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国際経済学
(8) 時間を通じた選択と利子率
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2011年12月19日
復習




鎖国から開国で輸入が増えて消費量は増える
国内生産量は減る
関税を課すと政府税収が増える
自由貿易の方が保護貿易よりも経済厚生が
大きい
2011/12/19
国際経済学8
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異なった時点での選択
お金を借りたり貸したり,DVDレンタル
 真央はアルバイトで5,000円を得た
 明日は何もしない

明日のために今得た所得の一部を取ってお
くだろう
 明日4,000円の買い物をする予定ならば今日
の買い物を諦めなければならない
5,000-4,000=1,000
 今日使えるのは1,000円だけ

2011/12/19
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貯蓄
今得たお金を将来のために取っておく行為
を貯蓄という
 貯蓄をすれば現在の消費は減る
 しかし,将来の消費は増える


つまり,現在の消費と将来の消費はトレー
ドオフの関係にある
予算制約線や時間制約線と同様にトレード
オフを図解できる
 ブラックサンダーとうまい棒の選択を参考

2011/12/19
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明日の消費(円)
5000
-1は今日の1円を増や
すには明日の1円を犠牲
にしなければならない
4000円貯蓄して
C 今日1000円消費
B
4000
傾き=
5000-0
0-5000
=-1
A
1000
2011/12/19
所得を今日
すべて使う
今日の消費(円)
5000
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明日の消費(円)
5000
一種のタンス預金
今日と明日の消費
(アリ)
C
B
貯蓄=4000=5000-1000
4000
今日と明日の所得
(キリギリス)
明日の
消費
A
1000
2011/12/19
今日の消費(円)
5000
国際経済学8
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来年の消費(円)
100万円
80万円
真央は今年100万円の所得を得た.
しかし,来年は充電期間.この場合も同じ
C
B
100万-0
傾き=
0-100万
=-1
所得を今年
すべて使う
A
20万円
2011/12/19
今年の消費(円)
100万円
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元本と利子
ゆうちょ銀行や普通の銀行の口座
 預けたお金は元々のお金,元本という
 元本に対して銀行は利子を支払う


最初に預けたお金は保障されるので元本と
利子の合計(元利合計)は増える
1. 100万円預けて利子が100円→1,000,100
2. 100万円預けて利子が2万円→1,020,000
預ける人にとっては利子が多いほどよい
 有利さをどう測る?

2011/12/19
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8
利子率
貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利子
利子率=
×100
元本
1. 100/1,000,000 × 100=0.01 (%)
2. 20,000/1,000,000 × 100=2 (%)
 預金者は利子率(金利)が高い方が有利
 金利は普通変動する
 現在(2011年)は低金利で0.02%
 1990年頃は7%

2011/12/19
国際経済学8
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複利
複利~前の期の元利合計に利子が付く
 例:複利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 2年目:元本 10,000
利子 10,300×0.03=309
元利合計 10,300+309=10,609

 複利は利子が利子を生みだすお得な預金法
2011/12/19
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単利


単利~預けた元本に毎期利子が付く
例:単利で年利3%で1万円を預けた
 1年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 2年目:元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,300+300=10,600
2011/1/17
国際経済学10
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複利/2
利子率を英語で interest rate.
 利子率をrと略す
 元本 10,000
利子 10,000×0.03=300
元利合計 10,000+300=10,300
 元利合計を r で表現する
10,300=10,000+300=10,000+10,000×0.03
=10,000 × (1+0.03)= 10,000 × (1+r)
 便利な公式
元利合計=元本× (1+r)

2011/12/19
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今年の所得100万円で利子率r
今年の所得100万円,来年の所得0円
 利子率 r で貯蓄.r は小数点表示
 3%ならば r=0.03. パーセント表示:r × 100 %
 今年所得をすべて貯蓄すれば来年は
100×(1+r)万円
の所得を得る
 予算線はどう変わるだろうか?

