富士山の火山防災情報伝達に関 する基礎研究 (ハザードマップ表現法、広域防災計画をベース とした防災ゲームの研究) 静岡大学 教育学部 総合科学教育課程 総合科学専攻 小山研究室所属 3021-6030 望月 麻紗樹 研究目的 自然災害による被害に注目が集まって来ているが、火山災害に対して の世間の認識は、他の災害と比べて低いままである。 火山災害は軽微な時もあれば歴史に残るような悲惨な結果を残しかね ない、リスクの管理が極めて難しい災害である。そのため火山災害に対 する正しい知識や、どのような防災対策を採るべきかを身につけておく 必要がある。 本研究ではそのための手段として、林信太郎(秋田大学)氏が開発し たLibraをベースに、富士山の火山防災情報の伝達を目的としたゲーム の開発研究を行う。 ゲームについて テーブルゲームはその形式によって、以下のように分けられる。 ①ボードゲーム ボード(盤)とコマ(駒)を主体とするゲーム。囲碁、チェス、双六など。 ②カードゲーム カードを主体とするゲーム。トランプ、花札、ウノなど。 ③タイルゲーム タイル(牌)を使うゲーム。本質的にはカードゲームと同じである。麻雀、 ドミノなど。 ④ダイスゲーム サイコロを主体とするゲーム。ちんちろりん、丁半、ブラフなど。 ⑤立体ゲーム 特定の形状をしたギミックが主体となるゲーム。ジェンガ、黒ひげ危機 一発など。 厳密な分類ではなく、これらの境界にあたるゲームも多数存在する。 ※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用) Libraについて Libraは、ボードゲームに分類される。 避難民を表すコマ、火山活動レベルに応じて危険になる5つのゾーン に配置されている。火山活動レベルはダイスと表によって決まり、避難を 行うには特定のコストがかかる。 避難コストを抑えつつ、死者を出さないように上手くコマの移動を行うこ とが求められるゲームである。 Libraは確率で現される火山のリスクを、火山災害の関係者に体験的 に認識させる目的のために秋田大学で開発された。 噴火災害の発生に直面すると、関係者は様々なジレンマに陥る。Libr aはその中でも警戒避難を巡るジレンマを抽象化したものである。噴火の 危険性を「見逃し」ても「空振り」しても、当事者は困難な立場になる可能 性が高い。ゲームは「見逃し」のリスクと「空振り」のリスクを計りながら、 どのように行動すれば良いかを、体験的に学ぶことが出来る。 Libraの問題点 Libraの欠点として、極限まで抽象化を行ったことがある。それによって 以下の3点が問題点として挙げられる。 ①火山災害の様子が分からない Libraのシステムでは、火山活動レベルに応じたゾーン全体が機械的 に危険になる。そのため、どのような火山現象によって、どのような場所 が危険になるのかといった知識が身につけられない。 ②確率に基づいた単調な定石の発生 数学的に導かれた“定石”に従ってユニットを移動させ、サイコロの目 や勘によって勝負がつく単調な作業の繰り返しになってしまう。 これではどのような防災対策を採れば良いのかが身につかない。 ③ゲーム性の欠如 ②のような“定石”があり、またプレイヤー同士の駆け引きといった要素 がないため、ゲームとしての面白さが低い。 Libraの改善策と開発指針 先に挙げた3点を改善するため、以下のように開発を行う。 ①火山現象を具体化する 火山活動レベルに応じてゾーン全体が危険になるのではなく、レベル に応じた火山現象によって、一定の箇所が危険になるように改める。 火山ガスが発生した場合は窪地が危険になったり、沢の近くでは土石 流に巻き込まれたりするようにゲームを構築する。 これを達成するため、カードゲームの要素を取り入れ、カードを使うこと で特定の災害が発生するようにする。 ②火山役をプレイヤーが行う 数学的に決まった“定石”を崩すには、人間力に頼るのが一番である。 どのような火山現象がどこで発生するかをプレイヤーが決めることで、何 が起こるか分からない状態を作り出す。 ただし、本当に何でもありにならないよう、しっかりとルールを定める必 要がある。 Libraの改善策と開発指針 Libraは火山の負の面に焦点を当てているが、これでは一種の“脅し” にしかならない。景観や地下資源等の、火山による恵みの部分にも目を 向けられるようにする必要があると考える。 また防災対策は噴火後ではなく、噴火前の日常から整えておくことが 肝要である。その面からも避難シーンだけではなく、噴火前のシーンを ゲームに取り入れるべきだと考える。 そのためゲームの構成を噴火前と噴火後の2段階に分ける。 噴火前は地域開発や防災設備等の開発によって、火山現象の予測や 避難がしやすいようになるシステムを新たに構築する。 Libraのシステムは後半の避難の部分に用いることになる。
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