インターネット構成法 第8回 経路制御 担当:村井 純 復習 経路 ある宛先へ到達するために、IPパケットを送信・ 転送する先 宛先が同一リンク上なら直接配送 宛先が同一リンク上にない場合は中継ノード(ルー タ)を経由 ルータ ルータ Slide: 2 インターネット構成法 2002 経路表 復習 全てのインターネットノードは経路表を持つ ホストはdefault routeだけを持っている場合が多い ルータは多くの経路を保持 prefix Nexthop prefix Nexthop prefix Nexthop 192.168.0.0/24 ルータB 10.0.0.0/24 ルータA 10.0.0.0/24 ルータB 172.16.0.0/24 ルータB 172.16.0.0/24 ルータC 192.168.0.0/24 ルータB ルータA ルータB 10.0.0.0/24 192.168.0.0/24 ルータC 172.16.0.0/24 Slide: 3 インターネット構成法 2002 経路表の更新 ネットワークが変更されたらどうするか? 例: 新しいネットワークが追加されたら? 全てのノードの経路表を更新する必要がある prefix Nexthop prefix Nexthop prefix Nexthop 192.168.0.0/24 ルータB 10.0.0.0/24 ルータA 10.0.0.0/24 ルータB 172.16.0.0/24 ルータB 172.16.0.0/24 ルータC 192.168.0.0/24 ルータB 2.16.1.0/24 ルータB 172.16.1.0/24 ルータC ルータA ルータB 10.0.0.0/24 192.168.0.0/24 ルータC 172.16.0.0/24 Slide: 4 172.16.1.0/24 インターネット構成法 2002 経路表の更新 人間が手動で設定してまわる Static Routing, 静的経路制御 自動的に各ノードで経路表が更新される仕組み Routing, 動的経路制御 経路制御プロトコル(Routing Protocol)を利用 Dynamic Slide: 5 インターネット構成法 2002 静的経路制御 Static Routing すべての宛先に対する経路情報を、ルータが静的に 保持する方式 経路表をあらかじめ人間が設定する 経路表に更新がある場合も、人間が設定する 利点 安定している(経路表に余計な変動が生じない) ネットワークに経路情報を流さなくてすむ 小規模なネットワークでは作業が単純 欠点 どこかのリンクやルータに障害が起こっても、 人間が作業するまで経路表が更新されない 大規模なネットワークでは設定や更新の量が膨大 Slide: 6 インターネット構成法 2002 動的経路制御 Dynamic Routing 経路制御プロトコルを用いて、経路情報をルータ間で 交換する方式 利点 自動的にネットワークの変更を検出し、経路表が更新される 複雑なトポロジでも、最適な経路表を短時間で設定できる 欠点 経路情報をネットワーク越しに転送するため、帯域を一部利用する 経路が安定しない時がある 原因: 設定ミス、リンクの障害、他のネットワークから伝播した経路 方式 距離ベクトル型 リンク状態型 パスベクトル型 Slide: 7 インターネット構成法 2002 メトリック 最適な経路を選ぶ際のパラメータ 鉄道 利用するメトリックによって経路の選択が変わる 所要時間 乗り換え回数 料金 インターネット ホップ数 帯域幅 ASパス長 遅延 Slide: 8 インターネット構成法 2002 ループ 同じ経路を堂々巡りしてしまい、目的地に到達 できなくなること 例:整合性の取れていないルーティングポリシ同士が衝突 DへはCを経由し て行ってもらおう A B DはB D DはC C DへはBを経由し て行ってもらおう Slide: 9 インターネット構成法 2002 アルゴリズムの欠陥によるループ プロパゲーションディレイ ループの発生を検知する仕組みが不十分 B D A D C Slide: 10 D インターネット構成法 2002 アルゴリズムの欠陥によるループ プロパゲーションディレイ ループの発生を検知する仕組みが不十分 B DはB A D DはB DはC C Slide: 11 インターネット構成法 2002 オペレーションミス Staticの経路を消し忘れたままOSPFを動かし たらループが起きた 昔手書きした経 路では、DはC A B DはB D DはC C OSPF的には、 DはB Slide: 12 インターネット構成法 2002 距離ベクトル型経路制御の基本 ルータが到達可能なプレフィックスと、そこへの 距離(ホップ数)を隣接ルータに送出 その経路情報を受け取ったルータはホップ数に 1を加算し、経路表に追加する 更新された経路表から新しい経路情報を隣接 ルータに伝える 例: RIP2なら30秒に一回、全経路情報を送信する Slide: 13 インターネット構成法 2002 距離ベクトル型経路制御プロトコルの動作(1/4) Net 133.27.4.0/24 133.27.4.0/24まで 1 hop Net 133.27.5.0/24 Slide: 14 インターネット構成法 2002 距離ベクトル型経路制御プロトコルの動作(2/4) Net 