2011/12/19
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来年の消費(万円)
100(1+r)
100
C
今年と来年の所得と貯蓄
今年の所得を
すべて貯蓄
B
100(1+r)-0
傾き=
0-100
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
A
今年の消費(万円)
100
2011/12/19
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利子がある場合の異時点間の消費

予算線の傾き: –(1+r)
今年の所得をすべて消費は変わらない(A)
 所得すべて貯蓄の時に来年の消費(C)は

100(1+r)
利子率rが上がれば消費可能な領域は増える
 今年の消費と来年の消費のトレードオフは

1+r

1円の現在消費を増やすには 1+r 円の来年消費
を減らさなければならない
2011/12/19
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15
利子がある場合の異時点間の消費
利子率の上昇は今年の消費に比べ来年の消費は
有利になる
 もっと貯蓄しよう.利子率上昇→貯蓄増加


ここまでの理解では今は低金利なので現在の消
費の方が有利
利子率は現在と将来の消費
のトレードオフを示す
貯蓄(savings)曲線は右上がりになる
 価格を利子率 r とする.貯蓄曲線を S とする

2011/12/19
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資本市場の供給
利子率 r
S
貯蓄曲線は資金の
供給曲線に等しい
r
資金量
S
2011/12/19
貯蓄曲線 S
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貯金と借入
貯金をする.将来銀行は真央が貯金を引き
出すときにお金を与える
 銀行に金が入り後で出て行く


お金を借りる人は今お金が手に入り後で返
済.お金が出ていく

貯蓄を受け入れる側はお金を借りている.
将来の返済義務が生じている
2011/12/19
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借入
レンタルDVDを借りると最初にレンタル料金
を支払う.見終わったら返却.
 レンタル料金が借金の利子(利息)

 来年所得を得るが今年は無一文.しかし,利
息5万円でお金が借りられる
 今年100万円借りたら返済額は? 105万円
 100 + 5=105 (万円)
 返済額=借入金+利子(利息)
 今年100万円使うには来年105万円支払う必要
2011/12/19
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今年の所得0で来年100万円の所得

借入の有利さをどう測る?
利子
借入利子率=
× 100
借入金額
借入金額100万円で利息5万円の借入利子率は
5/100 × 100 = 5 (%)
 利息=借入金額×借入利子率(小数点表示)
 100万円を利子率15%で借り入れたときの利
息はいくら?
 100×0.15=15 (万円)

2011/12/19
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今年の所得0で来年100万円の所得/2
利率 rで100万円借りたときの返済額
 返済額=借入金+利子(利息)
=100+100×r=100(1+r)
 今年全く無所得で来年100万円の所得を得る.
借り入れ利子率は預け入れ利子率と同じrとする

今年消費をするには借り入れをして,借入金額
と利息合計を来年支払う必要
 来年全く消費しなければ今年いくら借りられる
 来年の所得を全て借金の返済に充てる

2011/12/19
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今年の所得0で来年100万円の所得/2
100
万円
1+r
 今年は 100/(1+r) 万円借り入れた
 来年の返済額は
100
×(1+r) =100 万円
1+r
となり来年の所得に等しい
 借金によって予算制約線はどう変わるか?
2011/12/19
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来年の消費(万円)
今年の負債と来年の所得
Dの消費を
した時の借
金返済額
100
B点:来年の所得をすべて消費
E点:最大限の今年の消費
B
借入の予
算制約線
D
100-0
傾き=
0-100/(1+r)
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
今年の消費(万円)
E
100
1+r
2011/12/19
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100
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借金をした場合のトレードオフ
借金をした場合の予算制約線の傾きは –(1+r)
 借金をして今年1円消費を増加させるには借金
を返すために来年の消費を 1+r 円減らす必要
 借り入れ利子率が高くなるほど借金は不利
 貯金も借金も利子率が重要
 預け入れ利子率と借り入れ利子率は異なる

貯蓄でも借金でも現在と将来の消費で利子率
は大切
 借入をする投資は利子率が上昇すると減る

2011/12/19
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資本市場
利子率 r
r
I
資金量
I
2011/12/19
投資曲線 I
=需要
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他の事情は一定の場合の分析
資本市場の均衡
利子率 r
I
貯蓄曲線 S と投資曲線 I
の交点で利子率決定
S
貯蓄曲線 S
=資金供給曲線
均衡利子率は市場で決まる
r*
投資曲線 I
=資金需要曲線
I*=S*
2011/12/19
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資金量
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利子率はお金のレンタル価格
1プラス利子率は資金のレンタル価格
 貯蓄者は今年の1円を増やすには貯蓄によっ
て生まれる来年の1+r円を諦める
 借入者は今年の1円を増やすには借金と利息
の合計1+r円を将来支払う必要

2011/12/19
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今期の所得よりも支出したかったら
現在の貯蓄残高から引き出す
 新たに借金をする
 貯蓄と貯蓄残高(資産)
 借入と負債
 ストックとフロー



