宇宙のバリオン数生成とDark Matter

宇宙のバリオン数生成と
Dark Matter
高エネルギー物理セミナー
山崎秀樹
Introduction
 近年になって超対称性化した標準理論
MSSM(Minimal. Supersymmetric Standard
Model)の枠組みで”q-ball”と呼ばれるソリ
トンが形成されることが分かり、ダーク
マターとBaryogenesisに対して一定の説明
が出来ることがわかってきた
Dark
Matter
アンドロメダ銀河において銀河の回転速度と星
たちから遠心力と重力の釣り合いの式と計算
すると
→銀河の明るさから予想される質量の
10~100倍の質量でないと説明がつかない
ここから見えない物質が個々の銀河から宇宙
全体にわたって存在することが明らかになり、
これが正体不明の物質「Dark Matter」の探究
のきっかけとなった
また、WMAP(Wilkinson Microwave
Anisotropy Probe)の観測結果によって、
宇宙の中味はダークエネルギー73%とダーク
マター23%、通常物質4%で占められることが
分かっている。
Dark Matterの条件
質量を持つ
 光を出さない(=電磁相互作用をしない)、
つまり電荷を持たない
 安定である
つまり崩壊しないか寿命が非常に長い

その正体はまだ分からない
ニュートラリーノ??
Axion??
MACHO??
バリオン?非バリオン??
ビッグバン宇宙論

宇宙の膨張の仕方はフリードマンの式により、宇宙
のエネルギー密度とその形態で決まっている。膨張
するに従ってエネルギー密度は減少する

電磁相互作用が平衡にあるとき、その温度で決まっ
たエネルギーを持つ光子がたくさんいる。
そのエネルギーの半分より小さな質量(エネルギー
に換算して)を持つ粒子と反粒子が対生成される。
より冷えれば、その質量の粒子・反粒子は対消滅し
ても粒子の対生成は起こらない
軽元素合成
1兆度から100億度まで…およそ100MeVから1MeV
d
n u
d
d
u p
u
W-
ee
およそ1MeV(陽子と中性子の質量差)以下ま
で冷やされると、中性子の数が減っていく
温度が100億度…およそ1MeV以下
まず重水素が作られる
2H
2H
2
3H
H
e
4H
3H
4H
e
e
水素、ヘリウム等よりも重い鉄までの元素は恒星内部の核融
合反応で生成される..........炭素、酸素、窒素
ビッグバン
宇宙マイクロ波背景輻射=ビッグバンの
残光
時間の経過
膨張・冷却
現
在
38
電気的に中性な原子が形成され、光子
が自由に飛び回れるようになった
地平線問題
宇宙背景輻射の観測ではどの方向からやってくる電波
を観測しても、「ムラ」がほとんど無くて全て同じ温度(約
絶対2.7度)の電波であることがわかった
ただ、光速に宇宙年齢を乗じて得られる距離ct(地平
線)の外側にある因果的に関係のない領域からも同じス
ペクトルの電波が来るのは矛盾が生じる
130億年前の情報
宇宙が1万度程度の時に原子が形成
されて光子が自由に飛び回れるように
なったときの地平線
インフレーション宇宙

フリードマン宇宙のまま膨張するのではなく,指数
関数的に急激な膨張を起こす時期が一時的に存在し
フリードマン宇宙
たとするモデル

過去に地平線の内部にあった粒子は急激な空間膨張
により、現在の地平線の外側に遠ざかる
これで見かけ上地平線の外側にある部分に因果関係
をつけられる
バリオン数生成機構(Baryogenesis)
我々の宇宙はバリオン数非対称な世界であり、宇宙
創生初期にバリオン数が生成される過程がなけれ
ばならない、また標準元素合成理論によると、軽元
素合成が成功するには、
d
n u
d
W-
d
u p
u
ee
およそ1MeV(陽子と中性子の質量差)以下ま
で冷やされると、中性子の数が減っていく
NB/Nγ=~10~10であることが必要であることが分かっ
ている
これらはビッグバン宇宙理論を説明するにあたって
必要な事項である
Sacharovの条件
1.バリオン数を変化させる相互作用の存在
バリオン数を変化させる必要がある
2.CP不変性の破れ
CP不変の場合、1の相互作用でバリオン数が
変化してもCP変換させた反応によりバリオン
数は依然変化しない
3.非熱平衡反応
1の条件があっても可逆反応なら
バリオン数対称性は保たれる
Baryogenesisに与えられる条件

