反対称化分子動力学法を用いた原子核構造と反応の研究 延与佳子 (京大基礎物理学研究所) 主なプロジェクトメンバー: 延与(京大) 小野(東北大) 古田(東北大) 1. はじめに 2. 反対称化分子動力学法 3. 重イオン反応の研究・核物質の液相気相の共存 4. 軽い安定核・不安定原子核の構造研究 5. まとめ 原子核の理論計算に関する研究課題 2000年度 2001年度 軽い不安定核構造 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 有限レンジ3体力 sdシェル核の変形と分子共鳴状態 軽い安定核・不安定核の励起状態 重イオン衝突 Ca+Ca, Au+Au 核物質の液相気相の共存 中性子過剰核の衝突 延与(京大) 原子核反応 小野(東北大) 原子核構造 肥山(奈良女子大) ハイパー核構造 原子核反応 古田(東北大) 原子核構造 肥山(奈良女子大) 根村(理研)、他 ストレンジネス原子核に 関する研究 研究成果 2003年度 研究成果の 公表 口頭研究発表 件数 8 査読つきの学術 論文数 5 プロシーディン グ論文数 3 その他(投稿 中を含む) 1 2004年度 研究成果の 公表 口頭研究発表 件数 9 査読つきの学術 論文数 5 プロシーディン グ論文数 1 その他(投稿 中を含む) 0 2005年度 研究成果の 公表 口頭研究発表 件数 9 査読つきの学術 論文数 2 プロシーディン グ論文数 2 その他(投稿 中を含む) 1 1. はじめに 実験に結びついた理論研究 各種実験データ 重イオン反応における放出粒子 安定核・不安定核のデータ インプット 再現 予言 諸問題を解明 原子核の本質を理解 理論計算 ハドロン物質の相図 温度 ハドロン物質の相図 宇宙の初期 高エネルギー 重イオン反応 ~200 MeV QGP ハドロンガス 核子ガス 核物質 の膨張 5~8 MeV 中性子星の内部 中間エネルギー 重イオン反応 r0 液相気相 の共存 ~10r0 通常の原子核・不 安定核の構造 密度 陽子数 不安定原子核 新しい施設が建設中 RIBF@RIKEN 2007稼動 中性子数 2種類のフェルミオン=陽子と中性子の数を 変えることができる実験室! 陽子数と中性子数に依存して多様な構造が出現 export to astrophysics 星の中での 元素合成のinput 核物質の状態方程式 原子核の性質 原子 原子核 陽子と中性子の多体系 電子 陽子 中性子 核力 電子の運動 原子核からの クーロン力で束縛 核子の運動 核子が自己束縛 1.平均場中での独立粒子描像 2.核子相関 (核子の離合集散) 3.エネルギーと密度の飽和則 少しのエネルギーで 核子がバラバラ 軌道、殻構造 原子核構造の多様性 陽子 中性子 中性子を追加 変形構造 クラスター構造 特に陽子2個と中性子2個で 塊(クラスター)を作りやすい 4He(α粒子)=α-クラスター 中性子ハロー structure in light nuclei α α α α クラスターの 3角形構造 α 3-2 in 14C α 12O 13O 14O 15O 16O 17O 18O 19O 20O 21O 22O 11N 12N 13N 14N 15N 16N 17N 18N 19N 20N 21N クラスター気体 C 0+2 in 12C 8C 9C 10C 11C 12C 13C 14C 15C 16C 17C 18C 19C 20C B 8B 9B 10B 11B 12B 13B 14B 15B 7Be 8Be 9Be 10Be11Be12Be Be Li 6Li 7Li 8Li 9Li He 3He 4He H 1H 2H 6He 17B 19B 14Be 異なる変形の 共存 10C, 16C 11Li 8He α α 3H excited states n core core 中性子スキン 8He,C 中性子ハロー 6He,11Li,11Be α α Be isotopes 分子的構造 魔法数の敗れ 核子多体系の多様な性質 クラスター構造と平均場構造 エネルギー 8 MeV/u 核子気体: すべての核子がバラバラ 12C 正三角形構造 6個の陽子と 6個の中性子 α α 0.5~1 MeV/u α 3つの α-クラスター α 0 MeV 最低エネルギー状態 ? α α α 3αの気体状態: α 液体のような 性質 数珠構造 α-クラスターが ゆる~く相互作用 α 宇宙での 元素合成に も重要 核構造はシェル模型で終わった? 