スライド 1 - Theoretical Astrophysics Group, Kyoto

GRBで探る
ダークエネルギー
- Dark Energy in Dark Age -
高橋慶太郎
@GRBワークショップ
2010年8月27日
目次
1、暗黒エネルギー
2、距離梯子
3、GRB宇宙論
1、暗黒エネルギー
宇宙の大きさ a
宇宙の大きさの歴史
傾き:宇宙の膨張速度
ハッブルパラメータ
宇宙は加速膨張
しているようだ。
→ 暗黒エネルギー
過去
現在 時間(10億年)
宇宙の構成成分
エネルギー密度
 total   radiation   matter   
  radiation,0 a   matter,0a    , 0
4
3
radiation
matter
宇宙定数
0.7
0.3
z=3000
z~1
0.0001
時間
膨張宇宙の基本
da/dt
宇宙定数なし
宇宙定数あり
フリードマン方程式
2
 a 
   8G total
a
 total   matter   
光度距離
  matter,0a 3    , 0
光度距離
1 z
dz
dL ( z) 
H 0  m (1  z )3  
加速膨張すると同じzに
対して距離が大きくなる。
→ 暗くみえる
光度距離
d L ( z )  (1  z )
z
0
dz
1 z
dz

H ( z ) H 0  m (1  z )3  
遠くの天体の距離 → 昔の宇宙膨張速度
ただし光度距離は現在からzまでの宇宙膨張を
積分したようなもの
距離とredshiftの関係(Hubble diagram)を
測ると宇宙の構成物がわかる。
Hubble diagram
暗い
宇宙定数なしでは
合わない!
Perlmutter et al. (1998)
パラメータ決定
z = 0.5, 1, 3, 10で距離が5%の
精度で測定できた時の制限
Perlmutter et al.
(1998)
SNIaだけでがんばるより他の
観測を組み合わせる方が効果的
宇宙膨張を測る
宇宙膨張を測る方法
・距離を測る
‐光度距離:SNIa、GRB
‐角径距離:バリオン振動、宇宙背景放射
・構造形成を見る(後でコメント)
初期条件(CMB)から現在までに構造形成が
どのくらい進んだか。
構造形成:重力・宇宙膨張のせめぎあい
‐物質優勢 → 構造形成が進む
‐放射優勢・加速膨張 → 構造形成がゆっくり
*銀河の空間分布スペクトル
*銀河団数密度(SZ、X線)
*weak lensing
astro-ph/0609591
astro-ph/0609591
現在までの制限
状態方程式
宇宙定数は本当に「定数」か?
w
p

