消費者の行動 - 日本大学経済学部

第11章 寡占
市場の分類
多
買
い
手
の
数
数
製品差別化なし
製品差別化あり
完全競争
(供給)寡占
(供給)独占 (供給)複占
独占的競争
1
人
買い手独占
(需要独占)
双方独占
1つの企業
2つの企業
複 数
多 数
売 り 手 の 数
ミクロ経済学
1
第11章 寡占
11.1 寡占oligopoly
■寡占市場の特徴
ある産業で財・サービスを供給する企業の数が少数に限定されており,そ
れぞれの企業が価格支配力をある程度もっているが,同時に,他の企業の
行動によっても影響される状態にある。(例:自動車,鉄鋼,石油精製)
企業相互間の影響を無視することは許さなくなり,各企業とも相手方の行
動を意識的に考慮に入れて行動せざるをえなくなる。このような寡占企業の
特有な行動様式は,寡占企業間の「相互依存関係interdependence among
oligopolistic firms」と呼ばれる。そのため,寡占企業の行動を分析する際に,
「ゲーム理論」の手法はしばしば使われる。
*寡占市場と独占市場,独占的競争市場,完全競争市場との違い
ミクロ経済学
寡占
独占
独占的競争
完全競争
ライバル企業数
少数
ない
多数
多数
価格支配力
ある程度ある
ある
非常に小さい
ない
相互依存関係
大きい
ない
非常に小さい
ない
2
第11章 寡占
11.1 寡占oligopoly
■同質財と差別財
寡占市場で取引されている財は,同質財と差別財の2つのケースがある。
同質財: この財はどの企業が生産したかは無差別である。
(例: 鉄鋼,セメント,トラックなどの資本財や中間財)
差別財: 個々の企業の生産する財が機能的にはほとんど同じものであっ
ても,どの企業が生産したかなどの情報は分かるようになって,
消費者にとって無差別ではなくなる。
(例: 化粧品,ビール,乗用車)
ミクロ経済学
3
第11章 寡占
11.2 屈折需要曲線の理論
企業間の相互依存関係が,寡占市場での価格形成や生産水準にも影響
を与えているので,各企業は他の企業の行動に無関心ではいられない。こ
れによって,寡占市場では一定期間に価格が維持されるような価格硬直性
がしばしば見られる。この現象を説明する有力な理論の1つは屈折需要曲線
の理論である。
現行の生産量と価格は点Aとする。
p
1つの企業が価格を引き上げても,他
d
の企業は価格を据え置く傾向があるので,
A
この企業の生産物に対する需要が急激 pA
に縮小する。
1つの企業が価格を引き下げると他の
企業は対抗して価格を引き下げるので,
この企業の生産物に対する需要が急激に上
d'
昇しない。
需要曲線は折線になる。
ミクロ経済学
0
yA
y
4
第11章 寡占
11.2 屈折需要曲線の理論
企業間の相互依存関係が,寡占市場での価格形成や生産水準にも影響
を与えているので,各企業は他の企業の行動に無関心ではいられない。こ
れによって,寡占市場では一定期間に価格が維持されるような価格硬直性
がしばしば見られる。この現象を説明する有力な理論の1つは屈折需要曲線
の理論である。
需要曲線は折線になる。
需要曲線dの部分に対応する限界収入
はMRである。
需要曲線d'の部分に対応する限界収
入はMR'である。
限界費用がMCの場合,利潤最大化の
生産量はyA,価格はpAである。
限界費用がMC'まで上昇しても,利潤
最大化の生産量と価格は変化しない。
ミクロ経済学
p
d
A
pA
MC'
MR
MC
MR'
0
yA
d'
y
5
第11章 寡占
11.3 カルテル
企業間の相互依存関係が,寡占市場での価格形成や生産水準にも影響
を与えているので,各企業は他の企業の行動に無関心ではいられない。
また,他の企業の行動によって,自らの利潤が大きな影響を受ける。他の
企業と価格や生産量をめぐって競争する効能性がある。このような競争が起
きると,各企業は独占企業のように独占利潤を完全に手にすることができな
い。
もし寡占企業間で競争を避け,何らかの形で協力し,生産量や価格水準
について合意形成ができれば,単一の独占企業として行動した場合の独占
利潤を,寡占企業全体としては獲得することができる。この誘因で,寡占企
業は協調して価格を上昇させたり,生産量を抑制したりする。このような行為
はカルテルCartel行為と呼ばれる。
