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ミクロ経済学
(8) 価格弾力性
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2013年5月27日
需要・供給分析の応用

需要曲線と供給曲線は魔法の杖だ!
 価格変化に対する数量の変化を把握できる
 タバコに課税すると価格がどれくらい上がるか
 経済厚生の水準を捉える事ができる

重要な問い:
 財によって需要量の変化に違いはあるだろうか?
 変化の程度を数量的に把握したい
2013/5/27
ミクロ経済学 7
2
価格変化に対する感応性

アイスクリームのキャンペーンに飛びついてた
くさんアイスクリームを買った

けれども,明日お米やみその価格が5%下落し
たとしても需要量は余り変わらないだろう

同じ割合だけ高級アイスクリームが値引きした
ら需要は格段に増大する

価格変化の及ぼす影響が小さい場合もあれば大
きい場合もある.
2013/5/27
ミクロ経済学 7
3
価格の下落による需要の増大
P
P
アイスクリームの需要曲線
お米の需要曲線
200
190
100
2013/5/27
110
Q
100 101
ミクロ経済学 7
Q
4
需要の感応度と弾力性

アイスクリームの需要の方がお米の需要よりも
価格に敏感に反応する

これはアイス需要の方がお米需要よりも弾力的
であると言う

弾力性は需要曲線の「傾き」に関連している
 曲線が急かあるいは緩やか
 垂直に近いかあるいは水平に近いか
 厳密には傾きとは同じではないことに注意
2013/5/27
ミクロ経済学 7
5
アイスクリームの需要曲線の形状
価格
アイスクリームの需要曲線
価格が200円から
190円に下がると10
個のアイスクリーム
が増えている
200
190
100
2013/5/27
110
ミクロ経済学 7
数量(個)
6
お米の需要曲線を考える
価格
お米の需要曲線
お米の需要曲線はアイ
スクリームの需要曲線
よりも急だ!
200
190
100 101
2013/5/27
ミクロ経済学 7
数量(Kg)
7
価格に対する反応と代替財の存在








価格下落によりアイスクリームは沢山増える
アイスの方が価格に敏感に反応している
アイスクリームの代替財はシャーベット,かき氷
,ところてん等沢山ある
お米やパンにはあまり代る物がない
代替財が多い財は価格に対して敏感に需要が増減
する.つまり弾力性が高い
需要量が価格に対する変化をどう測るか
アイスクリーム10個,お米1Kg
それぞれ単位が異なる.どう測るか?
2013/5/27
ミクロ経済学 7
8
パーセント表示の変化,百分比変化

100%が全体

価格が200円から210円.何%上昇したか?
変化量=変化後の量-変化前の量

価格の変化=210-200=10

元の価格=200円

元の価格が200.価格変化が10

変化率はどうなるか?
2013/5/27
ミクロ経済学 7
9
変化率の公式と変化率の計算
変化後の量-変化前の量
変化率(%)=
× 100
変化前の量
10
価格の変化率=
× 100 = 5 (%)
200



答えは5パーセント上昇した
100を掛けたのはパーセントにするため
まとめの計算式: 210ー200
× 100 = 5 (%)
200
2013/5/27
ミクロ経済学 7
10
アイスクリーム価格の変化率計算
 価格の200円から210円への上昇は変化率で
表すと5%の上昇になった.
 価格が200円から190円に下落したときの変
化率を計算しよう
190ー200
ー10
× 100=
200
-10
=
× 100
200
= -5 (%)
2
 ー5%価格が変化=5%価格が下がった
2013/5/27
ミクロ経済学 7
11
100個から110個への数量の変化
110ー100
10
× 100=
100
10
=
× 100
100
= 10 (%)
1




10%数量が変化=10%数量が増えた
価格は5%下落して数量は10%増えた
価格が1%変化した時は数量が2%変化する
アイスクリームの需要の価格弾力性は2である
10
=2
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ミクロ経済学 7
5
需要の価格弾力性の定義