   (1  z )3(1 w)
w=-1でないときには
エネルギー密度は
時間変化する。
matter (w=0)
w=-0.9
-1
-1.1
w<-1はphantom
と言ったりする
時間
時間変化する状態方程式
wも時間変化する?
 w( z ) 
w  w( z )    (1  z ) exp3
dz
 1 z 
3
どんな関数形でもよいが、
よく使われるのは次の形。
WMAP 7yrs
z
w( z )  w0  wa
1 z
matter (w=0)
w = 0 → -1
(w0 = -1, wa = 1)
時間
ダークエネルギーモデルの分類
w(z)をどういう関数形にするか?
1、データ解析的モデル
・constant w
・w(z) = w0 + wa z/(1+z)
2、現象論的モデル(たいていスカラー場)
ダークエネルギーにまつわる謎を説明するモデル
・山ほどモデルがある
・fine-tuning:tracker model
・coincidence:oscillating (undulant) model
3、物理的モデル
ダークエネルギー以外でモチベーションのあるモデル
・ブレーンワールド
・ゴースト凝縮
・cyclic universe
ダークエネルギーの謎
・fine-tuning problem
・coincidence problem
radiation
初期宇宙で
ものすごい
微調整
matter
なぜ今物質と
暗黒エネルギーが
同程度?
宇宙定数
z=3000
z=1 z=0 時間
Quintessence
●標準理論ではヒッグス場だけ
●大統一理論、超対称性、超弦理論などで山ほど登場
●2つのアプローチ
・都合のいいスカラー場を用意して、素粒子理論に期待
・素粒子理論で実際に登場するものを使う
ポテンシャルで
宇宙論的性質が決まる
tracker model
ある種類のポテンシャルで
面白いことが起こる
・tracker solution
優勢成分より少しゆっくり
エネルギー密度が落ち、
どこかで追いつく
Steinhardt et al.
(1999)
・アトラクタ的ふるまい
fine-tuning problemを
解決
・coincidence problemは
解決できない
tracking oscillating model
-35
加速膨張はこれまで2回あった:10
sec
と 10
→ その間に加速膨張はなかったのか?
Dodelson et al. (2000)
・tracking potentialに
振動を加える
・スカラー場がtracker解の
まわりで振動
・周期的に加速膨張
・今はそのうちの1つ
→ coincidence problem
の解決??
こういうモデルは
GRBで制限するほかない
sec17
まとめ
●宇宙は現在加速膨張している
●宇宙定数だとするとパラメータはかなり決まっている
●宇宙定数は物理的にはとても不自然
→ 何らかのダイナミクスを考えるのが自然
●GRB宇宙論でめざすもの
・これまでの他の観測のクロスチェック
(宇宙論には思わぬsystematic errorがつきもの)
・現在まあまあよく決まっているパラメータを
もっと精密に決める(w = -1?)
・GRBでしか観測できないhigh redshiftの宇宙から
ダークエネルギーのダイナミクスを探る
10-35 sec と 10 17secの間に加速膨張はなかったのか?
“Dark Energy in Dark Age”
補足
「一般相対論が間違っている」という可能性もある
Modified Gravity
・ブレーンワールド
・f(R) gravity
・Lifshitz gravity
・超弦理論的重力
→ “Dark Energy vs. Modified Gravity”
どうやって区別するのか?
距離
膨張速度
構造形成
一般相対論
一般相対論が
間違っていると
2つの方法で
測った膨張速度
が異なる。
距離測定と構造形成を組み合わせると
一般相対論を超える重力理論を探索できる
2、距離梯子
標準光源(standard candle)
天体の距離と赤方偏移との
間の関係が知りたい
天体の明るさがあらかじめ
わかっていれば、見かけの
明るさから距離がわかる。
しかし天体の絶対的な
明るさは普通わからない。
25
cosmic distance ladder①
三角測量で距離がわかっている
セファイドで周期・光度関係式を出し、
遠くのセファイドに適用する
セファイド変光星
三角測量
1pc
1kpc
1Mpc
距離
間接的に銀河までの距離を測ることができる
cosmic distance ladder②
セファイドで距離が
わかっている銀河
(にある超新星)で
何か関係式を作って
遠方にも適用する
超新星、銀河…
セファイド変光星
三角測量
1pc
1kpc
1Mpc
1Gpc
距離
セファイドを使って銀河・超新星などを標準光源として
calibrationする。
Ia型超新星
暗いものは
早く暗くなる
銀河1つ分の
明るさ!
減光時間で補正
するととてもよい
標準光源となる
白色矮星にガスが降着
2次的距離指標
セファイドから決めた
2次的な距離指標か
らさらに遠方の天体
の距離を
決定
→ 400Mpcまでの
Hubble diagram
Freedman et al. 2001
H0  72  8 (km / s / Mpc)
Riess et al. (2009)
H0  74.2  3.6 (km / s / Mpc)
さらに遠くを見ると
宇宙の膨張速度は時間変化する。
Freedman方程式

H 2 ( z)  H02 m (1  z)3  K (1  z)2  
ハッブル定数
暗黒エネルギーの密度パラメータ
もっと遠くの天体までの
距離を測ると密度パラメータ
に関する情報が得られる。
H(z)/H0
物質の密度パラメータ
近傍の天体(z~0)では
ハッブル定数だけが重要。

