社会の認識 「社会科学的発想・法」 第08回 2009年11月25日 今日の資料=A4・4枚 http://www.juris.hokudai.ac.jp/~aizawa/ 4. 財産権の経済学的基礎 4.2 財産権の対象と政府の役割(の一部) 排他的利用の利得 > 排他的利用の費用 ⇒ 排 他的利用 2 排除不可能 排除可能 消費が非競合的 (純粋)公共財 クラブ財 消費が競合的 コモンズ 私的財 3 テクノロジーの変化による、境界の移動 e.g., GPSによる航海の安全 私的財… →財産権の対象・民間で供給可能 4 公共財… フリーライダーfree-rider問題 解決①政府が供給する 解決②(供給自体は私人が行うが)政府が補助金を 出す 解決③人工的に排除可能な権利を創設する …情報のクラブ財化としての知的財産権 排出権取引 5 4.3 誰に財産権を割り当てるか X:池(評価$300)と$200 Y:$500 (池は$200と評価) 6 Y:池(評価$200)と$300 X:$500 (池は$300と評価) 7 シナリオ① 池という財は最も高く評価するXに帰属 =効率的 シナリオ② $200~$300の間で取引成立 →結局、池という財は最も高く評価するXに帰属 =効率的 8 農場主Xと牧場主Y 隣接するが、柵はない →牛が迷い出て作物を食べてしまう 牛の侵入による作物の損失:100 Xが柵を作る:費用50 Yが柵を作る:費用75 →Xが柵を作るほうが低コスト=効率的 9 ルール①Xのほうに牛の侵入を防ぐ責任 ルール②Yのほうに牛の侵入を防ぐ責任 →どちらが望ましい? 10 ルール①Xのほうに牛の侵入を防ぐ責任 =牛による損害はXが負担(x=-100; y=0) →Xは柵を作って侵入を防止することで良化(x=50; y=0) →X側に柵ができる 11 ルール②Yのほうに牛の侵入を防ぐ責任 =牛による損害はYが負担(y=-100; x=- 100+100=0) →Yは柵を作って侵入を防止することで良化(y=75; x=0) →Y側に柵ができる …? 12 Yは、Xに柵を作るよう頼むことができる タダである必要はない Xは、50以上の支払いを受ければ柵を作ることを拒む 理由はない(x=-50+a>0, s.t., a>50) Yは、75以下の支払いであれば拒む理由はない(y=a>-75, s.t., a<75) →50以上75以下のYからXへの支払いとともに、X側に 柵ができる ∴どちらのルールであったとしても、X側に柵 ができる 13 コースの定理 当初の財産権の配分に関していかなるルー ルを採用するかかかわらず、取引を通じて達 成される資源の配分は同一である そしてかかる資源配分は効率的である 14 …取引が成立するならば 現実の社会:取引を阻害する要素がある 取引費用transaction cost 取引費用をゼロと仮定すると、当初の財産権 の配分に関していかなるルールを採用するか かかわらず、取引を通じて効率的な同一の資 源配分が達成される 15 通常、取引費用>0 それでも充分低ければ… 取引費用が+ →自発的取引の阻害の可能性 例)池の例 X・Y双方に取引費用$10がかかる →交渉妥結範囲は$210~290に狭まる X・Y双方に取引費用$55がかかる →交渉妥結範囲は$255以上$245以下! 16 法ルールの存在意義 取引費用を下げるための基盤整備 e.g., 登記制度 取引の失敗を見越したバックアップ e.g., 事故法 17 コースの定理に対する留保 (所得)分配(income )distributionの差 (not(資源)配分(resource )allocation) ルール①:x=-50; y=0 ルール②:x=0~25; y=-50~-75 18 「評価」 (ここでは)池と$200とが「無差別」 $199なら池を取る、$201なら$201を取る 本当か? 売ってもよい額>買うのに払ってもよい額なのでは? 権限付与効果endowment effect 現状維持バイアスstatus quo biasの一種 --行動経済学behavioral economicsの成果の一つ 19 取引費用の要素 探索費用search cost 交渉費用negotiation cost 戦略的行動strategic behaviorの可能性を含む 強制費用enforcement cost Principal-agent問題 20 4.4 権利の保護形式 財産権ルールproperty rule 権利侵害の差し止めを認める 責任ルールliability rule 損害賠償でカタを付ける 21 財産権ルール “違法な”権利侵害の差し止め →“違法”でない場合とは? 事前から見れば、自発的取引を通じた権利移転 の保障 前提条件としての、低い取引費用 22 責任ルール まず強制的権利移転があり、事後的に対価を払う e.g., 公用収用→補償 <see 土地収用法 第三者による算定 典型的には、裁判所による その正確さ? 23
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