PowerPoint プレゼンテーション

第3回 BOPビジネス研究会 概要①
【概要】
 K-RIPは、平成25年1月22日、BOPビジネスに挑戦する地域企業への助言、支援方法等を検討する研究会『BO
Pビジネス研究会』の第3回目を開催。
 第3回目の研究会では、BOPに挑戦している企業の取組について、事前に支援機関側から助言・提案を行っており、
その助言等内容に対する企業側の検討状況について、意見交換、追加の助言・提案を行った。
 また、九州地域でBOPビジネスを普及させるための障害を、企業セクター、公的セクター、NGOセクターなどのセク
ター別に分けて議論を行った。
1.日時、場所等
◇平成25年1月22日 14:00~17:30
◇福岡合同庁舎8F 共用第7会議室
2.議事
【議事1】支援機関側からの事前の助言等内容に対する企業側の検討状況について意見交換
・BOPビジネスに挑戦する企業3社(エネルギー関係1社、上水供給1社、河川等汚水処理1社)からプレゼン
《参考;企業3社の概要》
A社:小型風力発電機の製造・販売メーカー。途上国の無送電地帯を中心に、電力を供給する事業に挑戦。
B社:上水・下水・汚水処理などの水関係の事業全般を手がける総合エンジニアリング企業。途上国の離島・農村地帯にて給水事業に挑戦。
C社:生活雑排水等で汚染された河川・湖水等の浄化を行う製品を開発するメーカー。途上国にて汚染された河川等の浄化事業に挑戦。
※この他にD社(資源リサイクル業)も研究会メンバーであるが、今回、都合により欠席。第3回目でプレゼン予定。
【議事2】総合討論
①九州地域でBOPビジネスを普及させるための障害
②BOPビジネスに取り組む際の企業サイド、支援機関サイドの留意点とは
第3回 BOPビジネス研究会 概要②
3.【議事2】 総合討論
(1)議論テーマ1:『九州地域でBOPビジネスを普及させるための障害は何か?』
【議論背景】
・BOPビジネスは、乗り越えるべきハードルは高く、そして多いが、企業の存在意義を考える機会になり、イノベーションの
機会でもあり、大きなビジネスチャンスにもなりうる。
・しかし、そうしたBOPビジネスの魅力をより広く普及し、深く浸透させるには、どのような障害を克服すべきだろうか?
【議論方法】
・中小企業の事例が少ない、中小企業の取組ステップがモデル化されていない、支援機関の窓口の認識が不統一、支援
機関同士のネットワークが未確立、代表的なモデル(ロールモデル)が創出されていない等の論点があるが、セクター別に
要因を探ったところ、おおよそ以下のとおり。
①企業サイド
(a) 企業の一般的な行動モデル「利益最大化」からの脱却が不十分
・企業の行動目的は「利益最大化」であるとするならば、企業行動モデルは「PQ-C=π」と表現される。
(P:価格、Q:販売量、C:生産コスト、π:利益)
・企業行動は、P⇒↑、Q⇒↑、C⇒↓を指向。しかし、製品等がコモディティ化するペースが速くなる中で、Pは他律的に
決まり(むしろ、値下げ競争の中で、P⇒↓)、Qは競合製品とのシェア争い激化で低下(Q⇒↓)。利益πを確保するた
めに、更なるコストダウン(C⇒↓↓)を強いられている。(⇒コスト競争)
・このような従来の企業行動モデルは「消費者不在」(企業側サイドの論理)。ビジネスは、消費者が存在して初めて成り
立つもので、消費者が商品等に対価を支払わねばビジネスにならない。
・消費者が商品等に対価(P)を支払うのは、その価格Pを超える「価値」を見出し、支払っても良いという支払意欲がある
からである。つまり、「価値」とは、「顧客の支払意欲」から「支払価格」を引いたものと考えられる。
∴「顧客が認識する価値(CV(Customer Value)) = 顧客の支払意欲(WTP(Willingness to pay )) - 価格(P)」
CV=WTP-P
・一方、企業の単位あたりの利益は、製品等の価格(P)からコスト(C)を引いたものとなる。つまり、P-C=πと記述可能。
・1つの商取引によって生まれる経済価値を、簡便的に社会的価値とみなすと以下のとおり。
顧客価値 + 企業利益 = 社会的価値(Social Value)
(WTP-P)+(P-C) = 社会的価値(Social Value) (ただし WTP-P>0、P-C>0)
第3回 BOPビジネス研究会 概要③
3.【議事2】 総合討論(続き)
・つまり、「WTP-C=社会的価値」 となり、WTP⇒↑、C⇒↓が、社会的価値を高めることとなる。
・社会的な価値創造の最大化には、企業は、顧客の支払意欲(WTP)の最大化に挑戦することが重要。
・WTP=CV(顧客価値)+P(価格=所与)であることから、「顧客価値の最大化」への挑戦が重要となる。
(b)顧客価値最大化を志向しない要因
・顧客価値最大化⇒企業利益増というメカニズムの認識が未普及では。
・CV(顧客価値)=WTP(顧客の支払い意欲)-P(価格)であり、CVの増加には、WTP⇒↑、P⇒↓
・WTP(顧客の支払意欲)は、「必要性、ベネフィット」と「所得」に関連があり、
「所得」が高いほど消費意欲(≒支払意欲≒需要(D))も高くなる。
供給曲線
・需要(右図で線D)が増えれば(線DがD‘にシフト)、価格(P)も上昇しうる。
論理的には供給者側の利益は「PP‘E’E」の面積分だけ増加。(ただし、完全
競争市場の下では商品・サービスの価格は一定に保たれるように力が働く
需要曲線
ので、簡単に変化をすることは無いことに注意)。
・つまり、WTPを高めるよう「消費者の所得向上」のメカニズム(≒BOPビジ
