動物園は社会教育の拠点になりうるのか

動物園は社会教育の拠点になり
うるのか
〜市民活動と企業における社会貢
献の立場から〜
0971004 福永恭啓
研究の目的・概要
• 本研究は、財政難に悩む公立の動物園
を対象に、生き物を展示する公共施設
としての役割、その充実に対する市民
と企業の役割を明らかにし、その具体
的な方策を論じる。
章立て
• 1、 はじめに(目的と概要)
• 2、 方法
• 3、 動物園の歴史と位置づけの問題点
• 4、 経営改革を迫られる動物園
• 5、 市民活動による社会教育の場への転換
• 6、 ZOO CAN DREAM PROJECTの紹介
• 7、 自然と文化の発信拠点としての動物園
動物園の役割の変化
• これまでの動物園
– 珍しい動物がいる娯楽施設
• これからの動物園
– 生き物の多様性や命の大切さを学ぶ社会教
育施設
役割の変化は認知されているが、動物園自体は娯楽施設の
ままで変化していない
動物園の課題
• 構造的課題
– 社会教育施設ながら、行政上の管轄は公園部局
• 公園管理と同じ組織で、教育部署を持たない
• 目的と機能の曖昧さ
– 社会教育を目的としながらも、社会教育部署を持
たず、動物を飼育し管理する部署しか持たない。
• 教育部署を設置する必要性がある
→財政の悪化で課題が克服出来ていないのが現状
経営改革を迫られる動物園
• 財政の悪化
– 行政の財政が悪化し、教育部署を手厚くする財
源がない。
• 財政難から教育部署を縮小する園も
• 経営形態の多様化
– 直営から指定管理へ
• 入園者数や経営の収支でのみ園の評価が行われる
→教育は置き去りに
旭山動物園ブーム考察
• 1990年代
– 動物園は社会教育施設への転換を本気で考えていた
• 2001年旭山動物園ブーム
– 旭山動物園の行動展示による集客効果がメディアに
よって取り上げられる
→メディアが伝えたい情報(集客効果・展示のスペクタクル性)のみが取
捨選択され、行政の財政難を救う救世主として旭山が報道される。
→行政は動物園を教育ではなく集客効果で評価するように
市民活動により社会教育の場への転換
• 行政の縛りを解体し開かれた動物園へ
– 社会教育を行政が独占する時代は終わった
• 市民自体が教育活動に主体的に関わる時代に
市民活動にも金は必要
→企業の社会貢献費からの捻出を目指す
公共サービスを考える
• 公共のサービス
– 無料もしくは非常に低い料金でサービスが利
用出来る
→しかし、それは行政が税金という形で集めた
富を税金を払った国民に再分配しているに過
ぎない。
行政主導の公共サービスは利権が絡み上手く
機能しない
→民間主導の公共サービス構築の必要性
再分配の機能の変化
選択の余地がない
市民による選択が可能
企業
行政
企業
企業
企業
公共サービス
税金
社会貢献
企業
企業
商品の購入
各種利権により
分配される財が
目減り
市民
市民
市民
市民
市民
市民は企業の製品と一緒に社会貢献も買う時代に
市民
企業の動向
• 広報からCSRへ
– 企業の製品の能力が十分に向上した今、どの
製品を買っても性能差は少なく、性能で他の
製品と差別化するのは難しい。
→性能差を宣伝するのではなく、企業がいかに社会
に貢献しているかをアピールする広告が増える
企業の社会貢献の例
• ヴォルビック(飲料水メーカー)
– 飲料水を1L買うごとに10Lの水がアフリカの
人々に行き届くようにユニセフと協同でアフリ
カに井戸を開発する社会貢献を行った結果、
30%も売り上げが上昇
成熟した市場において、社会貢献は他者との差別化を図る
有効なツールであるとの認識が浸透
→社会貢献無しに企業は生き残れない
企業の評価基準の変化
• 財務
– これは経営の状態次第
• 環境
90年代まで
の企業評価
基準
– 今や建前として環境に優しくない企業はない
• 社会貢献
– 株主や消費者の企業の選択基準になっている
• これからの企業による自社のブランドイメージの
差別化に一番寄与する可能性がある
2000年代
から付加
された基
準
消費者としての市民の動向
• 社会貢献に積極的な企業
– 少々値段が高くても商品や株式を購入
• 反社会的な企業
– EXクラスター爆弾の部品を製作している企業
の株式や製品の不買運動
社会にいかに貢献しているかが市民の企業への
選択基準になりつつある
社会貢献の特殊性
• 社会貢献のニーズは地域ごとに異なる
→地域ごとに市民が主体的に行動し企業の社会貢献
事業の受け皿になる必要性
• 規模が大きくなりがちであり、一社のみで
行うには負担が大きい
→数社が集って一つの事業を行うプラットフォーム
づくりが必要
市民活動の問題点
• 各自が興味のある分野で個人的に活動して
いるのが現状
– 自らの知的欲求を満たす事はするが、自らの活
動を積極的にアピールしない傾向
• 広報活動が行われないため、企業は活動を
助成しても周囲に認知されない
– 企業のメリットにはならず、支援が継続されない
企業と市民団体双方の利害関係を整理し、互いの理解を勧める必要性
ZOO CAN DREAM PROJECT
• 京都市動物園に動物図鑑カードの製作を行う
←社会教育の
動物情報
←企業の社会
貢献メッセージ
ZOO CAN DREAM コスト
年間の必要経費 400万円 企業 企業 企業
企業 企業 企業 企業
大学や
博物館
による
学術支
援
社会教育事業
Zoo can dream project team
動物種ごと
期間ごとに
複数の企業で分割
ひとまとまりの事業
として実施
市民:社会教育を無償で提供される
企業:広報効果が上昇し、企業の知名度が上がる
ZOO CAN DREAM 広報
専門スタッフによる
スケールメリットを活かしての広報
メディア等への掲載
企業による社会貢献の消費者への認知
企業
企業
企業
企業
企業
近年の動物園の動向
• 上野動物園
– 日本固有の動物種を収集
– 日本の品種改良技術を紹介
• 富山市ファミリ−パーク
– 牛で畑を耕す牛耕などの日本文化を伝承
動物を見せるだけではなく、その地域の動物を集め、
その地域の文化とともに紹介する展示が主流