基礎地学II 宇宙論(3/3)

基礎地学II
宇宙論(3/3)
ー自然哲学から自然科学へー
北海道大学・環境科学院
藤原正智
http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/
「銀河宇宙」という描像
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“天の川”は、我々の太陽系が属する“天の川銀河”(“銀河系”)の円盤面方向に対応
天の川銀河は、アンドロメダ銀河に似たひとつの渦巻銀河
[全て、地学図表より]
http://hubblesite.org/gallery/album/
 tour-m51.swf
宇宙の階層構造
[地学図表より]
膨張宇宙の発見
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理論研究の側から: アインシュタインの一般相対論(1915年)
特殊相対論(1905年): 光速度不変を満たす時間空間構造。ただし、万有引力は
瞬時に伝わってしまう(光速より速い)ので不完全
一般相対論では: 万有引力は時空の歪みを通して伝わると見る
一般相対論による「アインシュタインの重力場方程式」:
物質場を与えた場合の時空の歪みを示す式
この式を用いて「宇宙においてどのような天体分布が安定か」という問題に取り組む
ところが、安定解が存在しないことが判明(膨張か収縮かしかない)
宇宙は定常(安定)であるべきと考えたアインシュタインは、万有引力を打ち消す
(人工的な)“宇宙斥力”(宇宙項;距離が離れると効いてくる力)を想定・導入
後年「生涯最大の失敗」と述懐(物理学に基づく結論と自らの思想が合致せず)
“フリードマン宇宙”:宇宙項のない膨張する宇宙
(ただし、近年、“宇宙項”がゼロでないことが観測的に明らかになってきた:
現在の宇宙の膨張速度は一定ではなくわずかに加速している。)
膨張宇宙の発見
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観測研究の側から: ハッブルの法則(1929年)
ほとんどの銀河は赤方偏移(ドップラー効果)を示す(つまり我々から遠ざかっている)が、
その速さはそれぞれの銀河までの距離に比例する(ハッブル定数)
1932年、アインシュタインとド・ジッターが、「膨張宇宙」の証拠であると指摘
(あくまで「宇宙“空間”が膨張している」のであって
「空間は定常で銀河が動いている」(新たな天動説!)とはとらえない)
(これは銀河群以上のスケールの話。銀河系、太陽系のスケールでは
当然万有引力が効いている)
[地学図表より]
宇宙の膨張宇宙の年齢
宇宙は膨張している!(観測事実!)
 時間を戻すと宇宙の体積がゼロだった時刻が存在
 つまり、宇宙には“始まり”があり、“年齢”がある!
 では、物質や力はいつどのようにして“誕生”した?
(新たな難問!)
しかし. . .
当初のハッブル定数により見積もると、
現在の宇宙の年齢は約20億年
他方、地球の年齢はもっと長いことが当時すでに知られていた
「ゼロから始まる膨張宇宙」は20C半ばまで半信半疑
参考― 地球の年齢に関する議論
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多くの天地創造神話では大変長いと考えられていた
旧約聖書「創世記」ではその細かい記述の解釈によるとせいぜい6000年程度
(しかも6日間で天地の完成)
西欧では17Cのガリレオやデカルト達の登場まで、聖書の強い影響下
(この頃インドや中国へ出かけた宣教師達が、より長い歴史を持つことを“発見”。
ノアの洪水の記録は中国にはない!)
18C~19C:地球はどろどろに溶けた熱い星として始まったという考え
熱した金属・岩石が冷える時間から推定数万年~数億年
19C初頭:“化石”が過去の生物の遺骸であること確立。
化石を用いた地層順序決定法確立。(生物種の“絶滅”!)
19C半ば:ダーウィン「種の起源」-生物の進化という発想が広く世に流布
進化にかかる時間、という問題に直面
19C末:放射能、放射性元素の発見 地球に熱源(冷える時間が伸びる)、
崩壊速度・半減期により時計として使える
“放射年代測定法”
(ウラン鉛の崩壊を利用し、1907年には、16億年の
年代を持つ岩石資料の存在確認)
1911年:地質年代(顕生代(6億年前まで))に絶対年代入る
1960年頃:35億年前に生成した岩石
1953年:隕石(太陽系形成初期に生成)の鉛同位体比 45.5億年に冷え固
まった:これが地球の年齢
ビッグバン宇宙と物質の起源
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宇宙に始まり物質(元素から銀河まで)はいつどこでどのようにして生成?
物質に関する新しい物理学の誕生 : 量子論(原子物理・光と物質の相互作用、
原子核物理、素粒子物理)
1869:メンデレーエフによる最初の周期表; ~1911:ラザフォードのアルファ線の研究
と原子模型(太陽系モデル); 1913:ボーアの原子模型(量子論); 1932年:中性子
の発見; 1935年:湯川秀樹による陽子・中性子を結びつける力「中間子理論」
[地学図表より]
・メンデレーエフ
各元素の相互関係の
整理・体系化を志す
・原子番号
電子数=陽子数
(元素の化学的性質)
・中性子数~陽子数
同位体:中性子数異なる
・原子量、“核”
陽子数+中性子数
・放射性元素
不安定なため、一定
時間後核分裂して
別の元素になる
ビッグバン宇宙と物質の起源
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太陽はなぜ、どれだけの期間、光っているのか
化学(電気)、重力エネルギーではなく核エネルギー
原子核同士の衝突・融合(核融合)が星の輝きの源
星の内部で元素が生成(ホイル他、1957)
つまり、「星には一生がある」、「地球上等に見られる各種元素は恒星内部で作
られる」
しかし、ヘリウムの宇宙存在量は、星の理論と比べて多すぎる。
多すぎる分はどうやって作ったのか?
