学部3年実習

C:ハヤシライン
2008年10月27日
単位名
大学院:恒星物理学特論II
教官名
中田 好一
授業の内容は下のHPに掲載される。
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html
成績は出席とレポートの双方により決めます。
授業タイトル
A: 赤色巨星をめぐって
2008年10月 6日
B: 赤色巨星構造の追究
2008年10月20日
C: ハヤシライン
2008年10月27日
D: スペクトル
2008年11月10日
E: 等級
2008年11月 17日
F: ダスト
2008年12月 1日
G: ダストシェル
2008年12月15日
H: 変光
2008年12月22日
I: 銀河系の赤色巨星
2008年 1月19日
J: 系外銀河のの赤色巨星
2008年 1月26日
C.1.赤色巨星の構造
C.1.1.UV平面
星の構造は次の4本の方程式で与えられる
①
dM
 4 r 2  距離
dr
③
④
す。
dM
は密度で決まる。
dr
dP
M 
dP
M 
 G 2 圧力勾
配
で重力G 2 を支える。 dr
r
dr
r
dT
3
dT

F
温度勾配
で熱を流す( F)。
3
dr
4acT
dr
は熱抵抗。
②
rが増えると質量が増


質量勾配
d 4 r 2 F
 4 r 2   エネルギー発生率がエネルギー流 F
dr
の増加率を決
める。
その解を表すのによく使われるのが(U,V) 平面である。U,Vの定義は、
4 r 3 
GM r 
U
, V
Mr
rP
である。星の中心では、(U,V)=(0,3)、表面では(U、V)=(0,∞) となる。
したがって、星の構造は(U,V)面では左下のようになる。
化学組成に飛びがある赤色巨星のような場合には、右下のようになることは前回
話した通りである。
表面
外層
V
V
境界
中心核
境界
中心
0
U
3
組成が一様な星のUVカーブ
0
U
3
組成に飛びがある星のUVカーブ
C.1.2.ポリトロープ
前に述べた4つ構造方程式は5つの未知数M,P,T,ρ,Fを含んでいて式の数が
不足している。それを与えるのは状態方程式で、P=P(T,ρ)であるが、この状態
方程式がTを含まず、
P  K
1
1
N
と与えられると、構造方程式はM,P,ρに関する次の3つで閉じてしまう。
4 r 3  d ln M r
GM r 
d ln P
U

, V

,
Mr
d ln r
rP
d ln r
d ln P
1
 1
d ln 
N
初めの2つの式から、ポアッソン方程式
1 d  r 2 dP 

  4G
2
r dr   dr 
が得られる。 中心密度=ρCとして、 ρ= ρC・θN と表わすと、
P  K
1
1
N
 K C
1
1
N
 N 1
この式を上のポアッソン方程式に代入し、
  N  1K N1 1  1 d
 2 d 
N
C


r





4G

 r 2 dr  dr 


r   
N  1KC
1
1
N
4G
1 d  2 d 
N






 2 d  d 

この式はポリとロープ指数Nのエムデン方
程式と呼ばれる。
等温の場合はN=∞に対応するが、初めに戻ってP=K・ρをポアッソン方程式
に代入すると、
K d  2 d ln  
r
  4G
2
r dr 
dr 
1 d
 2 d
 2 d ln 
 
d


  

   C
r   
K

4G C
が等温のエムデン方程式である。
エムデン解から物理量に戻すには、パラメターとしてρC とαを選び、その2つ
からKを計算して、以下の式に入れればよい。
  C N
r  
P  K
1
1
N
 d 

