Repeated Games and Reputations Long-Run Relationships Chapter 6 Applications Taiki Todo March 29, 2012 Introduction • 本章では完全観測繰り返しゲームの適 用例を3つ紹介 • 現実問題の解析・説明に繰り返しゲー ムを用いる際の定式化の例 Outline • 6.1 Price Wars – n 企業間の価格競争 – プレイヤ間の協調 (collusion) の達成可能性 • 6.2 Time Consistency – 企業-政府間の資本課税競争 – 無限回繰り返しゲームによる効率的結果の実現 • 6.3 Risk Sharing – 消費と保険加入 – 現実問題の,均衡結果による説明 6. Applications 6.1 Price Wars Price Wars • 同一の商品を生産する n 個の企業 • 最安値を設定した企業のみが勝者(消費者 に販売可能) • 勝者の利益は,消費者の需要量×価格 – 複数の企業が最安値を設定した場合,その企業 間で需要を等分割 • この競争が繰り返し行われる場合に,企業間 の協調(全員が同一価格を設定)は達成でき るだろうか Repeated Game Representation (1/3) • n: 企業(プレイヤ)数 • s: 状態.全プレイヤが正確に状態を把握 (perfect monitoring) • S: 状態の集合 • q: S 上の分布関数.q(s) は状態 s が生起する確率 • p1,…, pn: 分布 q から選ばれる現在の状態を観測 後,プレイヤが設定する価格.プレイヤの戦略. • s-min{p1,…,pn}: 最安値に対応する需要.この形式 で与えられると仮定. • min{p} * (s – min{p}): 勝者が等分割する利益 Repeated Game Representation (2/3) • 各期のゲームにおけるナッシュ均衡では,最安値は $0 となり,全員利得 0 – 他の誰か一人でも $0 を付けた場合,自分はどのような価 格を付けても利得は 0 – 一方,自分以外の最安値が $100 のとき,$99 を付ければ 全ての需要を独占 – この繰り返しにより最安値は $0 まで低下 • 一方,最も利得を増加させる価格は,需要 s に対し て s/2. そのときの利得 (s/2)^2 • 自分以外の全員が s/2 を付けているとき,少し下げ れば需要を独占 Repeated Game Representation (3/3) • The most collusive equilibrium (MCE) – Strongly symmetric – Maximizes the firms’ expected payoff • 以降,この MCE p(s) を考慮 – p(s) <= s/2: min{p}(s-min{p}) の式より一般性を失わない – 均衡からの逸脱は,以降永久に処罰 • 分布 q の構造と均衡戦略との関係を議論 – 6.1.1 independent and identically distributed – 6.1.2 with persistence 6.1.1 Independent Price Shocks • 各期独立に,同一の分布 q に従って状態 s が生起 • MCE p(s) は,全ての s において以下の式の 解: 1 (1- d )p(s)(s - p(s)) + d v* ³ (1- d )p(s)(s - p(s)) n 1 * v = å p(sˆ)(sˆ - p(sˆ))q(sˆ) n sˆÎS 協調した場合の今期の利得と 今後の期待利得 均衡戦略 p から逸脱した場合の 今期の利得 For Large δ • δ が十分大きいとき,v* の式のみが有効 • すなわち,p(s) = s/2 が均衡戦略 – 現在の状態 s に対する価格設定による利得が小 さくなる 1 v = å p(sˆ)(sˆ - p(sˆ))q(sˆ) n sˆÎS * For Small δ (1/3) • 一方,δ が十分小さいとき, p(s) は次の式を解く: nd v ³ p(s)(s - p(s)) (n -1)(1- d ) u p(s)(s-p(s)) * • 右図より,s = max{S} の場合 * nd v < (s / 2)2 (n -1)(1- d ) であるから,必ず bar(s) が 存在 bar(s) p(s) For Small δ (2/3) • この bar(s) を用いて, MCE p(s) は次のように書け る: u – s > bar(s) のとき nd v* p(s)(s - p(s)) = (n -1)(1- d ) – s <= bar(s) のとき p(s) = s / 2 p(s) For Small δ (3/3): discussions • Bar(s) が与えられたとき,MCE p(s) は, – s > bar(s)に対して単調減少 (counter-cyclical) • 状態 s の値が大きいほど,逸脱した場合の利益は大 きい – s < bar(s) に対して単調増加 (pro-cyclical) • 問題(特に需要 s )が与えられたとき,需要が 小さいうちは協調戦略の価格は増加傾向 • しかし,需要が大きくなると,協調戦略の価格 が減少 6.1.2 Correlated Price Shocks • 6.1.1 では,各期の状態は独立に同一の分布 から選ばれると仮定 • 現実の問題,次の状態は現在の状態と何ら かの関係を持つことが多い • 特に,次の状態が現在の状態から変わりにく い(粘度,persistence)というのはよく見られる 傾向 – 景気の変動:好景気と不景気が急激に入れ替わ ることは稀,多くの場合緩やかに変動 Simple Example • n=2 • S = {1 (low demand) , 2 (high demand)} • q: 次状態の分布.