理想の小児医療・糖尿病診療実現 多職種連携による

TOSMEC Aventy
(東芝メディカルシステムズ)
丸岡内科小児科クリニック
院長 丸岡
(福岡県福岡市)
文雄
氏
Dr. Fumio Maruoka
理想の小児医療・糖尿病診療実現のため
多職種連携によるチーム医療を実践。
電子カルテで迅速かつ安全な医療を展開
8年以上、
福岡市郊外で小児医療と糖尿病患者の診療に取り組んできた丸岡内科小児科ク
リニックでは、
2006年1月の開業当初から電子カルテを導入している。医師、
看護師をはじめ、
さま
アレルギー疾 患を含む小 児 医 療を
した理由についてお聞かせください。
行っています。
今述べたように、多職種のスタッフ
ーークリニック開業の経緯からお聞か
スタッフは、医師は非常勤を含め12
が1人の患者さんに携わるチーム医療
せください。
名、看護師は常勤8名、非常勤が2名
が当クリニックの特徴です。
そのため
勤務医時代に感じたのは、病院で
の計10名おり、
そのほか検査技師や
にはスタッフ間の情報の共有化が欠
の診療、特に外来診療での限界でし
薬剤師などのメディカルスタッフに事
かせません。電子カルテはそのための
た。診療の質や医療環境を向上させる
務員を合わせると約40名のスタッフが
ツールとして重要と考え、開業当初よ
ためのアイデアはたくさん思い浮かぶ
勤務しています。
り導入しています。
のですが、勤務医の立場では、病院に
外来患者数は1日約120∼160名
電子カルテの選定では、数社にシス
提案してみてもなかなかアイデアを具
です。
そのうち小児は80∼100名ほど
テムのデモを行ってもらいました。
中で
体化することは難しいことでした。例え
で、
季節等で若干変動します。
も東芝メディカルシステムズ社の電子
ば、病院の扉の多くは開き戸ですが、
診療の特徴としては、
まず小児科医
カルテが最も操作性が良く、使いやす
これは車椅子の人には非常に扱いづ
と皮膚科医が連携したアレルギー医
そうだと感じましたね。選定に至った
らい扉です。
それを引き戸に変えるだ
療が挙げられます。例えばアトピー性
理由としては、他にも保守・点検等に
けで、大きなバリアーを無くすことがで
皮膚炎の治療では、小児科だけですと
関するサポート体制がしっかりしてお
きますが、病院に提案しても予算の都
塗り薬の使用法を満足に説明できず、 り、電子カルテを停めることなく運用で
合等もあることから、
現実化できません
皮膚科のみだと小児に対する十分な
きるだろうと判断したからです。
でした。加えて、診療についても病院で
説明ができませんが、
当クリニックでは
ーー 新 規 導 入 され た「 T O S M E C
は専門家同士の間の壁が厚く、
同じ病
2つの診療科の医師が連携することで
Aventy」
についてお聞かせください。
院内でもなかなか連携することが難し
質の高い医療を提供することができて
医事会計/電子カルテ一体型の電
かったのです。
います。
子カルテシステム
「TOSMEC Aventy」
そこで、私はアップル社を飛び出し
また、糖尿病の診療については、
当
に更新したのは2014年9月です。現
てNeXT社を立ち上げたかつてのス
クリニックには医師、看護師だけでな
在、
端末は4つある診察室に各2台、
受
ティーブ・ジョブズのように、病院を飛
く、薬 剤 師 、管 理 栄 養 士 、臨 床 検 査
付に3台、
処置室に2台、
問診室、
管理
び出して、私の理想とする医療ができ
技師、理学療養士がチームを組んで
栄養室、
検査室、
薬局、
経理に各1台の
るクリニック開業を決意したのです。
糖尿病教育入院を外来で実施するな
計18台を設置しています。
ーークリニックの概要と診療の特徴に
ど、高度で質の高い医療を展開してい
診察室に2台設置している理由は、
ます。
医師以外に診察室での業務がある看
ついてお聞かせください。
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Clini
丸岡内科小児科クリニック
ざまな職種のスタッフが情報を共有し、