M  4  3 C   2
 d 
前ページの式を使って、U,Vを計算すると以下のようになる。
4 r 3   N 
GM r 
  d 
U

, V
 N  1  
Mr
rP
  d 
 d 
 
 d 
ポリトロープのUV図
10
8
6
V
このように、中心から
伸びるポリトロープのU
-V曲線は中心の密
度や圧力に関係なく、
ポリトロープ指数Nだ
けで決まる。
N>5では表面にまで
達する(U=0,V=∞)
解を得ることはできな
い。
N=1.5
N=5
4
N=8
2
0
0
1
2
U
3
4
C.1.3.重力系の分類
UVカーブでガス塊の構造を分類してみよう。
タイプ1: 正常型。自己重力系
自己の質量が重力の源となる。UV
タイプ1重力系のUVカーブ
カーブで考えると、
星の表面: U=0 V=∞
星の表面: U=0 V=∞
星の中心: U=3 V=0
星の中心: U=3 V=0
となる。
20
表面
V
10
中心
0
0
1
U
2
3
タイプ2: 質点の周りに広がるガス。
タイプ2のUVカーブ
中心に質点があり、その重力場の影響の
もとで広がるガス。中心から遠くではタイプ1
と似た分布であるが、中心に近づくと質点重
力場が支配的となる。
表面
20
V
表面: U=0 V=∞
中心近くは、   なので、 U→0
10
中心
0
0
1
U
2
3
タイプ2で重要な性質は、
UVカーブ上の点を0と名付けるとき、点0が
中心に向かうにつれ、
(R1/R0)∞
となることである。
2
UVカーブは中心から外側へ伸び
る単純なタイプ1型である。
太陽の内部構造をUVカーブで表
わしてみるとタイプ1型になってい
るのが分かる。
log V
表面
1
主系列星
タイプ1
0
太陽のUVカーブ
-1
2
0
log U
1.5
log V
中心
1
0.5
0
-2
-1.5
-1
-0.5
log U
0
0.5
3
星表面
中心核+外層 という2重構造
外層UVカーブ=タイプ2
log V
中心核UVカーブ=タイプ1
赤色巨星
=複合型
2
中心核表面
左下のU=0、V=N+1へ向かう。
1
中心核の重力場が外層には質点
重力場のように働いていることが
分かる。
中心核表面
0
-2
-1
0
中心
log U
このような構造になっていると、なぜ星の半径は主系列に比べ大きくなるの
だろうか?
それは、赤色巨星の中心にあるのが半径ゼロの質点でなく、有限の半径を
持つ縮退核だからである。
無次元量でなく、実際の密度、半径で考えると、
中心核半径はあまり変わらないので、質量の増加は中心集中度を高めることで
吸収している。その結果、下図に見るように、AからBに進むと中心密度は増加
するが、核と外層の境界密度、圧力は逆に低下する。低い圧力でも支えられるよ
うにするには外側が広がって重量(質量でなく)を軽減する必要がある。
ρ
A
B
R
R (A)
R (B)
赤色巨星の半径は進化と共に増加する
中心核の半径Ro ≒白色矮星R0半径でほぼ一定。
外層の半径 R1 = Ro ・( R1 / Ro )
進化が進むと中心核の質量が増加する。その結果、外層と核の境界が例えば
A点からB点に移る。外層の解はタイプ2であり、UVカーヴが内側に進行すると
(R1/R0)∞に増大する。こうして、星の半径R1は大きくなっていくのである。
赤色巨星の構造
赤色巨星構造の進化
1.5
1.5
表面
(R=R1)
表面
(R=R1)
1
(R1/ R0)B> (R1/ R0)A
log V
log V
1
中心核表面
BI
0.5
0.5
BE
外層下面(R=R0)
0
-2
AI
0
-1
0
log U
-2
AE
-1
0
log U
赤色巨星構造の中間まとめ
これまで見てきたように、赤色巨星の構造の特徴は
(1) 中心核と外層との境界で平均分子量がジャンプする。(μC/μE)>1
(2) 中心核の質量が増加していくと、(端の密度/平均密度)0となる。(U0)
(3) しかし、中心核の半径R0はあまり変化しない。
(4) (2)で実現された(端の密度/平均密度)0は、外層にとってはタイプ2型
の構造でR0 0の場合に対応する。その時はR/R0 ∞である。
(5) このため、R=R0 ・(R/R0 ) ∞
そのままだと、R ∞、Te0になってしまう。
R0
R
μC
μE
このプロセスに歯止めをかけるのが、次に話す赤
色巨星大気の表面条件である。
さらに詳しい議論は以下を参照するとよい。
Sugimoto,D.,Fujimoto,M.Y. 2000, ApJ 538, 837-853.
C.2.Hayashi Line
C.2.1.赤色矮星の表面条件
前回、Hoyle,Schwarzchild 1955 が赤色巨星の構造を考える際には表面条件
が重要であると述べていたことを学んだ。低温度星の表面条件の問題は当初赤色矮
星から始まった。
L.Bieman 1935、Astronomische Nachrichten, 257, 269
“Konvektion im Innern der Sterne”
中心から表面まで対流平衡な星では、P=Kργー1 が成立する。
表面でP=0,ρ=0という境界条件をおくと、Kが定まらない。したがって、このよ
うな星は存在しないか、少なくとも中立平衡である。
これに対し、次のような反論が加えられた。
T.G.Cowling 1938、
Monthly Notices of the royal Astronomical Society,98, 734
“The Stability of the Convective Stars”
上の議論は表面近く、少なくともτ<1では、輻射でエネルギーを宇宙空間に放射
になっていることを見逃している。表面条件を考えると次の関係式が成立する。
(1) 光球(Photoshere)条件、T(τ=2/3)=Te
表面(r=R)付近で、
T  K
 1
,
1
 1
R2
 k R2 T
dr  
dP  
dT
1
GM
  1 H GM  1
K
  0 T ,
n
S
を仮定すると、
R
R
Teff
2
T 
n S
      dr    0  T  dr    0  
r
0
3 r
K
n 1
 1
T
S

