医療事故防止におけるダブルチェック 2004/11/17 安心研 東京海上日動メディカルサービス(株) メディカルリスクマネジメント室 山内桂子 話題提供の背景 ・事故(エラー)防止対策として、「ダブルチェッ ク」が導入されることが非常に多い。 ・一方で、事故(インシデント)報告などで、「ダブ ルチェックするルールを守らなかった」「ダブ ルチェックしたのに間違いを見逃した」と報告 されることが多い。 「人はエラーを起こす」⇒対策としての環境の改 善は費用がかかる(困難)⇒ダブルチェックは ルールを決めるだけ(?) 疑問 • 「ダブルチェック」といっても個人や部署により やり方がさまざま(効果を論じられない) • 本当に事故防止効果があるのか?やり方に より効果が異なるか? • 現場では、実行しているのか? • 他にもう少し有益な方法はないのか? • 効果的に実行するにはどうしたらよいのか? ダブルチェックとエラー検出 例)注射の施行 意図 ・・ 「患者Aさんに薬品Bを注射しよう」 (何をするのか決める) 計画 ・・ 「適切な与薬量,適切な与薬経路で」 (どんな手続きでするのか決める) 実行 ・・ 「注射する」(実際に行う) 結果 ・・ 「患者の様子」(行動の結果) ①単独モデル 医療者 行動モニター 意図 計画 実行 結果 ②医療者ダブルチェックモデル 医療者B 行動モニター 医療者A 行動モニター 意図 計画 実行 結果 ③患者・医療者 協同モニターモデル 医療者 行動モニター 意図 計画 実行 行動モニター 患者 結果 失敗探しで はない 「ルール(マニュアル)違反」を防ぐには “守りましょう”では守られない 2つのポイント 1. ルールそのものや、周知が適切か 2. 集団に「ルールを守る」という規範(norm)があるか 1. ルールそのものや、周知が適切か 1) 「ルール」が合理的で、納得できる × 「ルール」を守れば本当に安全? ×現場で「ルール」を使う人の意見が反映されない 2) 守ることのできる条件がある ×守っていたら仕事が終わらない! × 守るために必要なモノや設備が足りない! 3) 定期的に知らせている・使う場所に明示されている ×ルール集が棚に保管されているはず? 2.集団に「ルールを守る」という規範(norm) があるか ・人は、他者の行動を基準に行動する ex.服装,出勤時間,運転スピード,駐車 ・まとまりのよい集団ほど、規範を守らせる圧力が強い 「ルールを守らない」規範ができることもある 「みんなで渡れば怖くない」! 守る規範を作るためには・・・ ルールを適切にした上で、なお違反する人があれば 違反を見逃さない 例外なし! 場合によってはペナルティー 個人のルール違反は、集団の規範の反映! 違反を見逃す規範ができていませんか? ダブルチェックとは double-check 再点検 ダブルチェック 2重に確認すること 医療現場で考えられる3パターン A. 時間をずらして二人目が点検する B. 二人が役割を分担し同時に確認する C. 二人が(役割を分担せず)同時に確認する 3パターンのダブルチェック A .時間をずらして二人目が点検する (時間差型) ・それぞれが(専門性をもって)独立して判断する。 例) 医師―薬剤師のダブルチェック 薬剤師の調剤鑑査 A’ 時間をずらして同じ人が2回点検する B. 二人が役割を分担し同時に確認する B’. 二人が役割を換えて2回確認する (役割分担型) 役割の分担の仕方 ・複数の確認対象に対して役割を分担 「指示書」担当vs.「薬剤」担当 ・ 「読む役」と「見る役」 C. 二人が(役割を分担せず)同時に確 認する (同時型) ・二人で同じものを指差呼唱をしたり、復唱した りして確認。 ダブルチェックの意味・効果 • 機会を重ねて、エラー確率を減らす A,A’, B’ • 異なる視点で、エラーを発見 A,(B),(B’) • 役割分担で認知の負荷を下げる(読み違えを防ぐ)B,B’ 音声にすること(声だし)による意識化 B,B’,C • 他者とのやりとりにより覚醒水準が上昇 B,B’,C ダブルチェックの課題 ・「責任の分散」が生じないか ・両者が独立した判断ができるか ・形式的(機械的)な確認にならないか ・認知(判断)の速さの個人差は考慮しなくてよ いか? エラー率(%) 指差呼称は効果的? 2.5 指差呼称でエ ラーが1/6に 2 1.5 1 0.5 0 指差呼称なし 指差のみ 呼称のみ 指差呼称 図 指差呼称のエラー防止効果の室内実験による検証(芳賀1996) ※画面表示に応じたボタンを押す作業を一人当たり100回×4種類行ったときのエ ラー発生率
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