基礎地学II 海洋学事始

基礎地学II
海洋学事始
北海道大学・環境科学院
藤原正智
http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/
海洋学事始
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海水の特徴
海洋の温度・塩分分布の特徴
海流と海洋大循環:
風成循環(西岸強化)と熱塩循環(海氷生成)
潮汐とそのメカニズム
津波とそのメカニズム
海氷・流氷の話
海洋観測の話
参考文献・参考図書
・「地学図表」
・「ハワイの波は南極から -海の波の不思議-」 永田豊、丸善
・“Ocean Circulation” 2nd Edition, The Open University
・「改訂版 流れの科学」 木村竜治、東海大学出版会
海洋圏の概観
[地学図表より]
海洋: 地球表層の7割。平均深度3800m。
陽イオンの起源:岩石の化学的風化;
陰イオンの起源:火山活動等による揮発性ガス
・Caイオン以外のイオン濃度比はどこでも一定  混合の時定数比較的短い(~1600年)
・気体成分も溶けている:36%がO2(6mg/liter)、15%がCO2(大気濃度の60倍)
・O2:植物プランクトンの光合成により生成。 表層200mまでで富み、以深では
有機物分解のため少ない
・CO2:植物プランクトンの光合成で消費。 200m以深で増える。
地球温暖化問題において、海洋の二酸化炭素吸収(量、能力)は鍵である
[地学図表より]
海洋の温度・塩分分布 1/2
・水は熱容量大温度変化小
(海水温: -1.9℃~34℃)
(陸上では、-90℃~58℃)
・塩類の存在氷点-1.9℃(密度最大)、
電気伝導度大
(純水は、4℃で密度最大、
0℃の氷で密度最小~8%減)
・海水が氷点に達すると海氷生成。
塩類の85%は海水側へ
低温高塩分の重い海水が生成
深層水として沈降し熱塩循環を駆動
・表層(混合層)の塩分は(蒸発量-降水量)
にほぼ比例
海洋の温度・塩分分布 2/2
[地学図表より]
海流分布ー風成循環(表層水)
・地表風による摩擦力+コリオリ力
により駆動される循環
 “西岸強化”
(北半球偏西風帯+貿易風帯)
太平洋西岸の黒潮
大西洋西岸のメキシコ湾流
・各海域の特徴-類似・相違
北太平洋、南太平洋
北大西洋、南大西洋
インド洋
南極海
[地学図表より]
・赤道対称な風・海流系を見抜く:
赤道無風帯、貿易風帯、
亜熱帯高圧帯、偏西風帯
(高緯度低圧帯、極東風帯)
海洋大循環ー熱塩循環(中・深層水) 1/2
[地学図表より]
・密度差(温度・塩分濃度の違い)により駆動される
・密度の大きい海水が生成する場所:
南極海(海氷)、北極海(海氷)、地中海(蒸発)
海洋大循環ー熱塩循環(中・深層水) 2/2
[地学図表より]
・南極海:世界で最も重い水が作られる
周極南極環流と合流・沈降太平洋深海底を北上
1000年で赤道下1600年でアリューシャン
・北極海:出口は北大西洋のみ
北大西洋深層水650年で喜望峰沖1900~2000年で北太平洋
・東太平洋にて“湧昇”となって表層に現れ、インド洋、大西洋を経て、再び北大西洋へ戻る
( 「ベルトコンベアモデル」:重い水塊が駆動源)
(インド洋と太平洋の具体的な循環経路はまだ完全には確定していない。)
潮汐と潮流ー月と海の結びつき 1/2
[地学図表より]
・宮島・厳島神社
台風+大潮による被害: 2004.9, 1999.9, 1991.9(100年以上被害なし?)