しかし,このような行為は社会厚生を損い,社会的に見て望ましくない場合
が多いので,一般的に法律によって規制されている。(例:『独占禁止法』)
ミクロ経済学
6
第11章 寡占
11.3 カルテル
■カルテルの不安定性
カルテルは寡占市場において必ずしも生じるとは限らない。また,仮に生
じても長く続く現象とは限らない。
もし,1つの企業がカルテルから抜けることによって,より大きな利潤を得
ることができれば,カルテルは不安定になる。
2つの企業の例:
カルテルを形成時に,お互いに10の利得を手にしている。
どちらか先にカルテルから抜けると,20の利得を手にすることができる。
カルテルは均衡解としては成立しない。
カルテル
時の利得
企業1
ミクロ経済学
企業2
協 力
非協力
協 力
10 , 10
0 , 20
非協力
20 , 0
5, 5
7
第11章 寡占
11.3 カルテル
■カルテルの不安定性
2つの企業の例:
カルテルを形成時に,お互いに10の利得を手にしている。
どちらか先にカルテルから抜けると,20の利得を手にすることができる。
カルテルは均衡解としては成立しない。
■フォーク定理
もし,無限回の繰り返しゲームの状況では,カルテルが形成されている場
合に,均衡としてカルテルが維持可能である。(r を割引率とする。)
カルテルを維持する利得=10+10/r
カルテルから抜ける利得=20+5/r
r < 1/2 ならば維持, r > 1/2 ならば抜ける。 カルテル
企業2
0
1
2
3
4
5
…
5
5
…
10
非協力
20
5
5
10
協 力
10
10
10 10 10 …
ミクロ経済学
時の利得
企業1
協 力
非協力
協 力
10 , 10
0 , 20
非協力
20 , 0
5, 5
8
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
差別化していない製品を供給している2つの企業が存在する。各企
業は,相手企業の生産量を一定としたときの,自己の利潤を最大化し
ようとすると仮定している。
製品差別化がないので,両企業は同じ価格をつけざると得ない。
結局,個々の企業がどのように生産量を決定するのか。
アントワーヌ・オーギュスタン・クールノー(Antoine Augustin
Cournot)はフランスの哲学者,数学者、経済学者。クールノー
は主として数学者だったが,経済学に対して重要な貢献を行
なった。経済学の分野において,彼は寡占理論の分野での研
究で最もよく知られている。
ミクロ経済学
A. Cournot
(1801-1877)
9
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
結局,個々の企業がどのように生産量を決定するのか。
2つの企業の生産量: y=y1+y2
市場全体の需要曲線: p=p(y)
企業2の生産量y2を一定としたとき,企業
1の生産量y1を考えよう。
企業2の生産量 y2が所与された時に,企
業1の需要曲線(残余需要):
ミクロ経済学
y1=0
p=p0
y1=1
p=p1
y1=2
・・
・
p=p2
・・
・
市場全体の需要曲線
p=p(y)
p
p
企業1の残余需要
p0
p1
p2
D
0
y2
y
y1=1
y1=2
10
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
結局,個々の企業がどのように生産量を決定するのか。
2つの企業の生産量: y=y1+y2
市場全体の需要曲線: p=p(y)
企業2の生産量y2を一定としたとき,企業
1の生産量y1を考えよう。
p
p
市場全体の需要曲線
p=p(y)
p
企業2の生産量 y2が所与された時に,企
業1の需要曲線(残余需要):
ミクロ経済学
y1=0
p=p0
y1=1
p=p1
y1=2 p=p2
・・
・・
y2 y2
0
・
・
y2が大きくなると,企業1の残余需要が少なくなる。
企業1の残余需要
D
y
11
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
2つの企業の生産量: y=y1+y2
市場全体の需要曲線: p=p(y)
企業2の生産量y2を一定としたとき,企業
1の生産量y1を考えよう。
p