最先端の大次元シェル模型計算 No! P.Navratil et al.,Phys.Rev. C62, 054311 (2000) 12Cの基底状態と励起状態を 系統的に再現できる 理論計算はない。 原子核の性質: 核子の離合集散に起因 シェル模型計算では記述できない励起状態 クラスターと平均場を両方記述する理論的模型 時間依存 ハートリーフォック 分子動力学 クラスター クラスター模型 AMD 平均場 シェル模型、 ハートリーフォック antisymmetrized molecular dynamics 反対称化分子動力学 2. Formulation of AMD AMDによる原子核構造の計算 変分法 H 0 モデル波動関数: 有効ハミルトニアン: H eff ti vijeff (phenomenological effective nuclear force(MV1)) proper model space and handy wave fn. i 1 i j i j k AMD (Z) AMD波動関数 c AMD c' 'AMD c' ' ' 'AMD スレーター 行列式 eff v ' ijk AMD det1 , 2 , , A 空間部分 ガウス波束 Zi 2 ( r ) exp ( r ) Ζi j i Ζi i 1 i i 2 or n 1 p i 2 アイソスピン 内部スピン 変分パラメータ Z={ Z1, Z2 , , Z A , 1, , A } det AMD 模型空間 det クラスター 平均場 det 一般の原子核へ 適用可能 系統的な研究 様々なクラスター的状態 シェル模型的状態 エネルギー変分 エネルギー曲面 dZ 1 E ( i ) dt i Z ( Z 0 ) モデル空間 (Z plane) ランダムに選んだ 初期状態 エネルギー最低状態 を得る 構造計算におけるパリティ・角運動量の射影 VAP パリティ-(スピン)射影後の変分 J (Z) PMK PAMD (Z) H エネルギー H 0 変分 Z あるいは変分後の射影、重ね合わせ 平均場理論を越えた枠組み 励起状態へ適用 計算コストの増加 原子核の構造理論 未知領域の研究 (不安定核、励起状態) 従来の常識を破る多様な現象 模型空間 芯の仮定なし 角運動量射影や 重ね合わせ 模型空間の拡張⇒大規模計算 模型的仮定を 少なくして 系統的な研究 理論手法 SVMなど GFMC 精密計算 KEKスパコンを利用した collaboration AMD法 この6年の進展 拡張したHF計算 クラスター模型 拡張されたシェル模型 平均場理論 不活性芯 ゼロレンジ 有効核力 有限レンジ 量子多体系の近似 模型計算 現実的 核力 理論模型を拡張する必要性 Skyrme HF計算 RMF 16 40 200 質量数A AMDによる重イオン反応の計算 研究成果 3.重イオン反応・核物質の液相気相の共存 重イオン反応・核物質の液相気相の共存 中間エネルギーの 重イオン衝突 Multi fragmentation 現象 重イオン衝突 高温膨張 液相気相の共存 破砕片の観測 重イオン衝突を記述する 数値シミュレーション TDHF 流体方程式 VUU 目的: 分子動力学 数 MeV 核融合 KEKスパコンを利用した collaboration 実験データ(放出粒子)から AMD(反対称化) QMD(半古典的) 核物質の性質(状態方程式)の カスケード計算 情報を引き出す。 エネルギー 100 1 MeV 液相気相 GeV ハドロン の共存 ガス・粒子生成 AMDを用いた数値シミュレーションによる研究 柔らかい 状態方程式 中性子過剰核の衝突反応から 対称エネルギーの情報を得る 60Ca+60Caと 40Ca+40Caを比較 核物質の統計的性質 仮想的な容器内に 閉じ込められた 核子多体系の 時間発展 4.軽い安定核・不安定原子核の構造研究 4-1. 励起状態におけるクラスター状態 4-2. 不安定核における陽子と中性子の異なる変形 4-3. 質量数~40の領域への挑戦 4-1. 