バリアフリーのための心理学09 (3)携帯電話はバリアフリ-の ための援助設定か? ITによるバリアフリ- and ITのバリアフリ-(樋口 宜男先生@情報理工) コメントは、 http://d.hatena.ne.jp/marumo55/ 1 バリアフリーの位置づけ ●同化・統合:本人のリハビリテーション ●異化・統合(これが重要):反応形態の 差異のまま、多数派の享受する権利に アクセスを可能にする(accessibility)。 そのために、差異のある反応形態が不利益に ならないように「援助設定」を整える作業 (バリアフリー) ●しかし多数派の享受する権利を基準にして良 いか? 2 基礎ターム 0)表出と理解(Expression and Comprehension) 1)トータルコミュニケーションとは? 2)反応形態を学習するための教授の方法 課題分析、全課題呈示法 3)機能を学習するための教授 機会利用型学習法(Incidental Teaching) 4)バリアフリーのための IT, ITのための バリアフリー(http://www.ritsumei.ac.jp/~bfit/) BKC:樋口宣男先生 3 様々なコミュニケーションモード • 口話・手話・カード・各種AAC機器など 様々なコミュニケーションモードがあるが、 それぞれに特徴がある。 • 極端にいえば、それぞれ文化があるかも知れない • 携帯電話はどんな特徴があるか? 4 予行演習 • デジカメって、どんな点が特徴? • デジカメを、学校教育に導入できるか? 5 携帯電話はTCM? (Total Communication Machine) ●反応形態の「差異」を生める援助機器? AAC:Augmentative and Alternative Communication ●援助設定(行動を成立させるための新たな環境 設定)といえるか? ●実は新しいバリア? 6 100 % 予定なし 通話機能 予定なし メイル機能 50 使用している 試みたい 試みたい 使用している 0 小中高 小中高 小中高 小中高 小中高 小中高 図1. 聾学校の「重複学級」で、携帯電話の「通話機能」あるいは「メイ ル機能」をどれくらい使っているか(望月,2002) 7 図2. 一般には、携帯メールはどのように使われているか?(丹生ら、1996) 8 携帯が認められたら 携帯電話? 9 文部科学省通知(2008) • 文部科学省は全国の学校や教育委員会に対し、携帯電 話の取り扱いに関するルールを明確化するよう通知した。 具体例の一つとして「小中学校では持ち込みを原則禁止 する」という規制案も提示。児童生徒の利用実態把握に 努めることや、情報モラル教育を充実させることなども要 請した。 • 通知は7月25日付。都道府県教委などを通じ、小中学 校や高校、市町村教委にも周知するよう求めた。携帯電 話に関するルールとしては、「校内持ち込み禁止」のほか、 「やむを得ない事情で持ち込みが必要と判断される場合 もある」として、▽居場所確認や通話機能に(用途を)限 定して持ち込み可能とする▽登校後に学校で預かり下校 時に返却する--の2例も示した。 10 携帯ってTCM? ●考えられるメリット 1)自分のペースで確認可能 要議論 2)再現可能なC(不揮発モード) 要議論 3)防犯ベル、GPS、安否メール (管理的デメリット?) 要議論 4)実は、日本語教育にも役立つ のでは(助詞の使い方など日常的に)要議論 11 1)自分のペースで確認可能 • かつて(現在も)パソコン通信時代、この利用につ いては障害のある個人(とくに肢体不自由系)の普 及率は高かった。 ・BBS(掲示板)を通じたコミュニケーションは、 「時間遅延」を許す言語行動 (参考文献) 望月昭・正木茂夫(1989): 「BBSネットの開設と運営:愛知県コロニーMARUMONETを 例に」.行動分析学研究、4, 57-70. 12 2)再現可能なコミュニケーションモード • コミュニケーションモード? モード:表出の形態 メディア:感覚系としての分類:聴覚・視覚 ●揮発系モード:表出と同時に消えてしまう (日常的な口話や手話) ●不揮発性モード:痕跡が残る (書字、写真、動画ファックスetc) 13 遠隔地コミュニケーション 表出モード • • • • 固定電話 音声 無線機 音声 ファックス 書字・描画 携帯電話(通話) 音声 携帯メール 文字入力 写メール 撮影 動画メール 撮影 テレビ電話 撮影 理解モード 聴覚(揮発・即対) 聴覚( 〃 ) 視覚(読字)不揮発 聴覚(揮発・即対) 読字(不揮発) 写真の理解(不揮発) 動画理解(不揮発) 動画理解(揮発・即対) 14 3)防犯ベル・GPS・安否メイル • 従来の障害のある個人に対する携帯電話 の利用についての研究の多くは、地域生活 のsafety(安全確保)に関わる研究が多い。 • しかし「安全確保」は個人のQOLを拡大と一 致するか? • 「電源を切る」スキルは教えるべきか? 