チーム医療の推進に大きく貢献してきた。同院では、
2014
住所
: 福岡県福岡市東区千早4丁目13-2
電話
: 092-663-5234
年5月に新築移転を果たし、
同年9月には高い操作性と多機能を持つ医事会計/電子カルテ一
標榜科目: 内科・小児科・皮膚科・小児皮膚科・アト
体型電子カルテシステム
「TOSMEC Aventy」
に更新して、
さらなる医療の効率化を図っている。
ーー開業当初より、電子カルテを導入
ピー性皮膚炎皮膚科・小児肥満症内科・循環器内科・
糖尿病内科・アレルギー科・アレルギー疾患皮膚科
IT
活用事例紹介
稼働電子カルテシステム
当院では、主に糖尿病患者の診療、
電子カルテの導入により
迅速で効率的な医療を展開
診療所の
丸岡内科小児科クリニックの IT 活用事例
小児医療・糖尿病の患者に対して
多職種連携によるチーム医療を実施
2006 年 1 月、自分の理想とする医療
を実現するために、丸岡文雄氏が福岡市
に、糖尿病療養指導士の資格を持つ看護
師 4 名が療養指導、フットケア、インス
東区に開業した丸岡内科小児科クリニッ
ク。2014 年 5 月にはクリニックを新築。
同クリニックは、どのような患者でも気
軽に来院でき、気持ちよく診療を受けら
れるようホテル等を参考に、病院の冷た
い、近寄りがたい雰囲気を極力なくした
工夫が多数盛り込まれている。診療面で
も、確かな技術と最新の知識に基づく治
療を行うべく、日本糖尿病学会、循環器
学会、小児科学会、皮膚科学会などの最
新治療ガイドラインを採り入れ、結果、
質の高い医療の提供を実現している。
糖尿病については、教育入院と同じレ
ベルの療養指導が外来通院で可能なよう
リン注射の指導を行っている。また、常
勤する栄養食事指導専任の熟練管理栄養
士による充実した食事指導や、理学療法
士および運動療法士による運動療法の指
導、薬剤師による薬剤指導も行い、半年
∼ 1 年の通院で教育入院を受けた時と同
等の診療が可能となっており、患者から
も高い評価を得ている。
小児医療では、小児科医と皮膚科医の
連携によるアトピー性皮膚炎に対する細
やかなケアが行われており、重症なアト
ピー性皮膚炎の患者にも対応している。
加えて、小児気管支ぜんそくなどにも高
度な医療を提供している。
同クリニック院長の丸岡文雄氏に、
新システムの有用性について聞いた。
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診療所の IT 化ガイド 2015
65
診療所の
電子カルテ
「TOSMEC Aventy」
カルテ画面
丸岡内科小児科クリニック システム構成図
院内には、4 つある診察室に各 2 台、受付に 3 台、
処置室に 2 台、問診室、管理栄養室、検査室、薬
局、経理に各 1 台の計 18 台を設置。スタッフが医
IT
活用事例紹介
療現場ですぐ入力できる環境と診療時間をできる限り長
く確保するため、端末はできる限り多く設置したという
受付には電子カルテ端末 3 台を設置。
予約システムとの連携により、スムーズ
かつミスのない受付業務を実現している
薬局では、電子カルテと調剤支援シス
テムが連携、効率的な薬剤管理・運
用を実現するとともに、ミスのない安全
な医療を実現している
護師や検査技師、栄養士らのスタッフ
診療や処方、オーダ内容を簡単に登
を導入し、処方の管理と自動分包機と
関の多くは、一般的なプリンタで指示
を採用しています。患者予約は、紙で
応していますが、今後はすべての診療
が診療中にすぐ、電子カルテを使用で
録できますし、
ショートカットの内容も
の接続を行っています。以前は紙の処
書などを出力していますが、意外にプ
予約票を作成すると事務担当者の作
科の予約に対応できるよう、バージョ
きるようにするためです。
また、当クリ
ポップアップ表示されることで、確認や
方箋に印字された2次元コードを調剤
リンタの出力は時間がかかります。 業が膨大になりますし、
ミスによるトラ
ンアップをしていきたいと考えていま
ニックでは、
日によっては1時間に30人
