統計学基礎Ⅱ

第2章で示した、貯蓄現在高階級別の世帯分布は、下のようになっていた。
• この分布は、少数の大
金持ちと多数の庶民が
いる状態を示している。
• このような状態は不平
等であると考える。
• すべての人の資産†が
等しい状態を平等‡とし、
そこからどの程度離れ
ているかを知りたい。
出典:総務省統計局『家計簿から見たファミリーライフ』
(http://www.stat.go.jp/data/kakei/family/4-5.htm#1)
† 所得面から平等を
みることもある。
‡ 平等を定義すること
は容易ではないが、
ここではこのように
定義する。
† 5人兄弟の遺産相続の例
5人兄弟が遺産を相続するとき、
(a) は、5人兄弟がそれぞれ5分の1ずつ相続するという例。
 (b) は、5人兄弟がそれぞれ異なった取り分を相続する例。
 (c) は、長男がすべての遺産を相続するという例。

(a)
長男
次男
三男
四男
五男
(b)
取り分
1/5
1/5
1/5
1/5
1/5
長男
次男
三男
四男
五男
(c)
取り分
5/15
4/15
3/15
2/15
1/15
長男
次男
三男
四男
五男
取り分
1
0
0
0
0
(a) は、5人が平等に相続しているのに対して、(b)や(c) は、
不平等である。
(b)のパターンを例に取り上げる。このパターンを、取
り分の小さい順に並べかえ、人数の比率と金額(遺産の
取り分)の比率の累積を計算してみる。
五男
四男
三男
二男
長男
計
人数
人数比率
累積人数比率
遺産額
金額比率
累積金額比率
1人
1人
1人
1人
1人
5人
1/5
1/5
1/5
1/5
1/5
1/5
2/5
3/5
4/5
5/5
1億円
2億円
3億円
4億円
5億円
15億円
1/15
2/15
3/15
4/15
5/15
1/15
3/15
6/15
10/15
15/15
累積-それ以前のものをすべて加えるということ。
(例) (b)の三男の累積金額比率
「五男の取り分」+「四男の取り分」+「三男の取り分」となる
ので、1/15 + 2/15 + 3/15 = 6/15 となる。
a) ローレンツ曲線
横軸に累積人数比率を、縦軸に累積金額比率をとり、
線でつないだものが下の図である。
1
0.9
累積人数比率 累積金額比率
1/5
2/5
3/5
4/5
5/5
1/15
3/15
6/15
10/15
15/15
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0

0.2
0.4
0.6
0.8
この曲線は、ローレンツ曲線とよばれ、不平等の度合いを表す
曲線である。
1
遺産相続の3つのパターンについて、取り分の小さい順
に並べかえ、人数の比率と金額(遺産の取り分)の比率の
累積を計算してみた。
(a)
(b)
累積人数比率 累積金額比率
五男
四男
三男
次男
長男
1/5
2/5
3/5
4/5
1
(c)
累積人数比率 累積金額比率
1/5
2/5
3/5
4/5
1
五男
四男
三男
次男
長男
1/5
2/5
3/5
4/5
1
1/15
3/15
6/15
10/15
1
累積人数比率 累積金額比率
五男
四男
三男
次男
長男
1/5
2/5
3/5
4/5
5/5
0
0
0
0
1
遺産相続の例

1
(この例では(a)のグラフが該当す
る。)
0.9
0.8
累積金額比率
45度線が完全平等線といわれる。
0.7
0.6
(a)
(b)
(c)
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.2
0.4
0.6
累積人数比率
0.8
1

不平等度が大きいほど、グラフが
完全平等線から右下方に離れる。
→ (b)より(c)の方が不
平等
b) ジニ係数
ローレンツ曲線の完全平等線からの離れぐあい
を数値で表したもの
完全平等線とローレンツ曲線で囲まれる部分の
面積を2倍したもの
遺産相続の例
1
0.9
0.8
累積金額比率
0.7
この面積の2倍
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.2
0.4
0.6
累積人数比率
0.8
1
灰色の四角の面積が1なので、0と1の
間の値をとり、1に近いほど不平等度
が大きい
ジニ係数の計算方法
残りの部分を台形に分割し、正方形から引く
台形の面積の公式
(上底+下底)×高さ÷2
を使う。
下底
上底
高さ
遺産相続の例 (b)
遺産相続の例
1
0.9
0.8
0.7
累積金額比率
五男
四男
三男
次男
長男
累積人数比率 累積金額比率
1/5
1/15
2/5
3/15
3/5
6/15
4/5
10/15
1
1
0.267
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
遺産相続の(b)で、次のような台形がある。
上底 -
下底 -
高さ -
(1/5)
三男までの累積金額比率(6/15)
次男までの累積金額比率(10/15)
三男と次男の累積人数比率の差
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
累積人数比率
この台形の面積は (6/15 + 10/15)×1/5÷2
= 8/75
このような台形(1番左は直角三角形)の面積を全部加え、その2倍を正方形から引く
1-(1/150 + 2/75 + 3/50 + 8/75 + 1/6) × 2
= 1-11/30×2
= 4/15 = 0.2666…
年間収入の例 (平成21年 家計調査 2人以上世帯)
階
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
900
1000
1250
2000
級
-
集計世帯数 累積世帯数 累積世帯比率 年間収入
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
900
1000
1250
1500
190
335
482
662
690
637
578
543
461
441
360
331
288
479
356
540
223
235
190
525
1007
1669
2359
2996
3574
4117
4578
5019
5379
5710
5998
6477
6833
7373
7596
7831
0.00000
0.02426
0.06704
0.12859
0.21313
0.30124
0.38258
0.45639
0.52573
0.58460
0.64091
0.68689
0.72915
0.76593
0.82710
0.87256
0.94151
0.96999
1.00000
157
226
275
323
373
423
473
522
573
621
672
722
772
844
944
1098
1354
1968
年収総額
29830
75710
132550
213826
257370
269451
273394
283446
264153
273861
241920
238982
222336
404276
336064
592920
301942
462480
累積年収総額 累積年収比率
0.00000
0.00612
0.02165
0.04884
0.09271
0.14551
0.20079
0.25687
0.31502
0.36921
0.42539
0.47502
0.52405
0.56966
0.65260
0.72154
0.84318
0.90512
1.00000
29830
105540
238090
451916
709286
978737
1252131
1535577
1799730
2073591
2315511
2554493
2776829
3181105
3517169
4110089
4412031
4874511
計
(例) (0.00612+0.02165)×(0.06704-0.02426)÷2 = 0.00059
ジニ係数 1-0.35060×2 = 0.29880
台形面積
0.00007
0.00059
0.00217
0.00598
0.01049
0.01408
0.01689
0.01983
0.02014
0.02237
0.02070
0.02111
0.02011
0.03738
0.03123
0.05395
0.02489
0.02859
0.35060