市場全体の需要曲線
p=p(y)
p
企業1の利潤関数:=収入-費用
1 ( y1 , y2 )  p( y1  y2 ) y1  c( y1 )
企業1の残余需要
企業1の利潤最大化の条件:
d 1 ( y1 , y2 ) d  p( y1  y2 ) y1  d c( y1 )


0
dy1
dy1
dy1
d  p( y1  y2 ) y1 
dy1
ミクロ経済学
限界収入
MR1

MC1
d c( y1 ) 
D
0
dy1
限界費用
MC1
y2
y1E
⇒
MR1
限界収入MR1=限界費用MC1
y
12
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
所与された企業2の生産量がy2であれば,
企業1の利潤最大化の生産量はy1Eとなる。
p
市場全体の需要曲線
p=p(y)
p
企業1の残余需要
y2
MC1
y2
D
0
0
ミクロ経済学
y1E
y1
y2
y1E
MR1
y
13
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
所与された企業2の生産量がy2であれば,
企業1の利潤最大化の生産量はy1Eとなる。
所与された企業2の生産量がy'2に変われ
ばあれば,企業1の利潤最大化の生産量も
y'1Eに変わる。
y2
p
p
市場全体の需要曲線
p=p(y)
p
企業1の残余需要
企業1の反応曲線:y1=f1(y2)
MC1 MC1
y2
y'2
0
ミクロ経済学
0
y1E
y'1E
y'2
y2 MR'1
y1E
y1
y'1E
D
MR1
y
14
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
また,企業1の生産量y1 が所与された時
の企業2の利潤最大化生産量y2Eを考える場
合に,同様な原理で,企業2の反応曲線を
求めることができる。
y2
企業1の反応曲線:y1=f1(y2)
クールノー反応曲線
所与された相手企業2の
様々な生産量と,それに対応
する自分の利潤最大化生産
量との関係を表す曲線である。
企業2の反応曲線:y2=f2(y1)
0
ミクロ経済学
y1
15
第11章 寡占
クールノー調整過程
仮に企業1が最初に生産量
■クールノーモデル(複占duopolyの場合) をy と決定したとしょう。その
1A
クールノー反応曲線
後の両企業の生産量の調整
は次のようになる。
所与された相手企業2の
様々な生産量と,それに対応
0
1
2
3 … n …
する自分の利潤最大化生産
y1D
… y1C y1C
企業1 y1A
量との関係を表す曲線である。
11.4 クールノー均衡
企業2
y2
y2B
y2E …
y2C y2C
企業1の反応曲線:y1=f1(y2)
最終的に(y1C , y2C)点でクー
ルノー均衡が実現する。
このクールノー均衡は実は
ナッシュ均衡と同じ概念である。
(y1C , y2C)
クルーノー均衡点
y2E
y2B
企業2の反応曲線:y2=f2(y1)
0
ミクロ経済学
y1D y1A
y1
16
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2) , (a > 0)
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 企業2の費用関数: c(y2)=cy2 ,
(c > 0), (a > c)
① 企業1の反応曲線を求めよ。(y2が所与されたとする。)
企業1の利潤関数: 1=y1[a-(y1+y2)]-cy1=ay1-y12 - y1 y2-cy1
y2が所与されたときに,企業1の最適生産量と求める。(利潤関数をy1で微分
してゼロとおくと,)
d1 /dy1=0
⇒ a-2y1- y2-c =0
∴ y1=( a- y2-c ) / 2 ←企業1の反応曲線
② 同理で,企業2の反応曲線を求めることができる。
y2=( a- y1-c ) / 2 ←企業2の反応曲線
ミクロ経済学
17
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2)
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 企業2の費用関数: c(y2)=cy2