以下のマルコフ過程で定義: – – – – 初期状態はランダム(互いに確率 1/2)で生起 確率 1-φ で,現在の状態と同一の状態が生起 確率 φ で,現在の状態と異なる状態が生起 φ を小さく選べば,persistent な状況を表現可能 • δ = 11/20 (1/2 より微妙に大きい点がポイント) Cf. MCE • 先に,6.6.1 のケースと同様の i.i.d. の分布を 仮定し,MCE を考えてみる – 需要が小さいとき (s=1), 1/2 を設定 – 需要が大きいとき (s=2), 次の式で与えられる p を 設定: 1 11 11 sup [(1- d )p(2 - p)] £ (1- d ) p(2 - p) + d ( + p(2 - p)) p<p 2 28 22 – この式を解くと,p~ = 0.22 が得られる – 即ち,countercyclical • High-demand の場合の方が均衡価格が低くなる Persistent States (1/2) • 次に,定義したマルコフ過程を考える • 各期 s/2 を定める戦略 p を考える – s に関して単調増加 – この戦略が MCE であれば,このモデルは pro-cyclical • φ がほぼ 0 のとき(= persistence が強いとき), – 初期状態 s=1 -> v* = 1/8 – 初期状態 s=2 -> v* = ½ • よって,上記の戦略が MCE となるための必要十分 条件は sup [(1- d )p(2 - p)] £ p<1/2 1 8 sup [(1- d )p(2 - p)] £ p<1 1 2 Persistent States (2/2) • これらを解くと,δ >= ½ • よって,現在の discount factor 11/20 であれ ば,各期 s/2 を定める戦略が MCE – この MCE p(s) は明らかに単調増加 – すなわち,このモデルは pro-cyclical: 需要 s が増 加すれば,協調 (MCE) による利益も増加 6. Applications 6.2 Time Consistency Time Consistency • 企業と政府の資本課税競争 • 企業は各期,1単位の分割財を,消費と資本に分割 – 消費はそのまま自分の利益 – 資本は,ある一定の割合の収益を生み出すが,その収益 は政府によって課税される – 徴収された税によって,公共財が生産され,企業はその 公共財からも(微量の)利益を得る • 企業が毎期同一の分割を行うような税率は? – 政府は benevolent/慈善的 6.2.1 Stage Game • Player 1: 政府 • Player 2: 企業.毎期同一性能の異なる企業 が参加 – c: 消費 (consumption) – 1-c: 資本 (capital) – R: 資本からの収益 (return). R>1 – t: 政府による課税率 (tax rate) – γ(>1): 税収からの公共財の生産率.R-1<γ<R Consumer’s Utility c + (1- t)R(1- c)+ 2 G • 但し,G は公共財の量 • 企業の立場では,G は微少量と考えられる? ため,固定して計算 ì R -1 ïï 0 if t < R argmax [ c + (1- t)R(1- c)] = í 0£c£1 ï 1 if t > R -1 ïî R Government’s Response • 企業が分割 c を選択したときの政府の最適な 課税率 t – ただし,政府は慈善的であり,目的関数は企業の 利益の最大化 ì g ü é ù argmax ëc + (1- t)R(1- c) + 2 g tR(1- c) û = min í ,1ý 0£t£1 î R(1- c) þ Best Response • 互いの最適反応を図示す ると右図のようになる • ところで,政府は慈善的で あるから,政府-企業の利 害は一致 • R は資本からの収益である から明らかに R>1 • よって,企業は全て資本と する (c=0) のが効率的 • そのときの最適な課税は t = γ/R (点 B) 6.2.2 Equilibrium, Commitment, and Time Consistency • しかし,点 B は効率的 ではあるが,均衡でない – 課税率 t=γ/R に対する 最適な分割は c=1 – 実際,均衡は点 A • 企業が最適反応を取ると 仮定すると,企業の利得 を最大化する課税率は t=(R-1)/R となり,結果は 点C – 企業が全て資本とする ような最大の課税率 Commitment Problem • 先に政府が t=(R-1)/R を選び,それを企業が観測で きるのであれば,点 C の結果を保証可能 • しかし,現実には不可能 • このとき,政府の立場から見るとコミットメント問題が 生じる – 相手の戦略決定前に自分の戦略を相手に伝えることが できれば,自分の効用(この場合は政府の効用であり, 問題の定義より企業の効用と等価)を増加可能 – Time consistency problem とも呼ばれる.