電磁気学C Electromagnetics C 電子コース5セメ開講 電磁波の物理 山田 博仁 講義について 1. 目的: 古典的な電磁場やMaxwell方程式について理解を深め、さらにそこか ら導かれる電磁波の性質を理解し、古典電磁気学の素養を身に付ける 2. 内容 - Maxwell方程式の意味、定常状態でのMaxwell方程式の扱い - 波動方程式の導出と電磁波 - 平面電磁波の性質(偏波、運動量、エネルギー) - 誘電体中の電磁波(位相速度、インピーダンス、分散、非線形効果) - 電磁波の反射、屈折、透過、回折、散乱現象 - 導波路中の電磁波伝搬 - 電磁ポテンシャルとゲージ変換 - 遅延ポテンシャルと先進ポテンシャル - 電気双極子による電磁波の放射 3. 成績評価 出席点(2点/1回)、レポートまたは小テストの合計で60点、定期試験で40点 4. 参考書 太田昭男著、新しい電磁気学 培風館 砂川重信著、物理テキストシリーズ4 電磁気学、岩波書店 砂川重信著、理論電磁気学、紀伊国屋書店 日本語訳 ファインマン物理学Ⅲ、Ⅳ 岩波書店など 講義についての連絡 講義に関する連絡および 講義資料のダウンロード http://www5a.biglobe.ne.jp/~babe 講義に関するご意見等 ブログ http://kougi.at.webry.info/ オフィスアワー: 随時 (私の居室: 電気系2号館203号室) 質問、問い合わせ等 E-mail: [email protected] TEL: 795-7101 ※ 講義の際には、出席をとるためのB4またはA4のレポート 用紙などを各自ご持参下さい 遠隔作用と近接作用 Coulombの法則 電荷 F 力 +Q +q F 電場 (電界) 電荷 d F 力 F r +Q +q F 力 e(x) は位置 x での 1 qQ 4 0 d 2 遠隔作用 電場に関する Gaussの法則 電荷密度 E (r ) 1 Q 4 0 r 2 divE ( x ) e( x ) 0 F qE F ( x ) qE( x ) 遠隔作用→近接作用 近接作用 両電荷間の距離 r が残っているという意 味において、まだ遠隔作用的な考え方 遠隔作用と近接作用 クラシックコンサート タクトが上がった 前の席の人が大きくて指揮者が見えない 席が悪くて指揮者が見えない 距離: d 遠隔作用 あなたは、その「場」の 雰囲気を感じ取っている 近接作用 周りが静かになった 演奏が始まるぞ ! 演奏が始まるぞ ! Maxwellの方程式 物質中の電磁場を規定する基本法則 B ( x , t ) t D( x , t ) rot H ( x , t ) ie ( x , t ) t div D( x , t ) e ( x , t ) rot E ( x , t ) div B ( x , t ) 0 ファラデーの電磁誘導則 アンペール・マクスウェルの法則 電場に関するガウスの法則 磁場に関するガウスの法則 B ( x , t ) t D( x , t ) H ( x , t ) ie ( x , t ) t D( x, t ) e ( x, t ) E ( x, t ) B( x, t ) 0 E(x, t): 電場 (V/m) SI国際単位系 H(x, t): 磁場 (A/m) D(x, t): 電束密度 (C/m2) B(x, t): 磁束密度(磁場) (Wb/m2) ie(x, t): 伝導電流密度 (A/m2) 変位電流 e(x, t): 真電荷密度 (C/m3) 古典(ニュートン)力学の復習 ニュートンの運動法則 (第一法則) 慣性の法則 外力が働かなければ、静止している物体はいつまでも静止をつづけ、 運動している物体はいつまでも等速直線運動をつづける (第二法則) 運動の法則 物体に外力が働くとき、物体には外力と同じ向きの加速度が生じる。その 加速度の大きさ a は、働いている外力の大きさ F に比例し、物体の質量 m に反比例する。つまり、F = ma (第三法則) 作用反作用の法則 物体AがBに力 F (作用)を働かせてると、BはAに同じ大きさで逆向き の力 -F(反作用)を同一作用線上で働き返す 万有引力の法則 F = G(m m’/r2) [m と m’ は二質点の質量、r は両者の間の距離、Gは重力定数] 古典物理学の法則総決算 (ファインマン物理学第Ⅲ巻第18章) Maxwell方程式 E e 0 E B t B 0 c 2 B ie 0 E t 電荷の保存則 ie e t 力の法則 (ローレンツ力) F q ( E v B) 運動の法則 d ( p) F , dt 万有引力 p mv 1 v2 / c2 F G m1m2 er r2 Maxwell方程式の意味 1. ファラデーの電磁誘導則 rot E ( x, t ) B( x, t ) t 磁場(磁束密度)の時間的減少が、その周りに電場の渦を右ネジ方向に作る