ESG Workshop 2009 地震動の大規模シミュレーションに向けた課題 古村 孝志 東京大学 情報学環 総合防災情報研究センター/地震研究所 ① 次世代スパコンによる大規模計算 ② 短周期・高分解能シミュレーションに向けた課題 大規模計算の進展: http://www.top500.org Next Generation Supercomputer (2012-) Earth Simulator (2002-) 【継続】計算機性能10年で1000倍 【継続】超並列計算(数十万コア) 【転換】ベクトル型からスカラー型へ 次世代スパコン: 超並列スカラー計算機 水冷式 CPU (8 core) Fujitsu SPARC64 VIIIfx 128 GFLOPS Memory DDR3 16 GB Node (4CPU, 32core) 次世代スパコン >20,000 node 3D torus 結合 次世代スパコン: CPU高速化に伴うメモリ低速化 Cache Memory わずか5 MB 2 Byte/FLOPS RAM アクセス速度 0.5 Byte/FLOPS ES 8GFLOPS CPU 8core 128 GFLOPS CPU ES2 102GFLOPS 4 B/F 2.5 B/F RAM 8 GB RAM 16 GB ADB (256KB) ペタコン 128GFLOPS Cache (5MB) 0.5 B/F RAM 16 GB CPU高速化,マルチコアに伴う課題 ・RAMの相対的速度低化 ・スカラー、ベクトルCPU共通(ES2) 地震動計算の効率(ベクトルvsスカラーCPU) Performance [GFLOPS] (1) 演算速度 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 (2) 並列計算効率 Vector CPU: ES(8GFLOPS/PE) Scalar CPU: T2K(9.2GFLOPS/core) T2Kスパコン(東大) スカラー型 Model Size[MB] 注)ESの演算速度はES2計算より推定 ・モデルサイズ大でキャッシュ溢れ ・FDM計算の実効性能は、理論の8%程度 【実効性能】 ・T2Kは、ESの1/6程度 ・6倍の並列化が必要 地震動シミュレーションコードのチューニング (1) 計算手順の変更 並列計算効率 ① ② xx xy xz ux fx, x y z ① yy ③ xy yz uy fy, x y z ② ③ xz yz zz uz fz. x y z 実効性能比: 31.1% 同一変数の演算を一括実行 (データロード回数の節約) (2) タイリング(未実施) 順番にアクセス ブロック毎に アクセス 3Dモデルをキャッシュサイズに分割、ループ処理を分割実行 実効性能比: 22.7% 実効性能比: 50% 高周波数シミュレーションに向けた 地下構造モデルの高度化 不均質地下構造のモデル化(現状,長周期モデル) ★代表的な速度値を選び、多層構造でモデル化 魚沼層(Vs=0.6) 灰爪層(Vs=1.3) 西山層(Vs=1.6) 寺泊層(Vs=2.2) (モデル1) 多層モデル 屈折法、反射法(通常)解析 (モデル2) 高分解能モデル トモグラフィ、反射法(高度)解析 小千谷周辺地下構造モデル 古村ほか(2006) (モデル3) 超解像度モデル ランダム・短波長不均質揺らぎ 平均速度 ±揺らぎ V(x,y,z)=V0+D(x,y,z) 分解能:10~40 km? 分解能: < km 短波長不均質構造の推定 1.高分解能3次元構造探査(トモグラフィなど) (限界)観測点間隔 25 km 分解能>50km 速度揺らぎの 自己相関関数 50 km程度 2.深層ボーリングPS検層 (課題) ・検層ゾンデの解像度?、不確実さ(密着度)? (限界) ・点推定、水平方向の広がりは? ・深度は数千メートル程度まで? トモグラフィ dVs/Vs 3.短周期(f>1Hz)地震動の散乱解析 (例) ・S波放射パターンの崩れ ・P波の3成分エネルギー分布 ・その他、コーダ波形状を用いた研究(多数あり) 電中研・佐藤・ほか(2004) 短波長不均質構造分布の推定(1)S波放射パターン ★2000年鳥取県西部地震(Mw6.6, h=11km) ・K-net, KiK-net波形解析 【観測】 ・SH波振幅の方位分布、理論分布との相関 ★ SH波放射パターンの崩れ(>1Hz) ・周波数依存性、距離依存性 ・伝播経路の短波長(<数km)不均質構造 PGA 0.125Hz Takemura, Furumura and Saito (2009) GJI 短波長不均質構造分布の推定(1)S波放射パターン ★短波長不均質構造の分布特性の推定 ・観測とシミュレーション(3次元)の比較 ・速度揺らぎの相関距離 a=5 km、標準偏差 e=7 %程度 (a) 揺らぎの強度 (b)揺らぎの相関距離 【計算】 Takemura, Furumura and Saito (2009), GJI 【計算】 短波長不均質構造分布の推定(2) P波エネルギー分布 ★ P波のT成分への漏れ ・地殻内地震、MJ: 2.5-5 ・Hi-net 速度計記録 ・地域性 (a) 均質媒質 (b) 不均質媒質 【計算】 a = 5 km, e = 0.07, VK 【計算】 3Dシミュレーション R P D=150km T Z P 5 sec 均質 R P T P Z P D=150km 不均質 Takemura, Furumura and Saito (2009) AOGS大会 短波長不均質構造分布の推定(2) P波エネルギー分布 4-8 Hz 【計算】 【観測】 地殻 : a = 5km, e = 7 % マントル: a = 10km, e = 4% 4-8 Hz 【計算】 【計算】 地殻・マントル共通 : a = 5km, e = 7 % ★P波のT成分のエネルギー分配(EP) ・距離依存性: D=150kmで急変 遠地ではマントル屈折波(Pn波)が観測 ・周波数依存性: 高周波数ほどEP大きい Takemura, Furumura and Saito (2009) AOGS大会 短波長不均質構造組み込みFDMシミュレーション(2D) (1)成層モデル 北(島根) 256 km 南(足摺岬) 128 km 地殻 マントル ★不均質構造の導入の効果 ・走時、表面波位相の改善 ・高周波地震動のエンベロープ形状 (2)トモグラフィーモデル (A) 低周波地震動( - 0.25 Hz) 【計算】 (B) 広帯域 地震動( - 2 Hz) 【計算】 115 km (3)トモグラフィ+ランダム不均質モデル 地殻 マントル 【観測】 【観測】 地震動計算の高度化ー予測値+バラツキの評価 ★2次元FDMモデル ・80 × 80 km, D=0.025km ・Vp=3.4km/s, Vs=1.5km/s ・等方S波震源 【計算】 予測値 + バラツキ 標準偏差 ★短波長ランダム不均質モデル ・a = 0.5 km, e= 005, VK型 (k = 0.5) ★震源断層破壊の不確定性、地下構造の不均質性 ・数十モデルの計算、アンサンブル平均 ・予測値を平均値と標準偏差で表現 地震動の大規模シミュレーションに向けた課題ーまとめ (1)高速計算機向けコードの整備 ■ メモリ速度の低下: キャッシュメモリの活用、コードチューニング ■ 超並列(数万並列)計算: コンパクトなFDM演算スキーム ■ 高精度・大タイムステップ計算: 計算の安定化、境界条件高度化 ES ES2 8GFLOPS 102GFLOPS 4B/F 2.5 B/F メモリ メモリ ADB 次世代スパ コン 128GFLOPS 0.5 B/F キャッシュ 地殻 マントル メモリ (2)高分解能地下構造モデルの整備 ■ 高周波数地震動シミュレーション(f>1Hz)と地震波散乱 ■ 短波長不均質構造のモデル化(統計的扱い) ■ 強震動予測のバラツキ評価 地震波伝播の大規模FDMシミュレーション(1)現状 並列計算効率 地球シミュレータ2 102.4 GFLOPS/CPU 実効性能: 31% 地球シミュレータ 8 GFLOPS/Core 実効性能: 50 % ★スカラー型計算機は実効性能低い(<10%) ・より大規模な並列計算(数万CPU)必要 ・コードチューニング不可欠 (スカラー、ベクトルともに) 次世代スパコン(10 PFLOPS, 2012-) スカラー型 T2K(東大) 9.2 GFLOPS/Core 実効性能: 8 % 地球シミュレータ2 (130 TFLOPS, 2009-) ベクトル型 地震動計算精度の高度化: 吸収境界条件 前田・古村(2010) • 境界からの人工反射が最も少ないPerfectly Matched Layer (PML) 法をベクトル計算機向きに実装 • 反射波を防ぐことで長時間の地震波動と地殻変動の高精度評価 が可能に 従来法 新手法 地震動計算精度の高度化:地表境界条件 Maeda andnd Furumura(2010) 従来法 新手法 • 地震動計算の地表(海底)境界条件を 安定に実現する大規模計算向きの新手 法を開発 • 水平動を含めた地殻変動が精密に再 現できるようになった • 連動型地震で想定される地殻変動と津 波の高精度評価へ 解析解 水平動
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