潮汐と潮流ー月と海の結びつき 2/2
・起潮力により、月に面した側と月と反対側の海水が
上空へ引っ張られる(1日に2周期となる)
・さらに、太陽による引力も寄与する(大潮と小潮)
・実際には、複雑な海陸分布により、海域により
特徴的な日変化を示す
[図は全て、地学図表より]
津波(Tsunami)
チリ地震と三陸津波: (1)地球の裏側からの津波は一点に集中。 (2)ハワイ諸島で
屈折を起こし、ちょうど三陸沖に集中。 (3)チリの海岸線に垂直な方向に三陸海岸。
[図は全て、地学図表より]
・津波と風浪・うねりは
力学的に異なる
・津波の速さは:
200m/s @ h=4km
(時速700km)
100m/s @ h=1km
10m/s @ h=10m
(Jet機:離陸時300km/h
巡航時900km/h)
・海岸に近づき浅くなると、
遅くなるが、エネルギー
は保存するため、波高
が数10mなどと高くなる
Tsunami
2004年12月インド洋大津波
・全ての余震域(赤点)を
波源とみなした津波の
シミュレーション
・海底の変動を左のように
仮定(西-東断面)
・赤:高偏差、青:低偏差
http://staff.aist.go.jp/kenji.satake/Sumatra-J.html
海氷・流氷
・オホーツク海:最も低緯度
に位置する海氷域
・アムール川からの淡水+
シベリア大陸からの季節風
北西部にて海氷生産
東樺太海流にて南下
同時に北太平洋中層水
を生成(千島列島を
抜けて南東へ)
(人工衛星AQUA搭載
AMSR-EとMODIS)
http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2004/tp040130.html
2009年2月15日
http://www.ms-aurora.com/abashiri/index.html
2009年2月15日
2009年2月15日
海氷の季節変化と年々変動
(右)北極海内の3つの海におけるの海氷面積の年々変動。
特に夏季(JJA)に海氷面積が減少してきている。
http://www.jamstec.go.jp/frcgc/jp/publications
/news/no22/jp/page1.html
“Ocean Circulation” 2nd Edition (The Open University)
(左)人工衛星Nimbusにより観測された1982年の海氷域。
赤紫:被覆率100%、青紫:20%以下
北極海の海氷減少-予測よりはやい?
(Stroeve et al., GRL, 2007)
海洋観測
水産庁・照洋丸
(まぐろ調査船。各種物理量測定器も搭載。
この航海では特別に気象ゾンデ観測も。)
海洋観測
海洋研究開発機構・みらい
海洋・大気の力学・化学・生物学調査船
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/kansoku/
海洋観測
海洋研究開発機構・みらい
オゾン・水蒸気・気温等のラジオゾンデ観測(成層圏中部30km程度まで)
まとめ ー海洋学事始ー
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海水の特徴
海洋の温度・塩分分布の特徴
海流と海洋大循環:
風成循環(西岸強化)と熱塩循環(海氷生成)
潮汐とそのメカニズム
津波とそのメカニズム
海氷・流氷の話
海洋観測の話
連絡1:ミニレポートについて
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対象: 講義を欠席した人(新型インフル・公欠等含む)
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以下のwebsiteに講義資料がありますので、読んでミニレポートを提出
してください。成績をつける際に、それなりに考慮します。
http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/edu/chigaku2009/
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提出期限: 1/21(講義最終回)
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連絡2:レポート課題予告
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対象: 全員
提出期限・提出場所:
2月3日(水)16:30まで。全学教育事務室・教務課「レポートボックス」“藤原正智”
テーマ:
基礎地学IIの講義に関連するものを各自自由に選ぶ(迷う場合は事前に相談のこと)
用紙・ページ数:
A4紙1枚を両面使用する(表裏2ページ)。
パソコン・手書き:
パソコン・ワープロでも手書きでもどちらでも構わない。ただし、手書きの場合、
文字が読みにくい・判読しにくい場合はどうしても評価が下がらざるを得ないことに注意。
書式:
タイトル
名前・学部・学籍番号
本文(適宜、小見出しをつける)
図や表を入れる場合は、番号(図1、図2、表1、表2. . .)をつけ、
キャプション(図表の説明)もつけること
引用文献や参考資料(websiteのURLなど)のリスト
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なお、引用文の書き方、引用文献リストの書き方については、適宜手持ちの教科書等を
参考にすること(ものにより書式は微妙に異なるが、どれかに統一すればよい)。