133.27.4.0/24 133.27.4.0/24まで 2 hop 133.27.4.0/24まで 1 hop 133.27.4.0/24まで 2 hop Slide: 15 Net 133.27.5.0/24 インターネット構成法 2002 距離ベクトル型経路制御プロトコル の動作(3/4) Net 133.27.4.0/24 133.27.4.0/24まで 2 hop 133.27.4.0/24まで 3 hop 133.27.4.0/24まで 1 hop 133.27.4.0/24まで 2 hop Slide: 16 Net 133.27.5.0/24 インターネット構成法 2002 距離ベクトル型経路制御プロトコルの動作(4/4) Net 133.27.4.0/24 133.27.4.0/24まで default 1 hop 133.27.4.0/24まで 2 hop Slide: 17 Net 133.27.5.0/24 インターネット構成法 2002 距離ベクトル型の特徴 ネットワークトポロジが分からない 経路の収束(コンバージェンス)にかかる時間が 長い 複雑なトポロジの場合、ループが発生する おそれがある ネットワークが大規模になるほど、交換する経 路情報が大きくなる 例: RIP2 (Routing Information Protocol Version 2) Slide: 18 インターネット構成法 2002 リンク状態型の基本 各ルータのリンク(インターフェース)情報を交換 ネットワーク全体にflooding 例: R1はR2と繋がっている 例: R1には133.27.4.0/24が繋がっている ネットワーク内のすべてのルータにリンク情報が伝わる 全ルータは同一のリンク情報データベースを持つ リンク情報からトポロジを再構成 各ルータは、リンク情報を基に、自分がルート(根)となるツ リーを作成して経路を決定する 全ルータが同一の計算方法をとる Slide: 19 インターネット構成法 2002 リンク状態型経路制御プロトコルの動作 Net 133.27.4.0/24 R3 R4 30 30 30 30 30 30 500 R2 R1 1000 Slide: 20 Net 203.178.143.0/24 インターネット構成法 2002 リンク状態のデータベース 各ルータが、全ルータのリンク状態を保持 R1 To: R2 , Cost: 500 R2 To: R3 , Cost: 30 To: R1 , Cost: 1000 To: R3 , Cost: 30 R4 To: R2 , Cost: 30 To: R4 , Cost: 30 R3 To: R1, Cost: 30 To: R2 , Cost: 30 Slide: 21 インターネット構成法 2002 ツリー作成 コストが小さい順に組み合わせ、ツリーを作成 最短の経路が判明 R1 R3 R2 Cost 30 Cost 500 R4 Cost 60 Net 133.27.4.0/24 Slide: 22 インターネット構成法 2002 リンク状態型アルゴリズムの特徴 大規模なネットワークに適している ほぼLoop Free ネットワークの規模拡大が大きくなっても、経路制御に要す るトラフィック量の増加が少ない 距離ベクトル型に比べ、処理が複雑 いったん経路が収束した後はトラフィック量が少ない 代表的リンク状態型経路制御プロトコル OSPF(Open Shortest Path First) IS-IS Slide: 23 インターネット構成法 2002 パスベクトル型の経路制御方式 自分自身から目的地へ到達するまでに辿っていく通路 (パス) を経路として交換 より短いパスを選択して広告(ベストパス) ループフリー A A B Aは B→A C Aは C→B→A A D E Aは D→A Aは E→D→A ベストパス E→C→B→A × Slide: 24 インターネット構成法 2002 ループフリーになる仕組み 受け取った経路情報のパスに自分自身が含ま れているかによってループを検出 Bは、B自身がパスに含まれたAへの経路を破棄 B A C A D Slide: 25 インターネット構成法 2002 ループフリーになる仕組み 受け取った経路情報のパスに自分自身が含ま れているかによってループを検出 Bは、B自身がパスに含まれたAへの経路を破棄 B Aは B→A C A Aは B→A D Slide: 26 インターネット構成法 2002 ループフリーになる仕組み 受け取った経路情報のパスに自分自身が含ま れているかによってループを検出 Bは、B自身がパスに含まれたAへの経路を破棄 B C A !!LOOP!! Aは D→B→A Aは C→B→A D Slide: 27 インターネット構成法 2002 BGP (Border Gateway Protocol) 間の経路制御プロトコル パスベクトル型の経路制御方式を用いる AS AS 2516 7660 4717 4767 パス 2516 7660 4717 4717 4767 AS 2516 AS 4767 AS 2500 AS 7660 AS 4717 Slide: 28 インターネット構成法 2002 経路情報の集約(aggregation) 連続するアドレス空間の経路は集約できる 