connecticut:1991
North Carolina:1991
Massachusetts:1992
New Hampshire:1992
アライグマから種々
の狂犬病ウイルスが分
離されるが、それらは
人の症例からは分離さ
れていない。
NY: ニューヨーク
Vt:ベルモント
NH:ニューハンプシャー
Me:メイン
Mass:マサチューセッツ
Conn:コネティカット
Ri: ロードアイランド
Pa: ペンシルベニア
1977
W Va: ウエストバージニア
Va: バージニア
NC: ノースカロライナ
Nj: ニュージャージー
Del:デラウェア
Md:マリーランド
NC: ノースカロライナ
CDC MNWR: April 22, 1994 / Vol. 43 / No. 15
症
例
数
(
千
頭
)
1990年に、米国で最も頻繁に狂犬病が発見されて
いたスカンクをアライグマが追い抜き、その症例数は
増え続けている。1991年から92年にかけて、中部大
西洋沿岸地域と北東部地域のアライグマの狂犬病の
報告数は3079から4311へと40%増加した。
アライグマを標的とした経口ワクチン投与が行われ
ているが、餌の撒き方と散布密度、時期と頻度など、
改善の余地が残されている。
*Connecticut, Delaware, District of Columbia, Maryland, Massachusetts, New
Hampshire, New Jersey, New York, northern North Carolina, Pennsylvania, Virginia,
and West Virginia.
†Alabama, Florida, Georgia, southern North Carolina, and South Carolina.
ニューヨーク市で確認された狂犬病感染動物数
ブロンクス
ブルックリン
マンハッタン
クイーンズ
スタッテン島
2003
2004
2005
2006
6
0
0
0
0
13
0
0
0
1
26
1
0
1
0
6
0
0
0
0
2007 2008
6
0
1
2
35
14
0
0
1
29
2009
14
0
12
1
1
0
1
39
0
0
検査数
陽性数
207
イヌ
261
ネコ
17
ウシ
21
その他の家畜
24
スカンク
22
キツネ
269
コウモリ
247
アライグマ
19
ネズミ
43
その他の野生動物
1130
計
0
5
4
0
12
6
2
50
0
2
81
2011年のニューヨーク州の発生動向調査(1/1~4/30)
ニューヨーク州において確認された
狂犬病罹患動物数
2009
検査室で確認された狂犬病(2011 年1月1日~4月30日)
アライグマの狂犬病はニューヨーク州に
1990年に侵入し、全域に広がった。ニュー
ヨーク州の狂犬病症例の大半はアライグ
マであるが、感染症例が様々な野生動物
およびワクチンを接種していない家畜を感
染させている。
New York Gov.
Dep. Health
Rabies
コウモリ:2
ネコ:5
ウシ:4
シカ1
灰色キツネ:3
赤キツネ:3
その他:1
スカンク:12
アライグマ:50
アライグマは、人懐こい
都市部でも生息できる
アライグマの繁殖力は、旺盛
駆除しても、それ以上殖える
アライグマは、狂犬病の保有宿主
米国: アライグマ、スカンク、コウモリ
欧州: キツネ
狂犬病発生がなくなってから半世紀
犬や野生動物の狂犬病を診断できるか?
発見された時には、既に相当広がっている!
CDC: Clinical Signs of Rabies in Animals
Rabies virus causes an acute encephalitis in all warm-blooded hosts
狂犬病の最初の兆候は非特異的であり、無気力、発熱、
and the outcome is almost always fatal. The first symptoms of rabies
嘔吐および食欲不振を示す。数日以内に症状が進行し、脳
may be nonspecific and include lethargy, fever, vomiting, and anorexia.
Signs progress within days to cerebral dysfunction, cranial nerve
機能障害、中枢神経機能障害、運動失調、衰弱、痺、発作、
dysfunction, ataxia, weakness, paralysis, seizures, difficulty breathing,
呼吸困難、嚥下困難、唾液分泌過剰、異常行動、攻撃性、
difficulty swallowing, excessive salivation, abnormal behavior,
および/または自傷がみられる。
aggression, and/or self-mutilation.
The Prodromal Phase
食欲不振、無気力、間
欠熱、刺激過敏、孤独
を好む
The "Mad Dog" Phase
攻撃性、情緒不安定、徘徊、
失見当(家族を見分けられな
い)、捕食者への恐怖喪失
The Paralytic Phase
よだれ(嚥下障害)、開口
(局部麻痺)、全身麻痺
陸生動物衛生規約
Terrestrial
Animal Health Code
第8.10章
Chapter
8.10.狂犬病
rabies
Article 8.10.1. General provisions
第8.10.1条 一般規定
For the purposes of the Terrestrial Code, the incubation period for rabies
陸生動物規約上、狂犬病の潜伏期間は6ヶ月とし、飼育肉食動物における伝播
shall
be 6 months, and the infective period in domestic carnivores starts 15
期間は最初の臨床兆候の15日前から始まり当該動物の死亡時に終わる。
days before the onset of the first clinical signs and ends when the animal dies.
Standards for diagnostic tests and vaccines are described in theManual)に
Terrestrial
診断検査およびワクチンの基準は、陸生動物用手引き(Terrestrial
Manual.
