スライド 1

薬剤師の行う
居宅療養管理指導とは
(一社)島根県薬剤師会
居宅療養管理指導とは
指定居宅療養管理事業所(薬局)の薬
剤師が医師又は歯科医師の指示に基づ
き、居宅を訪問し、薬学的管理指導を行
う業務のこと。
薬局はすべて「みなし指定」されていて、
「別段の申し出」をしない限り保険薬局で
あれば自動的に指定されます。
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保険点数は1回500点(月4回まで)
居宅系施設への訪問は1回350点(月4回まで)
(ケアハウス、グループホーム、有料老人ホーム他で
老健、特養は不可)
※ 区分支給限度額には入りません
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在宅療養における薬剤師の役割
薬剤師が関与し、
患者にきちんと服薬していただくことにより
患者の病状、ADL、そしてQOLを
改善または維持する。
そのために行うこと
【1】服薬状況が悪い場合、その理由を探り、改善
のための対策を行う。(服薬支援)
【2】薬が患者さんの病状、ADL、そしてQOLに悪
い影響を与えていないかアセスメントする。
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【1】服薬状況が悪い場合、その理由を探り、
改善のための対策を行う。(服薬支援)
①薬の整理がつかなくなったため、飲めない。
②何の薬か理解していないため、飲まない。
③薬の副作用が怖いため、飲まない
④特に体調が悪くないため、飲まない。(自己調整)
⑤錠剤、カプセル、または散剤が飲めない。
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① 薬の整理がつかなくなったため、飲めない
対応策
余った薬(残薬)や併用薬が多数あることにより、
整理がつかず、結果的に服薬状況が悪くなる。
まずは残薬整理
残薬整理における留意事項
○薬の重複、相互作用、併用禁忌、一包化した場合の吸
湿性の有無をチェック。
○直射日光、高温、多湿を避けるなど保管場所、保管方法
の適切化。
○患者の状態と能力に応じた管理方法を模索。
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残薬の確認と整理の実例
(長野県薬剤師会 事例)
患者Aさん(女性)
複数科を受診。多剤服用。訪問介護員は入っ
ているが、薬は自己管理にて整理がつかない
状態。
A病院(心療内科) 処方薬 7種類
B診療所(内科)
処方薬 4種類
在宅訪問時に驚くほどの飲み残し
が出てくることは多い。
残薬整理は訪問初期段階の最重
要課題。
【対応】
処方医に疑義照会を行い、A病院、B診療
所両方の処方薬を合わせて一包化し整理。
これにより服用状況も改善。
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個々の患者の能力に応じた薬の管理方法 例
※ポイント
患者の残存能力を考慮すること。過剰な
服薬支援は能力を落とす場合もある。
一包化
ピルケース
ティッシュ箱に仕切りを
入れて手製のピルケー
ス作成
ホワイトボードと磁石
投薬カレンダー
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②何の薬か理解していないため、飲まない
対応策
薬効を理解できるまで説明、および
その理解を助けるための服薬支援をする。
患者さんが理解して飲むことが鍵である。
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理解を助ける服薬支援の実例
(神奈川 K薬局事例)
【73歳 男性 独居】
脳梗塞を発症し、右側片麻痺あり。器質性人格障害、高血圧など既往歴あり。
散剤より錠剤の方が服薬しやすいが、大きい錠剤は服薬しにくい。
睡眠剤と安定剤は服薬できているが、それ以外の薬は興味がなく、ほとんど服薬で
きていない。
問題点の整理と対策
問題点1)右側片麻痺
→片麻痺でも取りやすいように分包。
問題点2)大きい錠剤は服薬しにくい
→大き目の錠剤は飲みやすいように半割。
問題点3)興味のある薬しか服薬しない
→「興味がない」のではなくて、「何の薬かわからない」のではないか?と考え、
興味を持ってもらえるように、薬の服薬方法と薬効が一目で分かるように分類。
次ページ写真参照
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理解を助ける服薬支援の実例(続き)
【結果】
服用状況が劇的に改善。
新規の薬も日数分全て服用。
結果
薬の服用方法と薬効が
一目で分かるように分類
(神奈川 K薬局 提供写真)
「何の薬か、いつ飲むのかが一目で
わかるので、これなら薬を飲むことが
できる。」(患者コメント)
※介護支援専門員からも感謝の言葉
→このあと、「担当者会議」への出席要請が
あった。(信頼の獲得)