価格の変化と数量の変化をパーセントで表示する

価格の変化を揃えるために1%だけ価格が変化し
たら数量がどう変化するかが需要の価格弾力性
需要の価格弾力性とは1%価格が
変化したときに需要量が何%変化し
たかを表す
2013/5/27
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アイスクリームの需要の価格弾力性
価格の
変化率
は-5%
200
価格
10
(-1) ×
=2
ー5
計算から需要の価格弾力性は2
A
アイスクリームの需要曲線
B
190
数量の変化率
は10%
100
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110
ミクロ経済学 7
数量(個)
14
需要の価格弾力性,変化率の符号
 プラス
+
→ 増加
 ゼロ 0
→ 変化無し
 マイナス ー → 減少
 -5%の価格変化は5%の価格下落
 10%の数量変化は10%の増加
 -5を5にする.10を5で割って求める
需要の価格弾力性とは1%価格が変化し
たときに需要量が何%変化したかを表す
10
=2 から需要の価格弾力性は2
2013/5/27
5
ミクロ経済学 7
15
割り算の意味




12枚のピザを4人に均等に分けるには?
12÷4=3
3枚のピザを配ればよい
割り算の意味:
割られる数÷割る数




「割る数」1単位当たりの「割られる数」
割り算の答えは商とも言います.
商は割る数一単位当たりの割られる数を表す
価格変化一単位1%だから価格変化で割れば良い
2013/5/27
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マイナス

需要曲線は右下がり

価格が上昇すれば需要は減る

逆に価格が下落すれば需要は増える

弾力性の値はプラスで考える

プラスにするためにマイナスをかける(-1)
10
(-1) ×
=2
ー5
2013/5/27
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需要の価格弾力性の定義


需要の価格弾力性は,「1%価格が変化したと
きに需要量が何%変化したか」を表す
計算のための定義式は下記になる
需要量の変化率(%)
需要の価格弾力性=(-1)×
価格の変化率(%)


価格が2%変化して需要量が-8%変化した時の需
要の価格弾力性を計算しよう
-8
需要の価格弾力性 (-1) ×
=4
2013/5/27
ミクロ経済学 7
2
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お米の需要の弾力性の計算


価格の変化率はアイスクリームと同じ-5%
100Kgから101Kg への需要量の変化率
101-100
1
× 100=
100


= 1 (%)
1
お米の需要の価格弾力性は0.2
1
(-1) ×
=0.2
-5
価格が1%変化すれば数量は0.2%変化
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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需要曲線と価格弾力性の比較
P
アイスクリームの需要曲線
P
お米の需要曲線
価格弾力性は 2
A
200
価格弾力性は 0.2
C
B
190
D
100
2013/5/27
110
Q
100 101
ミクロ経済学 7
Q
20
弾力性の比較

アイスクリームの需要の価格弾力性の方がお米の
需要の価格弾力性よりも大きい
2>0.2

アイスクリームの需要の方がお米の需要よりもよ
り弾力的であると表現する

お米の需要のように弾力的でないことを非弾力的
であると言う
需要が非弾力的であればおおよそ需要曲線が急で
ある
 需要が弾力的であれば需要曲線は平らになる

2013/5/27
ミクロ経済学 7
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需要の価格弾力性の極端な場合

弾力性が分れば企業は価格が上昇するときに売上
が上がるかどうかが分る

二つの極端なケース
1.
価格弾力性が無限大

ほんの僅かな価格上昇で需要はゼロになる

完全弾力的という

このとき需要曲線はほぼ水平になる
2.
価格弾力性がゼロ

価格変化に対して需要がまったく反応しない
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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完全弾力的な需要
少しの価格の
上昇で需要が
大幅に減少
価格
弾力性は無限大
B
A
需要曲線
数量
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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需要の価格弾力性がゼロのとき



