スライド 1

20世紀の物理から
21世紀の物理へ
南部陽一郎(シカゴ大学名誉教授)
2005年2月15日
@京都大学時計台百周年記念ホール
2005 世界物理年
–
1905 アインシュタインの「奇跡」の年
日露戦争 1904-5
そのとき世界が動いた!
• 3+1+1の業績
1905
光量子仮説 (量子論の始め)
特殊相対論 (時間と空間の統一)
ブラウン運動の理論 (分子の実在性)
1916 重力場の理論 (宇宙論の基礎)
1924 ボース・アインシュタイン凝縮
Albert Einstein 1879-1955
アインシュタインの履歴書
1879生@Ulm (南ドイツ)
チューリッヒ スイス工科大学卒
ベルン 特許局勤務 (3つの奇跡)
チューリッヒ スイス工科大学
プラハ大学
チューリッヒ スイス工科大学
ベルリン大学
(重力場理論)
プリンストン 高等研究所
1955逝去(76歳)
古典物理学の完成
•
17世紀 (徳川時代のはじめ)
重力と力学
ケプラー、ガリレイ, ニュートン
天体と林檎の統一理論
•
19世紀
(徳川→明治時代)
技術の進歩, 産業革命
電磁気学
熱力学
統計力学
•
ファラデー, マックスウェル
クラウジウス etc.
ボルツマン etc.
物理は終わったか?
20世紀に何が起こったか?
物質の究極構造
量子物理学
新しい力
時空と宇宙の構造
21世紀に何が起こるだろうか?
重なイベント
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電子
相対論
原子構造
量子力学
重力理論
宇宙の膨張
核物理
ビッグバン
素粒子標準模型
現在は?
1. 時空
→ 9+1?
3 +1
2. 力の場
3 +1
電磁、強、弱、
重力
マクロの世界では 1+1のみ
→ n+1?
3. 極小の世界
3世代の基本粒子
→ n?
1世代=2種の香り、3+1種の色
マクロの世界: 第3世代のみ,第1、第2不安定
(3+1 世代では?)
4. 極大の世界(宇宙)
ビッグ バン
膨張する宇宙
時間的要素!
137億年前
(c/10,000)/1,000,000光年
(人類/地球 〜 1/1,000)
基本粒子表
ντ
世代
I
t
b
τ
II
s
μ
νe
III
香り
e
b
c
νμ
t
b
c
c
s
u
d
電荷
s
u
d
t
d
u
色
進歩の性格
•偶然の発見 (serendipity)
電子、放射能、量子現象、宇宙の膨張
•理論的予言
電磁波
相対論
c²t² - r² = const,
E² - p²c² = const = m²c⁴
反粒子
メソン
ゲージ場理論
•技術の進歩
真空技術, 写真技術, 加速器, コンピューター,
electronics, nanotechnology
進歩は波をうつ
新しい現象
→ 新しい規則性と新しいモデル(実体)
→ 理論体系の完成
→ その破れ → 新しい現象
(革命的発見の意義は必ずしもすぐ認められない。)
•1900-1930 革命的時代
量子現象、原子構造、量子力学、時空の構造
•1930-1980
原子核、素粒子、標準模型
•1970s
理論が実験を追い越す
ゲージ理論、超対称理論、大統一理論、超弦理論
•1990s―― 宇宙物理の進歩
1932年(第2の奇跡)ごろの世界観
•原子は電子と原子核でできている。
力は重力と電磁力だけしか考えていない。
•原子核は陽子と電子でできている、と思ったらニュートロン
が発見された。素粒子の数が増えた驚き。
•陽電子も発見された―初めての反粒子
•しかし原子核の本性はまったく未知。
•量子力学は原子の安定性を解決したが、量子場理論には無限大の
自己エネルギーという困難がある。
原子核の性質を説明ために量子力学に代わる力学が必要
だろう。
1942年
•フェルミのベータ崩壊の理論で弱い相互作用
が導入された。
•さらに核力は電磁力とは別の新しい力で、
それを媒介する湯川メソンという新しい素粒子
があるらしい。しかしメソンは不安定。
•宇宙線の中にこれが発見されたようだが、どう
も性質がおかしい。坂田は宇宙線メソンと湯川
メソンとは別のものだと主張した。
•いずれにしても不安定な素粒子というものが
あるのは不思議だ。
•核連鎖反応実現
1952年
•量子場理論の困難は解決された(繰り込み理論)。新しいし力学は必要ではない!
