(FMOS戦略枠観測で余ったファイバーによる) M型星まわりのトランジット地球型惑星探し 成田 憲保 (国立天文台/ハワイ大学) 内容 • トランジットの紹介 • M型星を選ぶ理由 • 提案内容 • 必要要件 • 解析方法 トランジットを探す方法 太陽系でのトランジット 太陽系外では 少し暗くなる 2006年11月9日 「ひので」撮影 水星のトランジット 惑星が恒星の前を通る際の減光を探す トランジットの諸性質 主星の半径: 惑星の軌道長半径: 惑星の半径: 地球の方向 惑星の公転周期: トランジットをする確率: ~ Rs/a トランジットの減光率: ~ (Rp/Rs)2 トランジットの継続時間: ~ Rs P/a π cf. M6型星の場合 • Rs ~ 0.1 Rsun ~ 0.0005 AU • Rpを地球サイズに仮定すると ~ 0.01 Rsun • ハビタブルゾーンの場合 – a~0.005 AU、 P~10 hr – トランジット確率: Rs/a ~ 10% – トランジット減光率: (Rp/Rs)2 ~ 1% – トランジット継続時間: Rs P / a π ~ 20 min なぜM型星でトランジットを狙うか? • 主星が小さいので、地球型惑星でも~1%程度の減 光を起こす(太陽型星では木星型惑星の減光量) • ハビタブルな惑星(主星近傍にある)がトランジットを する幾何学的確率が高い • 公転周期が短くトランジットが繰り返し観測できる • トランジット惑星に対してはさまざまな追観測のサイ エンスがある • 特に惑星の大気の分光観測を行うことができ、その シグナルは主星が小さい方が好ましい • TMT・SPICA時代に最もあると望ましいターゲット 提案したいサイエンス • FMOS戦略枠の観測期間に長期間同じ視野(天体)を 観測する場合に、余ったファイバーをM型星に割り 当てて、トランジットをする地球型惑星探しをしたい • ハビタブルゾーンにある地球型惑星がトランジットを する幾何学的確率(=惑星があった場合の確率) – M4型星 ~1% – M6型星 ~10% (ハビタブルゾーン:~0.005AU) • トランジット確率の高い~M6型の晩期星に絞って、 余ったファイバーを割り当てていただきたい • J, Hで12-15等級のM6型星が主なターゲット(<100pc) トランジット探しに必要なこと • • • • 測光精度:~0.3%以下(J, Hバンド全体ごとに) 時間分解能:できれば10分以下 複数回のトランジット検出(同じ天体を5-10夜程度以上) その後の測光フォローアップと視線速度フォローアップ – 候補が見つかった場合には、OAO/ISLE、miniTAO/ANIR、UHの 望遠鏡などに高精度測光フォローアップを提案したい – 主星が軽いため低質量の惑星でも主星におよぼす視線 速度のシグナルは大きい(数m/s以上) – しかし可視では暗すぎるので、現在の装置では視線速度 フォローアップができない。すばるの将来装置である赤外 ドップラー観測装置ならフォローアップ可能 想定している解析方法 • ダーク、フラット、非線形性補正、スカイなどを処理 – 検出器の非線形性補正については、IRTF/SpeXに実装されている Vacca et al. (2004) のような補正があるとよい • Simultaneous reference spectro-photometry – 多天体分光器で参照星とターゲット星を同時に分光観測し、相対 測光を行う新しい観測手法 – GJ1214bというM型星まわりのトランジット地球型惑星を観測した 例が2010年12月2日にNatureに掲載されたのでそれで説明 – VLT/FORS2 (Subaru/Focusと似た装置) 多天体分光器でスペクトルを得る 酸素A線 水 SNは波長要素あたり100~300程度 青:参照星 赤:GJ1214 適当なバンドでスペクトルを積分する ここでは880-900nmの波長領域を積分している 相対測光ライトカーブを作る その後ライトカーブから観測パラメータとの相関を取り除く 例えば:エアマス、時間、検出器のピクセル位置など (高精度トランジット測光観測では基本的な解析方法) きれいにしたライトカーブ 相対測光精度=0.0554% いろんなバンドで同じことをする 780nm-1000nmで20nm刻みに バンド積分を行っている 全てのバンドで0.05%-0.06%の 測光精度が達成されている (酸素や水などの地球の大気 吸収があっても問題ない) 何をどう探すか • 測光標準星をいくつかと、M型星を観測する • 前述の解析でM型星に対するライトカーブを作る • M型星も長周期なタイムスケールで変光している可 能性があるし、フレアなどで増光が起こる可能性も ある(こちらに興味がある人もいるのでは?) • 惑星のトランジットの場合は、短いタイムスケールで 減光が起こって元に戻り、それが周期的に起こる • 十分な測光精度と時間分解能があれば減光を探す ことができる • 候補が見つかったらフォローアップへ FMOSでは1%の精度もでない? • 通常の測光観測(分光せずに夜光も全部積分され てしまっている観測)でも、Jバンドで~0.1%程度の精 度は達成されている(岡山ISLEで実証済み) • 他の大型望遠鏡もこの方法で0.1%以下の測光精度 を目指している(特にホットジュピターが主星の裏に 隠れる現象の観測のため) • やってみずに不可能と決めるのではなく、むしろどこ まで高精度の測光観測がFMOSで可能なのか、この ような観測で調べることも大事では まとめ • FMOS戦略枠の余ったファイバーを使って、ついでに M型星まわりのトランジット地球型惑星を探したい • 特にハビタブルゾーンにある地球型惑星が発見さ れるとインパクトが大きいので、狙うのは主にM6型 星とし、数十天体を観測したい • もちろん全部がはずれである可能性も大きい • ハビタブルでないスノーボールアースなど別の何か が見つかる可能性もある • 装置の限界測光精度などの特性を調べる意味で、 このような観測も有用なのではないかと思われる
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