数理論理学 第10回 茨城大学工学部情報工学科 佐々木 稔 前回までのあらすじ 述語論理 関数 定義域 量記号 配布資料は以下のURLからダウンロードできます http://sas.cis.ibaraki.ac.jp/sasaki/Logic/ 今週のお題 述語論理の解釈 述語論理式の形成規則 述語論理式の解釈 述語論理の恒真式 述語論理式の形成規則 項 固体定数、固体変数 t1, t2, ・・・, tn が項ならば、 n 引数の関数 f(t1, t2, ・・・, tn) も項 基礎項 項のなかで固体変数を含まないもの Alice, 父親(Bob) など 述語論理式の形成規則 述語論理式の形成規則 t1, t2, ・・・, tn が項ならば、基本論理式で ある n 項述語 P(t1, t2, ・・・, tn) は論理式 P, Q が論理式ならば、 ~P, P⇒Q も論理式 P∨Q、 P∧Q、 P⇔Q も論理式 P が論理式、x が固体変数ならば、 ∀xP、∃xP も論理式 形成規則を用いた例 P(a)∧Q(a, b) は論理式かどうか 1. a, bは項であるから、P(a), Q(a, b) は論理式 2. P(a), Q(a, b) は論理式であるから、 P(a)∧Q(a, b) は論理式 従って、P(a)∧Q(a, b) は論理式 閉論理式 束縛変数と自由変数 束縛変数: 量記号を伴った変数 自由変数: 量記号を伴わない変数 閉論理式 自由変数を含まない論理式 閉論理式でない論理式 どんな固体定数を割り当ててもよい 一般に論理式の真偽を決められない 閉論理式の真偽値 固体変数、関数値の定義域を D 真偽値の決め方 1. 各変数に定義域 D の要素を割り当て、 関数があればその値を求める 2. 基本論理式である述語の真偽値を決める 3. 真偽値の組合せから論理演算を行う 4. ∀x では、すべての x で∀xP が真であれば真、 ∃x では、ある x で∃xP が真であれば真 述語論理式の解釈 論理式 A の真偽は固体の取り方で異なる 定義域の取り方 固体定数 固体変数 関数記号 定義域と述語記号の対応関係 述語への真偽の割り当て 論理式 A の解釈は多数存在する 述語論理式の解釈例 論理式 ∀x(P(x)∨Q(f(x), a)) 解釈例 D = {スペード、ハート、ダイヤ、クラブ} a = クラブ f: f(スペード)=ハート、 f(ハート)=スペード、 f(ダイヤ)=クラブ、 f(クラブ)=ハート P(x) : 「x は赤いマークである」 Q(x, y) : 「x は y より順位が高い」 述語論理式の解釈例 Q(x, y) : 「x は y より順位が高い」 (x, y) ∈ {(スペード、ハート)、 (スペード、ダイヤ)、 (スペード、クラブ)、 (ハート、ダイヤ)、 (ハート、クラブ)、 (ダイヤ、クラブ)} のとき、Q(x, y) は真 述語論理式の解釈例 x = スペード P(スペード)∨Q(f(スペード), クラブ) = P(スペード)∨Q(ハート, クラブ) = F∨T = T x = ハート P(ハート)∨Q(f(ハート), クラブ) = P(ハート)∨Q(スペード, クラブ) = T∨T = T x = ダイヤ P(ダイヤ)∨Q(f(ダイヤ), クラブ) = P(ダイヤ)∨Q(クラブ, クラブ) = T∨F = T 述語論理式の解釈例 x = クラブ P(クラブ)∨Q(f(クラブ), クラブ) = P(クラブ)∨Q(ダイヤ, クラブ) = F∨T = T したがって、 ∀x(P(x)∨Q(f(x), a)) = T となる 論理式の解釈 論理式 A がある解釈 I に対して真 A は充足可能 I は A のモデル 論理式 A があらゆる解釈に対して常に真 A は恒真(妥当) 論理式 A を真とする解釈が存在しない A は充足不能(恒偽) 述語論理式の論理的帰結 いくつかの論理式 A1, A2, ・・・, An すべての Ai が真となるあらゆる解釈で A が真 トートロジーである命題論理の論理的帰結と同じ 述語論理の恒真式 恒真式 あらゆる定義域について真 固体変数のあらゆる割り当てについて真 関数記号へのあらゆる関数について真 述語記号へのあらゆる述語について真 命題論理式の命題変数 述語論理式を代入しても恒真な述語論理式 恒真式の例 P⇒(Q⇒P) P : ∀x∃y(A(x)⇒B(x, y)) Q : ∀xC(x) P, Q を代入すると ∀x∃y(A(x)⇒B(x, y)) ⇒ (∀xC(x) ⇒ ∀x∃y(A(x)⇒B(x, y))) 上の述語論理式は恒真 ∀x(P(x)⇒P(x)) も恒真式 述語論理式の恒真性 恒真であれば、証明可能 導出原理(この講義で説明予定) 一般的な論理式 恒真かどうかを判定する方法は存在しない 高階述語の場合は、恒真でも証明できない ゲーデルの完全性定理 公理から導かれる定理式は恒真式である 逆(恒真式ならば定理式である)も成り立つ
© Copyright 2024 ExpyDoc