高精度DEMを用いた伊豆半島 の段丘地形の分布・特徴 (写真:国土交通省HPより) 小山研究室 30916002 総合科学4年 石崎 淳 研究目的 2004年にユネスコ支援の下世界ジオパーク ネットワークが発足。伊豆半島でも「伊豆半 島ジオパーク推進協議会」が設立された。し かし、伊豆半島の地形について本格的に検討 した例は乏しい。 本研究では、本格的な分析がほとんど行われたこ とのない河岸段丘、海岸段丘の分布や特徴を調べ、 その実態を把握するとともに、それらの成立過程 の考察を行う。またどのような土地利用がされて いるか調べ、ジオパークとの関連性を考える。 河岸段丘、海岸段丘 ◎河岸段丘(河成段丘) 河川の中・下流域に流路に沿って発達する階段状の 地形である。川の侵食作用の繰り返しによって平坦 面と段丘崖がつくられ段丘ができていく。 ◎海岸段丘 海岸線に発達した階段状の地形。海水準変動また は地盤隆起により形成される。 図:河岸段丘 出典:大和紀伊のみちくさトリビアより 図:海岸段丘のできかた 出典:NHK高校講座 研究方法 操作手順 ・航空レーザー測量にもとづく高精度DEMを用いて 赤色立体地図から河岸段丘、海岸段丘とおぼしき 平坦面を読み取りGoogleEarth上のポリゴンを用い てマッピングする。 ・平坦面のうち、火山地形として知られているもの (小山、2010)を取り除き、河岸段丘、海岸段丘 を分別する。 ・段丘ごとに形状・標高を分析する。 ・段丘ごとの形成原因を調べる。 ・マッピング、色分けした河岸段丘、海岸段丘上で どのような土地利用がされているか調べる。 赤色立体地図 赤色立体地図とは、急斜面ほどより赤くなるように、尾根や 独立峰ほど明るく、谷や窪地ほど暗くなるように調製した疑 似カラー画像である。 等高線図では表現できない線と線の間の情報の可視化。 これまで見ることのできなかった土地の姿を見ることができる。 航空写真 (アジア航測株式会社のHPより) 赤色立体地図 ポリゴン図形を用いたマッピング 伊豆半島中央に流れる狩野川の中流、修善寺東小付近(標高56m~95m) の図を使用。なお伊豆の赤色立体地図は国土交通省沼津河川国道事務局の 提供による。 500m GoogleEarth上 の航空写真 500m 航空写真に赤色立 体地図をのせる 500m 赤色立体地図の上に ポリゴンをのせる 河岸段丘(狩野川)の特徴 抽出したのは伊豆中央に流れる狩 野川(標高24〜280m )、南伊豆 町を流れる青野川(標高35〜 60m ) 、河津町を流れる河津川 (標高35〜85m )の河岸段丘。 狩野川 下流 下流、また上流では発達 しない。 河川の周りに平 地が少しある中流に発達 している。 中流 上流 5000m 河岸段丘の分類と追跡 狩野川 狩野川 5000m 5000m 狩野川沿いには3段の河 岸段丘の発達が認められ た。同じ色の段丘は同年 代にできたものと推測で きる。 青:低位段丘 緑:中位段丘 薄茶色:高位段丘 河岸段丘の標高分布 河口からの距離と下位~上位段丘の標高のグラフ 狩野川 大見川 300 300 下位段丘 250 標 高 ( m ) 中位段丘 中位段丘 高位段丘 200 下位段丘 250 200 標 高 ( m ) 150 100 50 上位段丘 150 100 50 0 15 20 25 30 河口からの距離(km) 35 0 15 20 25 30 35 河口からの距離(km) 低位段丘(青色)より、中位段丘(緑色)、中位段丘(緑 色)より高位段丘(薄茶色)の標高が高い。同じ色の段丘は 途切れていても同じ年代にできたものと判断できる。 伊豆半島の火山群 5000m 伊豆東部火山群(南西部)の ジオマップ(小山、2010)の 27の火山から段丘形成に関す る5の火山(小山、1992)を 抜き出した。 ・カワゴ平火山 ・鉢窪山 ・丸山火山 ・国士越火山 ・地蔵堂火山 火山噴火の年代、噴出量と海水準変 動との比較 火山 名 tephra lavaの の噴 噴出 出量 量 3200 年前 カワ ゴ平 360× 109kg 400× 109kg 1万 7000 年前 鉢窪 山 120× 109kg 0 丸山 13×1 09kg 36×1 09kg 2万 4000 年前 地蔵 堂 65×1 09kg 6×10 9kg 3万 6500 年前 国士 越 55×1 09kg 4×10 9kg 13 現 在 の 海 水 準 と の 比 較 ( 29 m 噴火 年代 ) 3 10 17 24 30 36 年(1000年) (NOAA HPより) カワゴ平の噴火の際に海面が上 昇して、下位段丘ができたと考 えられる。 河岸段丘の土地利用 大仁駅付近の河岸段丘の土地 利用。 白い四角が建物を表す。 低い段丘は新しい段丘のため、 陸地としての時間が短い。 中位段丘(緑)は建物が多いが、 低位段丘(青)は建物がほとん どなく水田、畑が多い。 拡大図 1000m 500m 水害の被害を受けるため低い段 丘には建物、民家が少ない。 河岸段丘とハザードマップの比較 1000m 浸水深 1.0m~2.0m 2.0m~5.0m 5.0m以上 大仁町洪水避難地(図国土交通省沼津河川国道事務所HPよ り)と本研究で抽出した段丘。 水色~紫色の浸水深1.0m~5.0m以上の範囲はと抽出した下位 段丘が重なる。中位段丘の部分に避難するように指示されて いる。 河岸段丘と台風被害地域の比較 狩野川の内水被害(平成19年9 月台風9号)(国土交通省沼津 河川国道事務所HPより)と抽 出した下降付近の画像 3000m 河岸段丘が存在してい る範囲は一部を除いて 洪水被害はあっていな い。河岸段丘は災害、 特に洪水からまもって くれることが判明した。 まとめ まとめ ・狩野川、青野川、河津川の河岸段丘を抽出し、主に中流に 発達することを示した。 ・狩野川では三段の段丘を確認した。 ・低位段丘より中位段丘、中位段丘より高位段丘が高いこと が示された。 ・狩野川の河岸段丘の形成原因を火山の噴火と海水準変動と して、下位~高位段丘の形成原因にあたる火山の噴火、課 水面の変化を示した。 ・低段丘の一部では過去に洪水の被害にあっているため、ま た洪水時浸水されると推測されているため低位段丘では水 田、中位段丘では民家の土地利用が多い。 ・河岸段丘は洪水などの水害には強いことが示された。
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