Journal club 聖マリアンナ医科大学 3年目 遠藤 拓 西部病院 Prognostication of neurologic outcome in cardiac arrest patients after mild therapeutic hypothermia : a meta-analysis of the current literature Intensive Care Med (2013) 39:1671–1682 DOI 10.1007/s00134-013-3004-y 背景introduction/目的aim • CPA蘇生後の神経学的予後評価として、以下の4つ の指標が信頼性があるとAAN(American academy of neurology)が提言 ①clinical neurological examination (including corneal reflexes, pupillary reflexes and motor response) ②myoclonic status epilepticus ③somatosensory evoked potential (SSEP) ④ neuron-specific enolase (NSE) serum levels • 前述の因子うち、以下の2項目の特異度と偽陽性率を評価 ①clinical neurological examination (including corneal reflexes, pupillary reflexes and motor response) ③somatosensory evoked potential (SSEP) • これらの評価項目は、低体温療法を施行しないCPA蘇生 後患者の予後不良因子としては有用とされているが、 低体温療法を施行した患者に対して有用か否かを評価し た研究は未だに存在しない • 本研究の目的は、これらの指標がCPA蘇生後患者の低体 温療法後の神経学的予後不良の因子となるのかという、 メタ解析の研究報告である 方法:study selection 対象(下記患者群を含む研究を選出) • 18歳以上の成人 • 心肺停止からの自己心拍再開後、昏睡状態 • 心肺停止後(原因は無関係)12~24時間以内に 低体温療法が施行された患者 方法:outcome measures • 結果は退院時もしくはそれ以降に決定 • 結果はfavourableかunfavourableかで判断 unfavourable favourable GOS 1~3 4~5 mRS 5~6 0~3 CPC scale 3~5 1~2 GOS:Glasgow outcome scale mRS:modified Rankin scale CPC scale: cerebral performance category scale 補足 Glasgow Outcome Scale:GOS GOS 意味 1:dead 死亡 2:vegetative state 植物状態 3:severely disabled 身体的・精神的障害のため, 日常生活に介助を要する. Unfavour 4:moderately disabled ある程度の神経学的・知的障害があるが, 日常生活は自立出来る. Favour 5:good recovery 後遺症がないかわずかに障害を残すが元 の生活に戻れている. modified Rankin scale:mRS 値 Rankin Scale 参考にすべき点 0 まったく症候がな い 自覚症状および他覚徴候がともにない状態である 1 症候はあっても明 らかな障害はない 日常の勤めや活動は行える 自覚症状および他覚徴候はある が、発症以前から行っていた仕事や活動に制限はない状態 である 2 軽度の障害 発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身 の回りのことは介助なしで行える 発症以前から行ってい た仕事や活動に制限はあるが、日常生活は自立している状 態である 3 中等度の障害 歩行や身体的要求には介助が必要である 通常歩行、食事、 身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、 持続的な介護は必要としない状態である 4 中等度から重度の 障害 寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする 5 重度の障害 常に誰かの介助を必要とする状態である 6 死亡 Favour Unfavour Cerebral Performance Categories Scale :CPC Scale Favour Unfavour 方法:statistical analysis • 参照基準はfavourableかunfavourableか • 2×2検定で評価 • FPR(偽陽性率) =1 – specificity(特異度)で計算 • 95 % confidence intervals (CI)にて、全ての評価 項目を算出 • 論文の異質性 : Higgins I2にて評価 結果 :Result Study characteristic 445の文献から最終的に 10個の文献に絞られた Total of included patients per study compared to the included patients per test Summary measures of sensitivity and false positive rate FPRが低くかつ 95%CIの幅も非常に狭い 上記二項目が 指標として有用であることが示された (異質性があるのは、GCSのみ) Bilaterally absent SSEP 72hrs 心停止後72hの Bilaterally absentの TPR、FPR Sensitivity (95 % CI) 0.50 (0.42–0.57) FPR (95 % CI) 0.007 (0.001– 0.047) Higgins I2 0% GCS motor response 心停止後72hの Gcs motor response 1–2 のTPR とFPR Sensitivity (95 % CI) 0.80 (0.63–0.91) FPR (95 % CI) 0.21 (0.08–0.43) Higgins I2 23% Bilaterally absent corneal reflexes 心停止後72hの bilaterally absent corneal reflexes のTPR とFPR Sensitivity (95 % CI) 0.32 (0.27–0.39) FPR (95 % CI) 0.02 (0.002–0.13) Higgins I2<1% Bilaterally absent pupillary reactions 心停止後72hの bilaterally absent pupillary reflexes のTPR とFPR Sensitivity (95 % CI) 0.22 (0.18–0.27) FPR (95 % CI) 0.004 (0.001–0.03) Higgins I2 0% Discussion • GCS motor scoreと角膜反射は予後指標として有用 性が低いことが明らかになった • 対光反射消失とSSPE消失においてはFPRが低く 95%CIが狭いことから予後指標として有用性がある • 予後判定には高い特異性と狭い信頼区間を備えてい る必要がある Discussion • 低体温療法では、鎮静剤や麻酔薬、そしてそれらの代 謝物の排泄が遷延する可能性がある。予後不良因子の 評価項目の信頼性の低下に、少なからず関与した可能 性が指摘される • 今回のメタ解析において、最近用いられている臨床的 指標は低体温療法後の患者の予後評価の指標に必ずし も適応出来るわけではない事を示した • またこれらの指標の結果解析は、積極的治療からの撤 退に繫がる為、十二分に慎重な解析を行う必要がある ※今回の研究解析の中でも、SSEPの解析が不十分の 症例の中に、意識が回復した症例を認めた Limitation • 研究ごとの多様性から、予後不良と評価された結果は44 〜79%と ばらつきを認めた • 各検査が心停止後の異なる時間ポイントで行なわれた • 結果判定が、退院から退院の6か月後までの様々な期間で 評価された • 研究病院ではILCORガイドラインによる治療を基本とし たが、鎮静剤、麻酔および筋弛緩剤の使用において異なる 点があり、鎮静剤と鎮痛剤の血清濃度はどの研究において も決定されなかった • 積極的治療の撤回の基準は研究間で異なり、多くの研究に は生命維持からの治療撤退に関する厳密なプロトコルがな かった Conclusion • 心停止後の低体温療法を施行した場合の初期の予後予測は、 低体温療法自体および鎮静剤の使用によって影響を受けてしま うため、評価が困難である • GCS motor scoreおよび角膜反射は、低体温療法を施行された 場合の早期予後予測には信頼性が低い • 対光反射とSSEPは、低体温療法未施行の研究と比較しても 遜色なく、信頼性が高い • 今後の課題は、心停止後72時間で検査が施行された場合、臨 床・神経学的指標がどのように改善するか、また予後予測のた め検査を行うのに最適な評価時期を識別することが重要である
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