弾力性が0の場合は,その需要は完全非弾力
的であるという
需要曲線の形状は垂直になる
価格が変化しても需要はまったく変わらない
2013/5/27
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完全非弾力的な需要
価格
弾力性はゼロ
B
大きく価格が上
昇しても需要が
あまり減らない
A
数量
2013/5/27
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財の種類と弾力性

大抵の食料品は弾力性が低い

一方,香水,スキー旅行,高級自動車などの奢侈
品(しゃしひん),贅沢品は弾力性が大きい
必需品ほど価格弾力性が小さい(需要の変化小)

財
調理済み食品
海外旅行
食肉
ガソリン
2013/5/27
需要の価格弾力性
2.27
4.1
0.20
0.5
ミクロ経済学 7
出所:スティグリッツ『入門 経済学』
クルーグマン『ミクロ経済学』より 26
非弾力的な財
生活必需品 (穀物)
 ほかに代替する財がない財 (塩,毒蛇用の解毒剤)
 所得と比較して支出額の小さい財 (楊子)
 嗜好品の中でも中毒性のある薬物(タバコ)
 アメリカの高所得層は喫煙率が低い

 大卒者に占める喫煙者の割合が20%前後
 高卒者では40%前後
 喫煙により寿命が800日縮む
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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需要の価格弾力性と収入









弾力性の基準を決めよう
価格変化によって収入はどうなるか?
価格が上昇すると数量は減少
価格が上昇して売上が増加する場合は?
企業の収入は価格と数量の積に等しい
200円のかき氷を100個売った
収入=200×100=20000 (円)
価格↑,数量↓ (上の↑は上昇を意味する)
収入(?)=価格(↑)×数量(↓)
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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収入の図形



需要の価格弾力性は収入の変化の方向を示す
収入を英語で
Revenue
収入を R と略すと
R=pQ
長方形の面積公式
長方形の面積=タテ×ヨコ
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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収入を面積で表す
P
需要曲線
価格200円,数量100個の
時の収入はこの面積
200
2013/5/27
収入 R=200×100=20000
100
ミクロ経済学 7
Q
30
価格弾力性と収入

需要の価格弾力性が1の場合を考える

価格1%上昇したときに需要量が1%減少
-1
(-1) ×
=1
1

この時,増加と減少が相殺される

収入は変化しない.つまり
需要の価格弾力性が1ならば,価格
変化後の収入は変わらない
2013/5/27
ミクロ経済学 7
31
変化前:需要の価格弾力性が1
P
需要曲線
200
100
2013/5/27
ミクロ経済学 7
Q
32
変化後:需要の価格弾力性が1
P
需要曲線
202
200
2013/5/27
99
100
ミクロ経済学 7
Q
33
収入の増加と減少部分は等しい
P
需要曲線
収入の増加
202
この三角形は関係ない
200
重なった部分
は変わらない
収入の減少
99 100
2013/5/27
ミクロ経済学 7
Q
34
価格弾力性と収入







価格効果と数量効果
価格弾力性1が基準
 このとき需要は単位弾力的であるという
価格弾力性>1
価格が1%上昇するとき需要量は1%を超える減
少になる
このとき収入が減少する
価格弾力性が1よりも大きいとき需要は弾力的で
あるという
弾力性2のアイスクリームの需要は弾力的である
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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アイスクリームの需要は弾力的
P
アイスクリームの需要曲線
210
200
弾力的
右の矢印
のほうが
長い
90
2013/5/27
100
ミクロ経済学 7
Q
36
需要の価格弾力性の分類
弾力性
0
区分
1%の価格上昇による需要量
の変化率
完全非弾力的 影響なし (垂直な需要曲線)
0以上
1未満
1
非弾力的
1%未満の減少
単位弾力的
ちょうど1%の減少
1より大
弾力的
1%を上回る減少
無限大
完全弾力的
減少して0(水平な需要曲線)
2013/5/27
ミクロ経済学 7
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