エコーガイド下穿刺のすすめ 池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック 臨床工学技士 谷口 英治 はじめに 透析治療において、穿刺は患者とスタッフにとって最もストレスのかかる行為と 言ってもいい。 近年、バスキュラーアクセス(VA)の穿刺困難症例が増加傾向にある。 その背景には透析患者における、糖尿病の増加・高齢化・透析期間の長期化等が あげられる。 そのため、穿刺トラブルにより患者との信頼関係が崩れるケースも少なくない。 当クリニックでは、開院当初より透析室にエコーを導入し、穿刺困難症例に対して エコーガイド下穿刺を行うことで穿刺ミスの軽減を図り、患者との信頼関係を築いて きた。 また、エコー画像によりこれまでの穿刺ミスの原因を形態的に評価することで、理論 的に理解することができ、スタッフの穿刺技術向上に繋げることができた。 エコーガイド下穿刺の実際 穿刺時にエコーを使用することで、皮下組織や血管内を直接観察することがで きる。 これにより血管の径・深さ・走行・内腔が把握でき、穿刺困難症例に対して安全で 正確な穿刺が行え、穿刺ミスの回避に繋がる。 また、触診困難な部位への穿刺が可能となり、穿刺部位を増やすことができる。 これは、シャント一部分への負担を軽減でき、狭窄・止血困難等のトラブル回避に も繋がる。 そして、スタッフの穿刺へのストレス軽減にも繋がり、今まで穿刺することのでき なかった患者や新たな穿刺部位への視野拡大に役立てることができている。 *適応 • 穿刺困難・・・血管が深い、血管径が細い、血管が蛇行、血管内腔異常、 動脈併走 • 針先修正・・・穿刺ミス、脱血不良・静脈圧上昇の原因検索 エコーガイド下穿刺の動画 *血管抽出方法 • 短軸像・・・左右の確認が容易、前後の確認が困難→穿刺針を進め すぎる時がある *血管抽出方法 • 長軸像・・・前後の確認が容易、左右の確認が困難→穿刺針を見失 いがち 当クリニックでは、ほぼ短軸像にて行い、長軸像は補助的に用いる。 *短軸像におけるプローブ操作方法 • 垂直操作・・・プローブは垂直のまま前後へ操作して針先確認。 *短軸像におけるプローブ操作方法 • 斜め操作・・・プローブの位置を固定して前後へ斜めに傾けることで 針先確認。 実際は、垂直操作と斜め操作の両者を併用して行う。 症例報告 症例(1) 原疾患:糖尿病性腎症 年齢:74 性別:F 透析歴:1年10ヵ月 DM:有り VA種類:右AVF(吻合部:前腕末梢) A A B C 血管径:2.5mm 血管までの距離:3.5mm エコーガイド下穿刺 症例(1)の動画 症例報告 症例(2) 原疾患:糖尿病性腎症 年齢:60 性別:M 透析歴:9ヵ月 DM:有り VA種類:左上腕動脈表在化血管 B A A B 血管径:4.2mm 血管までの距離:1.6mm C 血管径:3.9mm 血管までの距離:5.5mm エコーガイド下穿刺 症例(2)の動画 おわりに エコーガイド下穿刺は、穿刺困難症例に対して安全確実な穿刺を行うことができま す。穿刺トラブルにおいてもエコー画像により原因検索を行うことで、合併症減少に繋 がります。確かに出来るようになるには、多少の時間と慣れが必要ですが、一旦慣れ てしまえば、大きな武器となります。 私自身、エコーガイド下穿刺を出来る様になる前は、穿刺に対してストレスを感じて いました。しかし、エコーガイド下穿刺を出来るようになってからは、穿刺に対して自 信が持てるようになり、患者との信頼関係もよりよいものになりました。 今現在穿刺に対してストレスを感じているという方、ぜひエコーガイド下穿刺をお勧 めします。
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