一般外科病棟における STAS導入による 看護師の認識変化 ~アンケート調査の結果から~ 1病棟 9階東 惣市 こずえ 岡崎 由希子 野崎 有希 三宅 優 吉田 松子 Ⅰ.はじめに 当院一般外科病棟には、急性期患者、終末期患者が入院し ており、医療者は急性期患者の対応に追われ、終末期患者 との関わりにゆとりのなさを感じている。 最近、緩和ケア病棟、緩和ケアチームでSTASの有用性を 検討されているが、一般外科病棟における研究はまだ少な い。 今回私たちは、一般外科病棟において、患者・家族の緩和 ケアについて考える視点からSTAS日本語版(以後STASと 略す)を導入し、看護師の認識調査を行った。 Ⅱ.研究方法 1. 対象: 消化器外科病棟看護師 15名 (平均年齢:25歳 平均経験年数:3年7ヶ月) 2. 期間: 2006年8月~12月 3. 方法 1)STAS 日本語版の導入 2)データ収集と分析 STASの内容を含む16項目(5段階評価)と自由記載を 含めた調査用紙を作成し、導入前、3ヶ月後にアンケート 調査を実施。結果をχ二乗検定(p<0.05)で分析。 4.倫理的配慮 アンケート対象者には、目的以外に使用しないことを保 証し、個人が特定されないよう全て数量化を行った。 アンケート16項目 • 身体症状 • 精神症状 ①患者の痛みへの気付きと②対処 ⑤患者の不安への気付き⑥対処 ③患者の痛み以外の苦痛への ⑦家族の不安への気付き⑧対処 気付きと④対処 • 病状認識 ⑨患者の病状認識の把握 と⑩ずれへの対処 ⑪家族の病状認識の把握 と⑫ずれへ対処 ☆16項目の評価点数 •コミュニケーション ⑬患者・家族間のコミュニケーションの把握 ⑭不成立の対処 ⑮チーム内・職種間の 患者に関する情報共有 ⑯患者・家族の求めに応じた 医療スタッフの情報伝達 1.いつもしている 2.しばしばできている 3.時々できている 4.まれにしかできていない 5.全く出来ていない STASスコア表 病名 ID 告知の有無 評価日 項目 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 7 患者と家族の コミュニケーション 評価( 8 職種間の コミュニケーション 9 患者・家族に対する 医療スタッフの コミュニケーション 1 痛みのコントロール 2 症状が患者に及ぼす影響 症状【 】 3 患者の不安 4 家族の不安 対象者【 】 5 患者の病状認識 6 家族の病状認識 対象者【 】 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 評価( ) 症状【 対象者【 対象者【 】 】 】 Ⅲ.結果および考察 1) ① 患者の痛みへの気づき 0.195 1 ☆評価 ② 患者の痛みへの対処 P値 2 3 ●●●●●●● ●●●●●● ●●●●● ●● 3 1回目(導入前) 2回目(導入後) 0.086 1 評価 5 P値 2 ●●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ● ● ● 1回目 2回目 ④ 患者の痛み以外の苦痛への対処 0.227 1 評価 P値 2 ●●●● ●●●●●●● ●●● ●●●●●●● ● ●●●● ●●● ● 4 5 ●●●●●●● 4 ③ 患者の痛み以外の苦痛への対処 3 P値 2 ●●●●●●● ●●● 4 5 0.931 1 評価 3 ●● ●●●●● ●●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ●●● 4 1回目 2回目 5 1回目 2回目 ⑤患者の不安への気づき 0.065 1 ⑥患者の不安への対処 P値 ☆評価 2 3 2 ●●●● ●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ●●●●● 3 4 4 1回目 (導入前) ● ● ●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ●● ●●●●●●● 1回目 2回目 5 2回目 (導入後) ⑦家族の不安への気づき 1.000 1 2 4 5 ⑧家族の不安への対処 P値 評価 3 P値 評価 ●●●● 