y1=( a- y2-c ) / 2 ←企業1の反応曲線
y2=( a- y1-c ) / 2 ←企業2の反応曲線
③ 両企業の反応曲線からなる連立方程式から,クールノー均衡解は求めら
れる。
y2
企業1の反応曲線
y1=( a-c ) / 3
a-c
クールノー
均衡解
y2=( a-c ) / 3
(a-c)/2
(a-c)/3
クールノー均衡点
企業2の反応曲線
ミクロ経済学
0
(a-c)/3 (a-c)/2
a-c
y1
18
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2)
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 企業2の費用関数: c(y2)=cy2
y1=( a-c ) / 3
クールノー
均衡解
y2=( a-c ) / 3
④ 市場価格を求める。(両企業の生産量を逆需要関数に代入して求める。)
p=a-2(a-c)/3
y2
企業1の反応曲線
市場価格:p=(a+2c)/3
a-c
⑤ 各企業の利潤を求める。
1=py1-cy1=(p-c)y1
=[(a+2c)/3-c] (a-c)/3
= (a-c)2/9
同様に,2= (a-c)2/9
ミクロ経済学
(a-c)/2
(a-c)/3
クールノー均衡点
企業2の反応曲線
0
(a-c)/3 (a-c)/2
a-c
y1
19
利潤最大化の生産量を求める。
(利潤関数をyで微分してゼロとお
くと,
11.4 クールノー均衡
d/dy=0 ⇒ a-2y-c =0
∴ y=(a-c)/2 ←利潤最大化の生産量
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
市場価格p=a-y=a-(a-c)/2
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2)
=(a+c)/2
利潤=py-cy=(p-c)y
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 企業2の費用関数:
c(y2)=cy2
=[(a+c)/2-c] (a-c)/2
生 産 量: y1=y2=(a-c)/3
クールノー 市場価格: p=(a+2c)/3
=(a-c)2/4 ←独占利潤
均衡解
利
潤: 1=2= (a-c)2/9
この独占利潤が両企業間で等
第11章 寡占
カルテル解との比較
しく分配するようなカルテルであ
y2 れば,企業1の反応曲線
a-c
各企業の生産量=(a-c)/4
各企業の利潤=(a-c)2/8
両企業がカルテルを形成し,
y=y1+y2
にして,独占企業のように行動する
(a-c)/2
と,利潤はどのように変わるのか。
利潤関数:=y(a-y)-cy1-cy2 (a-c)/3
=ya-y2-cy
ミクロ経済学
0
クールノー均衡点
企業2の反応曲線
(a-c)/3 (a-c)/2
a-c
y1
20
但し,どちらかの企業が先にカ
ルテルから離脱すると,離脱企業
の利潤はどのように変わるのか。
11.4 クールノー均衡
仮に企業2の生産量が(a-c)/4
のままの時に,企業1はカルテル
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
から離脱し,生産量を 3(a-c)/8
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2)
へ最適に変更する。
すると市場価格は
(3a+5c)/8
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 企業2の費用関数:
c(y2)=cy
2
に変わり,企業1は (9/8)(a-c)2/8
生 産 量: y1=y2=(a-c)/3
の利潤を獲得することができる。
クールノー 市場価格: p=(a+2c)/3
もし企業2が先に離脱すると,同
均衡解
利
潤: 1=2= (a-c)2/9
様に (9/8)(a-c)2/8 の利潤を獲得
カルテル解との比較
することができる。
y2
企業1の反応曲線
離脱の誘因は存在する。
a-c
両企業がカルテルを形成し,
第11章 寡占
y=y1+y2
