福島原発事故による 土壌・焼却灰の

小山研究室
30116020 吉岡 和樹
http://scan.netsecurity.ne.jp/article/img/2012/11/06/30358/3630.html
研究目的
2011年3月の東日本大震災が引き起こした福島原発起源の放射能汚染が、
深刻な社会問題となっている。汚染の状況は国・自治体・民間団体などから
膨大なデータが報告・公開されているが、それらは空間線量に関するものが
多く、その他の汚染の全体を見通した研究、空間分布や時間変化について
の分析は不十分である。
本研究は、土壌ならび焼却灰の汚染に着目した。
理由 土壌は汚染された地表を直接測定するため空間線量よりも
ずっと感度の良い測定ができ、焼却灰は放射能の濃縮が
起きるため、線量に現れにくい地域での汚染状況がつかめ
る。
それらの空間分布と時間変化のデータを整理・把握し、
地形などの各種データとの比較分析も含めた
放射能汚染の全体像の把握を試みる。
研究方法
環境省、各自治体、ならびに他の公共機関、民間団体の
Webページから土壌ならびに焼却灰の汚染に関する測定
データを収集する。
15都県の各市町村の農地土壌771ヵ所と16都県の各焼
却施設460ヵ所のセシウム濃度のデータを入手
収集したデータをGoogle Map上に入力して汚染分布図を
描く。
 福島県の市町村と焼却施設のデータにより時間変化に
よる汚染状況の変化をみる。

放射性物質について
福島原発から飛散した主な放射性物質は全31種ある。本研究で
はその中でも半減期が30年と長く、拡散しやすいセシウム(Cs)
http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110606008/20110606008-2.pdf
に着目した。 原子力安全・保安院
「AERA」2011.6.27号(朝日新聞出版)18-19ページ
セシウムとはナトリウムやカリウム等と同じアルカリ金属の一種。いくつかの
同位体があり、天然に産出するものは安定同位体Cs133、原子炉内の反応
によって生成される放射性同位体Cs134、原子炉の核廃棄物として取り出さ
れる放射性同位体Cs137などがある。
セシウムは生体内において必須の成分とは認められていないが、カリウムな
どの塩類と置き換わって体内に吸収されると考えられるため、セシウムの放
射性同位体は内部被曝の原因となる有害物質である。
コトバンク
http://kotobank.jp/word/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0
今回のセシウム濃度(Bq/kg)は土壌、焼却灰ともに測定された放射性物質
Cs134とCs137の合計値を表している。
農地土壌の汚染分布
農地土壌771ヵ所のセシウム濃度の高い数値
に着目して、Google Map上に色分けして入力
 福島原発を中心にセシウム濃度の高い地
域が広がっている。
 新潟県の100Bq/kgを超える土壌が2%未
満と少ない。
 茨城県から千葉県にかけて、400Bq/kgを
超える地域が集中。
 最大値は大熊町の20万3000Bq/kg
2011年 11月
GoogleMap
8001以上
1001~8000
401~1000
101~400
0~100
単位:Bq/kg
農林水産省の発表した、肥料・土壌改良
資材・培土中の放射性セシウムの暫定許
容値400Bq/kgを超えている土壌
219ヵ所
福島県:59ヵ所中51ヵ所(86%)
栃木県:154ヵ所中123ヵ所(80%)
山脈を境界として濃度が
下がる。
特にセシウム濃度の高かった
土壌(8000Bq/kg超過)
9ヵ所
いずれも福島原発の半径50km
以内
GoogleMap
焼却灰について
焼却施設から出る焼却灰には、燃やした後に残る「主
灰」と、排ガスに含まれるダストを集じん機で集めた「飛
灰」などがある。高濃度のセシウムが検出されているの
は飛灰で、国の基準を超える飛灰は最終処分場に搬出
できず、施設内に保管されたままになっている。
コトバンク
http://kotobank.jp/word/%E7%84%BC%E5%8D%B4%E7%81%B0%E3%81%A8%E
6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E7%89%A9%E8%B3%AA
今回の焼却灰のセシウム濃度は飛灰の数値を表して
いる。(ただし主灰のみ測定された施設は主灰の数値を
表している。)
焼却灰の汚染分布
2011年 7月
