Experiments on Transient Oscillations in a Circuit

双安定反応拡散方程式の
有限領域内の界面の持続時間
堀川 洋
香川大学工学部情報工学科
1
1. 問題
1次元双安定反応拡散方程式の1次元有限領域における不安定界
面の持続時間 (安定定常状態までの過渡時間)
界面の移動速度は領域の長さに対して指数関数的に小さくなる。
→ 界面の持続時間は領域の長さに対して指数関数的に増加する。
本研究では以下の2点について調べた。
・ランダムな初期値から生じる界面の持続時間の分布
→ 界面の持続時間は逆べき型の分布に従う。
・時間空間的雑音の界面の持続時間への影響
→ 一定の強度の雑音によって平均持続時間が長くなる。
2
2. モデル
1次元有限領域内での双安定反応拡散方程式の初期境界値問題
安定一様解:u = -1, 1 (不安定一様解:u = 0)
1
f
u/t   2u / x 2  f (u ),  l / 2  u  l / 2
f (u )  u (u  1)(u  1)
u ( x, 0)  ( x), u (l / 2, t ) / x  u (l / 2, t ) / x  0 (1)
0.5
0
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
-0.5
ランダムな初期条件:E{φ(x)φ(x’)} = δ(x – x’)
→ 過渡的な界面パターン ・・・ 極めて長い持続時間
→ 安定一様解(u(x) = -1 or 1)
Demonstration
-1
u
3
界面の方程式[1, 2]
界面の位置(u(x0, t) = 0):x0 = l/2 - l+
l+:界面の左側の領域の長さ
dl / dt  k{exp[(l  l )]  exp(l )}
k  24 / 2  17.0,   2 2  2.83
(2)
l+
l
-l/2
x0
0
l/2
領域長:l → 大
界面の速度 → 極めて小
過渡時間(空間一様解に収束するまでの時間):T
→ 領域長:lに対して指数関数的に増加[2]
T ∝ exp(l+), exp(l - l+)
4
3. 界面の持続時間
15
l+
l0
l0
l0
l0
10
3.1. 矩形パターンからの持続時間
=
=
=
=
3
5
7
9
5
初期値:l+(0) = l0 (< l/2)
例えば、y = exp(αl+)とおく → 式(2)の解:
0
0
2000
4000
6000
8000
exp(l (t ))  exp(l / 2) tanh{ exp(l / 2)kt  arctanh[exp((l 0l / 2))]}
t
10000
(3)
l+(T) = 0 → 界面の持続時間:T(l0)
T (l0 ) 
exp( l / 2)
{arctanh[ex p( (l 0 l / 2))]  arctanh[ex p( l / 2)]}
k
log10(T )
領域の長さ:無限大(l → ∞) → 簡単な式:
dl / dt  k exp(l )
log[exp(l 0 )  kt ]
l (t ) 

exp(l0 )  1
T
, ( 0  l 0  l / 2)
k
(4)
10
5
0
simulation
Eq. (4)
Eq. (5)
(5)
持続時間T・・・初期長さl0に対して指数関数的に増加
-5
0
2
4
6
l0
8
5
3.2. ランダム初期値からの持続時間の分布
初期の界面の長さ ~ 領域内(0, l)に一様分布 → 界面の持続時間:Tの分布:h(T)

l0
0
T
U (0, l / 2)dl0 '   h(T ' )dT '
0
h(T ) 
1
2 dl (T ; l ) 2
  0

| dT (l0 ; l ) / dl0 | l
dT
l
 4k exp(l / 2)cosech{2[exp(l / 2)kT  arctanh(exp(l / 2))]}/ l
(6)
カットオフ時間:Tc = exp(αl/2)/(αk)
・T < Tc 逆べき型の分布
h(T ) 
k
2

kT  1 l
(0  T  [exp( l / 2)  1] /(k ))
(7 )
・T > Tc 指数分布
h(T )   exp(T ),   2k exp(l / 2)
(8)
カットオフよりも長い持続時間の割合:Prob{T > Tc} ≈ 21/2exp(-2)/l ≈ 0.19/l
→ lの逆べきで減少
6
log10(h (T ))
0
持続時間の平均、分散 → 指数関数的に増加
simulation
Eq. (6)
Eq. (7)
Eq. (8)
-2
m(T (l ))  2[exp(l / 2)  l / 2  1] /( 2 kl)
 2 (T (l ))  [exp(l )  4 exp(l / 2)  l  3] /( 3k 2l )
 [m(T (l ))]2
-4
CV(T (l ))  (T (l )) / m(T (l ))  l / 2 (l » 1) (9)
log10(m (T ))
-6
-8
simulation
Eq. (9)
6
5
4
h(T) ∝ 1/T
-10
7
3
2
-12
0
2
4
6
8
log10(T )
1
0
0
図2 ランダムな初期値から発生する界面の
持続時間の分布:h(T)
(領域長:l = 15, Tc ≈ 3.4×107)
5
10
l
15
図3 領域の長さ:lに対するランダムな初
期値からの界面の平均持続時間:m(T)
7
3.3. 雑音の影響
式(1)の右辺に空間・時間的な強度σxの白色雑音が加わった場合
u/t   2u / x 2  f (u)   x n( x, t ),  l / 2  u  l / 2 (l  0)
E{n( x, t )}  0, E{n( x, t )n( x' , t ' )}  ( x  x' )(t  t ' )
(A1)
Demonstration
界面の持続時間・・・式(2)の右辺に白色雑音を加えた次式の初通過時間問題
dl / dt  k{exp[(l  l )]  exp(l )}  l n(t )
σ l2  
l/2
l / 2
(σ x du/dz ) 2 dz /[ 
l/2
l / 2
 σ 2x / 
l/2
l / 2
(du / dz ) 2 dz ]2
(du / dz ) 2 dz