1
 1
k R2 T
dT
1
  1 H GM  1
K
n 1
 1
k 0 
K
R 2 1 S  n 1

Teff  1
HG   1 1  S  n  1 M
 1
(2) L=4πσTe4R2
M 2 R3 4
 B( )
(3) T=Kργー1 のポリトロープなので、
K
(4) 赤色矮星の場合さらに質量光度関係 L=A・Mαが成立する。
結局、M、R、L,Teff、Kに対し、4つの関係式が得られる。その結果、与えられ
たMに対してKが定まるのである。
このようにして、赤色矮星では表面条件を正しく扱う必要が明らかにされた。
Osterbrock1953は対流層を特徴付けるのは層の単位質量当たりエントロピーで
あることに着目して一連のモデル計算を行った。
D.E.Osterbrock 1953、Astrophys.J.118, 529-546
“The Internal Structure of Red Dwarf Stars”
M型連星Castor Cは平均値、M=0.60Mo, L=0.063Lo, R=0.63Roと
求まっていた。しかし、輻射層を仮定してしてモデルを作ると、光度が観測値よりは
るかに明るくなることが問題とされていた。Stremgren(1952)は赤色矮星に対流
層が発達していると温度勾配が小さいので中心温度が低くなって光度が下がるの
ではないか、と提案した。
Castor A,B,Cはそれぞれ
が二重星で、全体で六重星と
分っている。Castor C はフレ
ア星YY Gem として有名であ
る。
右図は赤外Jバンド、A,B星は
明るすぎて飽和している。左図
はX線、C星以外にA,B星もX
XMMーニュートン(X線) 2MASS Jバンド(5分角)線で明るいことに注意。
表面
輻射層
対流層
dP g
3 4
4
T  Teff   
灰色大気モデルを適用する。 d  
4
GM
d    dr , g  2   8.87 10 3 1  x Pe   2.510 0.75
R
線形近似ではφ(τ)=τ+2/3 となる。κはHー吸収の平均値。
灰色大気の温度勾配が対流不安定になったら、対流層開始。
S
x
  5

2
ln

(
1

x
)
 

まず、開始点のエントロピーを計算。
k
1 x
 kT 2 
S=一定のラインが電離層を通過し、logT=6,logP=13.8でほぼ
完全電離(1-x)<<1。P=KT2.5の関係(logK=-1.15)が成立
する。その先は下の無次元量で計算する。
GM 2
H GM
P p
T