焼却施設460ヵ所のセシウム濃度の高い数値
に着目して、Google Map上に色分けして入力
• 福島原発を中心にセシウム濃度の高い
地域が広がっている。
• 特に北西方向への広がりがある。
• 新潟県では、セシウム濃度100Bq/kg以
下の施設が全33施設中23施設と多くみら
れた。
• 福島市のあぶくまクリーンセンターの
9万5300Bq/kgが最大値であった。
GoogleMap
8001以上
1001~8000
101~1000
0~100
単位:Bq/kg
国の埋め立て基準を上回り、焼却灰
の保管が困難なセシウム濃度である
8000Bq/kgを超えた施設
42ヵ所
8000Bq/kgを超えた施設は福島原
発の周辺施設、および太平洋側の
海岸線沿いの施設に多くみられた。
原発から約190km離れた岩手、ま
た千葉、東京などの都市部の施設
にもみられた。
GoogleMap
空間線量による汚染地図と比較
文科省の航空機モニタリングの地図は第4次航空機モニタリングの測定結果
を反映した東日本全域の地表面から1m高さの空間線量率(μSv/h、2011年
11月5日の値に換算)を、早川(2012)の汚染地図は2011年9月時点の草地の
上1mなどの放射線量率(μSv/h)をそれぞれ表示
 2つの汚染分布も、土壌・焼却灰の汚染分布と同様に福島原
発を中心とした広がりとなっている。
 栃木県北部から群馬県北部、茨城県南部から千葉県北部へ
の汚染の広がりがみられ、これは土壌・焼却灰の汚染分布に
もみられた。
 原発から北西方向への広がりがあり、これは焼却灰の汚染分
布と一致。
文科省の航空機モニタリング
早川(2012)の汚染地図
文部科学省
http://radioactivity.mext.go.jp/ja
/contents/5000/4901/24/1910_
1216.pdf
早川由紀夫の火山ブログ
http://kipuka.blog70.fc2.com/blogentry-535.html
土壌の汚染分布
GoogleMap
文科省の航空機モニタリング
早川(2012)の汚染地図
文部科学省
http://radioactivity.mext.go.jp/ja
/contents/5000/4901/24/1910_
1216.pdf
早川由紀夫の火山ブログ
http://kipuka.blog70.fc2.com/blogentry-535.html
焼却灰の汚染分布
GoogleMap
農地土壌汚染の時間変化
福島県の各市町村の中でセシウム濃度の1番高かった地域の数値を元にセシウム濃度の時間
変化を月別に表したグラフである。ウェブサイトで測定値が報告されていない月や不検出であっ
た月は推移の傾向が見やすいように補間してプロットしている。それぞれの土壌の位置は裏のス
ライドに示してある。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
全14地域中12地域でセシウム濃度の減少がみられた。
途中、セシウム濃度が高くなったのは浪江町と飯館村①で
あった。
土壌の汚染分布(福島県)
7
6
3
1
8
12
2
5
4
11
9
13
10
GoogleMap
焼却灰汚染の時間変化
福島県の6つの施設のセシウム濃度の数値を元にセシウム濃度の時間変化を月別に表したグラ
フである。ウェブサイトで測定値が報告されていない月や不検出であった月は推移の傾向が見や
すいよう補間してプロットしている。それぞれの施設の位置は裏のスライドに示してある。
減少し続けている
わけではない
3
1
4
5
2
6
北部・南部清掃センターの焼却灰のセシウム濃度が月ごと
に一様に減少しているわけではなく、数値の上がっている月
もみられた。
焼却灰の汚染分布(福島県)
4
3
5
6
2
1
GoogleMap
まとめと考察
土壌、焼却灰の汚染は福島原発を中心に
広がっているが、新潟県などの日本海側
の地域、施設への汚染は少ない
汚染の広がりは同心円状で
はなく、山脈などの地形が
影響する
土壌の汚染は都市部でも400Bq/kgを超え
る高い数値が測定され、焼却灰は福島原発
から離れたところでも8000Bq/kgを超える数
値が測定された
福島原発から離れている
から汚染が少ないというわ
けではない
他の分布図との比較により、土壌・焼却灰
の分布は空間線量の分布と類似
土壌・焼却灰の汚染は空間
線量と関係している可能性
がある
セシウム濃度が一時的に
下がってもまた上がる可能
性がある
月別の時間変化において土壌の汚染は減
少傾向にあるが、焼却灰の汚染は一様に
減少しているわけではない