宇宙の誕生時からバリオン数が非対称
だったら良いのではないか?
インフレーションにより、それ以前にあった
非対称性はほぼゼロに薄められてしまう
インフレーション後にバリオン数非対
称性を作る必要がある
Baryogenesisの候補

GUT baryogenesis

Sphaleron baryogenesis

Electroweak baryogenesis
 Affleck-Dine
baryogenesis
Affleck-Dine
Baryogenesis
Affleck-Dine 場φ: 候補 squarkやslepton
バリオン(レプトン)数βを持った複素スカラー場
A-term
バリオン(レプトン)数を保つ
Global U(1)対称性破る
バリオン数を持つアフレックダイン場が
インフレーション後に大きな期待値を持ち、
ポテンシャルの原点に向かって回転しはじめる
このとき、アフレックダイン場のポテンシャルには
U(1)(バリオン数保存) を破る項が存在するため、
バリオン数が生成される、
またこの項は宇宙膨脹にしたがって急激に
小さくなり効かなくなるため、
そのとき生成されたバリオン数だけが残り、保存される
q-ball
Affleck-Dine場には揺らぎが存在し、そのゆらぎが大
きいところではq-ballと呼ばれる物体が形成される
q-ballのバリオンあたりの質量は陽子よりも小さくなりう
る(Mq/q<1GeV) q= B (baryon number)
q-ballは核子への崩壊に対して安定
であり、それ自体がDark Matterにな
り得る可能性がある
典型的な暗黒物質q-ballは1024のバリオン数、
大きさは10-10cm、質量10-3gである
疑問….q-ballの外側のバリオン数
は?
3次元の格子計算の結果
Q-ballの検出

中性であるq-ballは核子に対して
(Q) + nucleon -> (Q + 1) + π
という反
応(KKST Process)で1衝突でおよそ
1GeVのエネルギーをπとして放出する
この1GeV相当のπの崩壊を検出できれば
よい
Super Kamiokande Ⅱで
この探索実験が行われた
Q-ball シナリオが成立する条件
1.蒸発したチャージ ΔQが宇宙のバリオン数
を、生き残ったq-ballがDark Matterの観測量
を説明する、または超えない
2.q-ballは完全に蒸発しない (Q>ΔQ)
3.q-ballは核子の崩壊に対して安定
(MQ/Q<1GeV)
これらの3つの条件を図に示したのが
右の図
まとめ
q-ballはDark MatterとBaryogenesisに一定
の回答を出す可能性を持っている
 いくつかの実験でq-ballのエネルギー領
域が絞り込まれており、今後の測定で
さらにそれが絞り込まれる
 たとえq-ballがDark Materrでなくても
Baryogenesisを考える上でも重要になる
かもしれない

最後に
今回のテーマは難しかったです
ばっくあっぷ
自発的対称性の破れ
ポテンシャル
真空の相転移が起こり、温度が下がるにつれ、ポテンシャルの形が変わる。
図1
場のポテンシャル
ポテンシャルの安定点では真空期待値
を取る。
ヒッグス機構(1)(僕の卒論です........)
局所的対称性の下での、ゲージ場の強さと含めたラグラジアンは
複素場の自由度を二つの実場
で置き換える。
また、安定点の周りの取り方は自由である。次に
とゲージ変換し、ラグラジアンを書き直すと・・・・・次のページへ→
ヒッグス機構(2)
ラグラジアンは次のように書き直される
の運動項および質量項
ゲージ粒子の質量項が現れる
KKST Process

核子がq-ballに衝突すると、まずクォ
ークに壊れ、このクォークはグルイー
ノ(グルーオンの超対称性粒子)を交換
して、スクォークになり、q-ballに取
り込まれる、この一連の過程で1GeV
相当のπ中間子を放出する