ミクロ経済学 (13) 様々な市場構造と独占 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2013年7月22日 今日学ぶこと 1. 2. 3. 4. 5. 様々な市場構造 独占 死荷重 競争政策 自然独占 2013/7/22 ミクロ経済学 13 2 不完全競争と市場構造 1. 完全競争市場は希だ 市場構造とは市場の構成 完全競争市場 2. 独占~供給者が一人.水道,電力,マイク ロソフト,ファスナー(YKK) 3. 寡占~数社の企業が競争していてある程度 競争がある.自動車産業,ゲーム産業 4. 独占的競争~寡占よりも企業数が多いが, 完全競争よりも少ない.パソコン市場. 2013/7/22 ミクロ経済学 13 3 さまざまな市場構造 ブランド物のバックが典型 うまい棒に様々な味がある 比較的多くの企業が競争している.プライ ステイカーではない.各社の製品は少しず つ異なっている 企業によって財が少し異なっていることを 製品差別化されているという 2013/7/22 ミクロ経済学 13 4 市場構造を決めるもの 製品差別化されているか(されている→) 生産者 がどれ だけい るか (多い↓) 2013/7/22 独占 該当なし 寡占 完全競争 ミクロ経済学 13 独占的競争 5 不完全情報 完全競争市場では財の品質は完全に分かっ ている(完全情報) 不完全情報(imperfect information)~売買され る財についてすべての情報を持っている訳 ではない 全て情報がある→機会集合が分る 自分の選好も知っている 不完全情報によってどれだけ経済的な帰結 が異なるか? 2013/7/22 ミクロ経済学 13 6 情報の経済学 大卒者が高卒者よりも高い収入 大学で生産性を高める教育を受ける 企業に学士号を持つことは有用な情報をも たらしている 企業は生産性の高い人は分らない 大卒であることは平均的に生産性が高いこ とを企業に伝えている なぜ結婚適齢期になると女性はお茶とお花 を習い始めるのか? 2013/7/22 ミクロ経済学 13 7 情報の市場 情報には価値があるが,他の財と異なる 一旦情報を得るとお金を払いたくなくなる 情報の信頼性:株屋が株価が上がることを教 えてくれたとする.これは信頼できるか?な ぜ自分で儲けないのか? 消費者保護法: 誇大広告の禁止,すぐ痩 せる! 広告が曖昧なわけ 2013/7/22 ミクロ経済学 13 8 独占 マイクロソフト社は独占(monopoly)企業と呼 ばれる YKK(吉田工業株式会社)はファスナー業界の 国内市場の95%,世界でも45%のシェア MS社はパソコン市場を独占している 独占企業は市場価格をコントロールできる この市場支配力により利潤が増える 大きなシェア(市場占有率)を持つ企業を独占 的と呼ぶ.純粋な独占は希である. 2013/7/22 ミクロ経済学 13 9 独占と市場価格 独占企業は価格 をつり上げる 価 格 M 独占だと供給曲 線 は存在しない PM C P* 需要曲線 数量 QM 2013/7/22 Q* ミクロ経済学 13 10 独占の理由 他の企業が市場に入ってこない.参入障壁が あるから 希少な生産要素の独占 規模の経済性~巨額の固定費用が必要. 例:水道,ガス,電気.電話も以前そうだった 自然独占 技術的優位性~技術的に優れていて参入阻止 法的な保護~特許や著作権.医師や弁護士の 所得が高い理由 2013/7/22 ミクロ経済学 13 11 不完全競争の場合の価格と数量 企業はプライス・メーカー(価格設定者)である 利潤を最大にする企業はどんな市場構造でも 限界収入=限界費用 となる水準で産出量を決定する 2013/7/22 ミクロ経済学 13 12 限界収入と限界費用 限界収入(Marginal Revenue)~産出量を一単 位増やすときに得られる追加的収入 限界費用(Marginal Cost)~産出量をもう一単 位増加させたときの追加的費用 2013/7/22 ミクロ経済学 13 13 利潤最大化 MR>MC → 産出量を増加させた方が 利潤が高まる (収入の上昇が費用のそれを上回る) MR<MC → 産出量を削減した方が良い (費用の削減が収入の減少を上 回る) MR=MC → 利潤が最大になる条件 2013/7/22 ミクロ経済学 13 14 利潤 利潤最大 MR>MC MR<MC 産出量増 産出量減 Q* 2013/7/22 ミクロ経済学 13 産出量 15 景気は回復している 日本銀行の金融政策は景気を良くすること 日銀、「緩やかに回復」と景気判断上方修正 2013年 7月 12日 07:24 JST By TAKASHI NAKAMICHI AND TATSUO ITO ウォール・ストリート・ジャー ナル日本版 【東京】日本銀行は11日の金融政策決定会合で、 景気の現状判断を「緩やかに回復しつつある」と し、ここ2年以上で最も楽観的な表現に上方修正 した。また、政策運営については、当面、追加緩 和措置を取る考えがないことを示唆した。 2013/7/22 ミクロ経済学 13 16 非正規雇用の割合は上昇している 正規雇用から転職する人の40%は非正規に 非正規から転職する人の24%が正規に 非正規社員比率38.2%、男女とも過去最高 に 2013/7/13 2:00日本経済新聞 電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1203R_S3A 710C1EA1000/仕事を変える時に、正社員を選ぶ のは5年前よりも難しくなったといえる。 しっかりと勉強して正規職に就こう! 