気候変動とバイオ起源のエネルギー 藻類バイオエネルギーが使われる条件を探る @函館 07.05.2013 安井 至 国際連合大学元副学長・東京大学名誉教授 (独)製品評価技術基盤機構(NITE) http://www.yasuienv.net/ 1 条件1:温暖化防止の重要性が社会全体で理解される 今年の冬はどうでした? 普段よりもかなり寒く、積雪量は青森県酸ヶ湯 温泉では史上最高値を観測 2月26日午前4時に566cmを記録 2 今年の桜はどうでした? 東京で過去 2番目に早かった 開花日 3/16 満開日 差 3/22 昨年 3/31 -15 最近10年 3/23 -7 平年('81〜'10) 3/26 -10 4/3 -12 旧平年('71〜'00) 3/28 -12 4/5 -14 2002/3/16 0 過去最早 4/6 差 3/31 -15 -9 2002/3/21 +1 3 「地球温暖化」という現象 次のどちらが正しいと思いますか? 今年の冬は、大変寒かったので、地球温 暖化は起きていない。 桜の開花期が早くなっているということは 気温が上昇していることなので、地球温暖 化が起きているかもしれない。 答:実は、どちらも間違い。 答 4 3月16~19日ミヤンマーに出張で ベンガル湾に近いパセインPatheinへ パセイン大学学長 「最近は気温が 40°にもなる」。 「昔ならまあ 35°までだった」。 「地球温暖化 が起きているため かもしれない」。 正しい可能性 この見解は が高い: 正しいか? 熱帯だから 5 地球の気候はどう決まる? 「大気の循環」 北へ移動 北へ移動 気温上昇 6 降水量=淡水の利用可能量の変化 減少 増加 未来予測は正確なのか 7 Facebookで佐和先生が引用 エコノミスト誌が報じた温暖化の「停滞」 竹内 純子国際環境経済研究所主席研究員 http://www.gepr.org/ja/contents/20130415-02/ 「東京大地震研究所が、地中に埋まっていたコンクリート構 造物を地震の際にできた石と誤認していたとして、これを「活 断層を確認した」としていた見解を撤回するという出来事が あったが、事程左様に科学とは万能ではないのである」。 「少なくとも地球温暖化という問題について科学者が示しうる のは、いくつかの予測オプションであることを踏まえる必要が ある」。 単なる思い込みによるミスと気候変動予測の不確実性を同 じレベルで議論して良いのだろうか?? 予測オプションの不確実性を理解できるだけの科学的知性 が政策決定者に必要なのではないか?? 8 Green House Gas(GHG)の考え方 地球は太陽光で熱を受けている 地球から宇宙への放出する熱をGHGが吸収し、半分 を地球側に戻す 丁度、布団のように、「地球の体温」の放出を少なくす る機能を果たす GHGの濃度が高くなれば、布団の綿が増える。GHG の濃度が低くなれば綿は減る。 大気の熱容量は、海洋の熱容量の1/1000なので 、大気の温度が1℃上昇する熱が海洋に行けば、地 球の温度はほぼ変わらない。 しかし、いつなんどき海洋から大気に熱が移動するか 分からない。 起きることは、中緯度では気候変動(偏西風の蛇行な 9 ど)である。 GHGの6種類 GWP(温暖化係数) CO2 CH4 N2O HFC =ハイドロフルオロカーボン類 PFC GWP=1 GWP=21 GWP=310 GWP=140~6300 GWP=6500~8700 =パーフルオロカーボン類 SF6 GWP=23900 10 条件2:今世紀の人類の行動が、未来を決めると社会が認識 どれくらい排出量を減らせばよいか? 陸氷の融解に よる海面上昇 応答の大きさ 海水熱膨張に よる海面上昇 気温変化 CO2濃度変化 CO2排出量 2000年 2050年? 江守正多氏提供 1000年後 (2001年IPCC 第3次評価報告書より) 11 2012年までの国際共同作業 12 21世紀変動予測革新プログラム報告書 許容される二酸化炭素の排出量。 ≒ 3℃シナリオ ≒2℃シナリオ ネガティブエミッション 革新プロジェクト報告書より バイオ CCS 可能量 13 ネガティブ・エミッション バイオCCSが可能性が高い?? バイオCCSのプロセス 化石燃料で約8G炭素トン/年のCO2放出量 そのうち約1/8を森林が吸収 森林バイオマスで発電 排出ガスからCO2を分離 海底の土壌に隔離貯蔵 いずれにしても、まず、化石燃料起源の CO2排出を1/8以下にすることが条件 14 湿潤熱帯地域と高緯度地域での水利用可能性の増加 中緯度地域と半乾燥低緯度地域での水利用可能性の減少及び干ばつの増加 水 4-17億人 11億~32億人 両生類の絶滅 約20~30%の種で絶滅 地球規模での重大な の増加 リスクの増加 (40%以上)絶滅 サンゴ白化 ほとんどのサンゴ 広範囲に及ぶサンゴの死滅 の増加 が白化 生態系が影響を受け,陸域生物圏の正味炭素放出源化が進行 種の分布範囲の変化と ~15% ~40% 森林火災リスクの増加 淡水を大量に使うプロセスはあり得ない 生 態 系 食 糧 10-20億人 水ストレス増加に直面 する追加的人口 穀 物 生 産 低緯度地域 いくつかの穀物の 減少 全ての穀物の減少 いくつかの穀物の 増加 いくつかの地域での 減少 中高緯度地域 洪水と暴風雨による損害の増加 沿 岸 域 毎年に沿岸洪水を 経験する追加的人 口 0~300万人 世界の沿岸湿 地約30%消失 200万~1500万人 栄養失調,下痢,呼吸器疾患,感染症による社会的負荷の増加 健康 熱波,洪水,干ばつによる罹(り)病率と死亡率の増加 いくつかの感染症媒介生物の分布変化 0 1 IPCC(2007) 江守正多氏提供 医療サービスへの重大な負荷 2 3 4 5℃ 15 1980-1999年に対する世界年平均気温の変化(℃) 江守正多氏提供 IPCC-AR4での2100年 までの気温上昇予測幅(℃) 大西洋子午面循環 ENSOの強さ サハラ/サヘル及び西アフリカモンスーン アマゾン熱帯雨林 西南極氷床 北方林 グリーンランド氷床 北極の夏季海氷 1990年水準からの全球気温上昇(℃) 地球システムの大規模かつ非連続的な 変化の可能性(tipping elements) Lenton and Schellnhuber (2007) 16 条件3 社会が化石燃料を正しく知っている 17 18 原油価格推移 理由:過剰流動性資金 1.2京円 リーマンショック $100 $10 19 石油系の燃料はまだまだ十分にある 高いけど! 20 条件4 社会が自然エネルギーを良く理解している 地球のエネルギーバランス WWFの世界100%自然エネルギーシナリオ http://www.wwf.or.jp/activities/lib/pdf_climate/green-energy/WWF_EnergyVisionReport_sm.pdf 疑問点 1.Bioの技術的進化は期待できるか 2.自動車は何で走るのか 3.不安定な電力はどうするか 22 WWF世界シナリオ続き 発電容量(kW)と発電量(EJ、kWh)の区別が分かっているのか? 