バイオマスプラントにおける高効率バイオガス・ バイオ燃料コー

北海道 自然エネルギー研究 第4号 2007年
Jour. Natural Energy Research Hokkaido No.4, 15-22. 2007
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バイオマスプラントにおける高効率バイオガス・
バイオ燃料コージェネレーションシステム
野 坂 卓 見*
The Co-generation System with Biomass Gas and
Bio-fuel for the Biomass Plant
Takumi NOSAKA*
Abstract We have developed a co-generation system for the biomass plant. The diesel engine with turbo
charger mixed bio-gas with air firstly, compress and explode jetting bio-fuel secondary in cylinder. The
liquid fuel is light oil, A-heavy oil and bio diesel fuel(BDF). Dual fuel system with thermal decomposition
gas on woody biomass and BDF on tempura oil began operation in March 2006. It has 1500 hours of operation
at Iwaki city, Fukushima.
キーワード;バイオマス,バイオガス,バイオ燃料,BDF,コージェネレーションシステム
Key words;biomass,bio-gas,bio-fuel,bio diesel fuel,co-generation system
1.はじめに
地球環境を守るために,太陽光や
風力等の自然エネルギーを積極的に
活用し,さらには人間の経済活動に
より発生する廃棄物を有効活用し,
循環的に自然に戻すことで環境への
負担を減らす地道な取組みが各方面
で行なわれています.
食料や飼料が国内で生産されてい
れば,発生した廃棄物を肥料や原料
として再利用することにより,循
環的に処理することが可能でありま
す.
しかし,わが国では,食糧の直接
的な輸入のみならず牛乳や食肉生産
のための飼料,さらに石油の大半を
輸入しており,原料や資源が国土の
外から入ってくる構造になっている
ため,廃棄物処理の解決が極めて重
要な課題となっています.
図1.人間の自然エネルギー利用形態(メタン発酵)循環型農業
* 省電システム株式会社 Syouden Systm Co. Ltd
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野坂卓見
図2.人間の自然エネルギー利用形態(メタン発酵)非循環型農業
バイオマスプラントにおける高効率バイオガス・バイオ燃料コージェネレーションシステム
★
★
図3.人間の自然エネルギー利用形態(熱分解)
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野坂卓見
2.バイオガス・バイオ燃料コージェネレーション
システムの当社実績
1)稼動実績
③発電容量及び発電形態
発 電 形 態
当社における納入稼動実績を下記に示します.
実
績
台
数
①稼動期間 2002年9月~ 2006年11月 稼動施設:17箇所
稼働台数:24台
②稼動実績:ガス主成分及び燃料
ガス発生方式
ガスの主成分
食品残渣や家畜
糞尿のメタン発酵
バイオガス ・メタン
木質バイオマス
+
廃プラスチック
熱分解ガス
・水素 ・一酸化炭素
・メタン 木質バイオマス
+
廃プラスチック
熱分解ガス
・水素 ・一酸化炭素
・メタン 系統連係
独 立 電 源
単 独
複数同期
5~15KW
2
20KW
2
30KW
5
7
50KW
1
60KW
1
100KW
1
250KW
液体燃料の種類
実績台数
A重油
又は 軽油
17台
2
3
2)当社のバイオ・コージェネの特長
循環型の資源・エネルギー利用の中で重要な役割
を果たす当社のバイオ・コージェネは下記のような
特長があるため多くの納入実績を上げることが出来
A重油 又は 軽油
6台
ております.
①使用するバイオガスのカロリー(熱量)に左右さ
バイオ
ディーゼル
1台
れずに安定して発電と熱供給が可能です.自然エ
ネルギーであるバイガスは日々変化します.
メタン発酵方式にしても,熱分解方式にしても利
図4.バイオガスコージェネ 納入年次別発電機容量推移
バイオマスプラントにおける高効率バイオガス・バイオ燃料コージェネレーションシステム
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図5.当社のバイオ・コージェネの特徴①
用する材料や比率さらに量によって,発生するガ
②電気の消費電力の急変にたいして,発電機の周波
スの成分や熱量が日々変化します.
数や電圧の変動が最小限で運転が可能です.液体
当社の方式は,発生したガスを運転が出来る限度
燃料でコントロールするのでガスのみのエンジン
までガスを発電機に投入します(バイオガスを最
より応答が速いです.
大限有効活用します)
.
バイオガス施設は,電力会社の電力系統に接続し
ガスのカロリーが高い場合 →発電機の周波数が
ない独立電源方式が多く用いられています.この
安定するためにエンジンに必要な液体燃料は最小
場合電気負荷が急変した場合に,周波数や電圧の
限になるようにコントロールします.
変動幅が極力少ないことが求められます.
ガスのカロリーが低い場合 →発電機の周波数が
安定するためにエンジンの液体燃料は多く必要と
なります.自動的に増えるようにコントロールし
ます.