t
M r  qM r  zR
4
4R
k R
dp
pq dq pz2
 H 
2.5
1.5
0.5 1.5
p  Et
 2

E  4K 
 G M R
dz
tz
dz
t
 k 
E=13.6となる。色々なE(=8-40)に対して計算しておく。
2.5
吸収係数: κ=κ0ρ0.5T-3.5
輻射核
エネルギー発生: ε= ε0ρT4.5
(p-pサイクル)
無次元量の計算では中心部での dlogP/dlogT=(n+1)Cがパラ
メターになる。
鎖線:対流層で数字はEの値。
対流層
実線:輻射核で数字は(n+1)Cの値
n+1=2.5
点線:(n+1)=2.5となる実線の
端を結んだ線。
対流層と輻射核は点線の上でつな
がる。
その中で、CastorCは前に求めた
E=13.6が解になるべきだが、
水素量Xから決まる(n+1)Cも適当
な値になるという条件を考えて、少し
異なる値
16
E=19.9、X=0.7,Y=o.26
24
を採用した。
32
E=40
対流層の解でE≒45が(3,0)
を通ることを注意しておく。
C.2.2.赤色巨星の表面条件
前回、Hoyle,Schwarzchild 1955 が赤色巨星の構造を考える際には表面条件
が重要であると述べていたことを学んだ。この問題をシステマティックに扱ったのが1
961年の林忠四郎と蓬茨霊運の論文である。
Hayashi,C.,Hoshi,R.
1961,Publ.Astron.Soc.Japan,13,442-449.
“The Outer Envelope of Giant Stars
with Surface Convection Zones”
彼らはOsterbrock(1953)と同様に、星の表面
付近の構造を左図のように考えた。
P=光球(Photosphere)
PC=表面輻射層
C=輻射フラックスが対流フラックスと等しくなる点
CD=不完全電離層の断熱線(S=一定)
DE=完全電離ガスの断熱線 P=KT2.5
(1) P-C 表面輻射層
重力g=GM/R2 と フラックスF は一定として、構造方程式を解く。
表面近くは輻射層である。
dP
M 
 G 2   g 重力勾配
dr
r
dT
3

F 温度勾配
3
dr
4acT
ここに    0 P T  dP
4acT 3 g

dT 3 0 P T  F
T
4 
 Te
4 
dT 4  
dP
M 
で重力G 2 を支える。 dr
r
dT
で熱を流す( F)。
dr
4   3 0 F 1 4   3 0 1 L 1
dP 
dP
1   4ac g
1   4ac 4G M
4   3 0 1 L 1

P
1   4ac 4G M
Te=0の解を漸近輻射構造線と呼ぶ。表面から奥に
入るとTeによらずこの解に収束していく。
(2). C-D:輻射層の奥に入ると対流不安定になる。その先は
エントロピー一定で表わされる対流構造線になる。
M=1Mo, L=1000Lo の星の大気構造
対流構造線
5
4.5
輻射構造線
輻射線
対流logTe=3.5
対流logTe=3.45
logT
4
3.5
漸近輻射構造線
3
2.5
0
2
4
6
logP
8
10
12
対流不安定となるC点は通常電離層の中にある。
電離度xの等高線を示す。T=1万度付近で電離が起こることが分かる。
x 等高線
5
log T
4.5
x=0.001
x=0.01
x=0.1
x=0.2
x=0.5
x=0.9
x=0.99
x=0.999
4
3.5
3
2.5
0
2
4
6
log P
8
10
12

S 5   mH
 ln 4
k 2   me

エントロピー(S/k)の等高線。
電離層のところで傾きが変化。

 
 5
x
  1  x   x  2 ln
kT 2
1 x
 

2
3
S/k 等高線
5
S/k=20
S/k=25
4.5
S/k=30
S/k=50
S/k=35
S/k=40
log T
4
S/k=45
S/k=50
S/k=25
S/k=10
3.5
S/k=55
S/k=60
S/k=65
3
S/k=70
S/k=10
S/k=10
2.5
0
2
4
6
log P
8
10
12
S/k=15
星の構造線を電離度x、エントロピーS/k等高線に重ねてみると
logTe=3.5S/k=40、logTe=3.45S/k=35と対応している。
Teの違いによって運ぶべきエネルギーが変わり、対流開始点に差が生じる。
大気構造とS/k 等高線の比較
5
対流開始
4.5
S/k=35
S/k=40
log T
4
輻射線
対流logTe=3.5
3.5
対流logTe=3.45
x=0.1
x=0.9
3
2.5
0
2
4
6
log P
8
10
12
(3) D-E: 完全電離。対流層
前ページの図では、M=1Mo,L=1000Loの星の場合、
有効温度
logTe
3.45
3.50
35
41
対流エントロピー(S/k)
この先は完全電離となるので、P=K・T2.5の関係が成立する。ここで、対流の
エントロピー(S/k)とポリトロピックな関係の定数Kとの関係を求めておこう。
エントロピー(S/k)は下の式で定義していた。
S
x
  5
 2 ln
 (1  x)
 