励起状態におけるクラスター状態 3体クラスター状態 12C α αα 11C(11B) chain ? A.Tohsaki et al., (2001) Funaki et al.(2003) chain ? 薄い密度の3aガス α α Cluster 10.3 MeV + 02 7.65 MeV α αt 薄い密度の2a+4He α + 03, 4 2a+t 7Li+a 10.3 mean-field 3/2 3/24 3 α α t 8.5 8Be+a 3/2 2 + 01 AMD by Y.K-E. α + p3/2 αα 3a+p3/2closed - 3/21 tα α p3/2 b遷移、M1遷移 の実験値を再現 4-2. 不安定核の構造変化 基底状態の構造変化 Y.Kanada-En’yo et al., PTP Suppl. 142, 205 (2001) 12Be 10Be 8Be α α 14Be αα α α α α αクラスター α α α α 14C α αα 陽子数=4 α 陽子・中性子数に 依存して劇的に変化 余剰中性子 12C クラスターの 発達 16C α αα 20C α αα 中性子スキン 陽子数=6 不安定核における陽子分布と中性子分布の異なる変形 Cアイソトープの 基底状態の構造変化 Y.Kanada-En’yo et al., PTP Suppl. 142, 205 (2001) 中性子数の増加とともに 中性子構造が劇的に変化 12C α α α 14C 16C α αα α αα 20C α αα 中性子スキン 陽子分布と中性子分布の相違を予言 最近の測定実験で支持 •E2遷移強度(Imai et al.,2004) •非弾性散乱(Elekes et al, 2004) + oblate陽子分布 prolate中性子 16Cの非弾性散乱 M. Takashina, Y.K-E, Y. Sakuragi, Phys. Rev. C 71, 054602 (2005) 16C(0+→2+) on 208Pb Interference between nuclear & Coulomb excitation AMDで計算した遷移密度を inputにチャネル結合の反応計算 4-3. 質量数~40の領域への挑戦 未知領域の研究 (不安定核、励起状態) 従来の常識を破る多様な現象 芯の仮定なし 模型空間の拡張⇒大規模計算 模型的仮定を 少なくして 系統的な研究 理論手法 SVMなど GFMC 精密計算 KEKスパコンを利用した collaboration AMD法 この6年の進展 将来計画 平均場理論 不活性芯 ゼロレンジ 角運動量射影や 重ね合わせ 現実的 模型空間 有効核力 有限レンジ 量子多体系の近似 模型計算 核力 理論模型を拡張する必要性 拡張したHF計算 クラスター模型 拡張されたシェル模型 Skyrme HF計算 RMF 16 40 200 質量数A 40Caにおける超変形状態 励起エネルギー(MeV) 40Ca 20 12+ 15 10 5 0 基底 K=0+ 4 10+ 8+ 6+ 4+ 2+ 0+ 超変形 洋ナシ型! 28Si 8 クラスター間励起 0 What’s new ? ・実験で発見された超変形の励起状態にパリティ非対称変形 を提唱。Si+Cクラスター的構造が起因? ・Si+C分子共鳴状態の予言 12C 分子共鳴 40 30 超変形 20 計算値 10 実験値 0 0 50 100 150 200 スピンJ(J+1) 5.まとめ クラスター的様相は原子核に おける基本的性質 二つの性質が共存: クラスター 平均場 不安定原子核でも 質量数40~領域でも 重イオン反応でも 原子核の多様な現象 系統的な研究こそが 核子多体系の統一的理解と New Physicsにつながる 励起状態 安定核 不安定核 基底状態 メッセージ ・「(科学とは)自然に問いかけ、自然から の答えに耳を澄ますということ」 (カルロ・ルビア素粒子物理実験) ・実験データとの対応 ・偏見を捨て、これまでの常識を捉われない 研究が新しい発見と本質的理解に繋がる ・できるだけ模型的仮定の少ない理論計算 ・適当な模型化による大規模計算 他の有限量子フェルミオン系への適用
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