 9/8σ 2x
E{n(t )}  0, E{n(t )n(t ' )}  (t  t ' )
σx = 0
rand1
rand2
rand3
l+
 σ 2x /  [sech2 ( z / 2 ) / 2 ]2 dz
T4
10

持続時間:T
(10)
5
l+(0) = l0 → l+(T) = 0 or l
0
0
2000
4000
T1
6000 T0
8000
t
T3
10000
8
l+ = 0:吸収境界、l+ = l/2:反射境界
界面の片側の領域の長さl+:l0 → 0 への初通過時間(FPT)の平均と分散[3]:
l0
l/2
0
η
m(T ; 0 | l0 )  2[  π(η)dη (σ l2 π(ξ))1 dξ ]
l0
l/2
0
η
σ 2 (T )  4[  π(η)dη m(T ; 0 | l0 ) /(σ l2 π(ξ)) 1 dξ ]  m(T ; 0 | l0 ) 2
π( y )  exp( 
y
2a (η)
dη), a ( y )  k{exp[(l  y )]  exp(y )}
σ l2
(11)
平均持続時間は非単調に変化し、ある強度の雑音によって最大となる。
m (T )
3000
simulation
FPT
l0=3.0
l0=3.5
2500
2000
1500
1000
ただし、初期長さl0につれてピークの位
置も移動するため、ランダム初期値から
生じる界面の分布は単調減少となる。
500
0
0
0.02
0.04
0.06
0.08
σx
図4 界面の平均持続時間の雑音強度
(標準偏差)に対する変化
(l = 15, l0 = 4)
0.1
9
3.4. 空間2次元の場合
Demonstration
ランダムな初期値からの過渡時間は、1次元
での表式(式(6) – (9))で良く近似される。
simulation
Eq. (6)
Eq. (7)
Eq. (8)
-2
log10(m (T ))
log10(h (T ))
0
-4
5
4
3
-6
2
1
-8
Simulation
Eq. (9)
0
0
-10
0
2
4
log10(T )
5
10
l
15
6
図A1 2次元領域(-5 < x, y < 5 (l = 10))
におけるランダムな初期値からの過渡時
間の分布:h(T)
図A2 2次元領域(-l/2 < x, y < l/2)に
おけるランダムな初期値からの平均
過渡時間:m(T)
10
4. 反応項の非対称性の影響
1
1-δ
f
u/t   u / x  f (u ),  l / 2  u  l / 2
f (u)  u(u  1)(u  (1  ))
u( x, 0)  ( x), u(l / 2, t ) / x  u(l / 2, t ) / x  0 (1' )
2
2
0.5
0
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
-0.5
dl / dt  c0  k{exp[' (l  l )]  exp(l )}
-1
c0   / 2  3 /(2 2 ), k  24 / 2  17.0
2
  2 2  2.83, '  (1  )
分岐点:lc
u
(2' )
l+ → 0
(l(0) < lc)
dl / dt  0
l+ → l
(l(0) > lc)
lc   1 log[2k /(c0  c0  4k 2 exp(l ) )]
( '   )
2
(A2)
l(0)
-l/2
lc
0
l/2
11
矩形パターンからの持続時間
初期長さ:l0に対する持続時間:Tの増
加は指数関数的なものから線形なも
のになる。
初期長さ:l0を固定したとき、有限の大き
さのずれ:δによって持続時間:Tが増加
する。
dl / dt  0
c  2k{ exp[' (l  l0 )]  exp(l0 )} (A4)
40000
4
T
log10(T )
6
2
30000
0
20000
10000
-2
0
5
δ=0.1
δ=0.001
δ=0.00001
10
l0
15
δ=0.1 (Eq. (A3))
δ=0.001 (Eq. (A3))
δ=0.00001 Eq. (A3))
図A3 初期長さ:l0に対する界面の持続時間:T
0
0
0.0002
0.0004
0.0006
0.0008
0.001
δ
図A4 平衡点のずれ:δに対する界面の
持続時間:T (l = 15, l0 = 4)
12
5. まとめ
双安定反応拡散方程式の有限領域における界面の持続時間について調べた。
界面の移動速度は領域の長さに対して指数関数的に小さくなる。
→ 界面の持続時間は領域の長さに対して指数関数的に増加する[1, 2]。
本研究では、
・ランダムな初期値から生じる界面の持続時間の分布
→ 持続時間の分布にはカットオフが存在
カットオフ以下では持続時間は逆べき型の分布に従う
カットオフ以上では指数分布に従うが、その割合は界面の長さの逆数に比例して
減少する
・時間空間的雑音の界面の持続時間への影響
→ 一定の強度の雑音によって平均持続時間が長くなる。
Noise-sustained patterns
13
関連事項
・領域長が大きい場合 → 複数(多数)の界面からなるパルス状パターン
隣接する界面は衝突と合体を繰り返して空間一様解に収束
Demonstration
界面の速度 ~ 界面間の距離の指数関数で近似
各衝突までの時間 ~ 距離に対して指数関数的に増加[1, 2]
その裏返しとして、界面間の平均距離は時間の対数に比例してゆっくりと増加[4]
2
1
N
4
3
5
・環状発振器型の神経回路網モデルの過渡振動の持続時間
→ 回路内の素子数に対して指数関数的に増加[5]。
6
Demonstration
7
8
いずれの場合も、不安定解(界面と周期解) → 双安定な空間一様解のセパラトリクスを成す
ただ1次元の不安定固有空間を持つ
不安定空間の固有値は系の大きさ(領域の長さと素子数)に対して指数関数的に減少[2, 6]
14