「リスクを冒す権利」もあるのでは? 15 4)日本語教育にも役立つ? • 携帯電話(メイル)の使用は、教科書などで 学ぶ場合と異なり、実際の生活の文脈の中 でその内容がシェイプアップされる? 16 実践的な教授方法を考える • 仮想事例: 自閉的傾向もあるろう重複の障害のある 聾学校生徒、17歳。 ・一部、書字と文字理解あり。 ・携帯電話を遠隔地ではなく、文字表示をし て楽しむ。50音構造は理解している(入力 が可能) 17 実践的な練習問題 1)携帯電話(メイル)をどのような設定の中で具体 的に「教授」するか? 2)宿題:携帯電話の受信・送信の操作をどのよう に教えるか? ・まず操作に関する「課題分析表」を作ってみよう。 ・それに従って「全課題提示法」で援助つきで教 授をするための細かい手続きを考える。 18 課題分析の例 • 以下の表は、高齢者にPCでメイルを送信 することを教授するための課題分析表で ある。 これも参考にしながら携帯電話メイルの課題 分析をしてみよう。 書いてみよう! 19 高齢者におけ るPC操作の支 援 (課題分析) 斉藤(2001) Mさんの課題分析 : メールを送信する 1 電源ボタンを右に引く。 2 スタートボタンの横にある「Outlook Express」のアイコンをクリックす る。 3 「ダイヤルアップの接続」の[オフライン作業]ボタンをクリックする。 4 [Outlook Express]の青い帯の端の×印をクリックする。 5 「新しいメール」アイコンをクリックする。 6 メッセージの作成が出るので「宛先:」の横の白い枠をクリックし、送信 先のメールアドレスを入力する。 7 キーボードの「半角/全角」キーを押し日本語入力ができる状態にす る。 8 「件名:」の横の白い枠をクリックし、メールのタイトルを入力する。 9 下の白い画面をクリックし、本文を入力する。 10 メールができたらツールボタンの「送信」アイコンをクリックする。 11 「送受信」アイコンをクリックする。 12 「オンラインに切り替えますか」で「はい」ボタンをクリックする。 13 「ダイヤルアップの接続」の[接続]ボタンをクリックする。 14 「送信済みアイテム」ホルダに移動したのを確認して、×印をクリック して「OutlookExpress」を終了する。 15 「今すぐ切断する」をクリックして回線を切断する 16 「スタート」ボタンを押し「Windowsの終了」をクリックする。「電源を切れ る状態にする」にチェックがついてることを確認して「OK」ボタンを押 す。 20 聴覚障害と知的障害がある生徒における携帯 メールを使用した「おつかい行動」の獲得 濃添晋矢・南 美知代・望月 昭( 2004) 立命館人間科学研究, 7,181-191. http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/krsc/hs/ningen/NINGEN_7/181-191nozoe.pdf 21 ケータイメ-ル:どの特性を活かすか? • 1)自分のペースで、コミュニケーション • 2)「不揮発」な特性を活かして、コミュニ ケーション(言語行動)の痕跡を繰り返して 確認することができる(備忘録機能) • (当然ながら)モバイル性 そこで、「お使い」場面 22 大学 「バナナ買っ てきて」② 大学 田中 佐藤 鈴木 K 「ジュース 買ってきて」 ① 鈴木さんにジュースを、 佐藤さんにアイスを 買って帰る⑥ コンビニ 「バナナい りません (田中)」④ 「アイスも買っ てきて(佐 藤)」⑤ K おつかいに行く③ 目標行動(おつかい物の追加と取り消し) 23 研究デザイン • プレポストテストデザイン 予備訓練 地 域 店 舗 プ レ テ ス ト シミュレーション場 面での訓練 地 域 店 舗 ポ ス ト テ ス ト 24 操作訓練(予備訓練) • 条件性弁別訓練(見本あわせ)のスタイル 着信(物品名)→4物品から→タッチ→強化 選択 25 26 シミュレーション場面の設定 (創思館のトレイニングルーム) 移動中に「追加・取り消し」 文面例:「バナナいりません 佐藤」 27 28 29 実践的問題 • 「着信に気づく」:その改善について、行動 分析学的な観点から説明せよ! • この研究で、日常生活の中で、ケータイの 持つ特性として、どのようなことが明らかに なったか(固定電話やファックスとの違い、 ハンドライトのメモとの違い等)? 30 参考記事 「新しい対人援助と情報通信技術」 望月 昭(文学部教授) 樋口宜男(情報理工学部教授) 「学びの交差点」,立命, 230. 立命館大学校友会 http://www.ritsumei.ac.jp/mng/al/report/pdf/230p df/20_25.pdf 31
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