k
1 x
kT
2

このままでは完全電離x=1の場合が計算でき
ない。
そこで、サハの式を用いてこの式を書き換える。
3
N II  N e  2 me kT  2
  
NI


h
2
 exp 

 kT 

3
2
 2 me kT 
  
N I  N  1  x   N 2  x 2  N  1  x 

exp



2
 kT 
 h

x
2
 2 me kT 
2 ln

 ln N 2  ln x 2  3 ln
 を一番上の式に代入して、
2
1 x
kT
h


N II  N e  N  x
これで、x=1も計算
できるようになった。
3
2
S
T
 2 me k 
  5  2
 (1  x)
 
 ln x 2  3 ln

2
ln

2
k
N
 kT 2  kT
 h

次にKの方だが、単純のため水素のみのガスを考える。
完全電離水素ガスの状態方程式は P  2kNT
ポリトロピックな関係
式 P  K  T 2.5 と連立させて、 K
P
N

2
k
T 2.5
T 1.5
このKを上の(S/k)の式に代入して、
S
 2 me k 
  5  2
 2
 
 3 ln
  2 ln2k   2 ln K
2
k
 kT 2  kT
 h

3
 2 me k  2  2 k
2
K  e 2k 
 e
2
h


5
1S
一方、圧力P、温度Tの無次元化
GM 2
H GM
P p
T

t
M r  qM r  zR
を行うと P=KT2.5は
4
4R
k R
2.5
2.5
2
GM
 H GM 
 H 
1.5
0.5 1.5 2.5
2.5
P p

K

t
p

4

K
G
M
R
t

E

t




4R 4
 k R 
 k 
2.5 1 d  2 dt 
1 1 d  r 2 dP 
1.5


z


t





ポアッソン方程式
は、
E z 2 dz  dz 
4G r 2 dr   dr 
1 d  2 dt 
E
 
  t1.5 を得る。
となるので、  
 z とおいて、エムデン方程式 2
 d  d 
2.5
この方程式の解の様子は、Osterbrock1955のところで見た。
E>45.53だと空洞解となってしまう。これはKが大きいすなわち(S/k)が小さい
ことを意味する。つまり、表面温度が低すぎて対流層のエントロピーが小さくなる
と、圧力Pを低温T高密度ρで作ることになる。このため、同じ圧力差ΔPを作るた
めにより多くの質量Mを消費し、結局中心にたどりつく前に星の質量Mを全て使
い尽くしてしまうのである。
E=45.53はn=1.5のエムデン解に対応し、中心まで対流となっている解であ
る。また、
E<45.53は中心まで行ってもまだ使いきれない質量が残っている場合で、この
残った質量は中心に置かれた質点と解釈される。これはタイプ2型の解で赤色巨
星に対応する。
この様なわけで、HR図上にE=45.53のラインを引くとそのラインより低温側に
は星が存在できないことが分かった。このラインをハヤシラインと呼ぶ。
ハヤシラインは星の質量Mとメタル量Z毎に引かれる。
ここではn=1.5の代わりに
n=2.7の図を示すが様子
は同じである。
S/k=60、中心
に芯がある、タイ
プ2。赤色巨星に
対応する。
S/k=50、中心に空洞が出来てしま
う。対応する天体はない。
S/k=55、タイプ1とタイプ2
の境界線。HAYASHI line
の星。
こうして表面温度が低すぎる星(膨れ上がりすぎた星)はエントロピーが低
く、中心部に空洞が生じて存在不可能であることが判った。そのぎりぎりの
境界線をHAYASHI LINEと呼ぶ。
HAYASHI LINE
4
3.5
log L/Lo
HAYASHI LINE
は誕生した原
始星が降り下
り、進化終末の
赤色巨星が昇
り上がる道であ
る。
3
0.6Mo
1Mo
10Mo
1Mo星の
2.5
禁止領域
2
1.5
4
3.8
3.6
3.4
log Te(K)
3.2
3