1.5 Transforms of Probability Distributions 確率分布の変換 FM08011 横尾 章一郎 1 もくじ 母関数 定義 , 例題 , 問題 特性関数 定義 , 例題 , 問題 2 §1 母関数 3 §1 母関数 (Generating Function)とは 確率変数の分布を関数で表す方法は分布関数以外に もある。母関数はそのような関数の一つである。 母関数は確率変数の和の分布を計算する時に 役に立つ。また、母関数を使うと、平均、分散などを 容易に計算できる。 ※宮沢政清 著 『確立と確率過程』より 4 §1 母関数 (定義1:母関数(Generating Function) ) D(0;1) は、複素数平面上の中心0の単位閉円板を表す。 Xは自然数Nを値にとる確率変数とする。 そのとき母関数(g.f.)は、次の関数gX : D(0;1) C である。 X k gX (z)= E[ z ] P( X k ) z ・・・ (69) k 0 5 §1 母関数(例題1:二項確率変数) サイズn、パラメータp∈(0,1)の二項確率変数 P X k n Ck p 1 p k n k このとき、母関数gX (z)は n n k 0 k 0 k k nk P ( X k ) z C ( zp ) ( 1 p ) n k 二項定理より n ( z ) ( 1 p pz ) gX ・・・ (70) 6 §1 母関数(例題2:ポワソン確率変数) パラメータθのポワソン確率変数は P X k e k k! このとき、母関数gX (z)は P( X k ) z k e k 0 θ k 0 (θz ) k k! テイラー展開(指数関数と自然対数)より θ( z 1) ( z ) e gX ・・・ (71) 7 §1 母関数 (問題1:独立同分布(i.i.d.)確率変数の確率和)① Yn n1は、同じ母関数gYを持つ整数値をとる確率変数の 独立同分布確率変数数列である。 Tは Yn n1 と独立な別の整数値をとる確率変数であり、 その母関数はgT。次の確率変数Xの母関数を求めよ。 T X Yn k 1 但し、習慣から、 X n 1 0 とする。 0 8 §1 母関数 (問題1:独立同分布(i.i.d.)確率変数の確率和)② Z X Z n1 T Yn Tn1Yn kn1Yn Z 1T k Z 1T k k 0 k 0 従って、Tと Yn n1は独立より k k Y Y n X n 1 n1 n E[ Z ] E Z E[1T k ] 1T k E Z k 0 k 0 E[ Z ] E[ Z ]P(T k ) gY ( z ) k P(T k ) Y1 k 0 Yn k 0 gT ( gY ( z )) 9 §1 母関数 n 0 P( X n) 1 から、数列{P( X n)}n0 の冪(べき)級数の 収束半径Rは1以上である。従ってgXの定義域は、 単位開円板を含んでいる。 この開円板の内部で、項別微分が可能である。 例えば、 g X ( z ) nP( X n) z n 1 ・・・ (72) n 1 g X ( z ) n(n 1) P( X n) z n 2 ・・・ (73) n2 冪(べき)級数 10 §1 母関数 g x( z ) nP( X n) z n 1 ・・・ (72) n 1 式(72)について 右辺は、z = 1で定義された時、 n 1 nP ( X n) これは非負であるが、無限大でもあり得る。 一方、左辺は式(69)からz = 1で必ずしも定義されない。 そこで、g (1) n1 nP ( X n) を定義する。 つまり、 g (1) E[ X ] ・・・ (74) アーベルの定理から、実変数 x↑1 ならば、 n 1 nP ( X n ) x n1 n1 nP ( X n) となる。 11 §1 母関数 従って、実数区間[0,1)の関数としてのgxは、(74)によって、 [0,1]に拡張可能であり、拡張後も連続性を保存している。 別の言い方をすると、E[X]は未知であるが、 [0,1)上でg’x (x)の式が成り立っており、 xを1へ近づけることにより、lim g’x (x)を計算できる。 しかもこの極限がE[X]でもある。 同様に、(73)から、 g X (1) E[ X ( X 1)} ・・・ (75) と定義すると、 g X (1) は[0,1]上で連続関数に出来る。 12 §1 母関数(例題3:問題1の続き) の母関数は であることが 分かった。 従って[0,1)上で とすると、 従って となる。 。 となる。 13 §1 母関数 母関数は確率変数の分布を特徴付ける。これは次の意味を持つ。 Xの分布を知らないが、その母関数g(z)を計算出来、 更に、原点の近傍でその冪級数展開 n a z n g(z) = n 0 を計算出来たとする。 