当社の方式は,エンジン出力の変動分を応答が速
い液体燃料で補完する方式なので
周波数や電圧の変動幅が最小限に抑えられ,良質
な電源供給が可能です.
従ってバイオガスのカロリー(熱量)の大小に影
響を受けずに安定した運転が出来ます.
③メタン発酵施設では発酵槽を適温に加温する必
図6.当社のバイオ・コージェネの特徴②
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野坂卓見
要があります.特にバイオガスがまだ出ていない
に無段階に補う方式なので安定した稼働率が要求
施設の立ち上り運転時では,当社の方式ではガス
される独立型には特に向いています.
が無い時でも自動的に液体燃料のみで運転するた
・不純物の混入が多いバイオガスの場合,エンジン
め,バイオコージェネから電力の供給と,更にお
の始動時には液体燃料でエンジンの初動処置をし
湯により発酵槽を加温できます.
てからガスを投入する,停止時も同様にガスの処
その結果バイオガスが発生し始めればガスの量に
理を行なってから液体燃料を停止する等の手順を
応じて液体燃料は減少した運転に切替わります,
行なうことでガスの不純物からエンジンを守るこ
したがって加温用の軽油やA重油のボイラーが必
とが出来ます.
要がないためシステムがシンプルになります.
一方ガス専用エンジンではガスが発生しない状
●本方式の課題
態では,電力供給のため,別の発電機を用意する
・液体燃料を80%以上カットしますが,原油価格が
か,電力会社の電力を使用しなければなりませ
高騰している現状では,食用油の廃油を燃料化し
ん.さらに加温のためにバイオガス以外の燃料に
たバイオディーゼル(BDF)利用の普及が大事
よるボイラーが必要になります.
になっております.
福島で液体燃料をBDF100%で2006年3月から順
④当社の方式では,液体燃料は軽油やA重油のよ
調に稼働中です.(100kw×1台)
うな化石燃料ばかりではなく,てんぷら油等の食
3.実例について
用油の廃油を精製したディーゼル燃料(BDF)
100%を使用して運転が可能です.
福島では2006年3月から順調に稼動しておりま
す.
<実例1>熊本県山鹿市バイオマスセンター
・稼動機種100KWタイプ BIOCGS-100B
外形図,システムブロック図,燃費特性グラフ
(液体燃料だけの場合とバイオガスを投入した場
⑤複数台数の安定した同期運転が可能です.エンジ
合とを比較)を資料として添付します.
ンコントロールを反応が速い液体燃料のガバナで
・台数 2台
行なっているため,電気負荷の変動に強く,同期
・発電形態 独立電源 同期運転
運転に向いています.
電気負荷が少ない場合は1台で運転,電気負荷が
多い場合は2台目を自動的に起動し2台で同期運
3)当社の運転方式のまとめ
転を行います.更に電気負荷が少なくなった場合
◆デュアルフューエル方式 ガス + 液体燃料 は2台目が運転を継続し1台目が停止し,自動交
ターボチャージャー付のディーゼルエンジンを
互運転することにより発電機ごとの稼働時間の平
使い,空気とバイオガスを予混合してシリンダー
準化を行なっています.
に送り込み,圧縮したタイミングで液体燃料を噴
射して燃焼をコントロールします.
材料の80%を堆肥に加工しており,残り20%をメ
タン発酵に使用し,本発電機2台による発電で,
堆肥工場の固液分離機,換気ブロワー20機,消臭
○本方式の利点
用の大型ブロワーやプラント,メタン発酵層の加
・バイオガス施設の立上がり時や,施設のメンテナ
温用温水や工場の設備を稼動する電力を賄ってい
ンス以後の再開時にバイオガスが無くても液体燃
ます.電力会社の系統とは契約せず独立電源で維
料のみで電力と熱の供給が可能であります.
持しております.
・ガス成分の変化や濃度の低下があっても安定した
・発生ガス
運転が可能であること.特にガス成分や熱量が材
メタン比率 常時65%超!
料によって日々変動する熱分解ガスには向いてい
硫化水素濃度 20ppm以下で安定.
ます.
・稼動実績 ・供給されるバイオガスをエンジンに最大限供給
し,エネルギーの不足分のみを液体燃料を自動的
2005年6月運転開始 ⇒ 2006年10月現在 稼働
時間6200時間.1年点検を実施.
バイオマスプラントにおける高効率バイオガス・バイオ燃料コージェネレーションシステム
・燃費 ・投入材料 ペットボトルの廃プラスチック
バイオガスを投入した場合,100KWの定格でエ
・運営形態
ネルギー分担率はバイオガスが82%,液体燃料が
18%で安定して動作しております.