ネスの肝)を入れることで、企業利益も増加しうる。
・株主利益を重視する企業文化が蔓延 ⇒ 消費者不在、短期的利益の追求
⇒ 長期的に「市場を創造していく」という観点の欠如
(c)顧客価値が何かわからない
・どのような顧客(ターゲット顧客の絞り込み)が、どのようなことで困っているのか、真に片づける用事は何か、何を提供
すべきなのかの情報入手が困難。
(d)ビジネスモデルの構成要素の不足
・企業行動のあるべき方向性は、「顧客価値創造」、「企業の利益」であり、そして、それらを「いかに提供するのか」という
ビジネスモデルを意識していないのではないだろうか。
・主要な経営資源の不足(人材、情報、技術、流通チャネル、パートナシップ、ブランド等)というのもあると考える。
第3回 BOPビジネス研究会 概要④
3.【議事2】 総合討論(続き)
顧客価値
提案
・(ビジネスモデルで検討が必要な要素は右図のとおり。)
主要
経営資源
(e)成功事例、取組の定石の未普及
・中小企業でBOPビジネスで成功している事例が普及していない。
・どのような課題があり、どのように課題克服していくべきかの情報が乏しい。
主要業務
プロセス
利益
方程式
(出所)Johson,2010,P24
(f)場(コミュニティ)の不足
・ソーシャルの視点で発想していくため、「志」が先行しがちになり、技術や資源が不足している段階で、BOPビジネスに
挑戦したり、自社では対応できない案件に挑戦してしまうこともある。相場の育成という点でも、他地域で取り組む企業
や連携しうる企業、支援機関、NGOなどと情報交換できる場が必要。
・社会的課題への挑戦という高い「志」は、同様の志を持つ者と共鳴しあい、共創し、新しい知を育む。しかしながら、そう
した共鳴を促し、知を生み出す「場(≒コミュニティ)」が乏しいのではないか。
(g)幅広いステークホルダーを巻き込むための共通善の模索困難
・地域中小企業が少ない経営資源で途上国市場でエコシステムを構築していくには、幅広いステークホルダーの協力が
必要であり、共通の目的、社会的価値命題(共通善)を創造することが重要。
・しかしながら、この社会的価値命題を創造し、巻き込んでいくことが苦手な企業が多いのではないか。
(h)自分の商品、サービスが途上国で社会的ビジネスとして可能性があることに気づくチャンスがない
(⇒途上国の首都付近でななく、ローカルな場所の課題を、実際で感じるようなツアーが必要)
(⇒ビジネスミッション以外にNPOによるスタディツアーなどが効果的)
(i)国内外のNGOとのビジネスのやり方がわからない
(j)近い将来BOPに挑戦してみたいという予備軍がレベルアップできる場が少ない
第3回 BOPビジネス研究会 概要⑤
3.【議事2】 総合討論(続き)
②NGOサイド
(a)企業とのビジネスのやり方になれていない。
(b)海外NGOとのネットワークは組織対組織といより、個人対個人の場合が多い。
(c)NGOの強みを弱みを企業に理解してもらう取組が必要。
③産業支援機関
(a)中小企業の特徴を理解した支援システムが必ずしも構築できていない。
(b)中小企業の価値観を変えるような、企業経営者を最前線に連れ出す仕組みが必要。
(c)BOPビジネス支援向けの支援ツールが部分的。
(d)具体的な助言ができない(自らが現地に精通している訳ではない)。
(e)自機関で対応できない場合に、どの機関に相談案件をもっていけば良いのか分からない。
(f)各機関の各支援ツールを連携させるという認識。
④国・自治体(行政機関)
(a)地域間ネットワークの活用方法がまだ十分に習熟できていない。
(b)地域としてBOPの魅力を伝え、多くの企業が参加してみたいと思わせる場が少ない。
(※)国・自治体は産業支援機関と同様の業務を行っていることから、③の部分が該当しうる。
第3回 BOPビジネス研究会 概要⑥
3.【議事2】 総合討論(続き)
(2)議論テーマ2:『BOPビジネスに取り組む際の企業サイド、支援機関サイドの留意点とは』
BOPビジネスに取り組む企業の留意点、支援機関側の留意点について、相談にあたる担当者の問題意識を踏まえて
議論を行ったところ、以下のとおり。
(a)まずは現地を訪問し、現場を“体験”することの重要性
・BOPビジネスを考える前に、まず、現地訪問が重要。途上国に行っていない会社がほとんどである。予算とスキームの
ないなかで、社長を連れて行かないといけない
・しかし、物見遊山で参加するのではなく、現地の人々との触れ合い等、体験することが重要。
(b)ミッションに参加する企業の準備
・物見遊山で参加するのではなく、同じ目線で体験する心構えが重要。
・そして、ビジネスに持っていくという姿勢を持つがことが重要。
(c)効果的な視察ミッションの実施に向けて
・NGO主催のスタディーツアー(現地訪問・体験)は、そもそも個人のボランティアを対象としたものであり、現状のままで
は企業のニーズには合わない。このため、企業が参加できるための工夫が必要。
・ある企業と途上国の廃棄物の現場を訪問した。訪問のプログラム作りが大切。例えば、廃棄物処理業を営む人たちには、
事務所だけでなく、廃棄物の現場に連れて行き、実際に捨てる場所を見せること。
(d)企業連携の向けた課題
・今回の研究会の参画企業メンバー同士で連携ができないかという話があったが、それぞれの会社は具体的に事業に着
手していてターゲットとしている国が違っている。これらが手を組むとは考えにくい。それよりも、海外に手を付けていない
ビギナーを連れて行くと、意外に企業どうしのチームが組成されるのではないか。