g(z)はZの母関数であるから n P ( X n ) z g(z) = n0 となり、 原点の近傍でその冪級数展開はユニークであるから Xの分布は、全ての n 0 で、 P( X n) an となる。 同様に、もしも自然数を値に持つ二つの確率変数が 同じ母関数を持つならば、それらの分布は同じである。 14 §1 母関数(問題2:クジ)① X1 , X2 , X3 , X4 , X5 , X6は、{0,1,…,9}上で 一様に分布してる独立確率変数である。 Y=27+ X1 + X2 + X3 - X4 - X5 - X6の母関数を求めよ。 この結果を使って、6桁のクジで最初の3桁の和は 最後の3桁の和と等しい確率を計算せよ。 1 1 1 z10 1 9 E[ z ] (1 z z ) 10 10 1 z 10 10 1 1 1 z 1 1 1 z E[ z X i ] (1 z 1 z 9 ) 1 10 10 1 z 10 z 9 1 z Xi E[ z Y ] E[ z 27 3i 1 X i i64 X i 3 ] E[ z 27 z i 1 6 Xi z i 4 Xi 3 6 ] z 27 E[ z ] E[ z X i ] Xi i 1 i 4 15 §1 母関数(問題2:クジ)② 従って、母関数は 1 (1 z10 ) 6 gY (z) = 6 6 10 (1 z ) P(Y)=P(27+X1+X2+X3-X4-X5-X6)=P(27)は、 gY(z)の冪級数展開のz27の係数であり、2項定理より、 (1 z10 )6 16 C1z10 6 C2 z 20 原点の周りでテイラー展開より、 (1 z)6 16 C1z1 7 C2 z 2 8 C2 z 3 従ってz27の係数は、 1 P(27 ) 6 ( 32 C27 6 C1 22 C17 6 C2 12 C7 ) 10 16 §1 母関数(定理1:母関数のグラフ) ] (α)関数 g: [0,1] Rを g(x) = E[ x と定義する。 但し、Xは非負整数値確率変数である。 gは非減少かつ凸である。更に、もしも P( X 0) 1 ならば、 gは厳密に増加関数であり、もしも P( X 1) 1 ならば、 gは厳密に凸関数である。 (β) P( X 1) 1と仮定する。もしも E[ X ] 1ならば、 方程式 x g (x) はユニークな解 x [0,1] を持ち、 それは x 1 である。もしも E[ X ] 1ならば、 方程式は[0,1]上に二つの解を持ち、 それらは、x 1 と x x0 (0,1)である。 X 17 §1 母関数(定理1の証明:母関数のグラフ) n 1 nP ( X n ) x 0 より、gは非減少である。 x [0,1]で、 g’(x) = n 1 更に n2 n ( n 1 ) P ( X n ) x 0 より、gは凸である。 g”(x) = n2 g’(x)がある x (0,1) で0となるためには、全ての n 1 で P( X n) 0 でなければならない。従って、 P( X 0) 1 となる。 g”(x)があるx (0,1)で0となるためには、全ての n 2 で P( X n) 0 でなければならない。 従って、P( X 0) P( X 1) 1 となる。 18 §1 母関数(定理1の証明:母関数のグラフ) 厳密に増減かつ厳密に凸関数である場合 ( P( X 1) 1) g : [0,1] Rのグラフは、 一般に次の図に示すように、 (1) 1 (1) 1 の二つの形になる。 E[ X ] g と E[ X ] g 19 §2 特性関数 20 §2 特性関数 (CharacteristicFunction)とは 母関数は必ずしもすべての変数値に対して存在しない。 しかし複素数を使うことによって母関数に類似の 関数で、すべての変数値に対して存在する関数を作る ことが出来る。 ※宮沢政清 著 『確立と確率過程』より 21 §2 特性関数 (定義1:特性関数(CharacteristicFunction)) 実数値確率ベクトル 特性関数(c.f.) の の定義 X (u) E[e iuT X ] ・・・ (76) ここで i2 = -1 とする 22 §2 特性関数 (例題1:ガウス(Gaussian)と指数(Exponential)) 以下の式は二つの主要な連続確率変数の特性関数である。 (ⅰ)ガウス 1 f ( x) e 2π (ⅱ)指数 1 ( xm)2 2 2 x X (u ) e f ( x) e 1x 0 X (u ) 1 imu 2u 2 2 ・・・ (77) iu ・・・ (78) 23 §2 特性関数 特性関数は、確率ベクトルの分布を決定する。 