(Ωm, ΩΛ)
(1, 0)
(0.3, 0)
(0.3, 0.7)
HST key project
redshift
遠方SNIaの観測
Riess et al. 2007
・307個のSNIaによる制限
・暗黒エネルギーの存在を示唆
・CMB・BAOと合わせると
かなりパラメータが決まる
さらにさらに遠くへ
暗黒エネルギーの発見はすごいこと。
しかしその正体を考えようとすると情報が少なすぎる。


H 2 ( z)  H02 m (1  z)3  K (1  z)2   ( z)
今のところ定数で観測と矛盾しない。
しかしそれは比較的小さなzでの話。
cosmic distance ladderを伸ばす
GRBは宇宙の果てで起こっても見える。
GRBでHubble diagramを拡張して
暗黒エネルギーの正体を探りたい。
GRB~10 20Lsun
Ia型超新星~10 10 Lsun
3
セファイド変光星~10 Lsun
三角測量
1pc
1kpc
1Mpc
1Gpc
距離
3、GRB宇宙論
with Tsutsui, Nakamura, Yonetoku, Murakami
redshift分布
Swift衛星によって観測されたGRBの赤方偏移分布
SNIaはこの辺まで
・現在のGRBの最高赤方偏移はz = 8.2
・dark ageをGRBで探索する
明るさ分布
明るさにかなりの
ばらつきがある。
→ 標準光源には
ならない?
標準光源
・セファイド
変光周期と明るさ
・Ia型超新星
減光時間と明るさ
GRBにもこのような
相関があるのか?
スペクトル
Band spectrum
・2つのpower lawを
指数関数でつなぐ
・peak energy Ep
~ 10keV – 1MeV
∝ Eα
∝ Eβ
ピークエネルギー (Ep)
GRB correlation
GRBの明るさとスペクトルのピークエネルギーとの相関が
いくつか提唱されている。(Amati、Ghirlanda、Yonetoku)
ピークエネルギーが
大きいほど明るい
ただしこれらの関係式は宇宙論モデルを決めて
得られたもの。これをそのまま使うことはできない。
近傍での関係式の確立
z < 1.5ではIa型超新星によって
距離が測られている。そこで
まずz < 1.5のGRBだけを使って
相関を見てみる。
確かに相関はある。
これがもっと遠方の
GRBにも成り立つと
仮定する。
→ Hubble diagramを
より遠方に伸ばす
GRB Hubble diagram
Yonetoku relationを用いたHubble diagram
Tsutsui, KT et al., 2009
・z < 1.5 → 33個
・z > 1.5 → 30個
・SNIaより数が少なく
誤差も大きいが
遙かに遠くまで
距離を測定
GRBによる制限①
contourの形がGRBと
SNIaで異なる。重ねると
制限が強くなる。まだ
GRBの数も少なく精度も
よくないのであまり強い
制限にはならない。
しかしSNIaの2003年
程度のレベルには到達
している!
GRBによる制限②
z
w( z )  w0  wa
1 z
最近の発展
どうしたらもっと強い制限をつけられるか?
・もっと遠くまで見る
‐新しい衛星を作る
・統計誤差を減らす
→ GRBの数を増やす(low zもmid zも)
‐じっと待つ
‐新しい衛星を作る
・系統誤差を減らす
‐進化効果
‐検出器によるselection効果
‐新たな関係式を探す
‐よいデータだけを使う
→ 筒井講演
まとめ
GRB宇宙論
・ピークエネルギーと「明るさ」の相関
→ これによってGRBを標準光源として使用可能
・cosmic distance ladderをもう1つ伸ばす
三角測量 → セファイド → Ia型超新星 → GRB
・GRBで暗黒エネルギーの時間変化を探る
→ 暗黒エネルギーの正体にせまる
・distance ladderの方法だけで宇宙論パラメータを
決める
→ CMB・BAOなどのクロスチェック
・今のところGRBの数が少ない
・系統誤差を理解する努力をする
Probing Dark Energy in Dark Age with GUNDAM!!