http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~matsuda/2002/021206.ppt ABC規則の課題と展望 保全と持続的利用の両立 を目指して 松田裕之(東大海洋研) 2002/12/6 1 保全と持続的利用の両立 • • • • • • • F=0規則の必要性 体長組成の重要性 投棄魚問題 MSYへの鎮魂歌 順応的管理の適用 生態系管理の視点 予防原則とリスク管理の両立 2002/12/6 2 F=0規則の必要性 • 禁漁にするための規則ではなく、ここ までは減らさないという説明責任 • これがないと、どうなったら管理が失 敗したのか不明 • リスク評価のendpoint • 不確実性に備えた究極の手段 • 乱獲以外が原因なら、その対策も必要 2002/12/6 3 F=0は規則で決めるべき • • • • • 明確な規則なくしては発動の合意困難 生物学的に唯一の決め方はない 漁業者自身から 最低漁獲量 数 字 を聴取する 漁業が成り立つぎりぎりの漁獲量 (絶滅または)持続的利用のendpoint 2002/12/6 4 ABCの決め方 × 乱獲 × 2002/12/6 非乱獲 × × × × 5 ABCの決め方 乱獲 要回復 管理順調 F実績 健全さ(a<>1) BF=0 2002/12/6 1-M 1±b B / B2000 MSY 6 MSY、絶対Bt、Fが不明の魚種 にも適用する • 相対資源量指数が必要。体長組成に よる定性的評価も行う • 相対Fも不明→ C∝Bn, F一定と仮定 • BF=0は資源問題でなく、漁業問題で あり、 20%bB2000などと合意を図る • MSY不明→漁獲圧は過去の健全な 漁業と現在の実績を比較する 2002/12/6 7 生物学を超えた問題 • BF=0 生物学的に必要だが、値は任 意。ただしこれがMVP(絶滅の 恐れ)よりずっと大きい場合。 • 資源良好時のF、C=CE方針な らずっと大きくてよい。ABCよ り生産調整の為にTACが必要 2002/12/6 8 体長組成の重要性 • 資源評価 • 漁獲の質の管理 • 責任ある漁業 2002/12/6 9 投棄魚問題 • 投棄もTACに含めるべき • 漁法、搭載設備により、 投棄率を推定し、TACを 水増しする 2002/12/6 10 MSYへの鎮魂歌 • 生態系は不確実、非定常、複雑系、 MSYはこれらをすべて無視 不確実 マサバ資源の回復確率 資源回復確率 70-80年代の漁獲圧なら 90 年代の未成魚乱獲 を続けると 非定常 複雑性 小型浮魚類の魚種交替 漁業と資源変動の関係 捕 食 者 密 度 被食者密度 2002/12/6 11 漁獲量だけの管理規則案 A C 1 B C 漁 獲 C2 量 任資 あ源 る学 助者 言の 責 要回復資源 持続的利用資源 禁漁資源 C2 2002/12/6 緊急回復 資源 過去の実績 C1 近年の漁獲量Ct 12 漁獲量だけの管理規則(続) • 漁獲統計の変動幅からCtの下限C1を決める。 • 2年連続Ct<C2なら禁漁という下限C2を決める • 漁獲量Ctが2?年連続してC1を下回ったら、要 回復資源とする(*2?年連続上回れば解除)。 • その後、3?年以内にC1まで回復できなければ、 漁獲量をC2以下にする(緊急回復資源)* • C2を下回って禁漁後、資源が2年連続C2相当 以上に回復したなら緊急回復資源に格上げ 2002/12/6 13 特徴と問題点 • 禁漁水準C2は漁業者から意見を聞く – 食逃げ業者の声は聞きたくない • 資源崩壊のリスクは回避できる • 禁漁措置発動のリスクは未知数 • 資源学者の助言を求める – 上位互換の資源管理の奨励 – 失敗した責任のとり方 2002/12/6 14 順応的管理とは • Adaptability(順応性) – 状況を見て政策を変える – その変え方を決めておく • Accountability(説明責任) – 未実証の前提でリスク評価 – 新たな知見を取り込み、過ちを改める • Falsifiability(反証可能性) – どんな事態を招いたら失敗か事前に明記 2002/12/6 15 順応学習とフィードバック制御 Adaptive Learning & Feedback Control Data Fish Stock Dynamics with Fishery Dynamics Model State Variable Decision Making of Fisheries Management 2002/12/6 勝川俊雄T.Katsukawa:博士論文(2002)より 16 http://www.for.gov.bc.ca/hfp/amhome/AMDEFS.HTM 順応的管理とは? What is Adaptive Management? 