このとき,政府 は optimal だが time inconsistent な課税率を持つ,という 6.2.3 The Infinitely Repeated Game • 無限回の繰り返しゲームを考えることで,政府が企 業に情報を伝えられるのではないか • 仮定として,政府は割引率 δ を持つものとする • ここでは, grim-trigger 戦略を考え,毎期点 C を達 成可能なサブゲーム完全均衡となることを示す Grim Trigger Strategy • 状態: wL and wH – wL: 低税率(t=t*=(R-1)/R)かつ c=0 – wH: 高税率(t=1)かつ c=1 • 初期状態 wL • 行動 – 政府: wL のとき t*, otherwise t=1 – 企業: wL のとき c=0, otherwise c=1 • 遷移 – wL かつ t=t* のとき wL, otherwise wH 6. Application 6.3 Risk Sharing Risk Sharing • 消費者の消費と保険契約 • 高所得者は低所得者よりも消費が多い? • 現実のデータを見ると,必ずしもそのようにはなって おらず,現在や過去の収入状況に依存している,ら しい. • ここでは,プレイヤ2人のシンプルなモデルを用い て,そのデータに一つの説明をつける – モラル・ハザードとの関係? 6.3.1 The Economy (1/2) • n=2: プレイヤは二人 • State: e(1) = (y-, y_) & e(2) = (y_, y-) – 初期保有量を規定 – y- + y_ = 1, y- \in (1/2, 1) – 等確率 (random state RG) • Stage game strategy: 相手に譲渡する量(=保険料?) – 譲渡後の保有量を c1, c2 で表記 • Utility u(c): 保有量に関する関数 – 単調増加かつ凹 → リスク回避 – Ex. 限界効用逓減 u(c) c 6.3.1 The Economy (2/2) • Strategy: 前期までの履歴と今期の初期保有 量から,今期相手へ譲渡する額を出力 – Ex. No-transfer: 効用関数が単調増加なので,各 期相手に譲渡しないことが均衡.但し,concave であるから結果は非効率的(risk-neutral であれ ば効率的) • 各期で効率的な結果を導くサブゲーム完全 均衡は存在する?それはどのような場合? 6.3.2 Full Insurance Allocations • Full-insurance strategy profile: ある定数 c が 存在し,任意の履歴に対してプレイヤ 1 が c を保有し,プレイヤ 2 が 1-c を保有するような 戦略の組 – 即ち,任意の履歴に対して,両エージェントが毎 期同じ額を消費する戦略の組 – No-transfer は full insurance? → NO – Player1-all-transfer は full insurance? → YES – Equal-payoff-transfer は full insurance? → YES – Full insurance 自体は均衡とは別の概念 SPE and Full Insurance • Full Insurance (FI) strategy profile がサブゲーム完全均衡とな るのはいつ? – Minmax payoff 及び feasibility より, 扇型の領域が IR かつ feasible な payoff の集合 – サブゲーム完全均衡戦略 は,次の式を解く: u(c1 ) ³ (1- d )u(y) + d v u(c2 ) ³ (1- d )u(y) + d v • 例えば,多くの δ について, equal-payoff transfer は この式を解く,即ち FI かつ SPE Equal-Payoff Strategy • 相手が逸脱しない限り,互いの保有量が 1/2 となるように譲渡 • 相手が逸脱したあとは,一切の譲渡を 行わない • 性質: – Full insurance: 常に同じ消費を行う – Sub-game perfect: 逸脱の誘因が生じない 6.3.3 Partial Insurance • δ* を,equal-payoff equilibrium のみが full insurance SPE となる最小の割引率とする • δ* より小さい割引率の場合,full insurance equilibrium は存在しない • このとき,代わりの概念として,stationaryoutcome equilibrium (SOE) を導入 – e(1) においてはプレイヤ 1 がεだけ保険料を支払 い,e(2) においてはプレイヤ 2 がεだけ支払う – FI profile → SO profile. Equal-payoff も stationaryoutcome. Discussions on Risk Sharing • ここまで,δが十分大きい場合 (full insurance), 及びδがδ* よりも少しだけ小さい場合 (partial insurance) を議論してきた – 即ち,割引率が大きい範囲においては,収入 (endowment) のレベルが異なっていても,消費 (consumption) が一定となる均衡が存在 Remainings • 以降の内容は十分理解できていない • 6.3.4 Consumption Dynamics – 6.3.3 の一般化 – 履歴に e(1) のみが現れる場合 (y-, y_), それ以外 では stationary-outcome をとるような戦略 • 6.3.5 Intertemporal Consumption Sensitivity – 状態数が 3 (middle state を追加)の場合の議論 Summary Summary • 完全観測繰り返しゲームによる定式化と解析
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