B(x, t1) E(x, t1) B(x, t2) B(x, t3) E(x, t2) E(x, t3) 変化する磁場の周りの電界は、そこに導線(コイル)が有る無しに関わらず生じる たまたま導線が有ると、導線内の自由電子が 電界により動き、電流 I が流れる コイル I Maxwell方程式の意味 2. アンペール・マクスウェルの法則 rot H ( x, t ) ie ( x, t ) D( x, t ) t ie(x, t) 定常電流が、その周りに磁場の渦を右ネジ方向に作る H(x, t) さらに、電場(電束密度)の時間的増加が、その周りに磁場の渦を右ネジ方向に作る E(x, t1) H(x, t1) E(x, t2) H(x, t2) E(x, t3) H(x, t3) Maxwell方程式の意味 3. 電場に関するガウスの法則 div D( x, t ) e ( x, t ) 電荷密度が電場(電束密度)の発散を引き起こす D(x) e(x) 4. 磁場に関するガウスの法則 div B( x, t ) 0 B(x) 磁場(磁束密度)の発散源(磁荷)は存在しない m(x) その他の関係式 ie ( x , t ) e ( x, t ) t 電荷保存則 (電流連続の式) ie ( x, t ) [ E ( x, t ) E ex( x, t )] F q ( E v B) 媒質中での扱い オームの法則 ローレンツ力 (構造関係式) D( x, t ) 0 E ( x, t ) P ( x, t ) B ( x , t ) 0 {H ( x , t ) M ( x , t )} 0 E ( x, t ) 0 e E ( x, t ) 0 H ( x, t ) 0 m H ( x, t ) 0 (1 e ) E ( x , t ) 0 (1 m ) H ( x , t ) 0 r E ( x , t ) 0 s H ( x, t ) E ( x, t ) H ( x, t ) P(x, t): 分極ベクトル e: 電気(比)感受率 M(x, t): 磁化ベクトル m: 磁化率(磁気感受率) r : 比誘電率 : 誘電率 (F/m) 0 : 8.854185×10-12 (A2・s2・N-1・m-2) s : 比透磁率 : 透磁率 (H/m) 0 : 1.2566371×10-6 (A2・s2・N-1・m-2) ローレンツ力 導線 F q ( E v B) ローレンツ力 導線 x +q v F F 電流 B F B I I フレミングの 左手の法則 z y アンペールの法則 (右ねじの法則) 同一方向に流れる電流には引力が働く v 電子 I -e I B フレミングの右手の法則 電子 F v I F -e v B B ローレンツ力で説明がつく クイズ [1] コイルに電流は流れるか? [2] 起電力は発生するのか? - V + コイル B I? B v 速度 v で移動 w 一様な磁場 [答] 1) 図の方向に流れる 2) 図と反対方向に流れる 3) 流れない 参) 大田昭男著 新しい電磁気学 p.119 8.2節参照 回転する 導体円板 一様な磁場 [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない 単極誘導 参) 大田昭男著 新しい電磁気学 p.120 例題8.1参照 クイズ [3] [2]で、円板は固定して、磁場 の方を回転させたらどうなるか? - V + - V + B B w 静止した 導体円板 静止した 導体円板 N 回転する一様な磁場 [答] 1) 図の方向に電圧が発生する 2) 図と反対方向に電圧が発生する 3) 発生しない w 回転する磁石 S 磁場の本質とは? - V + - V + B B 両者は等価 静止した 導体円板 静止した 導体円板 コイル N w w 回転する磁石 S I 電流 I が流れて 回転するコイル クイズ [4] 同じ速度 v で、並走する2つの電子のパラドクス 電子 電子 v F -e v F F -e F v F -e v -e F B 今、ロ-レンツ力による引力と、 クーロン力による反発力が吊り 合っているとする 電子と同じ速度で並走している 観測者から見ると、v = 0 である ため磁場 B は存在しない。従っ てロ-レンツ力による引力は働 かないので、クーロン力による反 発力のみとなり、2つの電子は次 第に離れていく クイズ [5] 磁場中を運動している荷電粒子のパラドクス x x B B +q +q v v F F=0 F z y F=qvB z y v ローレンツ力が働き、 粒子はこちらに近づい て来る 荷電粒子と同じ速度で運動している観測者 から見ると v = 0 なので、ローレンツ力は働 かない。従って、粒子はこちらに近づいて は来ない
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