一定期間内に変化や起こったものの大きさ
をフロー
一時点に存在するものの大きさをストック
2011/12/19
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ストックとフロー
• お風呂に水を入れる,栓を抜いて排出
• 現在の浴槽のお湯の量がストック
• 流入と流出がフロー
フロー
ストック
水
フロー
2011/12/19
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ストックとフロー






今年の生産や所得 = フロー
貯蓄残高=ストック
貯蓄,引き出し=フロー
負債残高=ストック
新たな借金や返済=フロー
生産,消費,投資=フロー
2011/12/19
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ストック
昨年末貯金残高が100万円あった
 今年は10万円新たに貯金した
 今年の末には貯金残高はいくら? 110万円
 昨年末ローン残高が50万円あった
 今年新たに10万円銀行から借りた
 今年末の借入残高はいくら?
60万円
 貯蓄した=貯蓄残高が増える
 借入する=借入残高が増える
 純資産=資産ー借入残高

2011/12/19
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貯蓄
今期の所得のうち消費しなかった残りの金額
を貯蓄という
 前期の貯蓄残高(資産)は今期の貯蓄分だけ増え
て今期の貯蓄残高になる
100+10=110
 前期の資産+今期の貯蓄=今期の資産

今期の貯蓄=今期の資産-前期の資産
 資産が増えれば貯蓄したことになる
2011/12/19
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借入
貯蓄を取り崩すことなしに今期の所得以上に
支出する時は誰かから借入をする
 前期の借入残高(負債)は今期の借入分だけ増え
て今期の借入残高になる
50+10=60
 前期の負債+今期の借入=今期の負債

今期の借入=今期の負債-前期の負債
 負債が増えれば借入したことになる
 実際は,貯蓄と借入を同時にしている
2011/12/19
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貯蓄と資産
今期の貯蓄をS.前期の資産を A0
 今期の資産を A
 貯蓄を加えると今期の資産
A0 +S =A


資産の増加が貯蓄
S =A -A0
 Sがマイナスは貯蓄残高の取り崩し
2011/12/19
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借入と負債
今期の借入(投資)をI.前期の負債を L0
 今期の負債を L
 借入を加えると今期の負債
L0 +I =L
 Lがマイナスは借金の返済
I =L - L0


貯蓄でも借入でもストックの変化がフローの
変化になる
2011/12/19
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億円
2010年12月末 金融資産・負債残高表 (家計)
16,000,000
14,876,826
14,000,000
12,000,000
日本の家計の金融資産・負債は
資産は1487兆円
負債は360兆円
純資産は1127兆円
10,000,000
8,000,000
6,000,000
3,606,246
4,000,000
2,000,000
0
資産(A)
負債(L)
出所:資金循環統計
2011/12/19
国際経済学8
36
億円
金融資産・負債残高表企業 (2010年末)
14,000,000
12,000,000
10,000,000
8,000,000
日本の企業の金融資産・負債は
資産は814兆円
11,718,380
負債は1171兆円
純負債は357兆円
8,143,890
6,000,000
4,000,000
2,000,000
0
資産(A)
負債(L)
出所:資金循環統計
2011/12/19
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家計は貯蓄主体
住宅ローンや自動車ローンがあるが預貯金
を中心に貯蓄が積み上がり資産が負債を上
回っている
 1127兆円の金融純資産を持つ
 誰かの貯蓄は誰かの借金
 企業は借金主体である.357兆円の金融純負
債を有す
 家計の純資産ー企業の純負債=
1127-357=700 (兆円) この差額はどこへ?

2011/12/19
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借金で苦しむ人とデブ
借金で苦しんでいる人と肥満な人共通点
 どちらも現在たくさん消費している
 借金苦は現在の所得以上に消費

肥満人は体型維持の消費カロリー以上に食物
を摂取している
 どちらも我慢強さに問題
 低所得者層ほど肥満率が高い
 高所得者層ほど自分の健康に留意している

デブほど借金に苦しむらしいがどうすべきか―池田新介 プレジデント 2009年1.12号
米国の肥満率悪化 貧困層急増が影響か NPO調査
デブの帝国
2011/12/19
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復習1
 今得たお金を将来のために取っておく
行為を貯蓄という
 複利は前の期の元利合計に利子が付く
 利子率の上昇は来年の消費は今年の消
費に比べ有利になる
 利子率が上昇すると借り入れによる消
費は難しくなる.
2011/12/19
国際経済学8
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