2013/7/22 ミクロ経済学 13 17 色々な市場 完全競争市場: 限界収入=価格,MR=p 産出量を増やしても市場全体への影響は軽微 独占: 産出量が2倍ならば産業全体の産出量も2倍,価格 は下落 R=pQ 産出量増は価格は下落 Q(↑) →p(↓) 産出量が増加したときにどのくらい価格が 下落するかは市場構造による 2013/7/22 ミクロ経済学 13 18 ファスナーを独占的に生産しているYKK ファスナー価格(円) 100 95 90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 2013/7/22 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 0 0 定義されない 1 95 95 2 180 85 3 255 75 4 320 65 5 375 55 6 420 45 7 455 35 8 480 25 9 495 15 10 500 5 11 495 -5 12 480 -15 ミクロ経済学 13 19 独占企業の需要曲線と限界収入曲線 円 120 ファスナー価格 (円) 100 80 限界収入(円) 60 40 20 0 -20 0 1 2 3 4 5 6 7 ファスナーの数量 8 9 10 11 12 -40 2013/7/22 ミクロ経済学 13 20 独占価格 限界費用は一定の45円とする 固定費用は0円 MC=45 MR=45の産出量は Q=6 公式による利潤の最大化は Q=6 で達成 2013/7/22 ミクロ経済学 13 21 独占企業限界収入曲線と限界費用曲線 円 120 限界収入(円) 限界費用(円) 100 80 60 40 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -20 -40 2013/7/22 ミクロ経済学 13 22 独占と市場価格 6単位の生産では 市場価格は70円になる 円 M PM C 限界費用曲線 P* 需要曲線 限界収入曲線 数量 QM 2013/7/22 Q* ミクロ経済学 13 23 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 限界費用(円) 費用(円) 利潤 0 0 定義されない 定義されない 0 0 1 95 95 45 45 50 2 180 85 45 90 90 3 255 75 45 135 120 4 320 65 45 180 140 5 375 55 45 225 150 6 420 45 45 270 150 7 455 35 45 315 140 8 480 25 45 360 120 9 495 15 45 405 90 10 500 5 45 450 50 11 495 -5 45 495 0 12 480 -15 45 540 -60 2013/7/22 ミクロ経済学 13 24 独占の弊害,死荷重 独占価格によって価格は引き上げられる 限界費用と価格が等しい時の産出量は11個 独占は6個しか生産しない 経済厚生は価格=限界費用の水準と比べ低 下する 低下した厚生の損失を死荷重という 2013/7/22 ミクロ経済学 13 25 独占と経済厚生 円 消費者余剰 M PM P* 生産者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2013/7/22 Q* ミクロ経済学 13 26 独占だが限界費用で価格付けした場合 円 M PM P* 生産者余剰はゼロ 消費者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2013/7/22 Q* ミクロ経済学 13 27 死荷重 円 独占の経済厚生 M PM 独占は競争よりも経済厚 生が低くなる その損失を死荷重と呼ぶ 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P* 需要曲線 数量 QM 2013/7/22 Q* ミクロ経済学 13 28 ファスナーの例の死荷重を求めよう 三角形の面積=縦×横÷2 =(70-45)×(11-6)÷2 =25×5÷2=62.5 死荷重 円 100 M PM=70 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P*=45 独占の経済厚生 需要曲線 数量 Q M=6 2013/7/22 Q *=11 ミクロ経済学 13 29 競争政策 価格が高すぎると非効率性が高まる 市場支配力の濫用 1. 2. 3. 大規模製造業者が下請け企業いじめ 大型小売店が納入企業に特別なサービスを要求 政府は積極的に競争の促進を実施している 独占禁止法(日本),反トラスト法(米国) 価格カルテル・談合の阻止 大きな合併の制限 優越的地位の濫用の防止 2013/7/22 ミクロ経済学 13 30 自然独占 上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる. 独占に任せておいた方が良い 自然独占 政府の規制の必要性,自治体が運営 以前は電力,電話,CATVも自然独占だった. 今は違う! 2013/7/22 ミクロ経済学 13 31 ミクロ経済学おわり 定期試験頑張って下さい 何か質問があればメールして下さい 秋学期には国際経済学(月曜5限)と産業組織 論(木曜4限)があります 前者は国際的な財,サービス,金のやり取 りを学びます.ミクロの他にマクロの手法 も取り入れて国際経済を解明します 後者は現代の企業が直面する製品差別化や 情報について深く学びます.非常に興味あ る企業についても取り上げる予定です. 2013/7/22 ミクロ経済学 13 32
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