にして,独占企業のように行動する
(a-c)/2
と,利潤はどのように変わるのか。
(a-c)/3
各企業の生産量=(a-c)/4
(a-c)/4
各企業の利潤=(a-c)2/8
複占企業の協調利益が存在する。
ミクロ経済学
0
(a-c)/4
クールノー均衡点
カルテルの解
企業2の反応曲線
(a-c)/3 (a-c)/2
a-c
y1
21
両企業は協調する行動をとるか
どうか。(囚人のディレンマ問題)
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
企業2
協 力
■クールノーモデル(複占duopolyの場合)
企業 協 力 125,125
1
非協力 141, 94
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2)
非協力
94,141
111,111
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 企業2の費用関数: c(y2)=cy2
ナッシュ均衡解
カルテル解
生 産 量: y1=y2=(a-c)/3
クルールノー均衡解
クールノー 市場価格: p=(a+2c)/3
無限回繰返しゲームにおいて
均衡解
利
潤: 1=2= (a-c)2/9
はカルテル維持の可能性が存在
カルテル解との比較
する。
y
2
a-c
両企業がカルテルを形成し,
各企業の生産量=(a-c)/4
各企業の利潤=(a-c)2/8
複占企業の協調利益が存在する。 (a-c)/2
このカルテルから先に離脱すると,(a-c)/3
(a-c)/4
2
(9/8)(a-c) /8 の利潤が獲得できる
誘因も存在する。
ミクロ経済学
0
企業1の反応曲線
(a-c)/4
クールノー均衡点
カルテルの解
企業2の反応曲線
(a-c)/3 (a-c)/2
a-c
y1
22
第11章 寡占
11.4 クールノー均衡
■クールノーモデル(企業数がnの場合)
数値例: 逆需要関数: p=a-(y1+y2+・・・+yn)
企業1の費用関数: c(y1)=cy1 ・・・ 企業nの費用関数: c(yn)=cyn
その他の企業の生産量を所与とした時の企業1の最適生産量を考えよう。
企業1の利潤関数: 1=py1-cy1=(p-c) y1=(a-y1-y2-・・・-yn-c)y1
企業1の利潤最大化条件:
2y1=a-c-y2-・・・-yn
y1=a-c -(y1 +y2+・・・+yn)
同様に,企業iの利潤最大化条件:
yi=a-c -(y1 +y2+・・・+yn)
∴
y1 +y2+・・・+yn =n(a-c ) -n(y1 +y2+・・・+yn)
(n+1)(y1 +y2+・・・+yn)=n(a-c )
クールノー
均衡解
ミクロ経済学
産業全体の生産量: y1 +y2+・・・+yn=n(a-c )/(n+1)
各企業の生産量: yiC=(a-c )/(n+1)
市 場 価 格 :
n=1なら独占,n=2なら複占
nが少数なら複占,nが無限大
p=(a+nc)/(n+1) なら完全競争の状態になる。23
付録:
単純な複占
両企業は生産量ではなく,価
格を選択することを考えよう。
ベルトラン・モデル
費用関数: C(yi)=cyi
限界費用=平均費用=c
市場全体の需要関数: DD
企業1の反応
if p2 > pM
then p1=pM
if c≦p2 < pM then c < p1 < p2
if p2=c
then p1=c
if p2 < c
then p2 < p1 < c
企業2の反応
if p1 > pM
then p1=pM
if c≦p1 < pM then c < p2 < p1
if p1=c
then p2=c
if p1 < c
then p1 < p2 < c
ミクロ経済学
p D
pM
MC
c
D
MR
yM
O
需給量 Y
反応曲線
p2
企業1の反応曲線
p2
pM
企業2の反応曲線
c
O
c
pM
p1
24
付録:
単純な複占
E(c, c)はベルトラン均衡Bertrand
両企業は生産量ではなく,価 equilibrium解である。複占両者が
価格競争におけるクールノー的交点
格を選択することを考えよう。
均衡解に相当する。
ベルトラン・モデル
費用関数: C(yi)=cyi
限界費用=平均費用=c