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一方、ガモフによる元素合成の研究(1947)によると
元素が星内部で核融合で合成されるには、星の温度は低すぎる
 宇宙初期の収縮状態があったのなら超高温のはず。そこで合成すればいい
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“火の玉宇宙”
 初期宇宙(誕生後1~1000秒、温度1億度以上、高密度):
陽子、電子などから、水素、ヘリウムが生成
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つまり「宇宙は大爆発から始まった」(ガモフ)
論敵のホイルがからかい半分に「ビッグバン」とラジオで命名
ビッグバン理論とその証拠
・宇宙背景放射の発見:
1948年、アルファとハーマンの予言:ビッグバンという超高温の時代があったのであれば、
名残りの電磁波が宇宙に満ちているはず。宇宙膨張とともに冷えて5K程度になっているはず。
1965年、ペンジアスとウィルソンによる一様な“雑音電波”の発見2.7K宇宙背景放射
(宇宙背景放射は実は目で見える。放映後のブラウン管テレビのちらつき(電波ノイズ)のうちの一部。)
・他に、ビッグバン理論の証拠として、宇宙膨張とヘリウムの遍在(3つも証拠があると言える)
COBE, 1989
WMAP, 2001
(背景放射とその
ゆらぎの精密観測)
2006ノーベル物理
学賞(COBE)
[地学図表より]
・宇宙の年齢の確定
ハッブルの当初見積もりは20億年。銀河の動きの観測精度向上により1990年には90億年
一方、星の進化理論より最古の星団の年齢は140億年近い。
アインシュタインの宇宙項の再考膨張加速超新星の観測により、わずかな加速判明
現在では、宇宙の年齢と天体の年齢に矛盾はなくなり、宇宙の年齢は約140億年
[地学図表より]
恒星の一生と元素合成
[ブロッカー、なぜ地球は人
の住める星になったか?、
ブルーバックス]
・星の進化の道筋と寿命の長さはその重さで決まる。
・太陽は現在“主系列星”(宇宙の星の90%)の状態にある。
・恒星の内部では、CNOサイクルによりHe以降の元素が生成
され、その際の核融合エネルギーによって星は光る
・燃料欠乏再収縮内部温上昇より重たい元素の生成
という過程を繰り返しながら、赤色巨星化していく
・鉄までは核融合で安定化するので、上記過程で生成する。
・鉄まで出来ると核融合熱を出せなくなり星は潰れ始めるが、
その際の重力エネルギー解放による昇温により鉄が分裂し、
粒子数増大圧力増大超新星爆発となる。
この時に鉄以降の元素が中性子捕獲により生成。
・重さが太陽の30倍以上の星は、重すぎて爆発出来ず収縮し
続ける中から光さえ出て来られないブラックホールとなる
http://hubblesite.org/gallery/album/
 tour-crab.swf
ブラックホール
http://hubblesource.stsci.edu/sources/video/clips/details/lg-blk-hole.php
残された問題
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[宇宙論のすべて、より]
ビッグバン以前の宇宙は?
ビッグバン時代:宇宙の始まり
から約38万年間
力と素粒子・核子等が生まれた
一般相対論(重力理論)は宇宙の始ま
り直後には適応不可
(cf. ニュートン力学と量子力学)
力が4つあるのは美しくない
(重力、電磁力、強い力(クォーク同士
を結びつけ陽子、中性子を作る力)、
弱い力(中性子を崩壊させ、電子、
ニュートリノを放出させて陽子に
変える力))
大統一理論・量子重力理論へ;
その構築の努力として「超弦理論」
素粒子の標準理論(クォーク、レプトン、
ボーズ粒子、ハドロン)
宇宙項は初期宇宙で大きかった
 インフレーション宇宙論
(「平坦性問題」、「地平線問題」)
まとめ ー 宇宙論 ー
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天体現象の観察の時代
自然哲学の時代
中世ヨーロッパにおける太陽中心説(地動説)復興の努力
コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、そしてニュートンの万有引力
(地球の自転はなかなか実感できない)
宇宙は有限か無限か、定常か非定常か
ニュートンの無限宇宙(万有引力の帰結)
オルバースの夜空のパラドックス
銀河宇宙そして宇宙の階層構造
膨張宇宙の発見
宇宙の寿命と始まり(ビッグバン)
物質の起源と恒星の一生
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科学者とは何か、科学とは真理とは何か ― 実験科学・実証科学
時代の流れから独立でいられるのか
神話の時代から何が変わったのか ― 人間の世界認識力
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講義資料は: http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/edu/chigaku2009/
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オリオン座流星群、19日夜からピーク
2006年以降、出現数が急増しているオリオン
座流星群が、19日夜~23日未明にピークを
迎える。
今年は月明かりがないため条件が良く、国立
天文台は特設ホームページを設置し、観測を
呼びかけている。
同流星群は、通常は1時間に20個程度の
流星しか見られないが、06年からは1時間
当たり流星が最大で50個以上と急増。東の
夜空に浮かぶオリオン座近くの場所(放射点)
を起点に広い範囲に現れ、肉眼で観測できる。
急増したのは、約3000年前にハレー彗星
(すいせい)から放出されたちりが06~10年
のこの時期に、地球の軌道に接近するため。
次に急増するのは70年後で、来年は月明かりもあり、良い条件での観測は事実上、今年がラスト
チャンスになるという。
(2009年10月18日20時47分 読売新聞) <http://www.yomiuri.co.jp/space/news/20091018-OYT1T00660.htm>