富士山噴火シナリオシミュレーション 教材の開発

富士山噴火シナリオシミュレーション
教材の開発
総合科学3年 3041‐6004
岩井 仁美
研究の目的
・富士山は日本の他の火山よりも山体が大きく裾野も
広いため、広域的な対策が必要である。国や地方公
共団体だけでなく、その麓に住む人々も万が一の噴
火に備えて日ごろから火山としての富士山の危険性
を認識することが大切である。そこで住民や自治体
職員の災害対応能力の向上及び富士山に対する知
識の向上を図るために、災害を疑似体験でき体験者
により高い習得度を望めそうなシナリオシミュレー
ションという形式で考えていこうと思う。
富士山の火山防災の現状
富士山が将来噴火した場合に的確な対応が行えるよう、火山
防災マップや防災対策の検討が進められている。
・富士山火山防災協議会
富士山で火山活動が発生した場合にも出来るだけ被害を抑えるため、
富士山に係る火山防災対策の推進を図ることを目的とする。
構成:富士山の火山防災に関係する地方自治体、国の防災関係機関
・富士山火山防災マップの作成
平成16年6月に富士山火山防災協議会(富士山ハザードマッップ協議会)
が試作版として完成。想定すべき火山活動の考え方や住民避難等の災害
時の対応等各種防災対策への活用、風評被害など無用な混乱の防止、
火山との共生の図り方等様々な見地から検討する必要がある。
シナリオシミュレーションの定義・意義
定義
シナリオシミュレーションとは、対応・組織・方法などをシナリオを
通して検証し、改善していくもの。参加者は災害を疑似体験する
ことが出来る。
意義
シミュレーションを体験することで、体験者の災害対応能力の向
上を図ることが出来る。
また、災害に対する知識を深めることが出来る。
シナリオシミュレーションの種類
図上演習
・行う側の準備が大変
・長時間かかる
・一般ではほとんど行われない
シナリオシミュレーション
ゲーム形式のもの
・子供、一般にもなじみやすい
教材として適している
ゲーム形式のものを採用
代表的なものに、Libraという火山防災ゲームがある。
Libraについて
火山防災ゲーム 「Libra」
林信太郎 秋田大学教育文化学部教授
・目的
噴火災害の発生に直面した時、関係者は様々なジレンマに陥る。本ゲー
ムは警戒避難をめぐるジレンマを抽象化したゲームである。
噴火の危険性を見逃して災害に巻き込まれた場合も、避難したが噴火が
起きなかった場合も相応のリスクを負うことになる。
そのようなジレンマの中でどう行動すれば被害を最小に出来るのか、
ゲームを通して学んでもらうことが目標。
Libraの遊び方
・必要なもの
単純化したハザードマップ
避難ユニットのコマ (赤1、オレンジ4、黄色8、緑18)
確率表・サイコロ・記録用紙
1.危険区域の表示されたハザードマップに、各コマを決められた配置に置く。
2.サイコロを振り、確率表に基づいて噴火レベルを決定。レベルによって
対応するゾーンが危険地域になる。
プレイヤーは1ターン毎に10個のコマを移動させることができる。ただし、移動
にコストが必要であり、移動したユニットが滞在するのにもコストが、ユニットが
危険ゾーンにいた場合も消滅コストがかかる。
いかにコストを少なくすることが出来るかをプレイヤーは競うことになる。
避難にかかるコストもコマに与えられた役(例・登山客や地元住民など)によっ
て異なる。例えば登山客はコストが低く設定してあり、地元住民はコストが
高くなっている。
また、ここで用いる確率表は、富士山ではなく1991年に噴火したフィリピンの
ピナツボ火山のデータで製作された確率樹を元に作られている。
図1
図1.当日用いられた集計表
Libra富士山バージョンのアンケート結果
2006年10月21日に、教育学部C301にて、現代
科学実験の時間を使い実際にLibraを実施してみた。
確率表はピナツボ火山のものを使用したがハザード
マップは富士宮市のものを使用し、富士山噴火の
シナリオシミュレーションを行った。
アンケート結果
対象者・・・総合科学一年生30名 (男14人 女15人 無回答1人)
県内出身者・・・14人
面白さと知識の習得度を5段階で評価してもらった。
16
14
案外おもしろ度
知って納得度
12
10
人
数
8
6
4
2
0
1
2
3
4
5
面白いと感じる学生が多かった
反面、知識に関してはあまり得ら
れなかったと感じる学生が7人も
おり、火山に対する知識の習得
度は見直すところがあることが
わかった。
アンケート続き
面白いと思った点は?
・火山のレベルが急に変わったこと(多数)
・班によって慎重派やバクチ派など個性が出ていたこと
・避難維持するのか早めに逃がすのか考えるところ
・スリルがあった(多数)
へぇ~と思ったことは?
・避難だけでなく、維持にもコストがかかること
・移動する人、場所、待機する場合とコストが違ったこと
・場合によって一気に危険になったり、安全になるということ
・避難判断の難しさと、一度避難するとなかなか戻れないところ
アンケート続き・2
改善すべき点は?
・計算(集計表)が複雑である(12人)
・火山レベルが3から1に戻るなど、一気に戻り過ぎない方がいい
・地図が見づらい。ゾーンはもっと単純にしてほしい
・予知情報によって滞在コストに変化をつけてみては?
・火山のついての知識をもっと得られるようにしたらいいと思う
・遊び感覚でやってしまうため、実際に役立つか疑問
・人命を失った時と移動する際のコスト差をもう少し縮めるべきでは
・今よりも現実感をもたせた方がいい
最後に
計算法がわかりにくいという指摘がほとんどから出ていた。計
算方式を更に単純にする必要があることがよくわかった。
また、今回は最後に噴火が起きたからよかったものの、もし噴
火が起きなかった場合でも同様の評価が得られたのか疑問で
ある。噴火が起きなかった場合にも何かしら得られるものがあ
るゲームを作る必要があると思った。
最後に、今回は避難指示を出す立場になって考えてもらったが、
実際は避難する側なのでそちらの視点から見たゲームを考え
ていきたい。
今回の結果を踏まえて、今後の教材を考えてみたいと思う。
今後の課題
・富士宮市の詳しいバージョンを作成するため、
市内の避難所を調べる。
・また、泥流の被害を予想するためにも市内に
架かっている橋の状態を調べておく。
参考HP
・内閣府 防災部門HP
http://www.boisai.go.jp/
・火山防災ゲームLibraの開発
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/a05kazan/archive/report2004/p362-371.pdf