問題設定 フィードバック 調停 管理計画作成 3手の読み! 来年何を言うか 評価 計画実行 組織的に考えよ 継続監視 2002/12/6 17 http://www.eic.or.jp/eanet/assess/kihon/kokuji.html 環境影響評価法基本的事項 • 予測の不確実性の検討 –科学的知見の限界に伴う予測 の不確実性について、その程 度及びそれに伴う環境への影 響の重大性に応じて整理され るものとすること。 2002/12/6 18 管理目的・目標を定める • 科学的に唯一の解はない – 持続可能な寄生(人間=自然への負荷) – 決める前に合意形成(public comment) – 第3者委員会 • 目的は崇高に、目標は具体的に! – 両者に矛盾あれば批判される – 反証可能な数値目標を! – 説明責任 2002/12/6 19 ◎ABCを公表する • TACをABCにあわせるべき • 事前に意見を求めるべき • 複雑な解析より、これ以上 減らさないと言う明快な歯 止めの約束を! 2002/12/6 20 予防原則とリスク管理の両立 • 資源が危機的でないときは、予防原則 は適用しない • 資源が危機的な兆しが見えたとき、予 防原則を適用する • 調査・管理を励ますような制度が良い 2002/12/6 21 http://www.unep.org/ 予防原理 precautionary principle • 環境に対して深刻あるいは不可 逆的な打撃を与えるとき,科学 的に不確実だからという理由で 環境悪化を防ぐ措置を先延ばし にしてはいけない 1992年リオデジャネイロ宣言第15原理 2002/12/6 22 保全生態学用語 • MVP最小存続個体数 – Minimum Viable Population – IUCNレッドリストでは成熟個体数で 50/500(全動植物) • PVA個体群存続可能性解析 – Population Viability Analysis – 絶滅確率=3世代後に50%、100年後に 10% 2002/12/6 23 松田: MSYは最尤値、MVPは予防原則 • 予防的推定値では、最大持続生産量 (MSY)は達成できない • 絶滅・資源崩壊・リスク評価は不確実 性に対処した予防原則で • 多くの資源でMSY水準>>MVPだが 湖沼などではMSY水準<MVPもありえ る(放置したときの絶滅リスク) • IWCではMSYに対し重篤な予防措置 2002/12/6 24 IWCのRMP規則 2002/12/6 25 フェーズアウト ルール • 過去8年以内の資源量のデータが ? ない場合は,最近年の捕獲限度量 ? ? を8年を越える1年毎に20%ず ? つ削減する.したがって,8年を ? こえて5年間調査を行わないと, ? 限度量は0となる. 2002/12/6 26 近年の漁獲量のみ利用できる ●資源状態:中位で横ばい,増加か 高位にあるとき ABClimit=ABCtarget=過去3年間の平均漁獲量 ●資源状態:中位・減少か低位にあ るとき ABClimit=ABCtarget=過去3年間の平均漁獲量×0.8 1割ずつしか漁獲量が減らない 2002/12/6 27 日本のABC新規則の問題点 • 半世紀前のMSY理論 – 数値目標なき資源回復計画 • フィードバック思想がない – 乱獲になるまで漁獲率一定 – 減っても歯止めがない • 予防措置でない – よく調べるほど厳しいABC – 疎まれる資源研究 2002/12/6 28 100年後までのリスク評価 • 不確実性と非定常性を考慮し、 • 管理に失敗するリスクを評価 – 資源が崩壊するリスク – 数値目標を達成できないリスク – リスクはゼロではない! 2002/12/6 29 リスクを図り、公表する • 失敗確率を数理モデルで事前評価 – 未実証の前提次第でリスク値は変わる – 評価手法の公開。意見紹介手続き • リスクはゼロにはできない – 継続調査の重要性 – 非定常性に備えた順応性 – 不確実性に対処する説明責任 2002/12/6 30 生態系管理の視点 • その資源が良好でも、その資源と 相互作用する生態系が良好とは限 らない。 • 対象資源だけを指標としては危険 • 資源量でなく、他の指標による Feedback管理も一考の価値あり 2002/12/6 31 被食者を獲る場合 N P 5E2 dN R( N ) N F ( N ) P e2 N dt S = 30 dP D P + B[F (N ) P] dt 被食者を獲ると、被食 者自身が減るのではな く、捕食者が減る dP 0 dt dN 0 dt 順応的管理の場合、 dE 2 U ( E 2 )( N S ) dt 2002/12/6 32
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