市場全体の需要関数: DD
企業1の反応
if p2 > pM
then p1=pM
if c≦p2 < pM then c < p1 < p2
if p2=c
then p1=c
if p2 < c
then p2 < p1 < c
企業2の反応
if p1 > pM
then p1=pM
if c≦p1 < pM then c < p2 < p1
if p1=c
then p2=c
if p1 < c
then p1 < p2 < c
ミクロ経済学
反応曲線
p2
企業1の反応曲線
p2
企業2の反応曲線
c
O
E(c, c)
c
p1
25
付録:
単純な複占
E(c, c)はベルトラン均衡Bertrand
両企業は生産量ではなく,価 equilibrium解である。複占両者が
価格競争におけるクールノー的交点
格を選択することを考えよう。
均衡解に相当する。
ベルトラン・モデル
もしいずれかの企業が主導的な行
費用関数: C(yi)=cyi
動を取れば,F点あるいはJ点は均
限界費用=平均費用=c
衡解となる。両者が協調すれば,均
市場全体の需要関数: DD
衡解は契約曲線上にある。
企業1の反応
企業1の反応曲線
p2
if p2 > pM
then p1=pM
if c≦p2 < pM then c < p1 < p2
F
if p2=c
then p1=c
if p2 < c
then p2 < p1 < c
契約曲線
企業2の反応
if p1 > pM
then p1=pM
c
E(c, c) J
企業2の反応曲線
if c≦p1 < pM then c < p2 < p1
if p1=c
then p2=c
if p1 < c
then p1 < p2 < c
O
c
ミクロ経済学
p1
26
付録:
単純な複占
追随者followerの行動:
企業2は,企業1が定めたy1'に対し
シュタッケルベルク・モデル
て自分の利潤を最大化するような y2'
複占者のいずれか一方(例えば, を選ぶ。
企業1)は主導的な行動を取り,も
E(y1', y2')はシュタッケルベルク均
う一方(企業2)はクールノー的行
衡Stackelberg equilibriumである。
動様式のような追随的な行動を取
非対称的複占とも名づけられている。
ることにしよう。
主導者leaderの行動:
企業1は,自分が定めたy1に対し
て企業2が必ずその反応曲線上
の点を選ぶことを前提として,企
業2の反応曲線上から一方的に
自分の利潤を最大化するような産
出量y1'を選ぶ。
y2
企業1の反応曲線
y2'
O
ミクロ経済学
E(y1', y2')
y1'
企業2の反応曲線
y1
27
付録:
単純な複占
シュタッケルベルク・モデル
複占者の両者がともに先導者と
して主導的な行動する場合に,企
業1はE点の実現を期待して行動
し,企業2はF点の実現を期待して
行動すると,市場均衡は成立しな
くなる。
もし,企業1はy1'を,企業2はy2"
を固執するならば,市場には大き
な供給量をもたらし,両者とも不
利になる。
両者はこのような競争を回避し,
協調する余地がある。
両者がある程度の相互依存を認
識して,協調体制に向かうならば,
そのような市場形態は寡占と呼ぶ
より,むしろ準独占あるいは集合独
占と呼んだほうがふさわしい。
y2
企業1の反応曲線
y2"
J(y1', y2")
E
y2'
O
ミクロ経済学
F
y1"
y1'
契約曲線
企業2の反応曲線
y1
28
第11章 寡占
11.7 寡占と競争
■産業阻止行動
独占あるいは寡占市場において,既存企業が潜在的な参入者(これから参
入しようとする企業)の参入を阻止するために,様々な価格戦略や投資行動
を取る場合がある。これらの行動を参入阻止行動と呼ぶ。
価格による阻止行動:
参入する
(1 , -1)
低価格設定
参入しない
(6 , 0)
高価格維持
参入する
(5 , 3)
(7
潜在参入者
既存企業
潜在参入者
参入しない
(10 , 0)
参入阻止行動を取るかどうかは,利得の状況による。
ミクロ経済学
29
第11章 寡占
11.7 寡占と競争
■産業阻止行動
独占あるいは寡占市場において,既存企業が潜在的な参入者(これから参
入しようとする企業)の参入を阻止するために,様々な価格戦略や投資行動