10.0.0.0/25 10.0.0.0/23 10.0.1.0/25 Default 10 routeは0.0.0.0/0として表現 0 0 0/24 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 1 0/24 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 0/23 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 Slide: 29 インターネット構成法 2002 集約によって経路制御を単純化 WIDE(AS 2500) 中村研 203.178.140.0/25に集約 N3: 203.178.140.0/26 APAN(AS 7660) N1とN2を 区別する必要なし 203.178.128.0/19に集約 N4: 203.178.140.64/26 村井研 203.178.143.0/25に集約 N1: 203.178.143.0/25 その先はWIDE内で 最適な経路で運んでくれる N2: 203.178.143.128/25 AI3(AS 4717) 203.178.128.0/19に集約 村井研と中村研を 区別する必要なし Slide: 30 インターネット構成法 2002 経路情報のはしわたし(再広告、 redistribute) 経路制御プロトコル間をまたいで経路を広告 例 静的経路制御 ⇔ 動的経路制御 RIP ⇔ OSPF OSPF ⇔ BGP 離れたネットワークのことは、気にしないでいい 正確な情報が確実に伝わる 再広告に伴って行われること 経路の集約 経路のフィルタリング Slide: 31 インターネット構成法 2002 AS内からAS間への再広告 AS内 OSPF 203.178.143.0/25 203.178.143.128/25 203.178.142.232/29 203.178.142.192/27 再広告 (この時、経路を集約) AS間 BGP 203.178.128.0/19 ・・・ AS AS Slide: 32 インターネット構成法 2002 AS間からAS内への再広告 AS間 BGP AS内 OSPF 24.48.88.0/21 61.48.0.0/15 132.188.32.0/19 202.249.24.0/23 AS境界ルータが再広告 (経路は集約できない) 24.48.88.0/21 61.48.0.0/15 132.188.32.0/19 202.249.24.0/23 AS AS境界ルータ Slide: 33 AS インターネット構成法 2002 AS間の経路情報が、全てAS内へ流れるの を防ぐには? AS内 OSPF AS境界ルータが Default routeを広告 0.0.0.0/0 (default route) AS内の経路表にない宛先へは 全てdefault routeが適用される AS間 BGP 24.48.88.0/21 61.48.0.0/15 132.188.32.0/19 202.249.24.0/23 AS AS境界ルータ Slide: 34 AS インターネット構成法 2002 AS内における経路の再広告 Staticの経路をRIPやOSPFなどに再広告 トポロジによって経路を集約可能 AS 10.0.0.0/25 10.0.0.128/26 10.0.0.192/26 を OSPF 10.0.0.0/24に集約し広告 Staticで運用 default 10.0.0.0/25 default 10.0.0.128/26 Slide: 35 10.0.0.192/26 インターネット構成法 2002 AS内における経路の再広告 RIPを使って再広告 自動的にバックアップリンクに切り替わる AS OSPF(バックボーン) aticで運用 リンクが正常なら RIPで10.0.0.0/24 を広告 RIP default 10.0.0.0/25 RIPで受信した経路を OSPFに再広告 default 10.0.0.128/26 10.0.0.192/26 Slide: 36 インターネット構成法 2002 まとめ 経路制御 静的経路制御 動的経路制御 RIP, OSPF, IS-IS, BGP メトリック ループ ネットワークに適した技術を選択 経路制御プロトコル間のはしわたし 経路の集約と、フィルタリング 経路情報の単純化 Slide: 37 インターネット構成法 2002 課題4 CNSの現状を調べなさい キャンパス全体の物理的な配線 ユーザセグメントの配置 他キャンパスとの接続、インターネットへの接続 基幹のネットワーク ダイヤルアップ接続、フレッツ網との接続 メディアセンター、特別教室、各研究室、無線 IPアドレスの利用、サブネット化、DHCP/static バックボーン 光ファイバ、イーサネット 各回線で使われているLayer2も アナログ、ISDN、PIAFS フレッツ ADSL、 ISDN その他 CNSネットワークの現状として調べるべき項目ならなんでも 他の項目と重ならないこと インターネット構成法 2002 Slide: 38
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