12章 調査に基づく影響の評価 仮想評価(仮想市場)法 CVM(Contingent Valuation Method) 12/07/05 1 13.1 仮想評価の役割 <仮想評価CV(Contingent Valuation)の例> • • • • レクリエーション地の水質 分譲地周辺の樹木 鴨狩り 野外でのレクリエーション 12/07/05 2 13.2 仮想評価法の概要 (1) 母集団から回答者の標本を特定 (2) 回答者にある財の評価を質問 (3) 回答から標本のWTPを推計 Willingness-to-Pay (支払意思額) (4) 母集団の総WTP =標本平均WTP×母集団の大きさ 12/07/05 3 質問方式 1. 2. (支払意思額)自由回答方式 (open-ended willingness-to-pay method) 限定反復付け値方式 (closed-ended iterative bidding method) 最初の提示額に賛成 ⇒ 反対の回答がなされるまで提示額と上げていく。 3. 4. 12/07/05 仮想ランキング方式 複数の質と提示額の組を提示 (contingent ranking method) 二項選択法 Referendum Method (dichotomous-choice method) 4 補論:二項選択法と支払意思額(WTP)の推計 ランダム効用理論を用いた分析は13章で行う。 <生存分析:賛成率(割合)を用いた平均 WTP の推計> 5,000 円 10,000 円 15,000 円 「はい(yes)」 96 50 20 「いいえ(no)」 24 75 80 無回答 15 10 35 賛成率 80% 40% 20% 提示額 平均 WTP =0.2×15,000 円+(0.4-0.2)×10,000 円+(0.8-0.4)×5,000 円=7,000 円 この計算では支払意思額に対する態度が、提示額の点でしか考慮されていない。 12/07/05 5 <賛成確率を用いた平均 WTP の推計> x =提示額 Pyes =賛成確率 Pno =反対確率 Pyes = G (x) :賛成確率関数(または生存分布曲線) 平均 WTP 0 G( x)dx Pno = F (x) :反対確率関数 G ( x) 1 F ( x) 12/07/05 6 13.3 支払手段(payment vehicle) 仮想的な支払の「現実性」を高めるために、 支払手段を特定化する必要がある。 <支払手段の特定化の具体例> •当該財のための目的税(基金) •公共料金の値上げ •所得税・消費税の増税 •製品価格の値上げ 12/07/05 7 13.4 調査における一般的問題 (1) 調査の実施:面接、電話、郵便、インターネット (2) サンプルデザイン(sample design)の注意点 – – – – 潜在的利用者も含む 「個人 or 世帯の代表」の理解 消極的利用者を含むか含まないかの明示 存在価値 地理的範囲は広く (3) 標本と無回答バイアス – 12/07/05 回答拒否 & 回答不能 回答拒否=ランダム 8 13.5 仮想市場評価法への批判 1. 仮説、意味、背景の問題 2. 中立性(neutrality) 3. 意思決定バイアスと判断バイアス 現状維持バイアス 確率的評価バイアス 4. WTP vs. WTA 5. 戦略的反応問題 12/07/05 9 意思決定バイアスと判断バイアス • 不履行バイアス(non-commitment bias) 予算制約式 • 順序効果(order effect) 仮想ランキング方式 • 包含効果(embedding effect) 20,000羽 vs. 200,000羽 • 開始点バイアス(starting point bias) 限定反復付け値方式 • 仮説バイアス vs. 判断バイアス 存在価値 12/07/05 現実的予算制約式 10 WTP vs. WTA(受取意思額) Willingness-to-Accept • WTPに比べWTAは4倍から15倍になるという結果 が報告されている。 • 基本的にCV調査ではWTAではなくWTPの質問形 式を用いるべきである。 12/07/05 0<CV<EV WTP= CV & WTA= EV CV<EV<0 WTP= -EV & WTA= -CV 11 戦略的回答に関する問題 • 調査結果が回答者に影響するケース ⇒メカニズム・デザインに関する一連の研究が回 答者の回答を予想する際に適用できる。 ただ乗り(Free Riding)問題 • 調査結果が回答者に影響しないケース ⇒経済理論は回答者の回答を予想できない。 12/07/05 12 13.6 仮想市場評価の正確性 • CVのWTPはTCMから得られるWTPにほぼ一致 する。 • CVはヘドニック価格法の結果にもかなり近い。 • CVの回答は実際の行動をやや過大評価する傾向 がある。 • 2項選択方式のCV手法の評価は大きな上方バイ アスをもつときがある。 12/07/05 13 プロジェクト評価・参考文献リスト <集計的補償変分と補償原理> Boadway, R. (1974), The Welfare Foundations of Cost-Benefit Analysis, Economic Journal, 84, 926-39 <ヘドニック価格法> Kanemoto, Y. (1988), Hedonic Prices and the Benefits of Public Projects, Econometrica, Vol.19, 218-233. Roback, J. (1982), Wages, Rents, and the Quality of Life, Journal of Political Economy, 90, 1257-78 Rosen, S. (1974), Hedonic Prices and Implicit Markets: Product Differentiation in Pure Competition, Journal of Political Economy, 82, 34-55 肥田野登(1997)『環境と社会資本の経済評価-ヘドニック・アプローチの理論と実際-』 勁叢書房 12/07/05 14 <トラベルコスト法> 竹内憲司(1999)『環境評価の政策利用』勁叢書房 <CVM> 栗山浩一(1998)『環境の価値と評価手法-CVM による経済評価-』北海道大学図書刊行会 肥田野登(1999)『環境と行政の経済評価-CVM<仮想市場法>マニュアル-』 勁叢書房 鷲田豊明(1999)『環境評価入門』勁 叢書房 12/07/05 15
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