稼働率 太陽12%、風力25%(陸上)、風力33%(洋上)ぐらい これが最高効率で動くと、瞬間的に想定の4倍の発電量になり 最低効率だと、瞬間的に想定の1/4の発電量になる。 発電用 不安定な発電 72% 不安定な電力が余る→水の電解による水素がタダ CCS=Carbon Capture and Sequestration 24 条件5 自動車用などのエネルギー未来像を理解 25 自動車WG 相当に 保守的な 予測 26 以上の条件から、バイオエネルギーと藻類を考える Is there any roles of Microbiology to contribute to Climate Change? How about Bio-Fuel? Because of its “CarbonNeutral” characteristics. It must be a good idea! We have to consider almost everything including carbon debt, adverse effects on biological diversity, energy balance and so on. It may be dangerous to depend only on ecosystem fully. Because nobody knows what happens if we neglect the fragility of ecosystem! 27 From the view point of Carbon Debt Time of repay biofuel carbon debt (years) Published Online February 7 2008 Science 29 February 2008: Vol. 319 no. 5867 pp. 1235-1238 http://www.sciencemag.org/content/319/5867/1235.abstract Recommendation by the J.Fargione(the author): 1. biofuels made from waste biomass 2. or from biomass grown on degraded and abandoned agricultural lands planted with perennials 28 Comparison of Productivities of Bio-diesel Fuel from Several Sources Sources Productivities+ Area Required Mha# Corn 0.2 1540 Soy 0.4 594 Jatrofa 1.9 144 Oil Palm 6.0 45 136.9 2 Micro Algae* ??????? +Productivity: in tons/ha #Area Required: To produce 50% of fuel for transportation in USA *Micro Algae containing oil of 70% in weight Biodiesel from microalgae Yusuf Christi Biotechnology Advances Volume 25, Issue 3, May-June 2007, Pages 294-306 29 From the view point of cost and productivity 1. Kind of Water Fresh water = expensive and insufficient(0.8%) Better to use Marine Water 2. Required Water Corn 1900m3 fresh water/ton of fuel Soy 2500m3 fresh water/ton of fuel Micro Algae 125m3 marine water/ton of fuel Really??????? But maybe Ok, if use only marine water. 30 Tentative Results obtained so far Can be improved! Open Pond w/ Raceway Type ■Basic Data Biomass Density Oil Content Scale ■Reactor Parameter ・days in year ・number of Reactors ・days for one operation cycle ・cycles per year ■Area used for Reactors Oil Productivity 0.5 g/L 20% 170 kL 250 days 35 (80 m x 18 m) 7 days 35 cycles/year 7 ha 3 ton/ha/year Less than the Value Reported =136.9ton/ha/year 31 Energy Balance : Most Important Point! Energy Consumed to Move Paddles: 41.4 MJ Energy Recovered by Algae: 6.7 MJ Growth: 0.5g/L、 Oil Contents: 20% EPR 6.7 MJ / 41.4 MJ = 0.16 EPR=Energy Profit Ratio Shorter Time for Paddling EPR = 0.16 x 2 = 0.32 Change Design ( 200 L 300 L) EPR = 0.32 x 1.5 = 0.48 Tentative Conclusion: It is necessary to find new types of Algae with high efficiency! Dr. T. Tanaka (Tokyo University of Agriculture and Technology) will try to enhance the efficiency of oil production by means of genetic modification etc. 32 2050年頃、 こんな結論になることが推測される 化石燃料には、高額の環境税が不可欠に 自動車はほとんどモーターを備え、+その他になん らかの燃料: 消費量が少なければ、CNG(天然ガス)などなんでも良い もし大量消費するなら、Carbon-Neutralのバイオエタノー ルなどのバイオマス燃料か 藻類は? EPR<1 なら電気をそのまま使うのが良い ジェット機は電気でもエタノールでも飛べない 炭化水素で、 Carbon-Neutralなものが必要か? 自然エネルギーで作ることが条件 この候補が藻類かもしれないが、条件の精査が重要 化学原料としては、やはり石油が優れている 33
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