5 0.747 1 1.000 1 P値 評価 2 ●●●●●● ●●●●●● ●●●●●●● ● ●●●●●●● ● ● ● 1回目 2回目 3 4 5 ●●●●●● ●●●●●● ●●●●●●● ● ●●●●●●● ● ● ● 1回目 2回目 ⑨患者の病状認識の把握 0.489 1 ⑩患者の病状認識のずれへの対処 P値 ☆評価 0.853 1 P値 評価 ● 2 3 2 ●●● ●●●●● ●●●●●●● ●●●● ●●●● ●●●●● 3 4 1回目 (導入前) 5 2回目 (導入後) ⑪家族の病状認識の把握 0.940 1 2 ●●● ●●●●●● ●●●●●●● ● ●●● ●●● 1回目 2回目 0.627 1 P値 評価 2 ● ● ●●●●● ●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ● ●● ● 4 5 ●●●●● ⑫家族の病状認識のずれへの対処 P値 評価 3 ● 4 ● 5 ● 1回目 ● 2回目 3 ●●●● ●● ●●●●●● ●●●●●●● ●●●●● ●●●●● 1回目 2回目 4 5 ⑬患者・家族間のコミュニケーション状況の把握 0.586 1 P値 ☆評価 ⑭患者と家族のコミュニケーション不成立時の調節 2 ● ● ●●●●●● ●●●●●●● ●● ●●●●●●● ●●●●● 3 4 4 ● 5 1回目 (導入前) 5 2回目 (導入後) ⑮チーム内及び職種間での患者に関する情報共有 *0.032 1 P値 評価 ● ●● ●●●●●●● ●●●● ●●●●●●● ●●●● ●●● ●● 1回目 2回目 ⑯患者・家族の求めに応じた医療スタッフの情報伝達 0.070 1 ● 2 4 5 P値 評価 ● 3 P値 評価 2 3 0.766 1 2 ●● ●●●●●● ●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ● ● 1回目 3 ●●● ●●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●● ● ●●●●● 4 2回目 5 1回目 2回目 導入前 自由記載 治療・処置について医師とカンファレンスが必要 患者の希望する医療・情報提供ができていない 患者の病状認識についてスタッフの共通理解が不足 患者・家族の予後に対する情報把握が不足 未告知患者への対応の難しさ 0 1 2 3 4 (人) 導入3ヵ月後 自由記載 患者との意識的な関わり、問題点の把握の助けになる 医療者間の情報共有ができる 患者・家族の思いを考慮した関わりの大切さに気付く 家族の情報が困難 STAS使用後アンケート 有用:12人 難しい:12 人 時間がかかる スケールに当てはめにくい 0 2 4 6 8 10 12 (人) 考 察 2) STAS導入により、患者・家族の病状認識やコミュニケー ションの状況を把握することの重要性を理解することができ た。そして、医療者間で共有することにより「チーム内及び職 種間の情報共有」の項目が改善したと考える。 身体症状や、精神症状、病状認識の項目において、「気づ く」という点では向上につながったが、「対処」では、変化が少 なく、具体的な介入が行えていなかった。今後、患者の日常 の反応からチームでカンファレンスを重ね、対処に結び付け ていくことが必要だと思われる。 アンケートからは、医療者間の情報共有ができるなどのプ ラス面の認識変化と、時間がかかる、評価スケールが難しい など、マイナス面の意見があった。看護師自身がSTASの有 用性を実感して、フィードバックさせていくことで、緩和ケアの 質の向上につながると考える。 Ⅳ.まとめ • STAS導入前後で「チーム内及び職種間での患者に関する 情報共有」に有意な改善を認めた。 • 「患者の痛み以外の苦痛への気付き」「患者の不安への気 付き」「患者・家族の求めに応じた医療スタッフの情報伝達」 は、P値の改善を認めた。 • STAS導入後、患者との意識的な関わり、問題点の把握、 情報共有などの認識変化を認めた 一般外科病棟においてSTASは有用である
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