編集作業が簡単に行えます。
支援システムで読み取っていましたが、
例えば、ぜんそく発作の患者さんに対
ブルも起きています。ITを活用した予
す。
もの患者さんを診療することもあり、患
また、電子カルテ導入のポイントの
更なる効率化を目指し今回のシステム
してすぐ処置を施さなければいけない
約システムを導入し、患者さんに直接
者さんのコメントや処置等についてス
1つであった保守・サービス業務も、東
では、
オーダ確定時に処方データを送
時など、一般的な紙の伝票を出力する
予約を取ってもらうようにして以降、
タッフが医療現場ですぐ入力できる環
芝メディカルシステムズのパートナー
信しています。
一方、
同時に紙の処方箋
には2〜3分程度時間がかかるところ
予約に関するトラブルは激減しました
境と診療時間をできる限り長く確保す
である㈱システム ビィー・アルファの
も受付へ出力し、患者さんの薬局への
を、指示箋プリンタでは1分とかからず
ね。
るため、
端末は多く設置しました。
担当者が非常に真摯に対応してくれ
誘導及びお薬との引き換えに使用して
に出力することが可能です。
現在、
予約システムは予防接種と皮
機能面での評価ですが、操作性も
るので、
満足しています。
います。
このプリンタでの出力内容を、ユー
膚科の診療予約にのみの対応となっ
良く、使いやすいシステムですね。電子
当クリニックには非常勤医が大勢い
カルテ画面の色使いやデザイン性もよ
ますが、最近の若い医師はPC操作に
く、前のシステムと比べて目に優しいと
なれているので、電子カルテへの対応
感じています。
また、
システムが新しく
は問題ありません。
なったことから、
システムのレスポンス
ーー同システムは、調剤支援システム
も速くなった点も評価しました。
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と連携していますが、
この点について
指示箋プリンタを活用
安全かつ迅速な診療を実現
ザー設定によって予め入力しておくこ
ています。予約システム用にiPadを3
とにより、迅速かつ安全な指示内容を
台導入し、
活用しています。
プリントアウトすることができます。
あ
ーークリニックで使用されている指示
ーー電子カルテの今後の拡張につい
わてて薬の内容や量を間違えてしまう
箋プリンタについてお聞かせください。
てお聞かせください。
ようなこともないので、医療安全の観
今後、診療室をさらに2室増やし、
さ
当クリニックでは、PC用の一般的な
点からも電子カルテと指示箋プリンタ
らに運動療法室を設置する予定です
中でも、評価しているのがショート
はいかがでしょうか。
プリンタ以外に、
より簡便に指示書を
を組み合わせたシステムは有用性が
ので、
スタッフの希望にもよりますが、
カット機能です。
これは、頻繁に使用す
当クリニックでは、患者さんの利便
プリントアウトすることが可能な
「指示
高いと感じています。
端末台数を増設する計画です。
また、
る入力項目のセットや所見などを登録
性を考慮して院内処方も取り入れてい
箋プリンタ」を採用して、各診察室に
ー
ー電子カルテ以外に、
医療ITで活用
電子カルテと接続している予約システ
しておくことで、簡単にカルテ入力が
ます。
設置しています。
しているシステム等はありますか。
ムですが、現在は前述のとおり予防接
行えるというものです。ルーチン的な
そこで、薬局には調剤支援システム
電子カルテを採用している医療機
電子カルテと連動した予約システム
種関係と皮膚科の診療予約にのみ対
診療所の IT 化ガイド 2015
Doctor
丸岡 文雄(まるおか ふみお)氏
1986年九州大学医学部卒、
医学博士。
九大付属病
院第2内科、
心臓外科、
循環器内科で研修し、
九州
厚生年金病院、
聖マリア病院、
今津赤十字病院等を
経て、
豊栄会病院内科循環器科部長から2006年1
月丸岡内科小児科クリニックを開業、
現在に至る
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