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③薬の副作用が怖いため、飲まない
対応策
副作用への恐怖心を軽減するために、患者さ
んと話し合い、納得して服薬できるようにする。
④特に体調が悪くないため飲まない(自己調
整)
対応策
基本的な病識や薬識を再度説明し、服薬意義
を理解してもらう。
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⑤錠剤、カプセル、または散剤が飲めない
対応策
服薬に関する因子を評価し、患者さんごとの適切な服薬形態の選択と医師への提案する。嚥下ゼリー、オブ
ラート、簡易懸濁法などの導入も検討課題となる。
理解力
嚥下能力
(服薬拒否等)
服薬指導
散剤
細粒剤
水剤
外用剤
注射剤
適切な剤形の検討
速崩壊性薬剤
ゼリー製剤
経皮吸収型薬剤
錠剤粉砕
とろみ添加
栄養補助食品
身体能力
服薬介助検討
簡易懸濁法
服薬補助ゼリー
水分補給ゼリー
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鳴門山上病院診療協力部長 賀勢泰子氏作成を一部改変
【2】薬が患者さんの病状、ADL、そしてQOLに悪
い影響を与えていないかアセスメントする。
患者さんの体調や状態(臨床検査値や食事・排泄・睡眠・運動・
認知症様症状などの情報)を得る。
↓
これらの情報を元に、薬がそれらに影響していないかを、薬物
動態学や薬理学などの知識をフルに使いアセスメントする。
↓
そのアセスメントを医師、看護師、介護支援専門員らにフィード
バックする。
「体調チェックフローチャート」の活用(日本薬剤師会)
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主な体調チェックのポイント
排泄
食事
食欲
味覚
嚥下状態
口腔内清掃
口渇
吐き気
胃痛
など
尿の回数、出具合
便の回数、出具合
汗(状態)
など
睡眠
睡眠の質、時間
日中の傾眠
不眠の種類
など
運動
ふらつき
転倒
歩行状態
めまい
振るえ
すくみ足
手指の状態
麻痺
など
認知機能(せん妄、幻覚、見識障害、一過性健忘、抑うつ等)
※日本薬剤師会作成、「体調チェック・フローチャート」より
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島根県介護支援専門員協会会員
に対するアンケート結果報告
島根県薬剤師会 介護保険部会
【背景】
薬剤師による居宅療養管理指導が全国的
に増加しない理由は、薬剤師が在宅での
薬の管理に無関心な事と、要介護者の在
宅でのくらしを調整するケアマネジャー(以
下、ケアマネ)とのコミュニケーション不足に
あるのではないかと考えられる。
そこで今回ケアマネの感じた在宅での薬剤
師の役割について現状を調査した。
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【方法】
島根県介護支援専門員協会総会時に行わ
れた研修会において、『薬剤師の行う居宅
療養管理指導とは』と題した講演を行った。
それに合わせて、県下全ケアマネに送付す
る総会の案内状の中にアンケートを同封し
てもらい、ケアマネの思い、意見等を調査
した。
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問3.利用者様のお薬やお薬の服用についておたずねします。
Q7 利用者様のお薬やお薬の服用に関する問題点を感じた事
はありますか
1. ある
168
2. ない
13
19
Q8 それは何ですか
1. お薬がたくさん余っている
103
2. お薬の飲み忘れがある
132
3. お薬の保管状況が悪い
27
4. お薬の副作用かもしれない状態に遭遇した
74
5. 他科(多科)受診によるお薬の重複が心配
70
6. お薬が飲みにくそう(錠剤が飲みにくい)
79
7. 食習慣のずれ
52
20
Q9 そのお薬の問題点に対してどうしましたか
1. 不安だがそのまま
15
2. 誰かに相談した
152
<医師(99)・看護師(70)・薬剤師(54)・そ
の他(20)>
その他(訪問看護・利用者家族・サービス
事業者・居宅ケアマネ・ソーシャルワーカー・医
療相談員・ヘルパー)
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問4.薬剤師の居宅療養管理指導についておたずねします。
Q10 薬剤師の行う居宅療養管理指導があることを知っていますか
1.知っている
163
2.知らない
19
22
Q11 問3の利用者様のお薬の問題点が薬剤師が関われば解決す
ると思いますか
1.思う
100
2.思わない
26
3.分からない
64
23
Q12 薬剤師が担当利用者様のお薬を管理してくれる事を望みます
か
1. 望む
105
2. 望まない
10
3. 分からない
63
24
Q13 ケアマネジャーから薬剤師に居宅療養管理指導を要請出来るも
のならしますか
1. する
93
2. しない
11
3. 分からない
74
25