記載してある。
Article 8.10.2. Rabies free country
第8.10.2条 狂犬病清浄国
For the purposes of international trade, a country may be considered free
国際取引上、以下の要件を満たす国は、狂犬病清浄国とみなす。
from
rabies when:
1.the
disease is notifiable;
1. この疾病は通知対象疾病である。
2.an
system of disease surveillance is in operation;
2. effective
有効な疾病広域調査システムが機能している。
3.all regulatory measures for the prevention and control of rabies have been
3. 狂犬病の予防と制御のための全ての法的措置が、有効な輸入手順を含めて
implemented including effective importation procedures;
実施されている。
4.no case of indigenously acquired rabies infection has been confirmed in
4. or
領土内での狂犬病感染症例が、ヒトおよびあらゆる動物種において過去2年
man
any animal species during the past 2 years; however, this status
間に確認されていない。ただし、この資格は、コウモリからのLyssavirus分離に
would not be affected by the isolation of Bat Lyssavirus;
よって影響を受けない。
5.no imported case in carnivores has been confirmed outside a quarantine
station
for the past 6 months.
5. 肉食動物の輸入症例が、検疫所以外の場所で過去6ヶ月間に確認されてい
ない。
Article
8.10.3. Recommendations
for importation from rabies free
第8.10.3条
狂犬病清浄国からの輸入に関する勧告
countries
家畜、および閉鎖状態で飼育されている野生動物
for domestic mammals, and wild mammals reared under confined
獣医当局は、当該動物が以下の要件を満たすことを証明する国際獣医療証明
conditions
書の提出を要求しなければならない。
Veterinary Authorities should require the presentation of an international
veterinary
certificate attesting that the animals:
1. 狂犬病の臨床徴候を出荷日に全く示さなかった。
1.showed no clinical sign of rabies on the day of shipment;
2. 出生以降または出荷前6ヶ月間に亘って狂犬病清浄国で飼育されていたか、
2.were kept since birth or for the 6 months prior to shipment in a rabies free
または、第8.10.5、8.10.6、または8.10.7条に定められている規則に準拠して輸入
country or were imported in conformity with the regulations stipulated in
された。
Articles 8.10.5., 8.10.6. or 8.10.7.
第8.10.4項
狂犬病清浄国からの輸入に関する勧告
Article
8.10.4. Recommendations
for importation from rabies free
countries
閉鎖状態で飼育されていなかった野生動物
for wild mammals not reared under confined conditions
獣医当局は、当該動物が以下の要件を満たすことを証明する国際獣医療証明
Veterinary Authorities should require the presentation of an international
書の提出を要求しなければならない。
veterinary certificate attesting that the animals:
1. 狂犬病の臨床徴候を出荷日に全く示さなかった。
1.showed
no clinical sign of rabies on the day of shipment;
2. あらゆる汚染国から十分に離れた狂犬病清浄国で捕獲された。その距離
2.have
been captured in a rabies free country, at a sufficient distance from
は、輸出された動物種および汚染国の保有動物種に応じて定めなければならな
any infected country. The distance should be defined according to the species
い。
exported and the reservoir species in the infected country.
Article 8.10.5.
Recommendations for importation from countries
第8.10.5項
狂犬病に汚染されているとみなされる国からの輸入に
considered infected with rabies for dogs and cats
関する勧告
イヌおよびネコ
1.showed no clinical sign of rabies within 48 hours of shipment;
EITHER
1.AND
狂犬病の臨床徴候を出荷前48時間以内に全く示さなかった。
2.were identified by a permanent mark (such as a microchip) and their
および、以下のどちらか一方
identification number shall be stated in the certificate; and
2.3.were
恒久的標識(たとえばマイクロチップ)によって特定されており、その標識番号
vaccinated against rabies:
は証明書にきさいしなければならない。かつ、
a.not less than 6 months and not more than one year prior to shipment in
the
of a primary vaccination, which should have been carried out when
3.case
狂犬病予防接種を受けている。
the animals
were at least 3 months old;
a. 初回接種の場合には出荷前の6ヶ月未満でなく、1年を超えておらず、そ
b.notの接種時期は少なくとも3ヶ月齢以上てなければならない。
more than one year prior to shipment in the case of a booster
vaccination;
b. 追加免疫の場合には出荷前1年を超えていない。
c.with an inactivated virus vaccine or with a recombinant vaccine
c. 不活化ワクチン、または、狂犬病ウイルス糖蛋白を発現する組み換えワ
expressing
the rabies virus glycoprotein; and
クチンを用いる。かつ、
4.were
subjected not less than 3 months and not more than 24 months
prior
shipment to an antibody test as prescribed in the Terrestrial Manual
4. to
出荷前3ヶ月以上および24時間以内に、陸生動物用手引きに記載された抗
with a positive result equivalent
to at least 0.5 IU/ml;
体検査を行い、少なくとも0.5
IU/mlと同等の陽性結果であること。
OR
または
5.have not been vaccinated against rabies or do not meet all the
5. 過去に狂犬病ワクチンを受けていないか、または、上記の2、3および4項に
conditions
set out in points 2, 3 and 4 above; in such cases, the importing
記載した全ての条件を満たさない場合には、輸入国は、その動物衛生規則に定め
country may require the placing of the animals in a quarantine station located
られている状態を満たす領土内の検疫所で、当該動物を飼育することを要求する
on its territory, in conformity with the conditions stipulated in its animal health
ことができる。
legislation.
発生してからでは、遅い!
狂犬病防疫訓練を全国各地で実施すべきである
正門(検疫所)ではなく、裏門(密貿易)から侵入
イヌ、ネコ、アライグマ(野生動物)の診断
市民への啓蒙
行政の対応能力
フィリピン サン・ロザリオ病院制作
狂犬病予防キャンペーン