これは母関数が整数値確率変数の分布を決定するのと 同じである。連続確率ベクトルの場合は、古典的フーリエ理論 から容易に理解できる。 実際、 と が 上の二つの確率変数XとYの 確率分布関数であり、それらの特性関数が同じであると 仮定すると、 のフーリエ級数から 従ってフーリエ反転理論から、全ての区間 で が得られる。 X (u) が積分可能であれば、フーリエ反転公式からXの 確率密度関数は f ( x) 1 e iu x X (u )du (2π) n T Rn 24 §2 特性関数(問題1:コーシー(Cauchy)) コーシー確率変数の特性関数が X (U ) e|u| であることを示せ。 但し、コーシー確率変数の確率密度関数は、 f ( x) 1 1 π1 x 2 |u | 2 g(x)。 2 1 x e のフーリエ変換は、 g(x)は積分可能であるから、フーリエ反転公式を適応し e |u| e |u| e iux du 1 1 1 iux iux g ( x ) e dx e dx 2 2π π 1 x 25 §2 特性関数(定理1:特性関数の独立性基準) XとYは各々次元 と の確率ベクトルとする。 また、全ての 、 に対して、 E[e i ( vT Y wT Z ) ] 1 (v) 2 (w) ・・・ (79) が成り立つとする。 ここで と は、確率ベクトル と の 特性関数であるとする。 この場合、YとZは独立であり、Yは 、Zは と同じ 分布を持つ。 26 §2 特性関数 (定理1の証明:特性関数の独立性基準) と と定義すると、(79)は E[eiu X ] (u) 1 (u) 2 (w) となる。 もしも、 を満たすベクトル があれば、特性関数は累積分布関数を特徴付けることから、 と は同じ累積分布関数を持つ。 が と同じ分布を持ち、 が と同じ分布を持ち、 と が独立になるように と を選ぶと、 iu X iv Y iw Z iv Y iw Z E[e ] E[e e ] E[e ]E[e ] 1 (v) 2 (w) 従って は と同じ分布を持ち、 更に、 と は独立である。 T T T T T T 27 §2 特性関数(定理2:事象と確率変数の独立性) Aは事象、Xは確率変数を表し、任意の u R に対して 次の式が成り立つとする。 E[1A e iuX ] P( A) E[e iuX ] すると、AとXは独立である。つまり1AとXは独立である。 28 §2 特性関数 (定理2の証明:事象と確率変数の独立性) すべての u, v R に対し、 E[eiuX eivY ] E[eiuX ]E[eivY ] を確認する必要がある。ここで、 eivY 1 1A 1A eiv 1 1A (eiv 1) 従って、 E[eiuX eivY ] E[eiuX ] (eiv 1) E[1A eiuX ] 一方 E[eiuX ]E[eivY ] E[eiuX ] (eiv 1) P( A) E[eiuX ] 以上から E[1A eiuX ] P( A)E[eiuX ] ならば、AとXは独立である。 ここで、Aは正の確率で起きる事象とし、Aによる条件確率を PAで表す。つまり PA ・( ) PA ・( | A) 29 §2 特性関数(定義2) 確率変数XとYは、確率PAに関して独立であるならば、 Aが与えられるという条件で独立であると呼ばれる。 特性関数の独立性基準の定理(定理1)より、 この為の必要十分条件は、 全ての u, v R に対し、次の式が成り立つ事である。 EA[eiuX eivY ] EA[eiuX ]EA[eivY ] 可積分、または、非負確率変数Zに対し、 以下の式が成り立つ。 P( A) EA[Z ] E[Z1A ] 従って次項の結果が直に得られる。 30 §2 特性関数(定義3) Aを正の確率の事象とする。Aが与えられているという条件で 確率変数XとYが独立であるための必要十分条件は、 全ての u, v R に対し、次の式が成り立つことである。 P( A) E[eiuX eivY1A ] E[eiuX 1A ]E[eivY1A ] 31 32 補足:P5 単位閉円板 0 1 複素数全体の集合 C 実数全体の集合 R 円の境界を含む 円の境界を含まない : 閉円盤 : 開円盤 P5もどる 33 補足:P6,7 テイラー展開 二項定理 ( x y) 2 C 0 x y 2 C 1x y 2 C 1x y 2 2 0 x 2 xy y 2 1 1 0 2 2 指数関数と自然対数 n x e n 0 n! x P6もどる P7もどる テイラー展開:wikipedia 34
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