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民間の資源回収企業によって,材料のペットボ
トル(北海道からが多い,道内の廃棄物再利用率
・投入材料
が低いためか?)熱分解ガスと,行政のいわき市
地域内の牛糞,飲食関係の事業所の生ごみ.
と連係し地元の食品関連企業や,家庭のてんぷら
・運営形態
油等の植物油の廃油を回収しています.そして自
第三セクターによる集中型で,地域の農家や住民
社で精製してBDFを製造し,100%で稼動して
へ加工した堆肥の販売,消化液の散布に使用して
います.家庭の主婦は廃油をスーパーマーケット
循環型農業の普及に貢献しています.
に持っていくと,カードのポイントが加算される
サービスも行なっているため原料回収は順調に進
●課題
んでいるようです.
・材料がやや不足しており,ガス不足の傾向があり
ます.
・メンテナンス料の捻出に苦労しているようです.
困難であります.(電力会社に対する電力の売電は
資源回収ディーゼル車も,BDF100%の燃料で稼
動しています.
BDFの原価は,初期投資を除くと40円/Lで出来
るので十分採算が取れるとの説明でした.
技術的には十分可能でも電力会社による買取価格
が3~4円/Kw・hでかえって採算に合わない)
4.挑戦中の事例
・エンジンメーカーが外国製であるため部品の確保
現在青森県で,当社も参加し250KW×3台の大
と納期のことを考慮して,客先にて予備エンジン
型熱分解ガス方式の施設の最終試験を行っておりま
を1台,予算をつけて確保いただいています.し
す.(木材と廃プラスチック)
かし一般酪農家の場合は困難です.
独立電源,250KW×3台の同期運転により電源を
供給しております.
<実例2>福島県いわき市トラスト企画バイオマスセンター
完成すれば国内最大級の施設になると思われま
・稼動機種100KWタイプ BIOCGS-100B
す.
・台数 1台
5.まとめ
・発電形態 独立電源 木質を原料とする熱分解ガスによる運転.
当社におけるバイオガスコージェネの開発,実稼
さらに液体燃料として,てんぷら油等の植物性油の
動に係ってきて感じた点を若干上げさせていただき
廃油を精製したバイオディーゼル燃料(BDF)
ます.
を使用しています.
・本テーマの取組みは,単にある分野の機械やプラ
電力会社の系統とは契約せず独立電源で維持して
おります.
ントを製造し販売ずれば事足りるものではなく,
地球環境の改善に繋がる循環の一環として役割を
・発生ガス 詳細データはなし
果たすもので無ければすぐに行き詰ってしまうと
・稼動実績 考えます.
2006年3月運転開始 ⇒ 2006年10月現在 稼働
時間1500時間
・バイオマス発電を含む自然エネルギーによる発電
からの,電力会社の買い取り価格の合理的な値段
・燃費 での買い取りが進むことが普及の鍵になると考え
熱 分 解 ガ ス を 投 入 し た 場 合 , 1 0 0 K W の 定 格 で
ます.メンテナンス費用の見通しも出てくると思
エネルギー分担率は熱分解ガスが70%,液体燃料
(BDF)が30%で動作しております.
われます.
・ガスの発生時とガスの消費の時間差を補うため
ガスの熱量は4000~4500Kcal/N・㎥で,メタン発
の大型のガスホルダーは非常に小さくてすみ,発
酵のガスに比較して低いためエネルギーの分担率
電機容量も消費電力の最大値に見合った大きさは
は低くなっています.
必要なくなり,設備側のコストダウンつながりま
22
野坂卓見
す.
・この分野での日本のエンジンメーカーの協力を是
非お願いしたいと考えます.当社の使用している
ディーゼルエンジンは,残念ながら日本製は1台
もありません.
当社は外国かぶれしているわけではありません.
国内メーカーからエンジンを供給してもらえない
のが現状です.
・エンジンは信頼性が高く,コストが安く,部品供
給に時間がかからないことは,一般的には理の当
然であります.しかしバイオガスに使用すると聞
いただけで国内エンジンメーカーから供給を断ら
れてしまいます.
(1社2社ではありません)
・バイオガスを入れるのですから通常の保証をお願
いしているわけでなく,本体と部品の供給をお願
いしているのですが今のところ実現できていませ
ん.
・もう一点,電力の自由化の拡大を契機にバイオ
マス発電や,風力等の自然エネルギー発電の電力
を,電力会社が消極的ならば,NPOの中で積極
的に買い取る仕組みについて検討する必要はない
でしょうか.
・最後にバイオマスプラントは自然相手の新しい事
業ですから当然困難が伴います.導入する事業者
(酪農家,食品工場,第三セクター等)とプラン
トメーカー,機器メーカーがそれぞれの立場で上
記の方向に協力し,共感を共有する必要があると
考えます.
以上不十分な報告ですが終わらせていただきま
す.