開発とジェンダー ~農村社会における女性 のエンパワーメント~ 総合政策学部3年 神事葉月 70104673 テーマ・目的 テーマ ジェンダーという概念に着目し、男女の社会的な 差に問題意識を置いて、途上国(特に農村社会)に おいて、女性が“開発の担い手”としての役割を担 い、かつ“開発の受益者”として開発の成果を適正 に分配されるような社会を築くにはどのような取り 組みが必要なのかを探る。 今期はバングラデッシュの農村に焦点を当て、グ ラミン銀行によるマイクロクレジットの効果と女性の エンパワーメントの可能性を探る。 キーワード 農村社会 参加型開発 人間開発 WID (woman in development) GAD (gender and development) 女性のエンパワーメント グラミン銀行 マイクロクレジット 研究の流れ バングラデッシュ農村において女性が抱える問題 グラミン銀行の小規模融資 効果 問題点 課題 他地域での応用 バングラデッシュ農村の女性 伝統的男性上位社会 ①イスラム教の影響 経済活動 ①家庭内での性別役割分担 →家事全般・育児・家畜の世話が全 て女性に任されており、女性は家庭から外出することさえ許可を 必要とする。 ②現金収入は主に男性によって得られている プライマリーヘルスケア ①乳児の死亡率は1,000人中67人(日本は3人) ②妊産婦の死亡率も10万人中600人(日本は12人) ③世界の妊産婦死亡の約5%がバングラデシュの女性 教育 ①女性の教育の機会は増えたが、未だに男性との間に差がある。 バングラデッシュにおける女性の地位 各社会指標に見るジェンダー格差 1998年 出生時平均余命 総就学率(%) 成人識字率(%) 国会の議席数(%) 女性の行政職・管理職 (%) 女性の専門・技術職(%) 女性 58.7 30.0 28.6 9.1 4.9 男性 58.6 40.0 51.1 90.9 95.1 34.7 65.3 (出所)UNDP、human developing Report 2000 バングラデッシュ農村における女性の地位 バングラデッシュ農村部:教育・保健支出に見るジェンダー格差 家計に占める教育支出 男女比 家計に占める保健支出 男女比 労働力人口(%) (100万人)男女比 失業率(%) 女性 男性 34.1 65.9 45.1 54.9 40.4 59.6 1.9 2.2 (出所)CIRDAP, Monitoring Adjustment and Poverty (MAP) Policy Brief, 1998, グラミン銀行による小規模融資 ①主な活動内容・制度 原則 ①対象は土地を持たない貧困層(95%が女性) ②5人1組の集団保証 制度 ①グループによる相互監視・連帯責任 ②実質10%程度の低利の貸付 ③回収が容易な週ごとの返済システム ④銀行員が町村に点在する「センター」に出張する回 収制度 グラミン銀行による小規模融資 ②なぜグラミン銀行に着目したのか 小規模融資の効果 ①小規模融資による起業による200万以上の雇用機 会創出 ②貧困層の女性の自助努力による貧困脱却 ③女性の意思決定権の増大、エンパワーメントに貢 献 グラミン銀行による小規模融資 ②なぜグラミン銀行に着目したのか 小規模融資の副次的効果 女性のエンパワーメント 女性の経済進出の増加 女性の結婚年齢の上昇 安定した収入の確保 健康・避妊の知識の増大 教育への投資の増大 家庭内外における意思決定権の増大 出生力の減少(人口の安定化) グラミン銀行による小規模融資 ③どのポイントが女性の エンパワーメントに貢献したのか ポイント1 「貧困層は怠惰が故に貧しい」という概念をなくし、 貧困層の女性と言えども、信用を付与される べきであるという認識。 ポイント2 自助努力を重視。女性は限られた融資を もとに、自らの発想で収入源創出、 起業を実施(返済率は98%以上) 女性の収入が家庭の重要な収入源となり、 家庭内外での発言権が増大(自信とエンパワーメント) グラミン銀行による小規模融資 ④グラミン型融資への批判 小規模融資は本来の融資とは違った目的に使わ れているのではないだろうか。 融資は最貧困層に届いていないのではないだろう か。 女性が借り入れた資金は男性に奪われているので はないだろうか。 小規模融資は家庭の不和及び男性による暴力を 増長しているのではないだろうか。 参考文献 『開発とジェンダー―エンパワーメントの国際協力 』 2002年 田中 由美子、伊藤 るり、大沢 真理 ( 国際協力 叢書) 『ジェンダー・開発・NGO―私たち自身のエンパワーメント』 1996年 キャロライン モーザ(新評論 ) 『開発と健康―ジェンダーの視点から』 2001年 青山 温 子, 喜多 悦子, 原 ひろ子(有斐閣選書) 『参加型開発ー貧しい人々が主役となる開発へ向けて』 2002年 斎藤文彦、久保田賢一他著 『開発とWIDー開発途上国の女性の現状と可能性』2002 年 森川友義(新風舎)
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