を取る場合がある。これらの行動を参入阻止行動と呼ぶ。
投資規模拡大による阻止行動:
参入する
(1 , 0)
規模拡大
参入しない
(6 , 0)
現規模維持
参入する
(5 , 3)
(7
潜在参入者
既存企業
潜在参入者
参入しない
(10 , 0)
参入阻止行動を取るかどうかは,利得の状況による。
参入阻止の具体例:中心都市部の過大規模の店舗など
但し,潜在参入者は製品差別化を利用して参入してくるケースはよくある。
ミクロ経済学
30
市場の分類
多
買
い
手
の
数
数
製品差別化なし
製品差別化あり
完全競争
(供給)寡占
(供給)独占 (供給)複占
独占的競争
1
人
買い手独占
(需要独占)
双方独占
1つの企業
2つの企業
複 数
多 数
売 り 手 の 数
ミクロ経済学
31
第11章 寡占
11.7 独占的競争
産業内に多数の企業が存在し,個別企業の製品が他の企業と差別
化しているので,自己の商品の顧客も存在し,自己の商品に対する右
下がりの需要曲線を持っている。しかし,企業同士が互いに競争し,相
手企業の価格付けによって,自己の需要曲線は上方や下方にシフトす
る。長期には産業内の企業の参入や退出が自由である。
(例えば,小売業,飲食店など)
短期において,正の利潤が得る場合:
短期的な利潤
独占的競争市場の企業は自己の生産
物の右下がりの需要曲線を想定して,
限界収入mr=(短期の)限界費用SMC
となるように,利潤最大化の産出量ysと
価格psを決定する。
正の利潤が得る限り,この産業に新規
企業が参入してくる。この結果,個別企業
の需要曲線は左下にシフトする。
ミクロ経済学
価
格
p
SMC
SAC
pS
d
mr
O
yS
d'
需給量 y
32
第11章 寡占
11.7 独占的競争
産業内に多数の企業が存在し,個別企業の製品が他の企業と差別
化しているので,自己の商品の顧客も存在し,自己の商品に対する右
下がりの需要曲線を持っている。しかし,企業同士が互いに競争し,相
手企業の価格付けによって,自己の需要曲線は上方や下方にシフトす
る。長期には産業内の企業の参入や退出が自由である。
(例えば,小売業,飲食店など)
正の利潤が得る限り,この産業に新規
企業が参入してくる。この結果,個別企業
の需要曲線は左下にシフトする。
このような新規参入は個別企業の利潤
がゼロになるまで続く。長期において,独
占的競争市場の企業利潤はゼロとなる。
この状況を長期均衡と呼ぶ。個別企業
限界収入mr'=(長期の)限界費用LMC
価格pL=(長期の)平均費用LAC
企業利潤TR=0
ミクロ経済学
価
格
p
LMC
SMC
LAC
SAC
pS
pL
d
mr
mr'
O
yL yS
d'
需給量 y
33
第11章 寡占
11.7 独占的競争
産業内に多数の企業が存在し,個別企業の製品が他の企業と差別
化しているので,自己の商品の顧客も存在し,自己の商品に対する右
下がりの需要曲線を持っている。しかし,企業同士が互いに競争し,相
手企業の価格付けによって,自己の需要曲線は上方や下方にシフトす
る。長期には産業内の企業の参入や退出が自由である。
(例えば,小売業,飲食店など)
長期均衡において,個別企業の
価
限界収入mr'=(長期の)限界費用LMC
格
価格pL=(長期の)平均費用LAC
p
企業利潤TR=0
個別企業の製品に対する需要曲線は, pS
LACと接している。
pL
生産量yL が完全競争の場合の最適規
模y*より小さい。
y*-yLは過剰能力と呼ばれる。
ミクロ経済学
O
LMC
SMC
LAC
SAC
d
yL
mr
mr'
yS y*
d'
需給量 y
34
不完全競争市場
まとめ
独占的競争市場では,自己の需要曲線が右下がりという点が独占や
寡占市場と同じで,長期における企業の参入と退出が自由で,長期均
衡における利潤が0という点が完全競争市場と同じである。
市場形態
企業の数
利潤最大化条件と価格
利潤
独 占
1つ
P > MR=MC
TR > 0
寡 占
少 数
P > MR=MC
TR > 0
独占的競争
多 数
(参入・退出自由)
P > MR=MC
(長期均衡において,P=LAC)
長期均衡
において,
TR=0
完全競争
多 数
(参入・退出自由)
P=MC
(長期均衡において,)
P=LMC=LAC
長期均衡
において,
TR=0 35
ミクロ経済学