•写真乾板技術の進歩で、湯川のパイオンも発見された。
•坂田の宇宙線ミューオンは電子の親分みたいだ。この粒子は何の用をするのか?
•重い粒子は核子(陽子とニュートロン)や、その複合体である原子核だけかとおもっ
たら、それだけでなく、ストレンジ粒子という不安定な粒子がいくつか宇宙線の中で
発見された。
•加速器の進歩のおかげで、パイオンを人工的につくれた。
•核子とパイオンが結合して新しい共鳴状態を作ることが発見された。
•加速器のエネルギを上げてゆけば、素粒子はどまだまだあるのでは
ないか。それらの間にはどういう規則性があるのだろうか?
Livingston plot, idealized
?
1 Tev
トップクオーク
W, Z
1 Gev
陽子
1 Mev
電子 1930
1960
1990
2005
1964年
•湯川パイオン以外に新しいメソンも続々と出てきた。
•素粒子には核子やメソンのような強い相互作用をもつハドロン族と、
それをもたない電子、ミューオンのようなレプトン族の2種類がある。
•ハドロンの規則性はやっと判明してきた: SU(3)、クオーク・モデル
ハドロンは素粒子ではない。もっと基本的な粒子があるらしい。
•しかし不思議なクオークモデル―ー分数電荷、統計が違う。
クオークに色があるべきだ。クオーク間には新しい色の力がある
はずだ。 これが本当の強い力。
•ハドロンにもレプトンにもわれわれの世界と別のストレンジ世代
があるらしい。
そして世代は混じる。不思議な弱い力。
1970年
•ハドロンのスペクトルはクオークモデルと「ひも」理論で
理解できる。
•ゲージ理論で電磁力と弱い力を統一する試みがでた。
•何か新しい発展が起ころうとしている。嵐の前。
1974年
新しい革命の時代がいよいよ始まる。
•ゲージ理論の進歩: 標準模型の出現
ゲージ理論が電磁力と弱い力を統一する。クオークの間に強い力、色
のゲージ場が存在する。
クオーク閉じ込めの可能性
モノポールの存在?
•第2世代のクオークとレプトンとがそろったようだ!
第3世代の予言 (小林・益川)
•大統一理論の可能性----物理学者の夢の実現?
理論が実験を引き離して独走を始める。
理論 = log(実験),
実験 = 10^(理論)
•超対称の可能性
J/ψの出現
1982年
•第3世代が出現!
•W, Z ボソンが確認。
•超弦理論(スーパーストリング)の出現
Theory of everything?
理論の飛躍―物理は終わるのか?
•陽子は崩壊するのか?われわれの世界も滅亡の運命?
•モノポールは存在するか?
1990年
•進歩ははかどらない。焦燥の時代。
•陽子崩壊もモノポールも見つからない。
•トップ・クオークもまだ現れない。
2000年
–
トップ・クオークは現れたが、なぜそんなに重いのだろう?
•
ニュートリノのなぞが解けてきた!
•
•
でもヒッグズ・ボソンはまだでない!
LHCの出現が待ち遠しい。
SUSY粒子がでるだろうか?
•
•
スーパーストリング理論は発展しているが…
世界は3+1次元ではない? しかし実際の世界とつながるのは
いつだろう。
•
また意外なこと: dark matter, dark energy
宇宙は加速している!新たな革命?
現在は?
1. 時空
3 +1
→ 9+1?
2. 力の場
3 +1
→ n+1?
電磁、強、弱、
重力
マクロの世界では 1+1のみ
3. 極小の世界
3世代の基本粒子
→ n?
マクロの世界: 第3世代のみ,第1、第2不安定
3+1 では?
4. 極大の世界--宇宙
ビッグ バン
膨張する宇宙
時間的要素!
21世紀への期待
•極小から極大までの大統一の夢
•いずれわかるだろう。
≧Tev物理
Higgs ボソンはあるか?
SUSY粒子はあるか?
新しい世代または新しい粒子は?
空間は3次元以上なのか?
ニュートリノはマヨラナ粒子か?
陽子は崩壊するか?
重力波の検出
dark matter, dark energyの正体は?
•ひょっとしたら?
ローレンツの破れ?
自然定数は本当に定数か?
量子力学の限界?
•いつわかるかな?
スーパーストリング標準模型(理論)は?
質量の根源は?
対称性とそのわずかな破れ:なぜなのか?
Planck energy
Extended Livingston plot
10^22
10^18
??
10^12
1 Mev
1930
2000
2050
2100
2150