6[再]・変化する文化を「守る」 2010.10.27. 成蹊・文化人類学Ⅱ 6[再]・変化する文化を「守る」 2010/10/27 - [2] 変化する文化を「守る」(1) 「貴重な文化」は変えずに残していくべきだろうか? おそらく日本全国に広がっていたであろう「自給自足的な暮ら し」は、大量消費生活への移行が雪崩をうって起こった1950-60 年代以降、変化し消えゆこうとしていることは確かである 一方、物質文化であれ精神文化であれ、「文化は変化する」こと も疑いない事実である この事実をまえにして、少なからぬひとびとは「それは 惜しいことだ、なんとかして守らなくては」という気分 にさせられる 伝統的な暮らしが消え去ることは、ちょうどトキが絶滅するよう なもので、かけがえのないものをなくしてしまうことになるので はないか? 6[再]・変化する文化を「守る」 2010/10/27 - [3] 変化する文化を「守る」(2) では、いったい「だれが」守る役をするのだろうか? 現状を冷静に分析すれば、従事者比率が激減し、かつ、急激に高 齢化がすすむ「農業従事者」がそれを守らざるを得ない そもそもキツイうえにもうからない農業に従事するひとびとに、 さらに「文化を守る役割まで負わせる」ことは問題ではないだろ うか? なんのために「守る」のだろうか? どんな犠牲を払わ なければならないのだろうか? 6[再]・変化する文化を「守る」 2010/10/27 - [4] 映像資料6「姨捨の棚田」 棚田の「美しい風景」とその背後にある「ひとびとの地 道な営み」は、単純にすばらしいし、できれば残したい、 と考えるのもおかしなことではない しかし同時に、単純な経済原理から言えば、生産性が低 い棚田は淘汰されてもおかしくない 放っておけばなくなりそうなものを、敢えて残そうとす るための手段として、そのものに「別な価値」を付与す るやり方がある たとえば「観光資源」にして観光客を呼び込もうとする あるいは「大事な文化財」として選び上げ、「守るべきもの」と しての意味づけを明確にする……姨捨の棚田は1999年に国指定の 文化財のひとつである「名勝」に選ばれた 6[再]・変化する文化を「守る」 2010/10/27 - [5] 映像資料7「桜紀行」(後半) 先祖の代から受け継いできたさくらの大樹を持つ地域の ひとびとが、観光客に振り回されている、というだけの 話ではない さくらを「祭り」や「伝統文化」に置き換えてみると、 現在の地域社会が置かれている深刻な状況を理解するこ とができる もともと自分たちの先祖が自分たちのものとして守り、受け継い できた、日々の生活に密着した存在であったはず ところがそこに、観光客や役場のひとなどの外部からの働きか け・干渉が加えられ始めている……地域のひとびとを無視した勝 手な・容赦ないふるまい しかし過疎化・産業の停滞に悩む地域のひとびとは、その外部を 事実上拒めず、受け身の立場に立たされつつある 6[再]・変化する文化を「守る」 2010/10/27 - [6] 伝統を守るための犠牲 外部からの観光客は、伝統を守るために手を貸そうとし て訪れているのではなく、純粋な消費・余暇活動として そこに来て帰っていくだけ だからごみはそのへんに捨てて顧みないし、畑を踏み荒らしても 自分の写真が撮れさえすればいいし、駐車場がないと文句は言う し、気に入らなければ二度と来なくなる しかし、地元はそれから逃げるわけにはいかない わがままで移り気な観光客に対応していたらキリはないし、対応 しなければジリ貧になる もはや有効な産業を失っている地域は、伝統を守るためにどんな に大きな犠牲を伴うとしても、どんなに気が進まなくても・先に あるものがなにかわかっていても、観光に頼るしかない
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