Q14 どの薬局が居宅療養管理指導を実施しているか知っています
か
1. 知っている
45
2. 知らない
135
26
Q15 どうすれば薬剤師に居宅療養管理指導を実施してもらえるか知っ
ていますか
1. 知っている
46
2. 知らない
131
27
問5.多職種連携についておたずねします。
Q16 担当利用者様の担当者会議に薬剤師が参加した事がありますか
1. ある
19
2. ない
161
28
Q17 担当者会議への薬剤師の参加を望みますか
1. 望む
2. 望まない
3. 分からない
100
16
65
29
Q18 現状で多職種連携のパートナーの1人として薬剤師に声をかけ
ますか
1. かける
52
2. かけない
61
3. 分からない
68
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Q19 今後薬剤師が多職種連携のパートナーの1人となる事を望
みますか
1. 望む
141
2. 望まない
8
3. 分からない
33
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Q20 最後に今後、薬局薬剤師に望む事をあなたの思うままにお書き
下さい。
• 在宅で薬剤師がどこまで仕事をしてくれるのか分
からない。
• 本人とDr.とサービス事業者のつなぎ役になってほ
しい。
• 必要と感じても家族の同意が得られないので説明
用のパンフレットがほしい。
• 在宅で薬剤師による薬の管理が出来る事をサービ
ス事業者が理解するとともに市民向けのPRも必要だ
と思う。
これらの意見を参考に島根県薬剤師会で居宅療養管理
指導に関する説明およびPR用のパンフレットを作成しま
した。別紙参照
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33
34
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【結果】
島根県のケアマネ協会全会員に事前説明なしでの一
斉調査を行ったため、回収率は20.1%であった。
利用者様のお薬の服用に関して、問題点を感じたケア
マネは92.8%。その問題点の相談相手は医師、看護
師に次いで薬剤師は3位だった。居宅療養管理指導を
実施してくれる薬局を75%のケアマネは知らなかった。
現状で、多職種連携のパートナーとして薬剤師に声を
かけるのは28.7%。しかし、77.5%のケアマネは今後薬
剤師が多職種連携のパートナーになることを望んでい
た。
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居宅療養管理指導のあり方に関する
調査
日本薬剤師会
薬剤師の介入による効果
①介入後すぐに効果が期待されるもの
服薬状況の向上、減薬、後発医薬品への切り替え
②介入後数カ月経過後に効果が期待されるもの
ADLの改善・維持や多職種の業務の軽減
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訪問1回500円(500点)
高齢者にとっての経済的負担
居宅療養管理指導が進まない理由の1つ
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調査結果から整理される実施フロー
① アセスメントのための訪問
② 指示通りにしっかりと薬が飲める条件の整備
③ 継続的な情報提供・支援
④ 居宅療養管理指導の終了
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薬剤師が在宅でできる事、やるべき事を
やる。患者・家族で薬剤管理・服薬管理
ができる状態になる。
居宅療養管理指導の終了
(短期間で状態改善すれば終了してもよい)
必要になれば再開
(自己負担を抑えることで導入促進)
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サービス担当者会議でこういうことが
できます
① 使用する薬剤による体への影響について関
係する多職種にそのポイントを伝える。
② 使用する薬剤の「使用上の注意」や保管上
特に注意する点がある場合にその情報を多
職種で共有する。
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退院時カンファレンスでこういうことが
できます
① 入院時に使われていた薬剤が在宅でも使用
できるか確認
② 一包化や薬の保管方法の検討
③ 病院薬剤師と情報交換
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地域の人々が病気や要介護状態になって
も、最後まで住み慣れた地域で安心して
過ごすためには、他職種の連携は不可欠
です。
微力ながら薬剤師も努力してまいります
ので連携のパートナーの一員として迎え
ていただきますよう宜しくお願いいたしま
す。
島根県薬剤師会
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